しかし、その勝利は共和制ローマの歯車に、見えざる砂を注ぐ結果を生む。
この巻の副題たる「勝者の混迷」は、歴史学者が人類史上の理想国家と評する共和制ローマが陥った最大の危機を引き起こしたのだ。
階級格差、貧富の格差、そして地方格差・・・・
国家を蝕む臓腑の病は、グラックス兄弟の健闘空しく、共和制ローマを腐らせていく。
ハンニバルによる国土侵略でも揺らぐことが無かったローマ連合もが崩壊し、ローマは一世紀に渡る内戦状態へと突入。
分裂し、藻掻き苦しむローマ.
だが、そんなローマを救ったのは、歴史学者たちの言う『理想』ではなかった。
「個人のカリスマと才覚」による、中央集権体制の確立。
すなわち、独裁である。
・・・・てなわけで、この巻より共和制ローマの崩壊が始まります。
政治というものは、リアリズムこそ重要なのであって、理想論ではどうにもならないときがある。
どれほど理想的なシステムであっても、用いる指導者層が腐ってしまえば、不幸をもたらす。
そうした、政治というものの悲しき現実が、この巻では「これでもか」と語られていきます。
なんだか、この時代のローマの現状って「どっかで聞いたような」感じがしますが、どの時代でもどの国でも、似たようなミスとか問題ってのは、起こりえるものなんですねぇ・・・・(汗)
ちなみに、この巻で登場する『ルキウス・コルネリウス・スッラ』は、何故か右の人にも左の人にも、大変人気がある人物です。
つーか、貶されてるのを見たことがない。
ある意味、日本人が一番好むタイプの政治家なんじゃないかな、と思います。
理想的ではあるけども、結局時代の求めるものが読み切れず、物事の詰めを欠く。
英雄ではあるけども、自分の考える理想こそ志向と思い込んで、結果的に問題を解決しきれず終わる。
優秀な保守派が陥る罠に、ものの見事にハマっちまった感じの人なんですがね・・・・・
しかし、このスッラに似た人も、数年前にどっかで見たような気がするなぁ・・・・はて?
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購入金額
2,415円
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購入日
2002年02月頃
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購入場所
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