■Ultrabook最大の悩みはモニターの解像度
モバイルに最適なUltrabookは軽くて持ち運びが出来て便利ですが、デスクトップに比べると液晶のサイズではどしても劣ってしまいます。
多くのUltrabookは11~13インチ、1366×768の液晶ディスプレイでしかなく、ウィンドウを切り替えての作業が前提となります。
ディスプレイに表示可能な情報量を増やすにはいくつか方法がありますが、Ultrabookに最適なのは、外付けモニターを使用したデュアルモニター構成でしょう。
小さいディスプレイであっても、デュアルモニターはとても便利です。
ExcelやPowerPointを2つ同時に開いて編集したり(※)、片方でDreamWeaverでhtmlのソースを編集しつつ他方のモニターでプレビューするなど、モニターが1つ増えるだけで、利便性は激増します。
※PowerPointの同時起動について
PowerPointはそのままだと1つのウィンドウに複数の子ウィンドウが展開されてしまいますが、別ユーザーの権限でPowerPointを実行すると、複数のPowerPointを同時に起動することが可能です。
自宅であれば、デスクトップ用のモニターを使って簡単にデュアルモニター環境を構築可能ですが、外出先でのデュアルモニターはとてもハードルが高いのが実情です。
ちょっと前に、USB接続のサブディスプレイが流行りましたが、これらはUSB2.0を介して情報のやりとりを行っていたため極めて遅く、かつ高解像度化ができない(さらに遅くなってしまう)という問題を抱えていたため、インチサイズの小さい製品しか登場しておらず、簡単な情報確認用に使うのであればいいのですが、仕事でガンガン使うにはちょっと非力です。
かといって、かさばるモニターを持ち歩くわけにもいきません。
そんな中登場したのが、Gechic On-Lap 1301(以下On-Lap 1301)です。
On-Lapの素晴らしいところは、給電のみUSBで行い、信号は本体の外付けディスプレイ用コネクタから入力する点。
これにより、ACアダプタ不要で持ち運び可能なディスプレイであり、かつ、ノートパソコンのビデオチップによる高速描画が可能となります。
素晴らしくニッチな製品ですが、その発想はとてもユニーク。
では、早速商品をみていくことにします。
■各パーツ詳細
On-Lap 1301の外箱は小さめのノートPCの箱といったサイズで、手で持ってもかなり軽く感じます。
On-Lap 1301は13インチ液晶を採用し、解像度もUltrabookと同じ1366×768ドットですから、大きさもほぼUltrabookと変わりません。
開封して中身を確かめてみます。
付属品はノートパソコンにOn-Lap 1301を固定するための吸盤と、吸盤固定用のシールが各4つ、HDMIとDsubのケーブルが各1本、ケーブルを束ねるためのパーツ一式となります。
不織布のキャリングケースも付属しますが、とても薄いため、梱包時の保護用と考えた方が良さそうです。
On-Lap 1301本体の重さは862gでした。
カタログスペックの865gとほぼどんぴしゃですが、ケーブルを含まない重量なので注意です。
U300sは1.33Kgですので、両方合わせると約2.2kg。
Folio13は1.5kgですので、両方合わせると約2.4kg弱。
持ち歩くには、意を決して…までは不要ですが、それなりの重量になってしまいます。
また、厚みもUltrabookより厚いため、実質ノートパソコンを2台持ち歩く感じです。
普段から気軽に持ち歩くにはちょっとヘヴィですね。
On-Lap 1301の固定方法は、まずOn-Lap 1301に吸盤をネジで留め、つぎにノートパソコンの液晶の背面にむぎゅっと押しつけて固定します。
ノートパソコン側のパネルがヘアライン加工されているような製品の場合、吸盤がくっつきにくい可能性があり、On-Lap 1301が落下してしまいます。
このような場合、ノートパソコンのパネルに貼り付けるクリアーのシートが付属しますので、これをぺたっと貼り付けることで、吸盤のはがれを防止します。
接続ケーブルはHDMI/DVI用のものと、Dsub用のものの2本が付属します。
本体にケーブルを格納するためのポケットがあるのですが、ディスプレイケーブルは格納できませんので注意が必要です。
ケーブルはOn-Lap 1301側のコネクタが特殊な形状をしているため、専用品となります。
持ち歩く際は、ケーブルをなくさないように注意が必要です。
詳しくは後ほど検証しますが、HDMI端子はL字型のコネクタのため、使用する環境を選びます。
また、DVI端子のノートPCに接続する場合には、DVI→HDMI変換アダプタが必要となります。
本体のフレーム部分にあるパネルをスライドすると、USBコネクタが姿を現します。
このUSBアダプタは給電のみに使用するためのもので、別途ディスプレイケーブルを繋がないと、なにも映りません。
どうせならビデオケーブルも格納出来るようにするか、あるいはこのスペースを無くしてもっとスリムにして欲しかったところです。
ケーブルを格納するポケット?にはケーブルを逃がすための切れ目があり、格納スペースに蓋をした状態でも、ケーブルを外に引き出すことが可能です。
ケーブルは下および右側の2方向から引き出すことが可能で、置き方により選択できます。
ただ、ケーブルが結構短いので、あまり使い勝手はよろしくありません。
USBケーブルが格納されている場所の蓋を外すと、ディスプレイケーブルを接続するための端子が姿を現します。
DsubとHDMIケーブルでそれぞれ接続するコネクタが違いますので、注意が必要です。
もっとも、コネクタの曲がる向きが違うため、間違ったコネクタに装着はできません。
本体の右側にはOSD操作用のボタンを示すアイコンが並んでいます。
見た目はタッチパネルのような感じなのです…が、実はこれ、ボタンが裏側にあり、表からは操作できません。
裏面のかなり離れた位置にボタンがあるため、慣れるまでは思いっきり違うボタンを押してしまうことがしばしあり、操作感は良くありません。
裏側のボタンです。
表とかなり離れた場所にあるため、手探りで探しつつ、実際にボタンを押してみてどのボタンか確認するという使い方になります。
側面に配置するとか、タッチパネルにするとか、もう少し頑張って欲しかったところです。
■実際に使用してみる!
それでは、実際にUltrabookに装着して、使ってみることにします。
使用するUltrabookは、
・Lenovo U300s
・HP Folio13
の2台を使用しました。
※Lenovo U300sは故障修理のため、途中からFolio13での検証となります。ご了承ください。
■Lenovo U300sに装着
吸盤をOn-Lap 1301に装着し、U300sに載せてみました。
On-Lap 1301も13インチの液晶ですので、サイズはほぼ同一です。
ただ、ケーブルの格納部分が出っ張っているため、縦に関してはU300sよりはみ出してしまっています。
厚さも倍以上になってしまっているため、このままでの持ち運びはかなり厳しそうです。
接続で一番困ったのが、コネクタの向きです。
On-Lap 1301のHDMIケーブルは手前方向にケーブルが向くため、右側面にHDMI端子があるノートパソコンの場合、ぐるっと逆方向にケーブルを曲げる必要があります。
さらに困ったことに、U300sはHDMI端子の手前にUSB3.0コネクタがあるため、HDMIケーブルを接続するとケーブルがUSB端子を塞いでしまい、使用不可能となります。
このため、給電用のUSBケーブルは反対側のUSB端子に接続する必要があるのですが、これがかなり距離があるため、届きませんでした。
U300sでOn-Lap 1301を使う場合、USB延長ケーブルまたはUSBハブが必須となります。
実際にU300sに付けてみましたが、本体とまったく同じ解像度、同じサイズということもあって、違和感がありません。
ただし、ちょっと気になるのはU300s側の耐久性。
14.8mmという極めて薄いボディを実現するため、液晶パネルも極めて薄くなっています。
そこに800gを超えるモニターを貼り付けることになるので、かなりぐらぐらします。
垂直に立てているときはまだいいのですが、斜めにすると心理的によくありません。
LED液晶は薄いこともあって、Ultrabookの液晶パネルに貼り付けて使用するのは、ちょっと怖い感じがします。
液晶パネルの視野角ですが、左右方向については思ったほど悪くはありません。
U300sよりも少しシビアかな?という感じですが、使う際にちょっと内側にモニターを向ければ解決するくらいの差ですから、実用上問題はないと思います。
角度が大きくなるとかなり映りが悪くなりますが、一人で使用する場合には問題は感じませんでした。
横方向よりも問題なのが、上下方向の視野角の狭さです。
上下方向から見た場合、色の反転などが生じてしまっています。
これが、後々問題になってきます。
■HP Folio13に装着
次に、Folio13に装着してみました。
こちらもU300sと同じサイズ、解像度のUltrabookですので、本体のサイズもほぼ同一です。
On-Lap 1301の方が若干はみ出してしまっています。
U300sで問題になったケーブルの向きですが、Folio13では左側にHDMI端子があるため、問題になりませんでした。
給電用のUSBも問題無く接続でき、スッキリした印象です。
Folio13は液晶パネルのヒンジもしっかりしていることもあり、On-Lap 1301との相性は良い感じです。
U300sに比べ、Folio13は液晶のヒンジがしっかりしているため、本体の液晶パネルを斜めに方向けても問題ありません。
(U300sも方向けて使用できますが、キーを打つたびにモニターが震えてしまい、心理的に良くありませんでした)
しかし、ここで問題になるのは、On-Lap 1301が本体側の液晶パネルに対して、1軸でしか回転できないため、本体の液晶パネルを方向けると、On-Lap 1301の角度が微妙になってしまう点。
右側のOn-Lap 1301が斜めになっているのが解りますでしょうか。
モニターの水平が斜めになっているのはどうも気になってしまいます。
On-Lap 1301を装着した場合は、モニターを垂直にして使った方がよさそうですが、そうすると本体の液晶が見づらくなってしまいます。
■最適な使用法を探す
そこでお勧めなのが、本体のスタンドを利用した縦モード。
768×1366の解像度の液晶ディスプレイとして使用可能です。
Webサイトを表示するには幅が狭いですが、縦長の威力を発揮して、ずらーっと下まで表示可能です。
本体のスタンドを使えるので、安定が良いのも良いところ。
ただし、ケーブルの長さの関係で、ノートパソコンのディスプレイ端子がある側にしか設置出来ません。
この縦モードですが、欠点もいくつかあります。
致命的なのが占有スペースと、上下方向の視野角の狭さ。
占有スペースですが、上から見てこれだけの面積を専有します。
モバイル用途のモニターですが、外出先でこれだけの面積を取れることも少なく、あまり実用的ではありません。
もう一つの致命的な問題が、縦方向の視野角の狭さ。
左右方向は全体的に白っぽくなるだけでまだ良いのですが、上下方向は黒い部分の色反転が発生してしまいます。
縦モードで設置すると、左右の視野角がとても狭くなり、しかも暗部が反転するので設置はかなりシビアです。
上記の写真で、馬の体部分が完全に反転してしまっているのが解るでしょうか?
縦モードでの使用はいくつか欠点もあるため、他の方法を模索しているときに発見したのが、このブックエンド。
縦方向では使いづらく、Ultrabookの背にくっつけるのは難しいとなると、なにか違う方法で横方向で使う必要があります。
というわけで、このブックエンドを使って設置してみました。
ブックエンドの手前に出ている部分に、On-Lap 1301を固定する吸盤をぺたっと貼り付けます。
次に、On-Lap 1301をブックエンドに立てかければ、簡易スタンドの完成。
吸盤の位置を調整すればチルトの角度を調整出来ますので、結構便利です。
ブックエンドも大きめのものなので、安定感抜群です。
ただしこのブックエンド、一つ問題があるのはモバイルには適さないこと。
これだけ大きなものは持ち運び出来ません。
というわけで、別のものが使えないかと探して行き着いたのが、皿を飾るための台。
これにOn-Lap 1301を載せるわけです。
購入したスタンドが小型のものだったので安定は思ったより悪かったですが、どうにか固定出来ました。
皿と違ってOn-Lap 1301は底面が水平のため、そのまま載せたのではスタンドが閉じてしまい、すぐ倒れてしまいます。
そこで、余っていたステンレスの棒を適当な大きさにカットして、つっかえ棒にしてみました。
これなら鞄に入れて持ち運びも出来ますし、すぐに折りたためるスタンドとして使用可能。
モバイル用途ならこちらがお勧めです。
■その他
On-Lap 1301の残念な点の1つが、造形が甘いこと。
横から撮影したカットですが、USBケーブルの格納部がかなり歪んでいるのが解ります。
おそらく金型が悪いのと、構造的な問題のダブルパンチで歪みが発生していると思われます。
ここが歪んでいるため、蓋も装着がスムーズでは無く、しょっちゅう開閉していると蓋に付いているプラスチックの爪が折れてしまうような気がします。
ここは改善して欲しい点ですね。
■縦モードで使用できない場合
Folio13で縦モードを試そうとした際に、画面のプロパティを開いてもディスプレイの回転項目がありませんでした。
intelのドライバ側のプロパティを開いたりと試行錯誤しても方法が解らず。
もしかしてドライバを更新すると…?ということで、ドライバを更新してみたらあっさり項目が表示されました。
On-Lap 1301をお使いの方は、ディスプレイのプロパティに回転項目が表示されているか確認することをお勧めします。
表示がない場合は、最新のドライバに更新することで表示が出るかと思います。
■デバイスのアイデアは秀逸、しかし詳細の詰めに多少難あり
実際にOn-Lap 1301を使って感じたのは、
メリット:
・気軽にデュアルモニターを構築できる
・USB給電なので電源不要
・ノートパソコン側のビデオ機能を使うので高速
・軽量、持ち運びが便利
デメリット:
・ノートPCに固定しての使用は、Ultrabookだと無理がある
・縦モードは視野角の狭さから実用的ではない
・HDCPに対応していない
・本体の造形が甘い、本体のコネクタ位置・配線方法にちょっと無理がある
・ケーブルが短い、格納不可
といった点です。
特に、アイデアはとても面白いものの、デメリットがかなり大きく、良さを消してしまっている気がします。
HDMI端子は横向きの方が出っ張りませんが、左右への首振り機構を備えたコネクタであれば使い勝手が良かっただけに残念。
本体のスタンドを使用しての縦モードですが、これは視野角の問題から実用的では無いと思います。
スタンドを用意すれば横置きでノートパソコンに固定せずに使用可能ですが、できれば横置きが簡単にできるスタンドを付属もしくは本体に備え付けてほしかったところ。
扱いづらい点もありますが、ノートPCでデュアルモニターが“実用的に”可能になる、唯一のアイテムですので、あると無いとでは、やはりかなりの差が生じます。
個人的には、職場の机に立てかけておいて、ささっと使う時に取り出してデュアルモニターにする、といった使い方が最も適してると思います。
いつも鞄に入れて持ち運んで使うには、ちょっとかさばるのと重たいのがネックでした。
また、HDCPに対応していないのも残念です。
対応していればPS3の本体に付けて車載PS3でGT5とか出来たのですが…(笑
HDCPに対応していない為、PC専用のデバイスとなってしまっています。
HDCP対応であれば、AV機器がいろいろ繋がりますので、用途も広がるだけに残念です。
私としては、「スタンドを別途用意して、横向きで使用する」のが最適だと思います。
ノートパソコン以外でも使えるサブモニターとして考えると、とても便利です。
たとえばPCのセットアップ時やサーバー機などでちょっとだけモニターを繋ぎたい時に、900g弱で持ち運びも楽で、電源もUSBで済むOn-Lap 1301はとても便利でした。
サブマシンのセットアップで大変役に立ちましたので、移動可能な簡易モニターとして使うのもありだと思います。
他にも、Mini-ITXなPCと組み合わせて車載PCで使う、なんていうのも良いかと思います。レビューの趣旨からは外れてしまいますが、「軽量で持ち運びが楽、USB給電のサブモニター」として考えると、いろいろ使えるモニターです。
■On-Lap 1302登場
レビュー開始間もない頃に、この商品の後継モデルである、On-Lap 1302発売のリリースがありました。
ノートパソコンへの固定方法も吸盤から粘着テープに変更になり、HDCPにも対応し、本体も薄く、軽くなり、ケーブルも長くなり、操作もタッチパネルになり…と、On-Lap 1301の欠点をほぼ消し去るといってもいい劇的な改善がなされている様子。
HDCPに対応したことで、用途が一気に広がるのが良いですね。
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でも2画面化は一度味わうと、絶対に欲しい機能です。
完全なモノはなかなか出会えません、多少の欠点も大量の利点の前では霞みますね^^
レビュー、お疲れさまです。
とっぷりんさん
2012/04/23
これいいですねぇ…
ちょっと買ってこようかかなり悩んでます。
リーダーさん
2012/04/23
U300s ではUSB3.0 を1個ふさいでしまうのが本当に残念でした。
機種によってはUSBポートの位置も違うでしょうから全部が残念というわけでも
ないと思うんですけど。
ただやはり作業領域がぐんっと増えるのは魅力ですね。
ちょもさん
2012/04/24
貼り付けると、Ultrabookの場合液晶のヒンジが気になりますね・・・
スタンドを使った利用が一番良さそうです。
2画面は一度使ってしまうと戻れませんよね。
できれば、LED液晶を使ったスリム型のデバイスが出てくれれば良いのに、と思います。
もしくはAndroidのタブレットでHDMI入力端子付きのものとか出れば良いのに(ニッチすぎ
とっぷりんさん:
ポータブルで気軽に使えるか、といわれるとちょっと微妙なところもありますが、USB給電で使える小型液晶という点では、とても便利です。
PCのセットアップなどで簡単に取り出して接続、ってのが出来るのがいいですね。
リーダーさん:
U300s、USBは左側、HDMIは右側を使わざるを得ないので、スマートじゃないですよね。
値段が少し上がってもしょうがないので、LEDの薄型液晶を使って極限まで薄くしたものがあったら便利そうだと思います。
どうせUSBで繋ぐならWacomと組んでタブレットにもなれば良いのに・・・
って、なんか違うデバイスになってきたw