はじめに.「インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4」とは?
まずはここから話を始めなければいけないでしょう。我々が普段よく目にするインテル製のCPUといえばCoreシリーズやPentiumやCeleron、Atomといったブランドの製品です。これらはグレードの違いによりブランド分けされていますが、それらとは別にサーバーやワークステーションといった、一般的なPCよりも専門的な用途に供されるコンピューターで使うためにインテルではXeonという製品名を付けたCPUを用意しています。
初期のXeonはベースとなるコンシューマー向けのCPU名に「Xeon」という文字を付加する形(Pentium II Xeonなど)でラインナップされていましたが、Pentium4世代以降は単に「Xeon」という名前が付けられ、製品構成なども差別化されるようになっていきました。
今回のテーマとなる「インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4」は、第5世代Coreマイクロアーキテクチャとなる「Broadwell」のXeonとなります。Broadwellを採用する自作市場向けCPUとしては、Core i7-5775C(4コア8スレッド)とCore i5-5675C(4コア4スレッド)だけが発売されました。元々前世代のHaswell及びその改良版Devil’s Canyonと、後継Skylakeのリリース間隔が詰まっていたため、本来モバイル向けが主目的だったBroadwellをデスクトップPCで使ってみたいという、比較的幅の狭い要望に応えてリリースされたためではないかと思われます。
▲今回利用するインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4
Broadwellは、簡単に言ってしまえば22nmプロセスで製造されていた前世代アーキテクチャHaswellを14nmプロセスにシュリンクして小規模な改良を加えたCPUコアと、組み込み型の高速DRAM(eDRAM、1T-SRAMと称される場合もあります)およびそれを活用した高速型内蔵GPUコアを組み合わせたCPUパッケージと表現することが出来ます。eDRAMはCPUダイ上に128MB搭載され、CPUのL4キャッシュとしてもグラフィックメモリーとしても動作する共有型となっています。(注.Haswell世代でもモバイル向けにはeDRAM搭載モデルが存在しています)
そしてコンシューマー向けの上位モデルCore i7-5775Cをベースに、ワークステーション・サーバー向けパッケージとしての特徴を付与されたのが、今回使わせていただくインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4を含む、Xeon E3-1200 v4シリーズです。Core i7-5775Cとインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4との仕様差を簡単にまとめると、以下の通りとなります。
注目するべき点としては、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4はCPUコアの動作周波数が定格時・ターボブースト時共にCore i7-5775C比で100MHzずつ高くなっているにもかかわらず、TDPは同じ65Wに収まっているという点です。私はオーバークロックをあまりしないため何ともいえませんが、より素性の良いコアがXeonに回されている可能性が高いものと思われます。
なお、Iris Pro Graphics 6200とIris Pro Graphics P6300との違いですが、描画に関する機能自体はほぼ同等で、利用可能メモリーの差によって膨大な処理への対応度が変化するというものではないかと推測されます。
前世代の同等クラス製品 Core i7-4770K との差異
今回は自分自身で課したレビューテーマとして、前世代(Haswell)の同等構成品となるCore i7-4770Kと全く同じ環境で使ってどのような違いが見られるかを検証するというものを掲げていました。
そこで実際にPCに組み込む前に、まずは公表されている製品情報を比較してみました。
注.DirectXのサポートバージョンは、最新βドライバーのリリースノートの記載による。そのため製品リリース時の対応情報とは異なっている。
対応プラットフォームは同じですし、製造プロセスこそBroadwellが微細化されているものの動作周波数は全体的にHaswellの方が上回っています。インテル・スマートキャッシュの容量もHaswellが上回っていて、数字だけを見ていればHaswellの方が高性能に見えてしまいます。
前述したeDRAMを除けば、Broadwellがはっきりと上回っているのはGPU周りの仕様(最大利用可能メモリーと実行ユニット数)だけです。このことから、Broadwellは描画性能を重視して改良されたものであることが判ります。
インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4を使ったゲーム用PCを組み立てる
インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4に正式に対応するマザーボードは、インテルC220シリーズのチップセットを搭載したLGA1150のマザーボードということになります。しかし一部マザーボードベンダーでは、コンシューマー向けチップセットであるZ97 Expressを搭載していながら独自の検証とBIOSサポートによりインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4への対応を表明しているものがあります。
幸いにも私が以前入手していたASRock Z97 Extreme3は、このベンダー独自対応によりインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4に対応した製品でした。そこで今回はこのマザーボードを中心に、ゲームプレイに向けたPCを用意してみました。
その前に、まずはBIOSのアップデートです。Z97 Extreme3はBIOSバージョンP1.60以降でインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4をサポートするのですが、私のZ97 Extreme3は購入時点からBIOSを更新しておらず、バージョンP1.40のままだったのです。
試しにP1.40のままインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4を装着し、起動してみました。すると「非対応デバイスが接続されている」という旨のメッセージを表示した後、ごく普通にUEFIが起動します。
そこでUEFI内のメニューからインターネット経由のアップデート(Internet Flash DHCP)を実行してみます。
すると、自動でアップデートファイルをインターネット上から取得して、そのまま最新バージョンへの書き換えが実行されます。
特に何事も無く終了と再起動を促すメッセージが表示されます。
無事最新バージョンのP1.90に書き換わりました。非対応のBIOSバージョンであっても、最低限のUEFIが起動して、書き換えツールを実行できるという設計はなかなか親切で好感が持てます。(注.上のスクリーンショットは書き換え直後ではなく、CPUとメモリを載せ替えた後に撮ったものであるため、CPUがCore i7-4770Kとなっていますが、実際の書き換え時にはXeonを使っています)
後はごく普通に必要なパーツを揃えて接続していくだけです。今回は以下の部品を使用しています。
・メモリー(定格)
・メモリー(オーバークロック)
・SSD
・電源
・CPUクーラー
・キーボード
・マウス
この組み合わせを基本線に、後は必要に応じて追加部品を用意していきます。OSにはWindows7 Ultimate SP1 64bitを選択しました。これはゲームの部分でプレイする予定のタイトルのシステム要件にWindows10の記載がなかったこと、手近にセットアップディスクがあったことから選んだものです。
また、性能の比較対象としては前述の通り、Haswell世代のCore i7-4770Kを利用します。
一応両者でWindows Experience Indexを取得してみましたが、グラフィックス以外には特に差は表れませんでした。少なくともCPUとしての性能のレベルに大差がないということは伺えますね。
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4
内蔵GPUは格段の進歩
それではここからは、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4とCore i7-4770Kのそれぞれ内蔵GPUを使って、ベンチマーク等で性能を比較してみましょう。
なお、さすがに単体の高性能GPUに匹敵する性能とは思えませんので、あまり「重い」ベンチマークは利用していません。
テストに入る前に、まずはCPU-Zでそれぞれの詳細を確認しておきましょう。まずはCore i7-4770Kです。
続いてインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4です。
インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4はコンシューマー向けの製品ではないためか、情報があまりはっきりと出て来ません。CPU NameはCore i7と表示されてしまいます。
キャッシュのタブでは、eDRAMがL4キャッシュとして認識されていることが判ります。今までCPUは色々使ってきましたが、L4キャッシュという表示を見たのはこれが初めてではないかと思います。
それでは、ベンチマークの結果を見てみましょう。ベンチマークでは原則的にDDR3L-1600のメモリーを使用しています。
ちなみにインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4はECCメモリーをサポートしていて、今回用意したDDR3L-1600のモジュールはSK Hynix HMT451U7BFR8A-PB(DELL PECKMEM4G-001の中身)というECC付きのモジュールなのですが、マザーボードのZ97 Extreme3がECCをサポートしておらず、ECCは有効にはなりません。ECCが働かなくてもごく普通のDDR3メモリーのモジュールとして動作はしますので、今回はそのままこのモジュールで動作させています。
・Maxon CINEBENCH R15
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4
CINEBENCHでは両者の性格がはっきりと表れました。まず内蔵GPUの差は圧倒的です。OpenGLのフレームレート差は約2倍に達していて、スペック上の差がそのまま結果に表れたといえます。しかしその反面CPUでは僅かながらにCore i7-4770Kが上回っています。これはアーキテクチャ面での差が殆ど無く、クロックが若干高いことがCore i7-4770Kに有利に働いたということでしょう。
・FutureMark 3DMark SkyDiver
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4
こちらも2倍近い差となりました。描画されている内容を見ていても、途中動きが止まってしまうようなシーンも見られるCore i7-4770Kに対して、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4は引っかかりつつも何とか動き続けるという違いがありました。本物のゲームであれば、Core i7-4770Kの描画内容であればさすがにゲームにはならないでしょう。
ここでふと思いついて、メモリーをDDR3-2400に差し替えてみました。内蔵GPUもメインメモリーを共有している以上、描画能力にも一定の影響を与えるのではないかと思ったのです。
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4@DDR3-2400
誤差というには少々大きい差が生じているように思います。どちらのCPUでも問題なくDDR3-2400は動きますので、これ以降のテストはDDR3-2400で実施することにしました。
・SQUARE ENIX ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
このベンチマークは品質設定を変更できますが、今回は「1,280×720(高品質)、DirectX 11」という設定で実行しています。
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4@DDR3-2400
このベンチマークは数字で快適度を判断してくれますが、ここでははっきりと快適度のランクが変わりました。実際の描画を見ていても、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4は最も負荷がかかる部分でこそコマ落ちが目立ちましたが、大抵のシーンでは実用的なフレームレートを保ち続けていたように思います。
そしてここまでに色々とシステムに負荷をかけてきましたが、私が感心したのは発熱の低さでした。元々前世代のHaswellも非常に優秀だったのですが、Broadwellはその特徴にさらに磨きがかかっていました。以下のCore Tempの最大温度に注目して下さい。
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4
インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4は、この環境ではどんなに負荷をかけても50℃を超えることはありませんでした。Haswellの最大51℃という値もかなり優秀なのですが、それが翳んでしまうほどです。ちなみに私のメイン機で使っているCore i7-970+リテールクーラーは、簡単に70℃以上を記録します…。
CPU単体性能は面白い結果に
それでは、ここからは単体GPUを用意して、双方のCPUには描画させずに演算に専念させて性能を見てみましょう。今回はこちらのビデオカードを利用します。
前掲のCINEBENCH R15の結果では、クロック周波数の差から生じると思われる程度の僅かな差で、CPUの値はCore i7-4770Kが上回っていました。今回はどうなるでしょうか。
・Maxon CINEBENCH R15
▲Core i7-4770K+GeForce GTX 970
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4+GeForce GTX 970
Core i7-4770Kの方が僅かに速いという図式自体は変わらないのですが、CPUのスコア差は僅かに5であり、殆ど誤差というべき程度にまで詰まりました。
・FutureMark 3DMark SkyDiver
正直言ってしまえば、このテストはGeForce GTX 970には少々軽すぎるのですが、先のテストとの統一性を持たせるために実施しています。
▲Core i7-4770K+GeForce GTX 970
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4+GeForce GTX 970
ここではクロックで劣るはずのインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4が僅かに上回ってきました。
・SQUARE ENIX ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
設定はCPU単体の時と同じとしています。
▲Core i7-4770K+GeForce GTX 970
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4+GeForce GTX 970
こちらは3DMarkよりもはっきりとインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4が上回っています。何故このような結果になったのかといえば、恐らく128MBのeDRAMのほぼ全てのCPUのL4キャッシュとして使えるようになったためではないでしょうか。また描画のためにメモリーの帯域が割かれることもなくなるため、キャッシュの性能までも含めた総合的なCPUの演算能力が素直に発揮された結果ともいえます。
BroadwellはHaswellからCPU部分は殆ど変わっていないので、単体のGPUを用意するのであればHaswellで充分だし、クロックが高い分むしろ有利という意見もよく目にするのですが、実アプリケーションでは128MBもの広大なキャッシュメモリーは充分に価値があると考えられます。
何とかプレイできるところまで来た
それではここで今回の本題となる、ゲームプレイに移りましょう。今回私がプレイしてみたのはElectronic Arts発売の「Need for Speed™ Rivals: Complete Edition」です。詳細についてはメーカーの製品情報をご覧下さい。
なお、システム要件については以下のように記述があります。
Minimum System Requirements
OS: Windows Vista SP2 32-bit (with KB971512 platform update)
Processor (AMD): Athlon X2 2.8 GHz
Processor (Intel): Core 2 Duo 2.4 GHz
Memory: 4 GB
Hard Drive: 30 GB
Graphics card (AMD): AMD Radeon 3870
Graphics card (NVIDIA): Nvidia GeForce 8800 GT
Graphics memory: 512 MB
Recommended System Requirements
OS: Windows 8 64-bit
Processor (AMD): Six-core CPU
Processor (Intel): Quad-core CPU
Memory: 8 GB
Hard Drive: 30 GB
Graphics card (AMD): AMD Radeon 7870
Graphics card (Nvidia): NVIDIA GeForce GT 660
Graphics memory: 3 GB
最小要件でも必要なビデオカードはGeForce 8800 GTやRADEON HD 3870(記述ではRadeon 3870となっている)となっていますから、そこそこ描画能力は要求されるということになりそうです。推奨条件ではGeForce GTX 660(記述ではGeForce GT 660)やRADEON HD 7870(同じくRadeon 7870)と、一昔前のミドルクラス以上ですから、Iris Pro Graphics P6300でもこの水準には足りないものと思います。
このゲームはダウンロード時に2種類のバイナリーが提供され、32bit版と64bit版が用意されています。
32bit版の方が軽量ですが、描画の細かさなどは64bit版よりも劣ります。32bit OSで比較的負荷をかけずに実行するために用意されているものと思いますので、今回は64bit版の方をプレイします。
ゲームにおける使用感を文章で表現するのはなかなか難しいので、今回はプレイ動画を用意しました。HDMIキャプチャなどが出来れば画質も良くなるのですが、環境を用意できなかったためMITSUBISHI MDT241WGで表示した内容を、Canon iVIS HF M51で撮影してみました。
内容については、こちらの動画をご覧下さい。
解像度を上げて見ていただくとよくわかるのですが、描画が追いついていない環境ではスピード感が大幅に落ちますし、路面や景色の細かい描画も追いついてきません。そもそもキー操作に対するレスポンスが極端に悪くなるため、車をきちんと操作できずゲーム自体が困難なのです。
ゲームを本気で楽しむのであれば、さすがにIris Pro Graphics P6300であってもまだ完全に満足できるレベルには達していません。少し割り切って考えれば充分遊ぶことは出来るというところでしょうか。もっとも、単体価格でBroadwellのコンシューマーモデルであるCore i7-5775Cと大差ない価格のGeForce GTX 970と同レベルの描画が出来るというのは理屈で考えてもあり得ないことです。
Windows Experience Indexの値から判断する限り、NVIDIAのビデオカードで言えばFermi世代のミドルハイ(GeForce GTX 260やGTX 275)に近い描画能力を備えているとみることも出来るわけで、CPUの内蔵GPUがその水準に届いたというだけでも画期的なことでしょう。最新世代の重いゲームは難しくても、一昔前の3Dゲームを楽しむのであれば充分に快適な性能は持っていますので、普段プレイするゲームによってはもはや単体型のGPUは不要と感じるユーザーも少なからずいるのではないでしょうか。
実は私個人としては、今までインテル製のグラフィック機能に対してはかなりの悪印象を持っていました。とにかく必要最低限と思う程度の性能すら出てくれないという印象が強かったのです。その印象が多少好転したのが前世代のHaswellであり、その次のBroadwellでの進歩には素直に驚かされました。これだけの性能であれば、モバイルPC向けとして考えた場合にほぼこれ以上は必要性を感じないという程度でしょう。そしてこれだけの性能向上を、発熱や消費電力をさほど増やすことなく実現したということも高く評価したいところです。
インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4は本気のゲームマシンをこれ1つで作るにはまだ少し足りない部分はあるものの、ライトゲーマーがごく普通にゲームを楽しむことが出来る性能を達成したと考えて良いでしょう。そして単体のビデオカードと併用しても、同等クロックのHaswell比で概ね上回るパフォーマンスを発揮していますので、充分にメリットがあることは改めて強調しておきたいと思います。
おまけの実験:公式情報で対応していないマザーボードに搭載
さて、ここまではマザーボードのベンダーが公式にインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4への対応情報を掲載していた、ASRock Z97 Extreme3を実験に使ってきました。
しかし、私の手元にはもう1枚Z97を搭載したマザーボードがあります。
ASUSのZ97搭載製品の中でも最廉価品となるZ97-Kです。今回同時にインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4のプレミアムレビューに選出された方でも、ASUS製のマザーボードを使われている方がいらっしゃいましたが、色々と苦労された末に何とか動作にこぎ着けられていたようです。
最大の問題点となるのが、マザーボードのME(Management Engine)を最新版に更新できないと、CPUの内蔵グラフィックが認識されないという点です。この問題については下小川さんがレビュー内で指摘されています。
そしてASUS製マザーボードの場合、通常の更新ツールを使ってBIOSを更新してもMEの方は更新が行われないことで、問題が難しくなっているということらしいのです。
このような場合、ASUS製マザーボードでは「USB BIOS Flashback」でBIOS更新を実行すればMEの方も更新されるとのことなのですが、この機能はミドルグレード以上の製品に用意されているものであり、シリーズ最廉価モデルのZ97-Kには用意されていません。もっともUEFI内にBIOS更新ツール「EZ Flash 3」は用意されていますので、他社製品と同様の使い勝手は確保されているわけです。
私のZ97-Kはジャンク復旧品であり、動作確認した際にEZ Flash 3によって、第5世代Coreプロセッサー対応のBIOS(Ver.2604)への更新は実行しています。この状態でインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4を搭載したらどうなるのか、試してみました。なお、今回利用したZ97-Kは直前まではPentium G3258で動作させていました。
▲仮組みなのでCore i5-3570Kのクーラーで組み立て
マザーボード上にはCPUとメモリーだけを取り付け起動してみます。
モニターに信号が来ません。やはり別途MEを更新しないと駄目なのかと思い、ビデオカードを取り付けてみたのですが、それでも起動してくれないのです。
そこで念のためにとCMOSクリアーを実行してみました。すると…
なんとあっさりと起動してしまいました。CPU名も正常に認識していますし、CPU内蔵のグラフィックからきちんと出画されています。購入時点では結構古いBIOSでしたので、EZ Flash3からの更新でMEも更新されていたということでしょうか。BIOS更新前に実験できなかったため、真相は確認できませんでした。
確認してみたところ、ME Versionは現状の最新版である9.1.25.1005となっていました。現状では動作にこぎ着けた皆様は全てこのバージョンのMEであり、動作したことには納得できます。
おまけその2:メモリークロックと電圧の関係
前述の通り、ベンチマークの途中から、メモリーの帯域を稼ぐためにDDR3-2400のオーバークロックメモリーに切り替えてテストを行っていました。
このDDR3-2400というのはXMP Profileによるクロックであり、Profileの読込によりメモリーの電圧には1.65Vが設定されます。
一方でインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4で使用可能なメモリーは、公式情報によるとDDR3/DDR3Lで、1.35Vまたは1.5Vです。1.65Vは1.5V比で10%増しですから、結構な負担がかかっていることになります。私の環境ではあっさりと1.65V動作のDDR3-2400が安定して動いていたのですが、いただいたコメントでは同程度の仕様のメモリーでも安定動作しなかったものもあるそうです。
そこで、DDR3-2400動作のまま電圧を落とし、負荷を軽減できるかという実験を行ってみました。
まずはXMP Profileを読み込んだ直後の状態です。今回掲載したベンチマークやゲームプレイについては、全てこの設定で動作させています。
DDR3-1333時には1.5Vで動作するモジュールですから、いきなり0.1V落としてみました。この状態でベンチマークを走らせたり、ゲームをしばらくプレイしても不安定要素は見られません。
次はさらに定格クロック時の標準電圧である1.500V設定です。この状態でもゲームを1時間少々とベンチマークを実行してみましたが、特に不安定要素は見られません。強いていえば3DMark SkyDiverの値が誤差レベルではありますが少し低い気はしますが。
▲インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4+DDR3-2400 16GB@1.500V
もちろんインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4は、DDR3-1866までは公式にサポートしていますので、1.5V動作のその辺りのメモリーモジュールを組み合わせる方が安全である事は間違いありません。しかし、メモリーの素性が良ければ1.5V程度でも高クロック動作は可能ですので、上手く動くのであれば試してみる価値はありそうです。
著作権表記
最後に動画で紹介させていただいたゲームの著作権表記です。
「Need for Speed™ Rivals: Complete Edition」 (C)2014 ELECTRONIC ARTS INC.
初めてビデオカード無しで使っても良いと感じたCPU
先代となるHaswellのCore i7-4770Kも、それまでのCPU内蔵グラフィックよりはワンランク以上快適になっていて、進歩の早さは感じさせてくれました。
それでも、HaswellではWebの閲覧程度であればまだしも、内蔵グラフィックでゲームを楽しもうという気分にまではなりませんでした。Core i7-4770KはASRock Z87 Extreme4と組み合わせていますが、最小限の組み合わせでTVモニターに接続してWebや動画を表示するという役目でしか使っていませんでしたからね。
しかし、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4では、それなりに動作条件が厳しい「Need for Speed™ Rivals: Complete Edition」であっても何とか遊べるというだけの力をみせてくれました。軽々と動くというわけではありませんでしたが、少なくともCore i7-4770Kのように操作にきちんと反応しないというほどひどいものでもありません。
さすがに現世代で「ゲームプレイにビデオカード不要」といえるまでの性能には達していませんが、もう少し進化すればそのような次元が見えてくるという可能性は感じられました。むしろ、それ以外の用途であればもはや単体のビデオカードを敢えて別に用意しようとは思わない程度のパフォーマンスは発揮してくれました。その意味では今までは外付けのGPUにこだわりを持っていた私にとっては、初めて「内蔵グラフィックでも良いか」と感じさせてくれたCPUが、このインテル(R) Xeon(R) プロセッサー E3-1285L v4ということになります。
今回のレビューを通じて個人的に感じた課題は、CPUの性能ではなくPCゲームのバリエーションだと思っています。最近出てくるPCゲームはFPSかオンラインRPGばかりで、自分がプレイしたいと思うゲームが殆ど無いのです。
以前は例えば日本ファルコムのアクションRPG「イースVI ~ナピシュテムの匣~」をプレイするために、PC-9800系を無理矢理改造してパフォーマンスを稼ぐなどといった、性能を必要とする動機となり得るゲームがありました。しかしFPSにもオンラインゲームにも興味が無い私にとっては、近年はパフォーマンスを要求する動機となるゲームがありません。今回「Need for Speed™ Rivals: Complete Edition」を選んだ理由は、Windows 9x時代に遊んだ「Need for Speed™ High Stakes」を思い出して、懐かしくなって新版を遊んでみようと思ったからです。逆に言えば、それ以外の新しいタイトルには興味が湧かなかったということです。
折角このように魅力的なCPUが出て来ているのですから、それを活用できるソフトウェアの充実を願いたいと思います。
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