レビューメディア「ジグソー」

新世代のSSD、NVMe接続のIntel SSD750ことSSDPEDMW400G4 ~その性能が生かし切れるのか?~

PCを使用し始めて○○年経つが、超初期のHDD未搭載で使う都度プログラムを読んでいた時期のものを除き、基本的には起動ドライブとしてHDDやSSDを内蔵している。その接続インターフェースは長いことIDE(いわゆるParallel ATA)だったが、その後今世紀に入ると高速化を狙ってSATA(Serial ATA)に変わった。これは現状メインのSATA3.0規格では6Gbps(750MB/s)のスピードを持っており、HDDの要求は完全に凌駕している(一般に160MB/s程度がHDDの最高転送速度)。しかし、最近特に起動ドライブに関してはHDDからSSDに急速に転換が進んでおり、それには500MB/s以上を叩き出すものも出てきて、完全に転送速度がボトルネックとなってきた。

 

そこで最近複数の新接続規格が出てきた。それはまず昨年(2014年)ごろから出てきたPCI Express M.2。もともとminiPCI Expressの後継として策定された規格だったが、内部的にPCI-Expressの他にSATAやUSB2.0/3.0、DisplayPort接続がサポートされているインターフェース。一部を除き10~32Gbpsの帯域を持つものが多く、ボトルネックが解消した。今年(2015年)これと同じく32Gpsの帯域をもつPCI Express Gen 3 x4接続のインターフェースを持つPCIeソケット形状のものも現れた。

 

今回Intelから発売されたIntel Solid-State Drive 750(以下SSD750)のその速さを検証した。

まず、外見から分かる部分をチェックしよう。

 

見ての通り、PCIe x4接続のカード。SSDといえば2.5インチタイプが主流で、それは約10cm×7cm。それが幅はおよそ7cmながら長さは17cmと長い。さらに厚さも1cmない2.5インチタイプの倍はある。

これくらいの大きさの差

 

表には厚いヒートシンクが付いていて、裏にも保護用の金属板が付いている。金属板を取り去ると使用チップの一部が確認できる。

チップは結構ぎっしり実装されている。

 

まず一番数が多い(裏面18個)のが、インテル製のNANDフラッシュメモリチップPF29F64G08LCMFS。

「64M20C Client Compute NAND Flash Memory」と呼ばれているコンポーネント

 

キャッシュメモリはMicron製のD9PSC。

DDR3-1600のメモリ。

 

コントロールプログラムが入っていそうなのがWinbondの不揮発性メモリ、W25Q40BW。

このチップはたぶん制御用プログラム

そして裏面からは窺えないが、パターンが大きく空いたエリアの表側には巨大なヒートシンクを背負ったコントローラーチップが実装されているハズだ。

 

さて、この外見も内部構造も新しい形のSSD、どういう風に導入していくのだろうか。

 

今回検証するSSD750は単に接続形状がSATAもしくはM.2ではなくてPCI Express x4形状というだけでなく、内部インターフェースも変更されている。HDDの頃から長らく使われたAHCI(Advanced Host Controller Interface)ではなく、新たにNVM Express(NVMe)という方式を採る。NVMとはNon-Volatile Memory(不揮発性メモリ)の略でメモリを使用したSSDのために策定された新しい内部インタフェースおよび論理層の仕様となる。

 

そのため「使う」までが一手間ある。まずBIOS(UEFI)の更新が必要だ。今回の検証環境だと2015年4月15日リリースのBIOSバージョン1702以降でなくてはならない(今回はシステム安定性向上も入ったという2015年9月14日リリースの1901を使用)。これ以降でないとNVMeのディスクを認識しないのだ。

 

今回検証環境は以下の通り。

・CPU:Intel Core i7-5960X
・CPUクーラー:CORSAIR H100i(CW-9060009-WW)(CORSAIR LINK制御)
・M/B:ASUS X99-A
・メモリ:Crucial CT8G4DFD8213 8GB DDR4-2133 ✕8 Total64GB
・VGA:ASUS STRIX-GTX750TI-OC-2GD5
・システムドライブ:検証対象

・データドライブ:検証対象
・光学ドライブ:非搭載
・カードリーダー&USBフロントパネル:非搭載
・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
・OS:Windows 8.1

 

BIOSのアップデートは失敗時が痛いので、必要に迫られなければやらないのだが、ASUSのM/Bは比較的簡単にBIOSがアップデートできる。ASUSのサイトから落としたBIOSファイルを説明書にある通り(このボードの場合「X99A.CAP」)にリネームしてFAT形式のUSBメモリに仕込み、裏の特定のUSBポート=USB BIOS Flashback ポートに挿し、USB BIOS Flachbackボタンを長押しし、ランプが消えるまで放置...というだけ。

USBメモリを特定のポートに挿し、USB BIOS Flachbackボタンを長押し

無事初期BOISの0216から最新の1901にアップデートできた。

2014年8月の初期BIOS(0216)から..

2015年10月時点最新の1901にリビジョンアップ。

これでBIOSのメニューに「NVMe configuration」という項が現れ、SSD750が認識できるようになる。

NVMe configurationという項ができる。

 

..と言ってもできる事はないのだが。

 

ここまでできれば他のSSDやHDDのように普通のディスクとして扱うとことができる。

 BOOTメニューにも登場(TSSTはUSB光学ドライブ、Kingmaxのはスクショ用USBメモリ)

今回物理的設置位置としては一番下のPCIe 3.0 x16形状スロットを使った。

このM/B、X99-AレイアウトとしてはCPU側から、PCIe x16形状、PCIe x1形状、PCIe x16形状、PCIe x16形状、PCIe x1形状、PCIe x16形状だが、このSSD750はインターフェースがPCIe x4形状なのでx16形状の4スロットが接続対象。しかし上から3番目のx16形状スロットは最大x4動作のPCIe 2.0 x16スロットなのでPCIe 3.0 x4ネイティヴ接続のSSD750には役不足。4番目と6番目のスロットはPCIe 3.0接続だが、40レーンCPUと28レーンCPUで帯域が違う。前者が4番目が最大x16で6番目がx8、後者が最大x8にx4。今回40レーンCPUのCore i7-5960Xだがいずれにしても6番目のスロットで不足はない。

一番下の6番スロットに設置するとこんな感じ。

 

ただし、物理的には少し難がある。フロントUSB3.0ポートへのヘッダがちょうどSSD750の下に来るため、少しコネクタにテンションがかかってしまう。今までの2.5インチタイプと違って物理的に大きいので、環境によっては設置が難しい場合があるかも知れない。ここはこの形式のSSDのマイナスポイントと言えるだろう。

ここが接触してしまう。つか、USB3.0コネクタがでかすぎるのだが。

ではまず、BOOTディスクとして使ってみよう。

前述までの手順で認識させるとBOOTドライブとしても使用ができる。

M/BにWindowsのインストールディスクを入れたUSB光学ドライブを接続し、上記手順でSSD750を認識させた状態で光学ドライブからリブートすると至って普通にWindowsのセットアップが行われる。

 

そのままCrystalDiskInfoをかけると...何も見えんw

 これは現在CrystalDiskInfoがこの接続法に対応していないからで異常ではない。

 

CrystalDiskMarkの方は対応しているので、計測してみよう。

まんべんなく速いな

 

シーケンシャルとランダム、リードとライトまんべんなく速い。単品でこの速さは驚異的。

 

比べてみた。

 

比較対象は、

・型番的に?SSD750の旧型とも思えるIntel SSD730ことSSDSC2BP240G4R5

・同じIntelの普及型SSD、Intel335ことSSDSC2CT240A4K5

・ライトが速くて有名なSanDiskのUltraⅡことSDSSDHII-480G-J25

 

もちろんすべてSATA6.0Gbps接続。全て他のアプリが入っていない「素」の状態。

 

【どくろ:SSDSC2BP240G4R5】

さすがどくろ。それなりに速い。

 

【セミアコ335:SSDSC2CT240A4K5】

やっぱり730に比べるとランダム系がふるわないが、意外に健闘

 

【黒い伏兵:SDSSDHII-480G-J25】

ライト系はえ~

 

SSD730はそれまでのIntelのハイパフォーマンスクラスのSSDでシーケンシャルリード550 MB/sを誇るが、シーケンシャルライトはやや落ち270 MB/s。SSD335は普及価格帯製品ながら、シーケンシャルリードは500MB/sとやや及ばないものの、シーケンシャルライトが450MB/sとバランスがよいSSD。SanDiskのSDSSDHII-480G-J25は最大読み出し速度550MB/s、同書き込み速度500MB/sを公称する高速ドライブ。この3つのドライブではカタログデータ通りリードがSSD730≧SanDisk UltraⅡ>SSD335、ライトがSanDisk UltraⅡ>SSD730≧SSD335と言う感じ。今までの感覚だとSSD730もSanDisk UltraⅡも充分速い。

 

ただSSD750はこれらのスコアを1.5倍から2倍以上凌駕するスコアで、まさに異次元の世界。速さへの期待が高まる。

 

しかし!SSD750の隠された実力はこんなモンじゃなかった。

当初の計測はWindows8.1純正のNVMeドライバを使ったもの。これをIntel製のドライバに入れ替えると劇的な効果が得られる(今回は2015年9月リリースの1.3.0.1007を使用)。

 

【Intel Windows NVMe driver 1.3.0.1007あてたSSD750】

みたことないスコアw  小数点以下がないスコアが4つもあるw

化けた。単品SSDとはとても思えないスピード。環境は違うがチップセットRAID0を組んだSSD335を全項目でぶっちぎる圧倒的スコア。

起動ドライブに使うとシングルのSATA接続SSDよりも認識の時間が長いが、チップセットRAIDを組んだ場合より速く、まさにストレスがない。

 

ではこれでRAID0を組めば最強では....

 

RAID(0)には専用のRAIDボードを組み込んだ本格的なものもあるが、最近はチップセットの機能を用いたRAIDが導入のしやすさから主流となっている。そのほかにWindowsの機能を用いたストライプボリュームでのRAID0もある。当然RAIDボード⇒チップセットRAID⇒Windowsストライプディスクの順に本格度?は下がるし、Windowsストライプディスクでは起動ドライブにできない...ので結構調べた。

 

...が、2015年10月の時点でNVMe接続のPCIeインターフェースをサポートするハードウエアRAIDカードはなさそうだ(専用のRAIDユニットはある)。そしてチップセットの機能を使ったRAIDもつい先日リリースされたCPU、Skylakeに対応したZ170チップセットの一部に機能があるだけで、残念なことにHaswell-E対応のX99チップセットではカバーされない。

 

そこで仕方なくWindowsの機能を使ったソフトウェアRAIDを試した。

今回はSSD730をシステムドライブに使い、それに2枚ずつのSSDをストライプボリュームでぶら下げる形にした。

 

もちろんBIOSを更新しているので取り付けると2枚見えるには見える。

2枚SSD750は見える。

取り付けスロットはもう一つのPCI Express Gen 3スロットの4番目。

ビデオカード以外のものが2スロットを埋めるというのは今まで考えつかなかった絵

設定の仕方は以下の通り。

システムが立ち上がっているので、Windowsの「ディスクの管理」を選ぶと2つのディスクが見える。

まだ未割り当て

 

ダイナミックディスクに変換

 

ダイナミックディスクに変換するとストライプボリュームが組める

2枚で構築

フォーマットをして...

約800GB(400GB×2)のボリュームが出現

まずはCrystalDiskMarkで性能を見てみた。

見たことない数値が並ぶ

 

まさに爆速。インテル製NVMeドライバをあてた起動ドライブでのベンチの数値を超え、項目によっては2倍の数値となっている。ではそのインテル製NVMeドライバをあててみよう。

あれ?

 

こちらはシングル使いと比べると劇的な変化はない...というかほぼ誤差か。しかし、いずれにしても大幅な性能向上。シングル使いでも普及型SSDのチップセットRAID0を凌駕していたが、Windowsの機能を用いたソフトウェアRAIDでも充分な性能が出るようだ。

 

ちなみに同じ環境で(もちろんSATA接続だが)組んだWindowsのストライプボリュームでの他のSSDの性能は以下の通り。

 

【セミアコ335:SSDSC2CT240A4K5×2】

こちらもリードの一部の項目は4桁乗せてきたので健闘はしている

 

シーケンシャル系の一部の項目は4桁に乗せているので、元環境(Z87チップセットのRAID機能)よりよい数値だが、SSD750×2を見たあとだとインパクトに乏しい。

 

【黒い伏兵:SDSSDHII-480G-J25×2】

さすが高速ドライブ!!

こちらはさすが高速ドライブ、いくつかの項目はWindows純正NVMeドライバでのSSD750のシングル使用を上回り、さすがストライプボリュームと言う感じ。

 

SanDisk UltraⅡのRAID0(Windowsによるストライプボリューム)がかなり高速なことも判明したが、それを大きく上回る別次元の速さを魅せたSSD750。実使用においてはどのような効果が得られるのだろう。

 

「重い」処理にもいろいろな「重さ」がある。(持っていないが)4Kディスプレイに動画を描画するような用途ではGPUの負荷が大きいだろうし、延々と計算を繰り返させるのはCPUの性能が試される。大きいファイルを扱うにはメモリの広さが効くし..と言うことでストレージの性能が試されるのは...エンコードかな?ということで、例によって「VHS to DVD」

で、取り込んだmp4ファイルをXMedia Recodeでflvファイルに変換させた....が。

 

大きな差が付かなかったorz

 

【シングル使用での起動ドライブ使い】

ちょ~微妙な差

 

起動ドライブにシングルでつかった各SSDに1.3GBの30分の動画を3つ仕込みmp4⇒flvの変換を実施した。上記結果は3回測ってほぼ同値だったので再現性があり、一応性能的にはSSD750>UltraⅡ>SSD730>SSD335の順ではあるが、特にSSD750と他の3つの差がベンチマークでは圧倒的だったのに、さほどの差ではなかった。Windows純正ドライバですら他の3つとは大きな差があったので、これは意外だった(SSD750の計測はIntel製ドライバー)。ただ実際にWindowsを動かしてみた体感速度はSSD750には全くストレスを感じなかったのだが...

 

次に一枚しかないSSD730以外の3種をWindowsのストライプボリュームでも評価した。変換対象のファイルをストライプボリュームに置き、書き出し先もストライプボリュームにした場合のスコアだ。

 

【2台使用でのストライプボリューム使い】

今回検証したストライプボリューム用SSDたち

あっれ...?

 

これは意外な、とても意外な結果となった。何度測ってもSSD335×2>SSD750×2>UltraⅡ×2となった。なぜだろう...?

 

そのほかにいくつか採ったゲーム系ベンチマークでもSSD750×2のストライプボリュームは他を圧倒しているのだが、メモリを減らしてテンポラリが溢れるようにしたなど条件を変えていくつか採ったスコアでもSSD750×2の明確な処理速度の速さが実証できなかった。実際の作業としては「実感」できる所の遙か上まで最近のSSDを含むシステムの性能は到達してしまったのだろうか(少なくとも今回の検証環境では)。

 

今回、外部インターフェースがPCI Express x4形状で内部インターフェースがNVM Expressを採るにインテルの新世代SSD、SSD750を検証した。BIOSの更新やドライバの更新など導入のハードルはあるが、その苦労をする甲斐がある圧倒的なスコアを得ることができる。

 

実際起動ドライブに使ってもサクサクの速さで、全くストレスがない。本品の1枚使いと同程度の速さを求めるならSATA接続のSSDではRAID0が必要な領域だ。ただしRAID0を組んだ場合、起動時には認識のための一呼吸が増えるためその速さを実感する事はできない。それが1枚使いだと非RAIDのSATA接続のSSDに近い速度で起動するため、ストレスがない上に起動してからの反応は非常によいため、オススメの構成となる。

 

一方2枚使いだとそれを活かしきる環境はまだ多くない。今のところストライプボリューム化してデータドライブや作業ドライブに使用する程度にとどまり、上位ラインアップ(1.2TBや800GB)に比べて割安な400GBのSSD750を2枚使ったRAID0のシステムドライブとして速さを享受する、ということが簡単にはできない。

 

このあたりがまだ黎明期の規格だなとは感じられる結果となった。

 

このSSD2枚使いでの速度を生かす使い方は今後検証を続けたい。


【仕様】
フォームファクタ:AIC
容量:400GB
データ記録方式:MLC
インターフェース:PCI-Express 3.0 ×4
Sequential Read:最大2200 MB/s
Sequential Write:最大900 MB/s
4KB Random Read:最大430,000 IOPS
4KB Random Write:最大230,000 IOPS
MTBF(平均故障間隔):120万時間
消費電力(アイドル):4W
消費電力(作動時):Read=9W、Write=12W
動作温度範囲:0℃~+70℃
外寸:高さ×幅×奥行=18.74×68.90×168.00
重量:195.00g

保証:5年間

 

メーカーHP:Intel SSD 750 Series(400GB, 1/2 Height PCIe 3.0, 20nm, MLC)

 

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2015/11/06 実装チップ部分追記

コメント (8)

  • sorrowさん

    2015/11/04

    cybercatさん

    レビュー、お疲れ様でした。今回のRAIDは難題でしたね。

    730 RAIDの方が750 RAIDより少し速いという結果、面白いと思いました。

    年季が入ったAHCIドライバと、新参者NVMeドライバの作り込みの差ではないでしょうか?今後NVMeドライバが改良されるとさらに高速になるかも知れませんね。
  • cybercatさん

    2015/11/04

    sorrowさん、お疲れ様でした!
    単品の動かし方は海外サイトですでにあがっていたので、なんとかなるかなと思っていましたが、ダメでした。最初の1週間はBIOS更新して全ての関係ありそうな所を弄り倒してたんですがねぇ...

    NVMeドライバはWindows付属のものとIntelドライバの差、ベンチと実使用の差などから考えるとまだ熟成途中なんでしょうね...
  • supatinさん

    2015/11/04

    cybercatさん、こんにちは
    (*・ω・)*_ _)ペコリ

    超難解な挑戦&トラブルを乗り越えレビューお疲れ様でした!
    インターフェイス過渡期の中でNVMeの扱いの今後が気になりますね
    (*´ω`*)
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