“Dragon Age:Inqusition”は、人気タイトル“Dragon Age”シリーズの最新作であり、本作が3作目となる。初作“Dragon Age:Origins”は重厚な世界観がすばらしく、DLCもすべてやり尽くす程にはまり込んだ。それ故に“Dragon Age”シリーズには個人的に思い入れがある。
あれから5年が経ち、最新作はどのように進化したのだろうかと期待しつつ購入してみた。
1ヵ月半ほどかけて一通りクリアしたので、ざっとレビューしてみようと思う。
様々な要素が絡み合うことで重厚な世界観が作り出されている
シリーズの伝統である重厚な世界観は本作にも引き継がれている。
種族、文化、宗教、信条、内戦、国家間の対立など様々な要素が複雑に絡み合い、深い世界観を作り出している。
語彙量が膨大なので、すべてを理解することは非常に困難だろう。
ゲーム内で閲覧することができるコーデックスと呼ばれる文献は、本作の世界観をより深く知るための記録だ。
コーデックスはゲームの進捗に応じて蓄積されていき、その圧倒的なテキスト量から別名“Wall of Text”と呼ばれている。
登場人物や歴史、組織、モンスターなど1つ1つの項目に詳細な説明文があり、しっかりと作り込まれている。
それらが積み重なることで重厚な世界観が構成されている訳だ。
本作のストーリーに触れる前に、これからプレイする方のために過去作の時代背景について説明しておこうと思う。
本作は初作“Dragon Age:Origins”から10年後、2作目“Dragon Age Ⅱ”終了後の時代からスタートするため、ストーリーは過去作と密接に繋がっている。
そのため、過去作の時代背景が分かっていないと理解しにくいことも多いのだ。
■“Dragon Age:Origins”と“Dragon Age Ⅱ”の時代背景
Dragon Ageシリーズの舞台となるセダス大陸では、教会が最も有力な宗教組織であり、政治的には教会と貴族が国を支配している。
教会は魔法を危険視しており、魔道士は教会が組織したサークルと呼ばれる自治組織内でのみでしか生活を許されていない。
また、魔道士は教会に属するテンプル騎士団によって厳重に監視されている。
サークルの管理から逃れようとするものは背教者と呼ばれ、テンプル騎士によって容赦なく処罰されたが、しばしばその手法の正当性が問題視され、両者の間では争いが絶えなかった。
騎士団の強権的な姿勢に不満を募らせた魔道士は、騎士団に対して全面戦争を仕掛け、戦火はセダス大陸全土に広がった。
両者の対立が激化するにつれ、騎士団の組織力は衰え、教会の権威も失墜の一途をたどっていった。
本作は、魔道士とテンプル騎士団の戦争を鎮めるために開催された講和会議の場面から始まる。
教会の長である教皇始め、教会、魔道士、テンプル騎士の指導者らが一堂に会した場で謎の大爆発が起こり、主人公以外は死んでしまう。
大爆発とともに突然空に巨大な裂け目が現れ、そこから降りてくる魔物によって世界は再び混乱に陥れられてしまう。
主人公は裂け目を塞ぐ特殊能力に突如目覚め、その力を使って、世界に秩序を取り戻す、というストーリー展開である。
細かくカスタマイズできるが、やはり洋ゲーキャラらしさが
選択できるのは、種族、性別、クラス、顔の外見であり、種族は人間、エルフ、ドワーフ、クナリ族から、クラスは戦士、ローグ、魔道士から選ぶ。
外見は細かな部分までカスタマイズ可能なので、ある程度満足いくキャラクターを作成できるだろう。
ただ、髪型に関してはもっと種類を充実させてほしかった。坊主に数種類も割くくらいであれば、もっと選択肢を増やしてほしいものだ。
■動画:キャラクタークリエイション
“Dragon Age”シリーズならではの要素としては、選択した種族やクラスによってNPCの反応が変化する点にある。
これは、セダス大陸における各種族の社会的な地位によるものである。
人間は多数派で政治力があり、大陸における中心的な種族。エルフは歴史的に抑圧されてきた種族で、奴隷的身分に近い下層階級に属する。
ドワーフは魔法が使うことができず、多くが一生を地下で過ごす変わった種族。クナリは独特な宗教観を持ち、異形な外見からも忌み嫌われている種族である。
また、教会から危険視されている魔道士は人々から恐れられている存在である。
キャラクターの社会的地位を反映させるこのシステムは、ゲーム内の世界にリアリティと深みを持たせている。
Dragon Ageシリーズの伝統 個性的なキャラクター
本作はパーティを組んで戦闘することが基本となるため、途中で様々な仲間が加入していくことになる。
天の裂け目を塞ぐという大義のために集まった仲間たちも、各々で生い立ちも違えば物事に対する考え方も違う。
本作では、仲間1人1人が好感度というバロメーターを持っており、プレイヤーの選択肢に応じて好感度が上下するようになっている。
選択肢を決める上での判断要素は、善悪、宗教的価値観、政治的判断、伝統を重んじるのか、など場面によって様々である。
1つの判断に対して、好印象を抱く者もいれば、悪印象を抱く者もいる場合がほとんどで、選択肢に正解はない。
会話を重ねていくことで生い立ちを語り出し、悩みを相談してくることもある。
さらに仲が深まれば恋愛関係に発展することもある。
一方で、好感度が下がり過ぎるとパーティから離脱し、ストーリーの変化にもつながってくる。
自分の信念を貫くのか、特定の仲間に配慮するのかという悩みも本作を楽しむ上での大切な要素なのである。
また、仲間同士の相性というものもあり、フィールドを探索中に同行する仲間次第で話す内容が変わってくる。
言い合いを始めたり、ふざけ合ったり、時にはあなたはどう思うかと意見を求められたりすることもある。
様々な仲間を連れ出してみると仲間同士の関係が見えて面白いだろう。
Battlefield 4でお馴染みのゲームエンジン“Frostbite 3”
Battlefield 4でお馴染みの最新ゲームエンジン“Frostbite 3”が導入され、ダイナミックで美しいグラフィックを堪能することができる。
“Frostbite 3”は瞬間的な動きや描画が要求されるFPS向けのゲームエンジンという印象が強かったのだが、フィールドの景色をじっくりと楽しむRPGにも向いているのだなと感じた。
風で揺らめく草木や水面の波紋、砂漠においては砂紋も描かれていて微細な部分も良く作り込まれている。
高低差が激しく、見晴らしの良いフィールドがいくつもあり、広い空間を表現できるのはパワフルなゲームエンジンのおかげなのだろう。
■動画:ドラゴンエイジ:インクイジション 『Dragon Age』 の世界
魔法のエフェクトも派手さがあって良い。特にファイア系の魔法の爆発感や炎の揺らめき方にはFrostbiteエンジンらしい描写力を感じられる。
Frostbiteエンジンの特徴の1つといえば、リアルな破壊表現が挙げられる。
本作でも、その特徴を見ることはできるが、十分には活かしきれていないのが残念だ。
例えば、巨大なドラゴンとの戦闘において、巨体によって構築物や樹木がなぎ倒されることはあっても、その範囲は限定的である。
また、キャラクターが吸い寄せられる程に強烈に羽ばたたいても周囲の木々は全く揺れない。
特別な戦闘場面だけでもリアルさを追求してくれてもよかったのではと感じてしまう。
気分をうまく盛り立ててくれるサウンド
音の演出効果が秀逸。音の使い所をわきまえていて、効果的なタイミングで挿入しているので好感が持てる。
環境音、コーラス、オーケストラがうまく融合しており、場の雰囲気に適した音楽が流れるので、気分を盛り上げてくれる。
森の中を探索していれば、基本的には動物や虫の鳴き声、川の流れなど周囲の環境音が流れているが、遺跡を発見すると神秘的な音楽がフェードインしてくるといった感じだ。
聞かせるべきところで聞かせるというメリハリがあって良い。
新コンテンツ“戦略テーブル”で世界の情勢を塗り替えろ
“The Elder Scrolls V: Skyrim”のように完全なオープンワールドではないが、ゾーンごとに区切られたオープンワールドを採用している。
1つ1つのマップが広大で探索するだけでもかなりの時間を要するが、マップ内に様々なクエストが散りばめられているため、1つのマップを攻略するだけでも相当な時間がかかる。
メインクエストをこなしていくことでストーリーが展開していくのだが、ストーリー展開には影響しないサブクエストまで含めるとコンテンツのボリュームは圧倒的な量になる。
ほぼすべてのサブクエストをこなしていたら、クリアするまでに140時間も掛かってしまった。
メインクエストにおいては、その後の展開が大きく変わる選択を迫られる場面がいくつかある。
もう一方の選択をした場合はどうなったのだろうかと感じてしまうところに2周目を楽しめる要素がある訳だ。
一方でサブクエストについては、序盤は熱中して攻略していたものの、あまりに数が多いために後半では作業感が出てしまったことにもったいなさを感じた。
本作からの新コンテンツとして“戦略テーブル”が導入された。
プレイヤーは審問会(Inqusition)という組織の中心となり、各地に現れた裂け目を塞ぐことで混乱したセダス大陸に秩序を取り戻していく。
しかしながら、発足当初の審問会は寄せ集めのメンバーからなる小さな組織であり、教会から異端視されている。
したがって、実績を積むことで審問会の正当性を世間に認めさせていかなければならないのだ。
プレイヤーは大陸各地で生じている問題に対して、戦略テーブル上から対応策を指示し、諸問題を解決することで審問会の影響力を拡大していくのだ。
クエストを進めることで得られる“勢力”というポイントを消費してゾーンを開放すれば、プレイヤーの活動範囲が広がっていく。
審問会の指揮官として世界の情勢を塗り替えていく感覚があって面白い。
カジュアル感が強くなった戦闘システム
本作の戦闘は最大4人で行うパーティ戦である。
プレイヤーは、パーティメンバーのうち1人を操作する。
操作キャラクターは自由に切り替えることができ、プレイヤーが操作するキャラクター以外は、AIで自動的に戦闘する。
各キャラクターには役割があり、防御力の高い戦士がヘイトを稼いで攻撃を引き受け、ローグが毒や罠で弱体化し、魔道士が遠距離から強力な魔法を放つという役割分担になる。
戦闘システムとしては、MMORPGを1人でプレイするというイメージに近い。
Dragon Ageシリーズの伝統でもある“戦術カメラ”は健在である。
本作の戦闘はアクション性よりも戦略性を重視しており、戦略カメラによって戦闘を一時停止させることで、パーティメンバーを直接操作することなく、移動先や攻撃対象をカーソルで指示を出すことができる。
RPGでありながらRTS(リアルタイムストラテジー)の要素も持つ戦闘システムなのである。
■動画:ドラゴンエイジ:インクイジション | ゲームプレイ動画-戦闘システム
戦闘が難しかった初作“Dragon Age:Origins”では多用したシステムだが、本作を難易度ノーマルでプレイした限りにおいては、一部の敵を除いてほとんど利用することなくクリアすることができた。
戦術カメラを利用した戦略的な戦闘を楽しみたいプレイヤーには、難易度ハード以上を選択することをお勧めしたい。
残念であったのが、戦闘時の行動を事前に細かく設定することができた戦略システムが、かなり簡略化されてしまったことだ。
戦略性に富み、緊張感に満ちた戦闘がゴリ押しでも何とかなってしまうようにカジュアル化してしまった。
戦闘がごちゃごちゃしていて慌ただしいというフィードバックから改善されたということのようだ。
確かに過去作よりも戦闘展開がスムーズになっているとも感じたので、一概に改悪とはいい切れないかもしれない。
ただ、概ね優秀に動作するAIだが、遠距離攻撃職が敵の目の前まで頻繁に移動してきてしまう動作だけはあまりにいただけない。
近づいて来ては遠くへ移動させるという操作を繰り返させられてはストレスを感じるだけであって、せっかくの戦闘が台無しなので、是非とも改善してほしい。
シリーズの伝統を引き継ぎながら確実に進化
■GOOD
・重厚な世界観と壮大なストーリー展開は没入感が高い
・豊富な選択肢によって自身で物語を作り上げているロールプレイ感がある
・自由度が高いキャラクタークリエイション
・人間味ある個性的なキャラクターたち
・攻略に100時間以上かる程の豊富なコンテンツ
■BAD
・簡略化された戦闘システム
・専門用語が多く、新規プレイヤーには理解しにくい
・操作性が悪いUI
動画集(ハイドラゴン狩り)
プレイ中に撮影した約90本の動画を公開中
youtube Dragon Age:Inquisition 再生リスト
10匹登場するハイドラゴンの討伐動画を公開中。
■#01 【PC版】Dragon Age:Inquisition フェレルデン・フロストバック戦 戦士Lv11
■#02 【PC版】Dragon Age:Inquisition 北方の狩人戦 戦士Lv14
■#03 【PC版】Dragon Age:Inquisition 深淵のハイドラゴン戦 戦士Lv19
■#04 【PC版】Dragon Age:Inquisition ガモーダン・ストームライダー戦 戦士Lv19
■#05 【PC版】Dragon Age:Inquisition ミストラル戦 戦士Lv21
■#06 【PC版】Dragon Age:Inquisition ヴィンサマー戦 戦士Lv18
■#07 【PC版】Dragon Age:Inquisition サンディハウラー戦 戦士Lv21
■#08 【PC版】Dragon Age:Inquisition ハイパーナル戦 戦士Lv22
■#09【PC版】Dragon Age:Inquisition カルテンザーン戦 戦士Lv22
■#10【PC版】Dragon Age:Inquisition ハイランドラベジャー戦 戦士Lv23
動画集(メインクエストプレイ)
メインクエストに関わる動画を抜粋して公開。
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購入金額
7,600円
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購入日
2014年12月21日
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購入場所
Origin
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