#915
IntelさんがNext Unit of Computing (NUC)を提唱してから2年以上経った。CPUをはじめ、いろんな技術が進化を遂げた今、最新世代のNUCはどう変貌したか、性能密度がどれほど上がったかレビューを通じて体験したい。
■インテル(R) NUC キット NUC5i7RYHの製品構成と仕様
外観と構成
パッケージ記述:Product CodeとしてNUC5i7RYHRと印字されている。
キットの構成内容:
・Intel NUC Chassis
Intel NUC Board NUC5i7RYBとIntel Wireless AC-7265を含む
メーカ保証は3年間。
システム構成に必要なもの:
・DDR3L-1600(1.35V)SO-DIMM RAM
・2.5” SATA HDD/SSD (≦9.5 mm)とM.2 SSD(22×42,22×60または22×80)のいずれかまたは両方
・OS
2世代前のNUC
と比べると、大きさがほぼ同じだが、明るい色に、端子の種類と数がともに大きく変わった。
・グラフィック出力ポート
HDMI×2 → Mini-HDMI×1、Display Port×1
・USBポート
USB2.0×3(前面×1、背面×2) → USB3.0×4(前面×2、背面×2)
・イヤフォン/マイクジャック
0 → 1
仕様
Intelサイトから仕様表を拝借した:
注目したいのが、
・第 5 世代インテル® Core™ i7-5557U プロセッサーと大幅に強化されたCPU内蔵グラフィックスのIris HD6100
・M.2 SSDと2.5インチSATA SSDを同時に搭載でき、RAIDも構成できる
・伝送速度と給電力が高いUSB3.0ポート4個による拡張性
・デュアルバンド高速無線LANアダプタIntel Dual Band Wireless-AC 7265
ボード・フォーム・ファクター M.2 2230, 1216
最高速 867 Mbps
インテル® ワイヤレス・ディスプレイ 対応
当たりだ。
■レビューの製品構成
今回はZigsow様が
・インテル(R) NUC キット NUC5i7RYH (本製品)
・KingstonメモリKVR16LS11/8
・Intel製M.2 SSD SSDSCKJW240H601
・Microsoft Windows 8.1 Home DSP版
のように4点セットを用意してくださったので、選定せずに済んだが、実際自分で選んだ場合、どんな構成になっただのだろうか、非常に興味あるところだ。
M.2 SSDのレビューは
となっている。
Core i7-5557UのIris HD6100の強力なグラフィックス性能とともに、240GBのSSDと8GBのメモリもあれば、普通にある程度のゲーミング環境が構築できるだろう。
あとはディスプレイとマウスとキーボードを接続すれば、PCとして使えるわけだが、今回は本製品のコンパクトさを生かすべく、一か所に固定してではなく、外出先にも持ち込んで、そこにあるディスプレイ、キーボードとマウスを使ってみることにする。ディスプレイによって、入力端子がD-Sub、DVIまたはHDMIである可能性があるため、Mini-HDMI変換アダプタと同時に、これらの変換アダプタも持ち歩くとよいだろう。
HDMI接続ディスプレイに接続する場合、
の付属のMini-HDMI to HDMI変換アダプタだけを使えば済む。
VGAディスプレイに接続する場合、上記HDMI-VGA変換アダプタも同時に使えば済む。
■組み立てとセットアップ
・組み立て
キットに二つのパーツを取り付けるだけの作業なので、静電気にさえ気を付ければ非常に簡単だ。
M.2 SSDだけが比較的新しいフォームファクターだが、それでもメモリと同じ要領で差し込んでから、ねじで固定すれば完了だ。
・各種ポートの間隔
写真のように、使用するUSB接続デバイスによって、前面の二つのUSB3.0ポートの間隔、それから、背面のMini-HDMIポートとUSB3.0ポートの間隔がぎりぎりか、狭すぎて使えなくて、デバイスを変えるか、USB3.0延長ケーブルを介する必要がある場合がある。
・セットアップ
Win8.1HomeのDVDを使ってインストールを行った。もうおなじみの作業だ。
Windows 10もインストールして比較したいので、ここではあらかじめWindows 8.1のインストール先と別に、Windows 10をデュアルブートでインストールする用のパーティションも切っておいた。
完了までかかった時間がおよそ28分間だった。
OSなしのベアボーンなので、ドライバはユーザ側でダウンロードしてインストールする必要がある。
★自己流のドライバの当て方
普通はあらかじめドライバをダウンロードして、USBメモリやCD/DVDに入れておいて当てるが、ドライバの数も多いし、面倒なので、自分は無線LANアダプタかLANアダプタのドライバだけをUSBメモリにダウンロードして、インストールしてから、インターネットに接続して、Windowsのライセンス認証を行い、さらにWindows Updateを実行した。その間はWindowsの機能でバックグラウンドで大体のデバイスのドライバが自動的に当てられるので、非常に楽だ。
さらにIntelのダウンロードセンタから
と言うユーティリティをダウンロードしてインストールしてから、それを使って自動的にデバイスの検出とそれぞれの最新のドライバのダウンロード、インストールができるのだ。
■ゲーミング環境としての活用
3DMarkやFinal Fantasy XIVなどのベンチマークと実際の使用感
・WEI評価
CPUコア温度 ~98℃
消費電力 ~59.6W
・CPU-Zによるベンチマーク
CPUコア温度 ~78℃
消費電力 ~32W
■3D測定マクロスコープVR-3050との併用で3次元測定と解析を行う
Keyency製3D測定マクロスコープシリーズは 、測定ヘッドVR3050 とコントローラおよびPCから構成されるが、メーカ推奨の標準装備のPCはDELL製Workstation仕様のデスクトップPCのPrecision T3600だ。XEONクラスのIntel CPUと高性能グラフィックスカードNVIDIA® Quadro® 6000が搭載されており、それなりの高性能を有する。
ここではこのPCをNUCに置き換えて、どこまで3D測定を行えるか確認してみた。
・NUCを使って装置を構成する
・コントローラドライバと3D測定・解析用ソフトのインストール
Microsoft Visual C++2010 SP1 (x86)のインストール
ドライバインストール中
・測定テスト
3D測定、表示と解析がまったくスムーズにできることが分かった。
こんな画像も:
■地デジの視聴、録画とBD映画の鑑賞
を使って、地デジの視聴、録画と録画の再生が問題なくスムーズにできることを確認した。
Windows 8対応の専用ソフトとドライバのインストールが簡単にできた。
冷房なし、室温33℃前後の環境では、視聴時のCPUコア温度が常時50℃台後半で、最大温度が70℃台で、やや高めだが、心配するほどでもないかなと思う。
■Creative Lab製Sound Blaseter RoarとのBluetoothワイヤレス接続
高音質ながらポータブルなSound Blaster Roarとは、Bluetooth簡単接続によりワイヤレスで便利に高音質なハイレゾが楽しめる。
Sound Blaster RoarとBluetooth接続中
Bluetooth接続中のSound Blaster Roarがスピーカとして使用中
■発熱、静音性と冷却性能
高負荷時はファンが全速回転し、煩いとは言えないが、60dB程度の気になるほどの音がする。適切に冷却の工夫をし、静音性を実現しながら、長時間安定した最高パフォーマンスを引き出す必要性はある。
室温34℃(冷房オフ)、補助冷却なし
・アイドル時
CPUコア温度 40~61℃
消費電力 8~8.6W
・3DMark Sky Diver
CPUコア温度
消費電力
ベンチマークなどの高負荷時はCPUコアの最大温度が100℃近くになり、パフォーマンスと冷却性のバランスが決して十分ではないことが伺えた。
内蔵SSDも、夏日の室内では、アイドル状態でもSSDの冷却が不十分で高温になることが分かった。
室温34℃(冷房オフ)、補助冷却あり
使った80mmのケースファンはもともと5VのUSB給電で回転数不足なため、高い冷却効果が期待できないが、それでもCore最高温度が数℃程度低下するという効果が得られた。写真のように底面にスペーサを入れても、入れない場合とは顕著な差が見られなかった。理由としては底面カバーにはメッシュ構造になっていないことが考えられる。
補助冷却オンの3DMark Sky Diverのスコアとコア温度
■環境を持ち運ぶ
外出先のマウス、キーボードとディスプレイで高い性能を活用する可能性を秘めているPCだと思う。
こちらは一つの例だ。
前記のKeyence製3D測定マクロスコープとの併用も一つの例である。NUCの性能をそのまま持ち歩いて、いろんな応用システムとその場で組み合わせて運用できることが実証された。
■Windows 10にもアップグレードしての検証
Windows 8.1 Homeで一通り検証したところで、やはりWindows 10で試してみたい。
予約アップグレードの場合、インストールファイルのダウンロードに時間がかかるので、今回はほかのPCのアップグレード用に作成したUSBメモリを使って行った。
Proのセットアップメディアなのに、Homeにしかアップグレードできない
約19分程度でWin10のサインイン画面になった。
一部デバイスに問題あり:
早速Windows Updateを実行したところ、Iris Graphics 6100のドライバなども自動的に更新されている:
これは頼もしい。
そして、問題ありのデバイスが正常になった:
ただ、Windows 10へのアップグレードによる発熱の低減効果は、当然ながら見られなかった。インストールからWindows Updateの適用しか行っていないのに、CPUコアの最高温度が95℃、Windows Update実行時も88℃、62℃、55℃と変化していた。
Windows 10のインストール開始からのCPUコア最高温度
地デジの視聴と録画とも問題なくできた。
3D測定マクロスコープも問題なく動作した:
測定中のCPUコア最高温度が68℃と比較的低かったことから、NUCには余裕があると言える。
■追記
2019年の史上初10連休の最終日にWindows 10 Home 64 bitからPro 64 bitにアップグレードしたが、各種デバイスのドライバも対応しており、問題なく使えている。
Windows 10 Pro 64 bitにアップグレードした後のシステム情報
この状態で、Cinebench R20を走らせたところ、下図のように768cbものCPUスコアが得られた。
Cinebench R20によるCPUのベンチスコアと温度結果
しかし、CPUコアの最高温度が105℃にもなり、内蔵冷却ファンの性能が不足していることがうかがえる。
CPU内蔵グラフィックスの強化、M.2 SSDなど最新技術と製品を採用したコンパクトで高性能なPC
初代NUCに比べ、体積がほぼ同じながら、性能が格段に向上した本製品は普通のノートPCはもちろん、従来の大きいデスクトップPCにも負けないほどの性能を示しており、「性能密度」が優秀だと言って過言ではない。まさに将来のPCの方向性を示した製品である。このSmall but PowerfulなPC形態の活躍の場はどんどん広がっていくであろう。
価格コムの最安値が約67800円。コストパフォーマンス、省スペース性を考えれば、十分コストパフォーマンスが高いと思い、お勧めするがが、ユーザは思考転換をしないと、躊躇するだろう。
長時間連続的高負荷状態でのパフォーマンスとパーツの冷却性能のバランスにおいては不十分な点があると言う意味では今後の改善に期待したい。
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