彼らの名は、ダーマーとラクスリー。連邦の時間調査官だ。
時間調査官とは、事故等によって過去へのタイムトラベルが発生してしまった場合、時間軸に問題が発生していないか、トラベラーが時間軸に影響を与えるような行動を取らなかったかを調査、審問する役職である。
過去へのタイムトラベルは、意図的であれ事故であれ、後の時間軸に何らかの影響を及ぼす。
それが、歴史改変が起こるほどのものであった場合、トラベラーは如何なる理由があれども非常に重い罪に問われるのだ。
普段の仏頂面から想像も出来ないほど、愛想良く彼らを迎えたキラだったが、ダーマーはそれを気にかけるフシもない。
「シスコ大佐は何処にいる?」
キラが司令官執務室を指さすと、彼らは挨拶もせずに部屋へと向かった。
そう、今回審問されるトラベラーとは、シスコのことなのだ。
「それでは大佐、聞かせてもらおう。」
彼らを迎えたシスコの前置きに鼻を鳴らしながら、ダーマーは不機嫌そうに話を切り出した。
審問官という立場上、馴れ合いは許されないのだろう。
シスコの側も馴れ合うつもりはないと、淡々と事の次第を語り始めた。
それによれば、カーデシアより占領時代にベイジョーより持ち去った発光体(原語ではオーブ。ベイジョーの宗教上の秘宝で、複数体ある)を返還したいと申し出があった。
それを受け取りにディファイアントでカーデシアへ向かったところ、そこで発光体と一緒に一人の地球人を乗せたという。
その男の名はバリー・ワドルといい、貴金属類を扱う商人だと名乗った。
クリンゴンとカーデシアの戦闘に巻き込まれて捕虜となり、カーデシアで拘留されていたと言う。
特に疑う理由も無かったので、ディファイアントに便乗させたのだが、事はその帰還の途中で起きた。
航行中、突然にクロノトン粒子の数が増大したかと思うと、一気に200光年もの距離を飛ばされたのだ。
艦内の全センサーが異常状態を検知し、メインスクリーンはノイズしか映さない。
「センサーが何か探知して・・・っ、遮蔽が解かれます!」
艦内チェックを始めたオブライエンが叫ぶ。
殆ど同時に、ダックスが「誰かが転送装置を作動させた」と言う。
転送装置を使うには、遮蔽を解除しなければならない。
このトラブルを引き起こした人物は、そのことを「良く知っている」ようだ。
「もう一度切り替えて、艦を遮蔽しろ。」
シスコの命令で、ディファイアントは再び遮蔽状態へ戻る。
それとタイミングを同じくして、オブライエンが先ほど言っていた「センサーの探知したもの」が判明した。どうやら、船がいるらしい。
「チーフ、スクリーンに映せるか?」
ノイズだらけのスクリーンを見ながら、オブライエンが操作盤の上に指を走らせる。
センサー類は既に復旧しつつあるらしく、微調整が必要なだけらしい。
数秒でノイズが取り除かれ、スクリーンに一隻の船が浮かび上がった。
映し出された船は、巨大な円盤を葉巻型の胴体へ繋いでおり、葉巻型胴体の後ろからは長いブームが伸びて、二つの巨大なワープナセルを突き出している。
明らかに、見慣れた連邦宇宙艦のスタイルだ。
というより、この船は「連邦士官なら誰もが知っている船」だった。
艦籍番号「NCC-1701」―――宇宙艦『エンタープライズ』
間違いなく、スクリーンに映し出された船は、それだったのだ。
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今までのレビューでは、全てシーズン最初のエピソードの出だしを書いていたのですが、今回はシーズン5の第六話にあたる「伝説の時空へ」の出だしを書いてみました。
このエピソードは、スタートレック30周年記念で制作されたもので、スタートレックのオリジナル・シリーズ「宇宙大作戦」の名エピソード「The Trouble with Tribbles(邦題は、新種クアドトリティケール)」の時間軸に、DS9のクルーがタイムトラベルしてしまうという、時代を超えたクロスオーバーを取り扱った意欲作です。
その撮影方法は、当時と全く同じ撮影セットを再現し、当時の映像をCG処理して「DS9のクルーを合成してはめ込む」という、非常に凝った手法を用いており、殆ど違和感無く「23世紀のスタトレの世界」でDS9のメンバーが活躍する姿が描かれています。
何気に凄いのは吹き替えも同様でして、「声優は当時の配役そのまま」で新規に「当時と全く同じように吹き替えし直す」という、非常に凝ったことをしています。
こちらは英語ですが、本エピソードの制作時に撮影されたキャストたちへのインタビュー映像。
英語解る人には思いっきりネタバレになりますので、頭出しだけ見てインタビューは聞かない方が吉。
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購入金額
18,690円
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購入日
不明
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購入場所
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