時を遡る事十数年、ノートPCのUSBポートは少なく、LAN(RJ-45)の無いモデルもあった。まさに私の使っていたVAIOはそれで、PCカードのLANアダプタやUSBハブのお世話になったもの。その後ノートパソコンの多機能化が進み、有線LANは当たり前のように実装され、USBポートもいろんな場所にくっついた。
が、時代は再びこのテのアクセサリを求める事になる。超薄型ノートパソコンの登場だ。これらの薄型機種にとって有線LAN…RJ-45は実装し難いサイズ。
我が家のウルトラブック「ONKYO DR6A-US31C7」はウルトラブックとしては珍しくRJ-45を備えているがご覧の通り筐体のもっとも厚い位置にねじ込んでいる。それだけ薄型機種にRJ-45を実装するのは難しい事が伺える。
またその手の機種の場合USBポート自体少なくなっているので、有線LANの為にUSBを一つ潰すのは影響が大きく結局USBハブも必要になってくる…ならいっそデザインの統一された一体型の機器があればいいんじゃね?
という前フリをしたところで登場するのがこのUS2-HB4ETX。一見一体型機器に見えるが、あくまでUSBハブとUSB有線LANアダプタのセット品となっており、分割利用も可能。パッケージには「Ultrabook」「MacBook Air」の文字が躍り、ターゲットは明白だ。
USBハブ側は4ポートのUSB2.0ハブ。LANアダプタはデバイスマネージャ上でASIX AX88772A USB2.0 to Fast Ethanet Adapterと認識され、対応は100BASE-TXとなっている。つまりGbEには非対応。
はっきり言ってスペック上は見るべき点が無い。枯れた技術の水平思考…といっては大げさだが手堅いスペックで「コンパクトな一体型」という付加価値を与えている製品。
セットとして小型化&統一されたデザインはホワイト&角丸で統一され、シルバーのアクセントとI・O DATAロゴが入る。但し表面は未塗装なのかプラスチック感が目立つのが惜しい。
USBハブ側はLANアダプタ部を収めるために特異な形状をしている。アダプタ接続用のコネクタは普通のものより若干奥まっており、アダプタをキッチリと密着させて装着できる。
もちろん干渉しない機器なら通常使用も可能。というかこのような少し大きい無線マウス・キーボードレシーバーにはちょうどいい。
LANアダプタ側はまさに「棒」といった感じ。RJ45コネクタを囲むようなサイズに収まっている。但し一般的なUSBポートの向きにすると、LANコネクタの爪側が下になる点に注意。
それでは合体!
ごめん間違えた!!
指定のポートにLANアダプタを合体させると、厚みに差がでるものの上から見れば長方形の一体化した状態となる。また、厚みの差はオフセットされ、底面側は平らになるようになっている。
…ハズなのだが、今回の個体は底面側も僅かにLANアダプタの方が張り出してしまっている。実はさっきの合体ミス状態だと張り出しがないのでこの個体の合体部分だけズレてしまっているのかも。
LANアダプタと隣接するポートこそ間隔が狭いが、残り2ポートは直付け型SDカードリーダーを繋げてもまだ余裕がある位置。
また、USBからLANケーブルがまっすぐなレイアウトなので、ケーブルの取り回しも違和感がなく、PCからハブまでの長さもちょうどいい。
ちなみにLANインジゲータランプは本体に内蔵されており、本体から透けるようなカタチで青く光る。
それでは実際に使ってみよう。今回使用するPCはさっきから出ている「Ultrabook」ではなく…
Microsoft製タブレット型端末「Surface Pro」。タブレットといってもCore i5を搭載し、OSはWindows8 Pro。実質中身はノートパソコンみたいなもので、それまで使っていたネットブック(Lesance VN-ななみN1 N470502G-7U)の置き換えとして導入したもの。
ネットブックよりも殆どの面でスペックアップしているのだけど、有線LANコネクタが無い。非無線環境や機器の設定等有線LANが必要な場面はちらほらある。せっかく小回りの効くWindows端末なのだから、そういう用途にも活用したい訳だ。
更にSurface、タブレット型という事でUSBポートは1つだけ。つまりUSBの有線LANアダプタを使うと他のUSB機器が何も使えなくなるので、有線LANアダプタを使うならハブも必須。まさにUS2-HB4ETXが本領を発揮できるシチュエーションだ。
Windows8なら挿すだけでOKと謳われている通り、認識と同時にドライバが当たり使用可能になった。他の操作は一切無し。
SurfaceProのポートはUSB3.0なので、USB2.0のハブを挿すと当然他の機器も2.0になってしまうが、何も繋げないのに比べたら全然快適。
ちなみに動作中LANアダプタ部分が結構熱を持つ。数年前使っていたUSB LANアダプタもこの位熱くなっていたのだが、最近の製品でもこの辺はあまり変わっていないのだろうか。
キックスタンドで立てた状態のSurfaceは少し高い位置にUSBポートが来るのだが、ケーブルの長さが丁度よく接地してくれるので安心。
もちろん本体の厚みも、Surfaceと同等に収まっているので、せっかく薄型端末を持ち歩くのに付属品でかさばるという事も無い。また合体状態だとケーブル以外殆ど突起物が無い形状になるのでバッグに気楽に投げ込める。
そして実測38gという軽さもありがたい。SurfaceProとACアダプタの合計が1173gで、それまで使っていたネットブック+ACアダプタが1280g。ヘタな機器を足すとせっかく僅かに軽くなった重量が逆転してしまうが、これなら逆転しない。
ところでせっかくここまでデザインを統一したのならこの接合部分をナナメに削って滑らかにしてくれるとより収まりがよかったと思うのだが。
あと携帯用に、未使用時にケーブルを収めるギミックか…
このように側面にコネクタを固定できるような機能があると便利かもしれない(写真は両面テープでコネクタを貼り付けている)。
またできればMBA以外にもあわせやすいブラックモデルがあると嬉しい。あとこの個体だけかもしれないが合体時の底面側の張り出しの解消も。
どれも細かい点なのだけど、せっかく一体化でコンパクトだからこそ、欲が出てきてしまう。
まあSurfaceの見た目を台無しにしたヤツが何言ってんだという感じですがね!
なんかこれで収まりよく終わったんですが「共有フォルダとかの使い勝手を比較します」と書いちゃったのでもう少しだけ続けよう。
元々Surface Proの無線LANは、感度はよく電波を拾えるのだが、速度自体は漠然と「こんなもんかな?」程度に思っていた。なので今回改めてこのUS2-HB4ETXとSurface Proの無線LAN、そして別PCの無線LANとGbEオンボード有線LANアダプターで。速度やレスポンスを比べてみようという訳。
但しそれらを集約するルーターが5年近く前のモデルで、特に無線周りは現在のものに比べると力不足。有線に有利な環境というのは事前に断っておく。
詳細なテスト環境は以下の通り
・ルーター:COREGA CG-WLR300GNH
・共有フォルダ側:Windows7 Ultimate 64bit 自作PC
ASRock X79 Extreme6のオンボードGbEアダプタ(Broadcom BCM57781)へ接続
・有線LANケーブルはカテゴリー5eを使用、無線LANはルーターから2mの遮蔽物が無い位置。ハブやAPを介さず、CG-WLR300GNHに直接接続。
・Windows7側の共有フォルダにWindows8PCから送信・受信のコピー操作を行う。使用ファイルは99MBのPSDファイル。
・Windows8のエクスプローラの速度グラフをスクリーンショット。また操作をしてからダイアログが閉じるまでの時間をストップウォッチで手動計測。
1.SurfacePro 標準無線LAN(Marvell AVASTAR 350N)
速度はせいぜい4MB/s程度。特にアップロード時はレスポンスが悪く、ダイアログの表示等が遅れるせいで実測時間が長くなった。但しネット使用時は家の回線がADSLなのもありあまり不便は感じない。
2.SurfacePro+US2-HB4ETX
レビュー製品。USBハブ合体状態だが、アップロード・ダウンロード共に安定して10MB/s以上を維持。ファイル読み書きはもちろん、フォルダ切り替え等のレスポンスは無線時より高い。
3.Intel DH77DF+MiniPCIe無線LAN Intel Centrino Wireless-N 2230
Intel製の無線アダプタ。テスト機は自作PCだが、本来はノートパソコンやNUC等に使用されるタイプ。Surface標準よりは高速だが、切り替え等の操作レスポンスはやはり有線には及ばない。
4.Intel DH77DF オンボード有線LAN(Intel 82579V)
今回唯一のGbE。容赦ない速度でレビューを台無しにするどころか、99MBのファイルなんて小さすぎるよとダウン時はダイアログさえ出ない。アップロード時はかろうじてダイアログが出たのでSSを取れたがご覧の有様だよ!どちらも実質1秒未満。
…むしろこれGbEのテストみたいになっちまったぞ。いや予想してたんで4つ目入れるか迷ったんですけどね。
ただフォローさせて頂くなら、ルーターに内蔵された簡易NAS機能(USBメモリを接続・共有できる)の場合、元々低速でGbEとの体感差は大差ない一方、有線ならではの安定性があるので読み書きも安定だ。また、USBデバイスサーバーで機器を動作させる時も、無線状態によってはシビアな事があるが、これならその心配も無い。
今更ながら何でレビューテーマに共有フォルダとか書いてしまったのだ。やはりUS2-HB4ETXは小型かつ軽量で、持ち運びしやすいのがポイント。そもそもSurface Proも持ち運び用として購入し、当然無線LANが使えない環境にいく事もあるのだから。
という訳でやってきました無線LANが使えない事務所。ネット回線が入っているのだけど、ここでは当然Surface単体でネットワークに繋げない。ここに限らず有線LANに繋げない等の理由でSurface購入後もネットブックが数回出撃していた。
今回のUS2-HB4ETXがあればもうネットブックは休ませられる!Surfaceに一本化だ!
だが今日はレビュー用比較としてネットブックも持ち込んだ2台体勢。荷物を軽くする為の小型PC達なのに、重さが倍になってるぞ。
なんでわざわざ比較するかというと、ネットブックは一応コレでもGbEコントローラを搭載しているのだ。まさにSurface Pro+US2-HB4ETXの置き換え対象なのだから、設定やメンテナンス用としてはともかく、ネット接続時にGbE非対応の影響が出るのかという点が気になったのだ。
インターネットの接続スピードテストにはBNRスピードテストを使用。
ちなみに自宅でやると下り3Mbps、上り0.7Mbpsとかいう切ない事になるのでやらなかった。
Lesance VN-ななみN1 N470502G-7U(Jmicron PCIE Fast Etharnet Adapter)
下り:111.50Mbps (13.94MB/sec)
上り:93.02Mbps (11.62MB/sec)
Surface Pro+US2-HB4ETX
下り:91.09Mbps (11.39MB/sec)
上り:96.38Mbps (12.04MB/sec)
時間をあけてそれぞれ何度か行った中での最高値。ネットブック側の下り速度が高くなっているが、それ以外は回線側の状態に左右されるレベルだ。使った回線が絶妙に100BASE-TXに収まる範囲だったようだが、どちらにせよインターネットでここまでの速度が出れば実用上は問題ない。安心して置き換えできそうだ。実はD-Subが無いという問題が残っているが。
自宅でガンガンNASや共有フォルダを扱うにはGbE非対応がネックになる場合があり、2.0のハブ共々スペック的には控えめ。しかしその分軽く小さくおさまっている。
またUSB3.0ハブがまだ相性等に不安を持っているのも事実なので、安定性については心むしろアドバンテージにもなる。Surface Proのような有線LANを持たずUSBポートも少ない機器のフォローとして十分な性能と、何より手軽さを持っていると言えるだろう。
ちょもさん
2013/07/22
レビューを読んでいて、昔U.S.Roboticsが出していたモデムカードのXJackを思い出しました。
あれでLANコネクタ作ったら薄そうなんだけど、ケーブル太いしコネクタに負荷かかって折れそうだなぁ…
でも、スリムなUltrabookについてると、いざって時に重宝しそうな気が。
下小川さん
2013/07/23
最近は頑張ってつけてるウルトラブックも増えてきましたが、ほんとそこだけ厚みを増やしてたりとほんとがんばってますね。
XJackは初めて知りました。検索したらLANケーブルを指している写真もあったんですが、確かにこれなら薄くできますけど負荷はかかりそうですね。特に最近のカテゴリー6eとかつけたら…でも一時的な使用だったら収納できるし便利そう。
cybercatさん
2013/07/23
なるほど。
形状的には常設するものじゃないけれど、USB2.0な端子がひとつしかないスレートPC
下小川さん
2013/07/23
それにしてもUSBが1つの機器はハブがあるとほんと便利です。コイツは小さくて軽いし、常設ではなくチョイ使いなら規格の古さも気にならないので持ち歩き用にピッタリです。
ネットブックは小回りがきくので有線環境での機器設定や確認に狩りだしていたんですが、これでサフェでも同じことができそうです。