レビューメディア「ジグソー」

AP15&モノクロームのシンプルな関係

 3月15日にzigsow運営事務局から当選のメッセージが届き、手元にAP15が届いたのはその二日後のことでした。

このたびレビューの機会を与えていただいた関係者各位、ありがとうございます。


私が写真撮影なるものを覚えだしたのは、中学1年生の時でした。もう25年以上も前・・(トオイメ

私にとって写真は楽しく撮って、楽しく見るモノというスタンスで、一種のライフワークのようなモノになってきました。特にデジタル化し、ストレージも安くなった頃から顕著になってきました。


今では携帯電話、スマートフォンには「標準装備」の機能として搭載されています。いつも持ち歩くガジェットに撮影機能が付いているから、生活に密着した場で手軽に撮影ができます。
しかし、撮影専用となるデジタルカメラは、「撮影することを目的に持ち運ぶ」わけなので、「ついでに写真が撮れる」というオマケ的なガジェットで撮るのとはまったくスタンスが異なります。
写ればいいわけではないので、少々辛口に・正直にレビューしていきます。

 

■外観と感触
 文字が多すぎてゴチャゴチャとしているな、というのが第一印象。

レンズリングには4項目の文字、グリップ上下にはレンズ倍率など特徴の文字。ボディの右(正面から見て)には画素数。正直、こんなに文字が多いとシンプルさが失われ、安っぽい印象しか与えません。
しかし色使いはいい感じです。マットブラックを中心に、上下に落ち着いた品位のシルバー、シャッターボタンに鮮やかなレッド。ペンタプリズムを模したと思われるストロボ収納部にあるAGFAPHOTOのロゴといいマッチングです。
 パワーボタンは同心円の表面処理がされていて質感が高いです。ダイヤルの操作感は軽め、きっちりとしたクリック感があります。シャッターボタンは半押し・全押しの感覚がしっかり伝わります。人によっては重めに感じそうですが、私には丁度いいクリック感でした。


思ったよりボディの質感は良さげ。チープさはなく、ギリギリ価格相応なレベルに仕上がっています。

 

■革ケース&ストラップ
 装着に手間取ります。ボディを納めてネジで締めようとしても位置が微妙に合いません。ボディ側の雌ねじは樹脂製、ケース側の雄ねじは金属製なのでこれは痛い。けっこうゴリゴリとやってしまいました。
 装着しようとがんばっているとうっかり電源ボタンを押してしまい、レンズがみゅーんと出てくる。取り付けてから電池を入れよう、と思ったら構造上それができない。絶句。つまり、メディアの交換もできない。なんとサイドのカバーも触れられなくなるので、充電もできない。

質感やデザインがいいのにこれは致命的で、ものすごくもったいない気がします。取り外ししやすければ大した問題では無いのですが、これは取り付けが難しい。ジレンマ。
私個人の感想としてはこのケースは使いません。もしオプションであるとして別購入したとしたら、相当に後悔するレベルです(関係者各位、ごめんなさい、正直に書いています)


 さて一方で、デザインは昔のカメラを彷彿させ好感が持てます。ブラックレザーにレッドステッチはアクセントが効いて実にいい。なおさらもったいない気分・・

ストラップも同じ仕様で作られており、肩に触れる面は滑り止めが施されています(私としては滑る素材のほうが嬉しい)

 

■電源投入→起動
起動は意外と速い!・・と思ったのですが、下記のような速度でした。


 1.電源ボタン押す→液晶画面にロゴ表示→レンズからの画像が映し出される=約3秒
 2.1から実際の動作ができるまでの時間=約6.5秒


つまり、最ワイド側の映像が液晶表示されても、ズーミングやレリーズ(撮影)ができるまで、さらに3.5秒待たなくてはなりません。これは起動後にダイヤルでモード変更したときも、これほどではないにせよワンタイミング待たされます。


この仕様がこのカメラで最も残念なものです。

「撮りたい」と感じて写し止められるまでのレスポンスが悪すぎて、正直ストレスになりました。現にシャッターチャンスを数回逃し、メインのカメラも持ってこればよかった、と悔やんだことも。
電源を入れたまま移動しようにも沈胴式レンズだけに気になる。もはや諦めの境地でゆっくり撮るスタンスだと割り切って臨むしかありません。


ただこれは私個人の感覚です。ともかく私は撮影したい→撮れる状態にするまでのタイムラグが短いカメラをチョイスする傾向にあるので・・ 起動時間に6.5秒待てる人には、なんの問題もありません。

 ※私のメインカメラはNEX-7、サブ機はNEX-5で使用期間は2年超


■ズーミング操作
 ガーッと望遠にガーッと広角に、という使い方なら問題の無い速度。しかしわずかに動かすような微調整の操作ができない。できるのかもしれませんが、そうならば操作が難しい。
特に動画撮影で滑らかにズーミングは望めません。また少しずつ望遠側にズーム操作をしていると、時折最大望遠までズーミングしてしまうことも。これは仕様なのかどうか・・説明書には「ゆっくりズームする」「微調整」というような項目はありませんでした。
 超望遠域では手ぶれ補正が追いつかないので撮影者側が工夫する必要があります。日中の晴れならなんとか手持ちでも撮れそうですが、おそらく等倍画像見れば手ぶれしているかと思われます。
一気に15倍(35mm版換算420mm)まで行くのは面白く、手軽に望遠の圧縮効果を楽しめるのはいいですね。これもまた割り切ればいいことかも。

※ズーミング。左上より「最広角(29mm)」「約5倍(154mm)」「最大望遠(440mm)」、モノクロモード。()内の数値はEXIF記録の35mm版換算焦点距離

 

■ピント
 速度、精度ともに遅いと明確に感じるレベルです。最近の同価格帯のカメラの実際を知らないので何とも言えませんが、iPhone4Sのほうが高いレベルに感じました。
通常もマクロも高確率で後ピン。5~6年前のコンパクトカメラのようなレベルです。マクロモードで道ばたの花を撮ろうとしたら予想以上に苦戦。
 約20カットの全部が後ピン・・ しかし、ほぼ100%後ピンなら、ピントを固定してからわずかに離れればいいわけで、3カットほど撮れば、およそピントが合う画像が得られました(手のひらでピントを合わせ、というやり方も試しましたが露出やホワイトバランスが崩れました)

創意工夫で何とかなりそうですが、初心者のユーザーには厳しい仕様と言えます。

 

■モードやメニュー構成
 少々統一感に欠けた構成で、モノクロHDRは撮れないものとばかり・・(モノクロモードで背面の「i」ボタンでチョイス可能です)
またモノクロモードには露出補正が無く、マニュアル撮影になるようです。レリーズ前のプレビューでも撮影後の予測ができず、一つの被写体に最低でも2カット撮ればベストカットが撮れます。
絞りやシャッター速度の変更は背面のダイヤルではなく、シャッターボタン右の露出補正ボタンで機能を呼び出すというのには違和感が。まあ覚えてしまえばいいだけのことですね。

 

 説明書にはお触り程度の操作方法しか記載されていないので、とにかくトライアンドエラーで感覚を掴まなくてはなりません。この点は初心者には厳しい作業かもしれませんが、「使いこなす」という愉しみとすればまたよし。

 


ともかく、なかなかに苦戦させるカメラだぞ、と1回目の撮影で思いました。


ならば考え方を、視点を変えてみる。

そもそも、いつも自分が撮るスタイルで考えるからいけないのだと、もっと肩の力を抜いて2回目以降は撮影してみました。創意工夫、発想の転換は大事。

 

 ・起動が遅いのは、せかせか撮らなければいい(撮りたそうな感じ~、という緩さで電源を入れればいい)

 ・ピントが合いにくいのなら常に絞ればいい(モノクロはコントラスト向上にも一役)
 ・色味がどうの、と考えなくていいから常にモノクロモードに


・・という割り切りで、引き続き撮影を試みました。

あ、電池が切れかかったらUSBケーブルで外部バッテリに接続すれば充電しながら撮れる、というのは良いですね。このコネクタが左手側にあればなお良かったです。

 

春のうららかな日中だったからか、緩い気分で散策しながらモノクロームで切り取るというのも楽しいものでした。


革ケースに装着し、バッテリ容量をフィルム残量に見立て、モノクロのみで撮る。そんなスタンスも面白いかもしれません。

あえて無難なカメラをチョイスせず、自分なりの使い方を見つけ、使いこなしていく。国産車に乗らず、フォルクスワーゲンに乗っちゃう、そんな感覚のカメラなのかもしれません。

 


■行った設定

 ・測光:中央部重点
 ・画像サイズ:12M
 ・手ぶれ補正:オン
 ・コンティニュアスAF:オフ
 ・画質:標準
 ・AF補助光、デジタルズーム、日付写し込み:オフ
 ・レビュー:1秒
 ・操作音:オフ
 ・省電力:自動
 ・Eye-Fi:オン
  ※モノクロ撮影時は常に絞り込み(Fの値を大きく)、その後シャッター速度で微調整

 

ストレージには、Eye-Fiを使用しました


■AP15でのモノクロ作例


地元での散策時にAP15を持ち出し、気ままに撮ってみました。また、先日三重県の御在所に登山した際に持ち出して撮ってみました。

 

 ・サムネイル(大)=元データ=4320x2880

 ・サムネイル(小)シグネチャ付=自分好みにレタッチ=1280x853

【】内は、撮影日、撮影場所、35mm版焦点距離*、絞り(f/)、シャッター速度、ISO感度

 *=EXIF記録の35mm版換算焦点距離

 

1.ある神社の境内で見かけた猫

 

【2013年03月18日、愛知県津島市内、41mm、f/10.7、1/125、ISO361】

 

 

2.天王川公園にて

 

【2013年03月18日、愛知県津島市内・天王川公園、67mm、f/11.5、1/161、ISO357】

 

 ■AP15撮影動画1:津島市の天王川公園にて撮影。ズーミングに弱いですね・・

しかもズームモータの音まで拾ってしまいます。


 

3.糀屋の軒先にて

 

 

【2013年03月18日、愛知県津島市内、56mm、f/4.8、1/161、ISO194】

 

 

4.立派な屋敷の壁を見上げて

 

 【2013年03月18日、愛知県津島市内、48mm、f/11.1、1/161、ISO167】

 

 

5.路地裏で見た黒壁

 

 

 【2013年03月18日、愛知県津島市内、48mm、f/11.1、1/161、ISO323】

 

 

6.打ちっ放し肌のビル

 

 

 【2013年03月18日、愛知県津島市内、48mm、f/11.1、1/161、ISO100】

 

 

 7.鉄道高架の下にて

 

 

 【2013年03月18日、愛知県愛西市内、93mm、f/11.8、1/161、ISO119】

 

 

 8.珈琲タイムの一コマ

 

 

 【2013年03月18日、愛知県愛西市「紅屋珈琲」にて、29mm、f/3.9、1/61、ISO400】

 

 

9.店内をノーファインダーで

 

 

 

  【2013年03月18日、愛知県愛西市「紅屋珈琲」にて、29mm、f/3.9、1/61、ISO400】

 

 

 10.単線鉄道線路

 

  【2013年03月18日、愛知県愛西市、130mm、f/12、1/201、ISO453】

 

 

11.門構えと映る影

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市「善定坊」にて、29mm、f/9.3、1/600、ISO400】

 

■AP15撮影動画2

 

 

12.木漏れ日と鐘楼

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市「善定坊」にて、29mm、f/3.9、1/400、ISO100】

 

 

13.逆光のカーブミラー

 

  

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、29mm、f/9.3、1/500、ISO100】

 

 

14.階段に落ちる影

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、48mm、f/11.1、1/500、ISO400】

 

 

15.路地裏とボール

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、41mm、f/10.7、1/320、ISO217】

 

 

16.連なる鉄塔

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、299mm、f/12、1/1000、ISO321】

 

 

17.遠近それぞれの表情

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、182mm、f/12.1、1/600、ISO296】

 

 

18.ドコモ電波塔

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、41mm、f/10.7、1/600、ISO208】

 

 

19.田んぼの給水栓

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、110mm、f/11.9、1/1000、ISO800】

 

 

20.工場の屋根

 

 

【2013年03月21日、愛知県愛西市内、299mm、f/12、1/800、ISO353】

 

 

21.岩場からの絶景


 

【2013年03月23日、三重県三重郡、29mm、f/3.9、1/400、ISO100】

 

 

22.職人技の結晶、白鉄塔

 

【2013年03月23日、三重県三重郡、154mm、f/5.1、1/400、ISO230】

 ※御在所ロープウェイ URL http://www.gozaisho.co.jp/

 

■AP15撮影動画3:ズーミング中は音声が途切れるようですね。

 

 

23.ロープウェイ鉄塔を上から臨む

 

 

【2013年03月23日、三重県三重郡、79mm、f/11.7、1/400、ISO400】

 

 

24.鉄塔を行き交う

 

 

【2013年03月23日、三重県三重郡、440mm、f/13.3、1/400、ISO800】

 


■HDR作例 

 ※HDR撮影時は撮影サイズが3264x2448になるもよう(作例1は通常撮影を忘れてしまったので失敗したHDR画像を例として掲載します)

 ※左:通常撮影、右:HDR撮影


25.モノクロHDR作例1

  

 

26.モノクロHDR作例2

 

  


 

■カラー撮影作例

 

27.猫シリーズ

 

 

 

28.花シリーズ

  

 ピント合わせが難しい。左上の画像は、指先でピント・露出を仮固定してからの撮影

 

 29.御在所登山で見た風景シリーズ

  

 

 30.光と影シリーズ

   

  ※上2枚はHDR撮影

 

31.鉄塔と夕焼けシリーズ

 


■色分解作例

 

32.散策で見かけた花たち

 

 ※すべて「色分解(黄色)」モード

 

32.のレタッチ版

 



モノクロモードで300カットほど撮影して気に入ったものをアップしてみました。

ややアンダー気味、絞り気味にしたほうが「鮮やかなモノクローム」を体現できそうです。また、順光でも逆光でも無い半順光くらいがいい感じです。

 

あとでモノクロ化するのではなく、ぜひ最初からモノクロモードで撮ってみて下さい。

PCなどでコントラスト調整などレタッチを行うことで、狙った表現にできます。モノクロ素材を撮る、という趣味性の高い撮影を愉しむことができるカメラ、それがAGFAPHOTO「AP15」なのかもしれません。

コメント (2)

  • frogさん

    2013/03/26

    なかなかストレートなレビューですね。爽快爽快。

    充電しながら撮影できるんですね。知りませんでした。私は付属のUSBケーブルが短かったのでもう少し長いものを使ったのですが、充電中にPower ONするとハングアップしたようになりうんともすんとも動かないのでできないのだと思ってました。

    今付属のケーブルで試したら充電中でも動作することを確認しました。電源系が結構シビアなのかケーブルの相性なのかはまだ何ともいえませんけど。

    勉強になりました。
  • B.PHANTOMさん

    2013/03/26

    >frogさん
    結構期待してしまったというのもありまして・・
    モノクロモード、露出がキマるといい描写をするのですが、なかなかに難しいですね。

    電源ケーブル、私の場合たまたまデスクにあったのを持ち出して、出先で充電しながら撮ってみたらできたしだいです。相性があるのかもしれませんね~!

    モノクロモードでさらに撮ってみようかと思います。

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