シスコの目の前には、その「広大な宇宙」を埋め尽くさんばかりの宇宙艦が、これから始まるであろう一大決戦を前に、陣形を整えつつある。
屈辱的のDS9退去から一年、ついに連邦はDS9奪還のための一大決戦を決意した。
連邦が、ようやく戦力的な優位を確保出来たから、ではない。
ドミニオンのアルファ宇宙域への本格進出を食い止めていた、永久複製機雷原の掃海手段を、カーデシアがついに発見してしまったとの情報が、連邦上層部にもたらされたからだ。
ドミニオンの本格進出が現実化すれば、ただでさえ大幅劣勢の状況にある戦力差が、致命傷レベルに広がることが確実だ。
ガンマからやってくるドミニオン軍の予想戦力は、およそ2000隻。
現在のカーデシア・ドミニオン連合軍の全軍に等しい戦力が増強されたとなれば、連邦の敗戦は決定的なものとなる。
戦力的な不利はどうあれ、連邦は決戦に及んでDS9を奪還しなければならないのだ。
「センサーに反応あり。ドミニオン軍の大艦隊です。」
副操舵手席から、オブライエンが報告する。
「規模はわかるか?」
シスコからの問いを予想していたのか、オブライエンは即座に数を返す。
「1,254機の編隊です」
およそ、2:1で連邦側の劣勢ということだ。
すぐさま、遠距離スキャナの画像が最大化される。
ブリッジにいる全員が、思わず息を呑んだ。
艦、艦、艦、艦、艦・・・・
先に、宇宙を埋め尽くさんばかりと思っていた連邦艦隊が、「こいつら」の前では一回り小勢に見えてくる。
「全艦に告ぐ。こちらはシスコ艦長。攻撃フォーメーション、デルタ2」
非常警報が鳴り響き、クルーたちは我に返る。
「古い諺がある。『大胆さは運を呼ぶ』―――ひとつ、試してみようじゃないか。」
連邦艦隊、ドミニオン艦隊の双方が攻撃態勢を整えていく。
攻撃準備のための事前命令を、次々に下していくシスコ。
それらを次々に処理しながら、オブライエンが呟く。
「右に大砲、左に大砲、前に大砲。轟く一斉射撃。」
「弾と薬莢で立ち向かい、彼らは突進した。死の顎の中へと。地獄の口の中へと駆け抜けた。」
オブライエンに続き、ベシアが詩の後段を読み上げていく。
クリミア戦争の戦いを詠った「軽騎兵旅団突撃」の詩だ。
まさしく、この戦いはそれと同じだ。勇敢ではあるが、無謀に過ぎる。
「攻撃戦闘機、全速前進!一斉射撃だ!」
全艦の配置完了を見据え、シスコが力強く命じる。
アルファ宇宙域の運命を決める、戦いの火蓋は切って落とされた。
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ドミニオン戦争もいよいよ佳境。
ついに銀河系史上最大の宇宙艦隊決戦が始まりました。
凄まじい数の艦隊が入り乱れる戦闘シーンは、現在の目で見ても圧巻の一言。
この映像を、1990年代に「テレビ番組として実現していた」のですから、ホントあちらさんの技術ってのは凄いです。
そして、何より凄いのが「この戦争の真っ最中」という状況を描いている中でも、きっちりコミカルなエピソードを挟み入れてくるという制作側の余裕(笑)
個人的にお勧めなのは、138話と143話。
前者はDS9版「ミクロの決死圏」なお話で、後者はサスペンス調に「シスコが陰謀に手を染めるさま」を描くという、非常に意欲的な内容となっています。
最初のシーンを書くために、久々にDVDを引っ張り出して見ていますが、今見ても十分に凄い映像、高いレベルのシナリオと、現行の作品など比較にならん素晴らしさで、シーズン6は現在一気見中。
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購入金額
18,690円
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購入日
2011年07月29日
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購入場所
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