レビューメディア「ジグソー」

エンタープライズレベルの高耐久性を個人のPCのSSDにも

初版:2014/10/22
更新:2014/10/22 動画を追加

今回レビューの機会をいただけることになったのは、Intelの最新世代となる
SSD 730シリーズ240GBモデルのSSDSC2BP240G4R5です。

シリーズ名が示すとおり、元々はエンタープライズ向けとしてラインアップ
されていた7x0シリーズですが、エンタープライズ向けとしてはDC S3500/
S3700シリーズができたことにより今回の730シリーズはコンシューマ向けの
最上位となりました。従来のコンシューマー向け最上位となる530シリーズでは、
SandForce社製のコントローラを採用しておりデータ圧縮機能が備わっている
ため圧縮の効かないデータでは速度が低下するなど、特有の挙動がありました
が今回の730シリーズではDC S3700シリーズ同様に自社製のコントローラを採用
しており、耐久性の向上や圧縮の効かないデータについても速度が低下しないと
いう弱点の克服が成されています。耐久性については、平均故障間隔(MTBF)が
530シリーズの120万時間から200万時間へと大きく引き上げられており、HDDに
比べると書き込み回数を気にすることの多いSSDも、730シリーズではそれほど
気にしなくてもいいのではと思えるレベルまでやってきました。

手元にあるSSD 330シリーズとSSD 520シリーズと比べてみるとスペック差は
こうなります。赤字の部分が表の中で一番となる部分で、SSD 730シリーズの
240GBモデルはシーケンシャルライト性能こそ大人しいですが他は330シリーズ
や520シリーズを圧倒しています。使い始めて1~2年程度なのにここまで差が
開くとはびっくりです。

今回のSSDを試すマシンですが、他のレビュアーの方は恐らく自作機などデスク
トップに組み込んで検証されると思いますので自分はノートPCで試すことにしました。


SONYのオールインワンノートPC、VAIO F VPCF24AJです。Fシリーズとしては
最後のモデルで、3D対応16インチ液晶やグラフィックコントローラにnVIDIA
GeForce GT 540Mを搭載したフラグシップです。2001年より続けているブログ
タイトルが「パソコン改造記」ということもあり、CPUはCore i7-2670QM 2.2GHz
クアッドコアに交換しメモリも16GBに増設してあります。システムドライブも


すでにSSDに換装しており、Intel SSD 330シリーズの240GBを使用していました。
今回は交換後に330シリーズとの差を比べていきます。

リテール版パッケージということで、Intelの製品でおなじみのデザインの箱に
SSDは収まっています。330シリーズの箱と比べるとデザインは異なりますが

大きさは全く同じようでした。ただしSSDが入った状態で重さが730シリーズ
のほうが軽い感じがあります。開封してみれば違いが分かりますね。


製造は今年2月のようです。5年間保証のロゴもパッケージに印刷されています。
330シリーズでは3年間だったので、より安心して使うことができます。
パッケージを開けて内容を確認してみると、

重さが違ったのは330シリーズにはついていたデスクトップの3.5インチベイに
取り付けるための金属製のマウンタが付属していなかったためでした。マウンタ
を固定するネジもない以外は330シリーズと同様で、SSDを固定するネジや
SATAケーブル・SPEED DEMONステッカーとマニュアルの入ったCD-ROMです。
既存のシステムドライブから環境を移行するためのIntel Data Migration Software
は従来同様にダウンロード提供となっています。そろそろCD-ROMに含めてもいい
と思うんですけどね・・・。

SSD本体のデザインですが、Intelロゴの位置や左下から右上に流れる曲線は初期の
SSDであるX25-Mシリーズから変わりませんが、同社マザーボードのExtreme系に
描かれているドクロマークがこちらにもついています。自作機向けっぽい印象が
ありますが、内蔵してしまえば特に見えないのでどのようなマシンでも気にならない
かと思います。厚さは7mmとなるため、Ultrabookの一部など7mmのベイを備える
マシンでも使用できます。逆に9.5mmでないとセットできないマシンの場合は、
市販のスペーサーを貼り付けるとよさそうです。

SSD裏面には製品型番やら仕様等々のラベルがあります。520シリーズの頃から、
この面の加工の荒さが鋳物感出すぎと言われていますが330シリーズも同様で
今回の730シリーズでも変わりませんでした。放熱のためわざと荒い状態なの
ですかね。

ラベルはこのような感じです。シリアルっぽいところだけ画像加工しています。

外観のチェックはこれくらいにして、早速使い始めてみます。環境をこちらに
移行しないことには始まりませんので、クローニングツールで環境を移行します。
当該PCへの接続は手持ちの2.5インチHDDケースを使おうとしましたが、どうも
相性が悪いらしくWindowsのディスクの管理ツールから見ると容量が10TB超
と誤った認識となるので以前レビューでいただいたハイブリッドHDD付属のUSB-
SATA変換ケーブルを使用しました。こちらでは正しく容量が認識されます。
クローニングツールはIntel Data Migration Softwareが無料で使えるのですが、


Acronis True Image 2013 Homeがすでにインストールされており、そちらの
クローン機能と同等になりますのでそちらを使うことにしました。今回容量が同じ
SSDへの移行となるため、クローン設定はすべてデフォルトにしました。


作業途中で再起動が必要となるので、再起動すると作業が継続されます。USB3.0
で接続しているためか、240GBの半分以上を使用していた状態でのクローン作業
にかかった時間は10分を切っていました。かなり高速です。終わったらシャット
ダウンされますので、730シリーズに交換します。

本体を裏返し、バッテリを取り外してから手前のHDDベイのふたを固定するネジ
2本をはずしてふたを手前にスライドさせるように開きます。

ドライブが見えますのでネジ2本をはずして、マウンタ金具についているタブを引き
ドライブを本体のSATAコネクタからはずせばドライブを金具こと持ち上げて外せ
ます。マウンタとドライブはネジ4本で固定されていますのでこれも外せば分離は
完了です。

330シリーズと730シリーズの2ショット、奥側が330シリーズですが段差が見える
とおり2.5mmほど厚さの違いがあります。730シリーズに金具を取り付けて逆の
手順で組み立てていけば換装作業は完了です。VAIO Fのような大型モデルだと、
筐体に余裕があるのでこれくらい簡単に作業が完了しますがUltrabookのような
モバイル向け小型モデルだと、場合によっては本体をばらばらに分解しないと
いけません。お持ちのPCでSSDに交換する場合は分解方法を予め調べてから、
自分でできるか見極めておくと失敗しにくいかと思います。

交換前と交換後でベンチマークを見ていきます。まずはおなじみのCrystalDisk
Markですが、交換前は

このような結果でしたが交換後は

こうなりました。スペックシートを見るとシーケンシャルライトのスループット
は330シリーズよりも劣るはずですが、実際は730シリーズのほうが速いようで
すね。データ圧縮機能の効く0Fillモードでは逆転するかもしれませんが、オール
マイティにこのスコアだとするとやはり730シリーズの良さがあります。その他
の項目についても全体的に良いスコアとなっており、ランダムアクセス系は大きな
ところで2倍近い伸びがあったりと実使用時にも差を感じられるのではないかと
いうレベルで性能向上を遂げています。プルダウンメニューのところの容量を
見ると分かるとおり、8割以上を使用した状態でこれくらいのスコアなので使い
込んでも大きな速度低下はないようですね。

次にPCの起動に要する時間の比較、これもよく比較に使用している測定ツールの
BootRacerを使用しました。ワンクリックで測定できるので手軽です。交換前も

34秒とHDDに比べればかなり高速な状態でしたが、交換後は

31秒と3秒短縮されました。何回か試しても同様の傾向でしたので、先ほどの
ランダムアクセスの性能向上が実際の動作にも影響しているようでした。計測した
数値上の差ではないですが、各アプリケーションの起動やファイルアクセスを伴う
処理が全体的に俊敏になった感じがあります。もっとも、今まで使用していた330
シリーズでもHDDに比べると非常に高速でしたので、SSDからの交換だと感動する
くらいまでの差は体感できないかもしれませんが・・・。


ちなみに再起動時の様子はこのようになっています。今までもSSDで使用していた
のであまり変化は感じませんが、HDDに比べると半分以下の時間で起動完了して
いるので完全にストレスフリーですね。

総評としては、耐久性が大幅に向上しましたがかといって何かを犠牲にしている
わけではなくパフォーマンスも高いまま、という至れり尽くせりなところが気に入り
ました。冒頭の通り、HDDからSSDにするとどうしても書き込み回数など寿命に
関わるため気にしてしまうのですが、個人で使用するよりも大幅に過酷な環境下で
使用されるエンタープライズ向けSSDの技術が詰め込まれていることによって、
より安心して使えるというのもお勧めできるポイントです。SSDを安心して使いたい
という場合に、今回Intelのコンシューマ向けSSDの最上位として用意された730
シリーズがぴったりだと思いました。

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