本の蟲。
実は結構読書家で、学生時代を中心に相当数乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中から、新旧織り交ぜて、トピックをご紹介していきます。
先日紹介した、2018年本屋大賞を受賞した辻村深月のベストセラー小説「かがみの孤城」
のコミカライズ(なので、あらすじは小説のレビューの方を参照)。作画担当は、「この恋は実らない」や「EVIL HEART」の武富智。
非常に凝ったプロットの作品である「かがみの孤城」、文庫版で上下巻計700ページ超の大作だが、これを上手く5巻のコミックに落とし込んである。
お城は、学校に居場所がないこころにとって「居ていい」場所になる
中学校で友達が出来なかったこころには、お城の6人は大事な友達⇒これがラストの行動に繋がる
お城への扉が閉じていなかったと解り、鏡に飛び込むこころ(ここ、マンガオリジナル表現!)
原作の「かがみの孤城」は2017年リリースだが(文庫化は2021年)、このコミックは2019年~2022年の刊行で、コミカライズは同時進行ではない。この時間の差が、武富が原作を消化し、マンガに昇華する余裕を与えたのか、原作を非常に良く読み込んでいるのが感じられる。あらすじや主要エピソードなどが、ブレなくきちんと語られているのはもちろん、原作とは違う部分(絵ならではの表現も含め、新たに加えられた描写など)が、文字が少ないマンガと言うメディアでのストーリー進行を、納得性の高い形に創り上げている。
文庫2巻で700ページ超の原作を、それより多い5巻とはいえ、1巻220ページ少々、合計1100ページ程度のコミックに落とし込んでいるので、多少端折らざるを得ない点も出てきているのだが、逆にマンガには独自のエピソードや表現を加えて、「文字で語らなくて済むようにしている」のだ。
5巻の最後に、“武富さんが漫画として新たに加えてくださった表現に、何度「ありがとう」と呟いたことか・・・孤城の時間を完全に自分のものにして、彼らと一緒に駆け抜けてくれた武富さん(以上抜粋引用)”と、原作者の辻村深月の言葉があるが、原作小説と比較してよむと、マンガならではの表現がよくわかる。
特に、いくつもオリジナルの解釈や表現を入れたクライマックスの5巻の描写は、小説版に勝るとも劣らない圧倒的説得力。
原作小説⇒マンガ化での差異を、再現性の不足や劣化ではなく、むしろ表現法の違いとして楽しめる作品。
この「かがみの孤城」は、今年(2022年)末に劇場アニメ化されるけれど、「動く」絵+声/SEという映画ならではの強みがあってさえも、このマンガを超えるのは並大抵なことではない、そう感じるほど、説得力と完成度の高い作品です。
「かがみの孤城」に出逢ったのは、いつも視ているVTuber、吉花こころちゃんの配信で。
自身の名前が、パパ(キャラクターデザイン+3D化担当)のぽんぷ長がつけたもので、その元となったのが、この「かがみの孤城」の主人公、安西こころだったらしい。こころちゃんは本を読み進めていくうちに、物語が終わってしまうのがつらくて?ラストまで読み切るのに時間がかかってしまったほど、良い小説だったという発言があったので、自分も興味を惹かれて読んだ(吉花こころちゃんが狼なのは、「オオカミさま」とも重ねているのかな)。たしかに、ものすごく良いお話だったので、出逢わせてくれて感謝です。
※自分にとって購入のきっかけとなった配信ではないが、2時間程度の配信で登録者が50人ほど爆盛りされて、期せずして感動・号泣の「登録者1万人達成配信」となった時の配信↓でも「かがみの孤城」と自身の名前の関連に関するくだりがある=1:39:20あたりから。
マンガが原作小説を上回る部分さえあるのが素晴らしい
しっかりと文字で描写できる小説の方が、マンガよりも深く表現できるのが一般的だが、本作はマンガならではの表現と、挿入されたオリジナルのエピソードで、一部それを超えて感性に訴えかけるものがある。
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購入金額
3,688円
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購入日
2022年09月頃
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購入場所
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