長野県内で唯一花酵母の力を使ってお酒を醸している酒蔵が西飯田酒造

そのブランド名は「積善」　その名の通り善行を積み重ねるお気持ちが込められているようです。

長野は善光寺から数キロ　.

江戸末期に創業された西飯田酒造は、北アルプスに源を発する犀川のほとりにあります。

初夏に冠雪を残す山々からの清流と、長野市大岡地区産の酒米「ひとごこち」から醸される積善

酵母には、西飯田酒造の若い当代杜氏が学生時代に分離に成功したりんご由来の花酵母

多くの日本人の脳内に存在する原風景のひとつ

冠雪を残すアルプス　滔々と流れる清流　手入れの行き届いたりんご園

そこに化学と科学を知る若い杜氏を始めとする人の気持ちが込められた日本酒　

それが積善

その地に東京は銀座の人々の思いも積み重なります。

昨年は収穫時に、今年度は酒米の田植え時期から、多くの東京人が現地に出向いたとのこと。

人の気持ちが合わさり、人の気持ちが重なり　出来上がる「積善GINZA」

西飯田酒造さんの定番商品には見当たらない　純米大吟醸酒　です。

さて　その味わいは？　気になるでしょ？　

精米歩合は50％　贅沢に磨かれた酒米「ひとごこち」は、まん丸でしょうね。

初めて経験する「りんごの花酵母」に　否が応でも期待は膨らみます。

ラベルに「香りはバナナ系」と記載されています。　ワインでも見聞きする表現です。

旨味にりんご由来のすっきり感が楽しめるとも書かれていますね。

まずは室温のまま抜栓して　常温で楽しみます。

俗な表現に終始しますが、純米大吟醸というより良い添加アルコールを含んだ大吟醸酒に近いという

印象を得ました。　白ワインに近い、フルーティ、飲みやすい、という表現に繋がります。

今回は贅沢にも、もう一本の純米吟醸酒が手元にあるわけですから、比較しつつ確かめます。

冷やして　そして　お燗をしつつ　楽しみましょう。

縦方向に「精一杯」と「積善銀座」を並べていますので、解りやすいと思うのですが

色は積善銀座の方が濃いです。

しかし精米歩合の差がそうさせるのか、酒米の違いか、仕込み水の違いからか

やはり花酵母の力がそうさせるのでしょうか？

一般的な旨い日本酒の線上に立つのは「精一杯」でして

「積善銀座」は、より現代的であり、女性受けする風味でありました。

これは、お酒の提供温度を問わず　同傾向だと感じます。

レビュー「精一杯」と重複しますが、　お酒の温度についての豆知識を掲載しますね

レビューを書く前に、間違ったお燗をしないように　今一度勉強しなおしました。

ここで皆さんにもお伝えしたいと思います。

電子レンジを使うと、風味が損なわれると聞きました。

かと言ってお燗用の機具を用意出来る方は少ないと思いますので、徳利とお鍋を利用する前提です

徳利に入れる清酒は9分目が目安　ラップをして香りが飛んでしまうことを防ぎます

鍋の水量は、火に掛ける前に徳利を沈めて、それが半分沈む程度の量が適量です。

次に一度徳利を取り出し、沸騰するまで鍋を温めます。

沸騰後火を止め、そこに徳利を投入します。　浸す目安時間は2〜3分。

徳利の中のお酒が膨らんで口近くまで上がってくるのを見ても適温が判ります。

お芝居で、徳利の底を指先で触り温度を確かめる図が見受けられますが、徳利の素材・薄さも関与するので、確かめながら自分の適温を探せるようになりたいものです。

目安と呼称

日向燗　　　30度　　　徳利では温度を感じない程度　　　　　ほんのり香りが引き立つ

人肌燗　　　35度　　　徳利が暖かく感じる程度　　　　　　　味にふくらみを感じる

ぬる燗　　　40度　　　徳利が熱くない寸前　　　　　　　　　香りが良く出る

上燗　　　　45度　　　注いだ時に湯気が出る程度　　　　　　香りが引き締まる

熱燗　　　　50度　　　徳利から湯気が出る　　　　　　　　　辛口に移行する

飛び切り燗　55度　　　徳利が熱い　　　　　　　　　　　　　より辛口に移行する

積善銀座

どの温度帯でも、鼻につく匂いやベタつきは感じません。

増えるのは良い香り　ふくらみと滋味

冷やして得ることができるのは、爽やかな飲み口と切れの良いのど越し

できれば分厚い飲み口の酒器より、非加熱非強化の薄いグラスやお猪口が合うと思います。

手元には無いのですが、錫の酒器がより日本酒の良さを引き出してくれるのだとか。

近いうちに入手して、試してみたいものです。

ベスト１　鯉こく

積善GINZAの風味を思うと、赤身より白身のお刺身マッチすると思いました。

ヒラメや鯛を思いましたが、北アルプスに源を発する犀川を思い起こして鯉の洗いを選択。

外来種である鯉が犀川に生息しているかどうかはともかく、淡白な味わい、どちらかと言うと辛子味噌の風味を楽しむことが目的に思える鯉の洗いを　インスタ映えを意識してベストワンに推します。

ベスト２　鰻ざく

やはり川魚から鰻に登場してもらいましたが、蒲焼きを短冊状に切り分けたものと　きゅうりの酢の物を和えた鰻ざく（うざく）を選んでみました。

積善GINZAが持つ爽やかな風味と、うざくのさっぱり感がお互いを高めます。

ベスト３　牛肉と山椒の佃煮

良い山椒が手に入ったので

西飯田酒造店は、善光寺のお膝元と呼んでも差し支えない場所にあることを知りました。

「牛に引かれて善光寺参り」の文言を思い出し、３位には山椒と牛肉の和物を推します。

この佃煮は、昆布の佃煮のレシピに準じて作ります。

牛肉をテフロン加工されたフライパンで炙った後（油は使わないでね）、

醤油３・日本酒２・みりん１・砂糖１を加えて、じっくり煮込み水分を飛ばします。

今回は贅沢にも積善GINZAを料理酒の代わりに登用。

同時に山椒昆布も作りましたが、それはそれは良い香りの美味しい佃煮が出来上がりました。

積善GINZAとの相性が良いことは自明の理　大原の柴漬けとの相性も良く幸せな宵の中、酔いました

良い山椒が手に入った事がきっかけで作った佃煮ですが、このステージにはビールより、ワインより

やっぱり清酒がイチバン合うと思います。

番外　ささみのとうもろこしあんかけ

こちらにも贅沢に料理酒として利用して、合わせていただきました。　可もなく不可もなし

番外　その２　月見団子　　美味しいので試してみて

十五夜に合わせて用意した、こしあんを巻いた月見団子　

里芋の代わりのサツマイモ　栗を抱えたもち団子

これが意外にも積善GINZAと合います。　ビールともワインとも絶対に合わないと思う和菓子は

純米大吟醸積善GINZAとの相性が良く、遠い祖先が月を愛でながら餅と清酒を楽しんでいたかも

そんな想いを馳せる　

良い夜がありました。

今回提供していただいた３本の中で、もっとも女性受けするであろう　フルーティで爽やかな味わい

おそらく冷やして薄いガラス酒器で楽しむのが最も無難な楽しみ方だと思います。

しかし上燗で月見団子と合わせても美味しかった。

常温で牛肉と山椒の和物と合わせても美味しかった。

川魚と合わせても　うざくと合わせても。

りんご由来の花酵母を使って仕込まれたお酒から、りんごの香りはしません。

でもね、うさぎの形に切ったりんごは、おにぎりともサラダとも、ハンバーグとも合うでしょ。

そんな力もあるのかな。　

そう思える　美味しい爽やかなお酒でした。

ごちそうさま。