WDのHDD4色展開も定着してきた感があるこの頃。
ベーシックな青、省電力の緑、高性能の黒、そしてこの赤。
元々コンシューマ向けHDDは24時間の連続稼動なんかは想定されておらず、そういう使い方はより高価なエンタープライズ向けモデルが担っていたのだが、ホームサーバーやNASの普及、コンシューマPCの高性能&省電力化で一般家庭や小規模事業者でも長時間フル稼働の使用をされるHDDが少なくない。
そのようなニーズにあわせて投入されたのが4色の中で「NAS向け」とされる赤…WD REDシリーズなのだが、今回登場したのは2.5インチモデル。家庭用NASキットというと、殆どが3.5インチ用で、2.5インチ用は入手自体が難しい。
NAS向けのファームウェアに加えて、保障がちょっと長めの3年(以前の赤や黒にあった5年ではない点に注意)、24時間動作を想定を謳っている点がポイントとなる。サイズや規格はごく普通の2.5インチSATAHDDだ。エンタープライズ向け程ではないが、信頼性を重視したHDDとして手軽に導入できる。
ちなみに3.5インチ版をそのまま小さくしたようなパッケージを持っていてちょっとかわいい。
HDD自体はごくごく普通の2.5インチSATAHDD。SATA3に対応している。回転数は非公開なのでいわゆる可変タイプだろう。
背面基盤は緑。REDだからといって赤い訳ではない。
【ベンチマーク】
まずは基本的なベンチマーク、そして消費電力を確認してみる。ベンチマークは定番のCrystalDiskMark。新品状態で何もデータが無い状態。MSI Z77A-GD55のチップセット内蔵SATAポートに接続して計測。念のためSATA3、SATA2両ポートで計測を行った。
SATAの規格違いで有意な差は見られないので、接続ポートはSATA2で十分だろう。
2.5インチ、それもNAS向け可変回転数という事で正直速度に関してはあまり期待していいなかったのだが、予想以上の快速だ。2.5インチでありながら110MB/sをオーバーするシーケンシャルに目が行くが、それ以上に512Kや4Kでのスコアが健闘している。
単体で置いてあってもよくわからないので手持ちの各種HDDのスコアを参考にみてみよう。条件が近いので消費電力含め一部データは下記WD Black 4TBレビュー時のものを流用している。
上段は現行、それに順ずる3.5インチHDDとしてWD Black 4TB、1TBプラッタ採用のHGST 7K1000.Dとその系列ともいえる東芝の2TBモデルDT01ACA200 。
下段は2009年製旧型のWD Green1.5TB WD15EADS、そして2010年製のHGST製2.5インチHDD 5K500.B、オマケで旧型のエンタープライズ向けSAS 2.5inch HDD Seagate ST973451SS(15000rpm)のスコア。
旧型3.5インチドライブのスコアを超える優秀な成績なのが判る。シーケンシャルはともかく、ランダム周りは上段の現行型3.5インチに迫っている程だ。あくまで信頼性と長時間稼動を重視したモデルだが、速度に関しても十分といえる。
…というか一部スコアがST973451SS超えてるぞ。
【消費電力計測】
そして消費電力。こちらは接続は内蔵SATAだが、給電のみ外部ACアダプタに接続した状態で、CDMのシーケンシャルリード/ライト動作中の値をワットモニターで計測したもの。
ご覧の通り2.5インチドライブらしく、アイドル時は旧型SSDよりも消費電力が低い程だ。ACアダプタ自体が1W強を消費するので、実際のアイドル消費電力は1W未満かもしれない。リードライト時も1TBという容量と先ほどのベンチ結果を鑑みれば優秀で、長時間の読み書き動作も安心だ。
3.5インチHDDと比べたときの消費電力差は歴然。長時間稼動のPCやNASの場合この数Wが無視できないし、2.5インチHDDを2台積んでもまだ3.5インチ1台よりアイドルは低い程。
当然消費電力が低い分発熱も低く、バラック状態(冷却ファン無し)で300GB程のデータを入れ、デフラグを1時間ほどかけてみたが、40度代に収まっている。冷却性の劣る小型HDDケースやノートPCでの運用も耐えてくれるだろ。WD Black 3.5インチ4TBはその高性能・大容量の代わりに発熱がそれなりにあったが、その心配はまず無い。
動作音についても(計測器がないのであくまで主観だが)、優秀。
HGST Travelstar 5K500.Bと同じ場所において交互に電源を入れてみたが、強いて言えばTravelstarが高めのモーター音に対して、WD Red 2.5インチは少し音域が低い。微かにWD Redのほうがモーター音は大きいのだが、音域が極端に高かったり低かったりしないので、耳障りではない。シーク音は同等か微かにWD Redの方が静か。まあ要するに2台の音に大差はなく、今回ベンチに使用したその他の3.5インチHDDと比べれば明らかに静かだ。
【使用例1】
という訳で、自作PCのバックアップドライブとしてこのHDDを使ってみよう。
このPCは現在システム用のSSD(C)、そして作業データが入る3.5インチ1TBHDD(D)。そして更にそのデータのミラー、一部「世代バックアップ」を行う3.5インチ1TBHDD(E)の合計3台だ。
直接操作するのはSSD(C)と作業データが入る1台目の3.5インチHDD(D)のみで、2台目のバックアップ用HDD(E)は常駐ソフト等による管理なので基本は触らない。しかしこの「世代バックアップ」がポイントで、あるデータを上書きした時に古いバージョンのデータを残すというもの。
説明するのが面倒なので 以前バックアップソフトのレビューに使った図を持ってきた。というかまさにそのソフトを使う為のドライブになるのだが。
このように次々とデータが世代として蓄積されていくので、他のバックアップも含めるとデータの書き込み回数については3台のドライブの中で一番多い。実は既に一度バックアップ用HDDは他2台より先にSMARTエラーを出していて、交換歴がある。
この用途上極端な速度は必要ないが、繰り返しの書き込みに耐える耐久性、そして長時間の読み書きが続いても安心な低発熱なものがいい。
そして幸い古いデータは外部に出すので1TBで容量は十分。まさにこのWD 2.5インチREDにピッタリだ。
元々3.5インチドライブを搭載・冷却する為に使っていたシステムなので、マウンタさえ用意すれば冷却はむしろ冬場の冷やしすぎに注意するくらいだ。
また、今までメーカーの違う3.5インチドライブを2台搭載していたので(ケースがショボいのもあるが)共振による低音を発していた。しかし小さく低騒音・低振動な2.5インチHDDならほぼ3.5インチHDD1台の音にかき消されるし、シーク音も小さいのでバックアップのための常時書き込みも気にならない。
消費電力も計測の通り3.5インチドライブに対しては明確に低いので、バックアップ用ドライブとして「静音性」「低発熱」「低消費電力」「信頼性」と1TBという容量に収まるのならメリットは多い。
確かに値段は少々高くなる(他の2.5インチ1TBHDDに比べて1500円アップ、3.5インチ1TBモデルなら更に差がある)のだが、3年保障と静音・低消費を得られるのだから用途がかみ合えば決して高くないハズだ。
【使用例2】
同じくデスクトップ自作PCでの2.5インチドライブの用途としては、先のPCで言うデータ用ドライブとしての使い方。こちらはゲーム用のPCでSSDとHDDの2台構成(EはRAM DISK)
ランダム系の速度は3.5インチドライブに対して十分食いついているので、実際体感速度も悪くない。試しにこのPCのDドライブとして装着し、MMORPG(TERA)のクライアントをインストールしてプレイしてみたが3.5インチドライブに対して極端に見劣りする事はなく、ヘタな旧型3.5インチドライブよりもオブジェクト表示は速く快適なくらいだ。このあたりはベンチ通りの結果といえる。
低容量のSSDをシステムドライブに、このWDRed 2.5インチをデータドライブにすれば、超静音かつ、3.5インチHDD1台よりも消費電力が低いシステムを構築できる。当然HDDにSSDのバックアップを入れれば信頼性もアップする。発熱も低いので冷却周りも大人しく出来る。
但し自作PCに組み込むときの注意点はマウント方法。3.5インチ→2.5インチ変換マウンタはSSD向けを想定しているものが多いので、底面の基盤側を完全にふさいでしまうものも多い。いくら低発熱とはいえ、基盤側をみっちり塞いでしまうのはよろしくない。サイドから押さえ込むタイプのマウンタを用意するのがいいだろう。
また、このようなリムーバブルタイプのベイアクセサリを使うのもアリだ。このベイアクセサリ、非常にチープな作りなのだが、その分隙間が多く、このマウンタ部自体が吸気口となり、負圧ケースの場合ここから空気が流れてHDDはしっかり冷却される。
とにかく「NAS用と謳われているから」「2.5インチだから」といって自作PCに使わないのは勿体無い。2.5インチHDDだからこそのメリットというのは意外と多く、更にこのREDは耐久性の面でも期待が持てる。速度に関しても十分だ。
「高信頼かつ低騒音&低消費なHDDが欲しい」時、自作PC用パーツとしてこのWD RED 2.5インチを検討してみるのも面白いんじゃないでしょうか。
カーリーさん
2013/09/23
cybercatさん
2013/09/23
次のPCのデータディスクは居眠り癖のある緑
下小川さん
2013/09/23
2.5インチREDは純粋にどんなものなのか興味があったのと、世代バックアップにぴったりかなーと思いまして。
はっきりいって2.5インチなので速度にはあまり期待していなかったのですが、いい意味で期待を裏切ってくれました。今のところスリープとかの妙な挙動もないので安定しています。まだ4日しか使っていないので肝心の耐久性に関しては答えが出る気がしない…というか出たときには恐らく型落ちになっているであろうジレンマですが、安定性に関しては今のところ好印象ですね。
もちろん何かあったら追記するつもりですが、このまま終わってしまいそうな安定っぷり。
白輝望さん
2013/09/24
ちょっと質問なんですが、
>「低発熱」「低消費電力」
ここまではデータとして表れてると思うんです。
>「静音性」
これは個人差、ケースの共振とかあるので難しいですが、耳で判断可能ですし、やろうと思えばdbの計測器ありますし。
>「信頼性」
これなんですけど、実際どの程度、もっと言えば価格分違うのかって何か調べる方法ってあるんでしょうか?
WDのHDDは赤、黒、青、緑ってあると思うんですけど、一般的な序列は
黒>赤>緑≧青
でしょうか。メーカーとしては用途向けに分けているのかもしれませんけど、使っているパーツもグレードが上がっていると考えてOKだとするとどのあたりのパーツが一番差が出るんでしょうか。
(もちろん長期間耐久試験やって!ということではないのでご安心をw)
下小川さん
2013/09/24
ぶっちゃけて言えば信頼性=保障期間じゃないかなと。
保障期間が長い製品=故障したらメーカー側も損失になる→出荷時のチェックや品質を高くするってとこでしょうか。本文中に書き忘れましたがもし問題が出た場合電話サポートを受け付けている点も自信の表れでしょう。
恐らく「ハズレ」の確率も少ないはずです。
逆に価格差を考えると、使用部品に極端な差は無いのではないかと推測します。
また、黒に関しては速度を、緑に関しては省電力化に特化したチューンを行っていると思いますので、NASやRAIDで相性や互換の優先順位は低いハズです。
、「信頼性」の言い方を変えれば「互換性」を重視した設計になっている…かもしれません。
結局の所、自分の環境で問題なく動くか、保障期間がどれくらいあるのか、そしてメーカーがどの程度の事を謳っているかという辺りから推測するしか私には手段がありません。申し訳ないです。
白輝望さん
2013/09/24
私も部品に関しては同じだろうなぁと思ってましたので、共感できます。
私は青と緑しか使ったことがないので少し気になってました。
ありがとうございます!