人気作『インテル はいってる』タブレット2 SiAL Si02BFと徹底比較
実は、私はつい最近まで「タブレットはAndroidかiOSだよな」と考えていました。
最近では安価なWindowsタブレットも増えてきましたが、Windowsならばタブレットであってもある程度快適なキー入力は必須であると考え、その意味でMicrosoft Surface Pro 3(+Type Cover)が一つの模範解答であると考えてきました。
なぜAndroidやiOSの方が良いと思っていたのかといえば、最大の理由はタッチオペレーションの洗練度であるといえます。
Windows 8系のModernUIは確かにタッチでもある程度快適に使えるように設計されていますが、ModernUIで動いてくれるアプリケーションが極めて限られたものしかありません。Windowsの強みである豊富なアプリケーションの資産を活かすのであれば、従来型のデスクトップアプリを使うことになり、結局はマウスやキーボードで使った方が便利になってしまいます。
一方のAndroidやiOSは最初からタッチパネルを前提に設計されていて、キーボードなどの方がむしろオプションの扱いです。当然UIはタッチオペレーションに最適化されていますので、Windowsのデスクトップアプリを無理矢理タッチオペレーションで使うような煩わしさを感じることがありません。
しかし、自分自身のAndroidタブレットの使い方を振り返ってみると、Windowsのストアアプリでもある程度賄える程度のものでしかないということに気付きました。
それならいっそのこと、開き直ってタッチオペレーションで快適に使える範囲でWindowsタブレットを使ってみようと考え、購入したのがSi02BF(通称『インテル はいってる』タブレット2)でした。
Si02BFについてのファーストインプレッションなどは、上記の拙レビューでご覧いただければと思います。
Si02BFはコストパフォーマンスについては素晴らしいの一言である一方で、使い勝手では決して納得のいかない部分もあります。今回比較するCLIDE9が、何処までの満足感を与えてくれるか注目してみたいと思います。
開封とセットアップ。特に難しい手順は無い
まずはCLIDE9を使ってみましょう。
外箱の表面は機能・特徴の説明、裏面は端子・装備の一覧図となっています。なかなか合理的なパッケージですね。
▲CLIDE9(上)とSi02BF(下)。一回りCLIDE9の方が大きい
▲SIMをまだ挿していないので、Wi-FI接続でそのままセットアップ開始
さて、比較に入る前にCLIDE9を活用する上で欠かせない、3G SIMのセットアップについて触れておきます。今回はBIC CAMERAグループ扱いのIIJ mio 高速モバイル/D(通称BIC SIM) ファミリーシェアプランで使っている3枚のSIMのうちの1枚を利用します。
実は私はSIMスロット付きのWindows PCを使うのは初めてではありません。最近では殆ど使っていませんが、SONY VAIO typeP VGN-P92KS(ワイヤレスWAN仕様)を使っていたことがあります。
こ れはWindows 7プリインストールモデルですが、モバイル通信に接続するためには専用のユーティリティーを利用していました。しかし、今回のCLIDE9は Windows 8.1を採用しているため、Windows自身の機能でモバイル通信への接続に対応することが出来ます。以下に簡単な手順をまとめておきましょう。
※IIJ mio 高速モバイル/Dの接続情報の詳細はこちらのサポートページで確認して下さい。
まずはSIMを取り付けます。CLIDE9は今時珍しい標準サイズのSIMスロットを備えています。一方、私が契約しているIIJ mio 高速モバイル/DのSIMは全てmicroSIM(当時nanoSIMの機器を持っていなかったので)ですから、標準SIMの機器で利用するためには変換アダプター等で大きさを合わせてやる必要があります。
幸い、このSIMを利用するモバイルルーター、BF-01Dがやはり標準サイズのSIM対応機であるため、既にアダプター装着済みのものがありましたので、それを今回はそのまま流用します。
まずは物理的な取り付けです。CLIDE9のSIMスロットはプッシュ式であり、方向を合わせて押し込むだけで装着は完了します。
あとはWindows側での設定です。
▲JP DOCOMOというネットワーク名が表示されたら「接続」を選択
これでAndroid等のタブレットと同じように、モバイルネットワークの接続を意識すること無く使えるようになります。
Windows機としてはほぼ同等
改めてこの両者を比較してみようと考えると、意外と難題であることに気付きました。というのも、この2機種は特徴が極めて近いのです。
とりあえず、以下に主なスペックをまとめてみました。
大きさに関する事項以外には、差が極めて少ないことがおわかりいただけるでしょうか。
一応「WIN SCORE SHARE」でWindows Experience Indexの値も並べてみましょう。
強いていえば搭載しているeMMCの違いにより、プライマリディスクの値で差が付いていますが、それ以外には同等と評して差し支えのない結果です。一応eMMCの性能も測定しておきました。
▲Si02BFのeMMC TOSHIBA 064GE2のスコア
内蔵eMMCの性能は明確に差が付いていて、Si02BFが搭載している東芝製064GE2の優秀さが際立っています。WEIの差もここから生じているということでしょう。
ちなみにSi02BFは、公式情報ではmicroSDXCメモリーカードをサポートしていないことになっているのですが、実際には64GBのカードで正常に読み書きが出来ることを確認しています。逆にCLIDE9はmicroSDXC 64GBをサポートしていると公表されているのですが、初回利用時に何故か認識できないという事態が発生しました。Windowsをシャットダウンして、再起動した後は読み書き出来るようになり、その後も問題は発生していませんが。
なお、このmicroSDスロットの性能はどちらでも大差は無いようです。こちらのmicroSDHCカードで速度を測定してみました。
明確な速度差はありませんでした。ただ、この結果はなかなか面白いものとなっています。このMB-MG32Dは、USB 3.0接続のカードリーダーで使えばシーケンシャルで読み出し90MB/s、書き込み80MB/sに迫るカードなのですが、その際のランダム速度はこの2台の内蔵スロットよりも劣るのです。詳細な値は前掲のMB-MG32D/FFPのレビューの方でご確認下さい。
また、バッテリーの連続使用可能時間につきましては、それぞれの測定条件が違いますので参考程度にご覧下さい。私の感覚では、CLIDE9は軽作業中心であれば6時間前後は使えるのではないかと思うのですが、Si02BFで5時間使うにはかなり電力を節約する必要がありそうです。
それはともかく、こうして改めて比較すると、大きな違いといえるのは画面サイズが0.9インチ差であることと、それに付随してバッテリー容量や背景寸法・重量の差があること、そして3G SIMスロットの有無程度でしかありません。
この時点で、比較する際の注目点としては
1.大きさがもたらす違い(携帯性)
2.3G SIMスロットがもたらす違い(機能性)
3.製品としての仕上がりやまとまり(満足度)
という辺りに絞られることがわかります。
そこで今回はこの3点に注目しながら、それぞれの使用感をまとめてみようと思います。
8.9インチと8インチ。何処まで違うのか?
数字にしてしまえば僅か0.9インチの差ですから、この値から受ける印象はそれほど大きな違いがありません。
実際に2台を並べてみても、一見あまり大きな違いには見えないのですが、実際にデスクトップアプリをタッチオペレーションで動かしてみると、この僅かな差が使い勝手に大きな違いを生むのです。
わかりやすい例として、デスクトップ側で「Mozilla FireFox」のアイコンで、文字列の表示に使われる幅を比較してみましょう。
定規を当ててみたところ、約1.5mmの差が生じていることがわかります。0.9インチという数字から受ける印象以上に、実寸法では差があることがおわかりいただけるでしょうか。
Si02BFでは、実はデスクトップアプリを指先だけでコントロールするのはかなり困難です。押したつもりの箇所の隣にあるメニューやアイコンを押してしまうことが少なからずありますし、全く押せないということも少なくはありません。
そこでSi02BFでは普段イヤホンジャックに挿せるタイプのタブレット用ペンを使っているのですが、このペンに対しての反応もあまり良くないため、デスクトップアプリを使おうとするとストレスを感じる部分があります。ストアアプリで使う分には快適なのですが、Si02BFでは正直言ってデスクトップアプリを積極的に使おうという気分にはなりません。
一方のCLIDE9では、デスクトップアプリでも狙ったメニューやアイコンが指先で何とか押せるのです。どうしても押しにくく感じる場合にはペンを使うのですが、このペンに対する反応もSi02BFより数段良好であり、デスクトップアプリも充分使えるという感触です。
さすがにMicrosoft Surface Pro 3程の快適性だとは思いませんが、CLIDE9の水準であれば実用範囲といえそうです。
さて、同じ解像度であればサイズが大きい方が操作性が良いというのは当然です。大きくなることで持ち運びに影響があるかという点も重要になってきます。
私が普段外出時に使っているバッグがこちらです。これに無理なく収納出来るかどうかが、日常的に持ち歩けるか否かの判断材料となります。
結論から言ってしまうと、どちらであってもこのバッグに入れて充分に収まる寸法です。恐らく、ジャケットやカバーを装着しても問題はないでしょう。
さすがにiPad 2012 RetinaやIdeaPad Miix 10などの10インチクラスのデバイスを、このバッグで常時持ち歩くのは無理はありますが、8.9インチのCLIDE9ぐらいまでであれば、充分に持ち歩ける範囲です。
重量の方は約140g違いますので、人によっては気になるかもしれません。私はもともとこのバッグの中にスマートフォンもフィーチャーフォンも複数台入れて常時持ち歩いているくらいですので、140g程度は誤差にも感じられません。その代わり私のバッグを他人が持つと必ず「重い」といわれますが…。
組み合わせるジャケットやカバーの類によっては少し気になる大きさとなる可能性はありますが、少なくとも本体だけでみる限りでは、常用出来る携帯性は保っていると判断して良いのではないかと思います。
また携帯性に分類される中でもう一つ重要な要素となるバッテリー持続時間ですが、実際に連続稼働で確認出来たわけでは無いのですが、私の普段の使い方でディスプレイ輝度を落とし気味にした状態でSi02BFは5時間弱、CLIDE9は5.5~6時間程度となりそうに思います。もう少し長いことに越したことはないのですが、私はこれで充分ではないかと考えています。というのも、両者とも容量がやや大きいモバイルバッテリーよりも小さい内蔵バッテリーを搭載していて、しかもmicroUSB経由で充電するようになっています。
つまり私が日常的に持ち歩いている、
くらいのモバイルバッテリーを併用することで、この稼働時間は2倍以上確保出来ることになる訳です。その状態であれば10時間以上は使えるということになりますから、ほぼ1日中使っていても問題はなさそうですからね。
速度は出ないが、常時接続の有り難さ
実は以前に書かせていただいた、Microsoft Surface 2のレビューでもこの問題に少し触れたことがあります。
当時あまり高性能なスマートフォンを使っていなかった私は、色々不満を抱きつつも3G SIMスロットを備えたGoogle Nexus7-32Tを毎日持ち歩くほどに愛用していました。これはやはり「デバイスを取り出して、すぐにインターネットに繋がっている」ということが、計り知れないほどの便利さをもたらしてくれたためでした。
現在では当時より高解像度かつ大画面のスマートフォンを使うようになり、ある程度のレベルでタブレットの代わりが務まるようになったため、持ち運びのしやすさを重視してNexus7をほぼ引退させスマートフォンで代用するようになりました。
いくら3G SIMを装備していても、持ち運びがしにくい大きさ・重さだったOptimus Pad L-06Cは結局殆ど有効活用されないままでしたが。Optimus Pad L-06Cは大きさこそCLIDE9と大差なかったのですが、大きさの割に重く(約620g)、厚みもあった(約12.5mm)ため鞄の中でも存在を大きく主張してしまうのです。
Nexus7を使って学んだのは、持ち運びが苦にならないデバイスで、インターネット常時接続環境を持っているというのはそれだけで大きな武器となるということでした。
▲外出時の一コマ。Wi-Fiが無ければSi02BFでは当然こうなる
このCLIDE9も、Nexus7も3G接続であり、単純な速度を見ればモバイルルーター経由の方が遙かに高速です。3G接続のCLIDE9を使って、数カ所で速度を計測してみた結果が次の通りです。
他にも数カ所で測定していますが、概ね2~3.5Mbps程度の速度が出ていました。
ちなみに3番目の地点では、同じIIJ mio 高速モバイル/Dのファミリーシェア契約のSIMを使って、XPERIA Z1 SO-01Fでも速度を計測してみました。さすがにAndroid機の中でも比較的高性能なSnapdragon 800搭載機ということもあり、通信速度にこれ程の差が付きます。
どちらかというとプライベート用途であればLTEの速度は魅力的ですので、これまでと同様にスマートフォンを主に利用することになると思うのですが、仕事用で少し長いメールを入力したり、送られてきた資料の確認をするときなどは、さほど通信速度が要求されるわけではなく、むしろOffice等のファイルへの対応度が大事になってきますので、今後はCLIDE9の出番が増えてくるのではないかと思っています。
ちなみに私は最近Si02BFもモバイルルーターもバッグに常に入れていたのですが、この組み合わせで使った機会というのは殆ど無く、せいぜい客先でお客様に資料を画面上で表示してみせるときに、Microsoft Surface Pro 3を持っていなかったために代わりに利用した程度でした。
よくモバイルルーターをセットで持ち歩いていれば、タブレット側にモバイル通信は必要ないと考える方も多いようなのですが、個人的にはこの意見にはどうしても賛成出来ません。
モバイルルーターが丸一日電源を入れ続けていても問題ないほどのバッテリー持続時間や耐久性を持っていれば問題ないかも知れないのですが、私が今まで使ったモバイルルーターでそのような使い方に耐えるものはありませんでした。
そのような場合、モバイルルーターは通信が必要なときに電源を投入することになりますが、「ルーターの電源ON→ルーターの起動完了と通信の確立→タブレットでルーターとWi-Fi通信を確立」という一連の流れには思いの外時間がかかるものです。
それならば操作のしにくさを我慢してでも、スマートフォンを使った方が良いということになってしまいます。私が今までSi02BFを活用出来ていなかったのはこの部分が大きいというべきです。
高級感は無いが実用性は高い
まずは外観については、個人的にはSi02BFの方が好みです。
▲CLIDE9の背面。プラスチック感が強く質感もあまり良くはない
どちらもプラスチック部分の仕上がりなどは粗い部分はあるのですが、背面がアルミ仕上げでそれなりにデザインされているSi02BFに対して、いかにもプラスチック感が漂うCLIDE9は、はっきり言ってしまえば安っぽさが感じられます。もっとも、実際にデバイスを使っている間は気になるような部分ではありませんので、それほど気にするべき要素ではないと思いますが。
もっとも、このさほど高級感を感じられない外装にもメリットはあり、Si02BFと比べて手に馴染みやすく、持ちやすく感じるのです。私は右利きで、手に持って使うときには左手で本体を保持するのですが、この時に私の左手は極端に左手の力が無く、急に力が抜けることもあるので、手に馴染まない物を持っていると本当に落としてしまうことがあるのです。今のところCLIDE9を使っていてそのような不安は感じられませんので、思った以上に持ちやすいということなのでしょう。
また、どちらもWindowsタブレットではあるのですが、Windowsボタンに相当する箇所はSi02BFの方にだけ用意されています。当然その意味での使い勝手はSi02BFの方が上回るということになります。CLIDE9を最初に使い始めたときには、思わずWindowsボタンを探してしまいましたからね。
一方液晶画面周りの出来についてですが、画質はどちらもIPSパネルを採用しているだけに、まずまず良好です。発色の傾向などは若干違いますが、どちらが良いかは好みの問題でしかないでしょう。ただ、同じWUXGAではありますが、ドットが若干大きくなるCLIDE9の方が視認性では上です。
▲2台の条件を合わせて表示。写真ではわかりにくいが発色には差がある
ちなみに肉眼で見る限りはSi02BFの方がやや色温度が高めで、白い背景が青白く見えます。CLIDE9の方はやや赤みがかって見えます。ただ、輝度やコントラストはCLIDE9の方が高く、これも視認性の向上に貢献しているのかも知れません。
そして個人的に決定的な差だと思ったのはタッチパネルです。どちらもスペック上は10点マルチタッチ対応となっていて同等なのですが、感度など操作感はCLIDE9の方が大きく上回っています。ペンと併用しても入力に手間取るSi02BFに対して、指でほぼ思い通りに動かせて、補助的にペンを使えば快適に入力出来るCLIDE9と感じられるほどの差が付きます。
▲Si02BFとタブレットペン。このペンの反応もCLIDE9の方が良い
PCとしての性能差はほぼありません(eMMCはSi02BFの方が高速ですが、これはロットによって変わる可能性がある部分です)が、一回り大きいCLIDE9は重量もSi02BF比で約140g重くなります。この重量差を苦にするか否かでどちらが好ましいかは大きく変わります。
今、最もお買い得感のあるWindowsタブレット
まず、今回のレビューに際して久しぶりにタブレットを常時持ち歩く生活をすることになったのですが、インターネットに常時接続されているタブレットの便利さを改めて実感しました。
これは以前Nexus7-32Tを持ち歩いていたときにも感じてはいたことではあります。しかしNexus7はAndroidタブレットですから、ソフト面ではスマートフォンと同等の環境しか利用することが出来ず、メールの応対などには大いに役立ちましたが、私の仕事がMicrosoft AccessやMicrosoft ExcelのVBAマクロを扱うことが多いということもあり、お客様からの「添付ファイルを確認して下さい」というメッセージには結局Androidデバイスでは対応することが出来ないことが多く、結果的にWindows PCのある場所まで戻らないと何も出来ないという事例も少なくはありませんでした。
その点Windows 8.1で動作して、モバイル通信に対応するCLIDE9であれば、この1台を持っていれば最低限の対応が出来る環境が整うということになります。液晶解像度がWUXGAというのも、VBAのコードを確認する際などの視認性の高さに繋がり、有り難い要素です。
ちなみにCLIDE9を利用開始する際には、まずはセキュリティーソフトとATOK 2015、Office 365 ProPlusを導入しました。これにSoftEther VPNクライアントとSQL Server用のODBCドライバーを用意することで、私の最低限の業務環境がそのまま持ち出せるためです。
▲Office 365 ProPlusを導入。比較用にSi02BFにも同じ環境を作った
CPUが実用速度を保っているBay TrailのAtomであるだけに、PCとして使っていてもはっきりと遅さを感じるほどではありません。これ以前のAtomを搭載したPCは使っていく上である程度の我慢を強いられる性能のものばかりだったのですが、Atom Z3735Fでは日常的な軽作業で不満を感じることはほぼありません。
私はモバイルデバイスをあまりホビー用途で使わないため、遊び目的で使った際に性能不足を感じることはあるのかも知れませんが、少なくとも私の日常作業に限っていえば意外なほど大きな不満は感じないままでした。
これは通信速度にも同じことがいえます。無線LANがIEEE802.11ac非対応で、モバイル通信もLTE非対応という、前世代の性能でしか無いのですが、実際に使っていてこの速度で困ったかといわれれば、それほど困ることはありませんでした。確かに普段の環境であれば1秒でダウンロード出来る添付ファイルを10秒程度かけてダウンロードしているという遅さではあるのですが、それでもモバイルルーターを立ち上げるよりはよほど早く済みますからね。
現在の日本市場では、LTEまたは3G SIMに対応したタブレットデバイスを選ぶ際に、Androidであれば豊富な選択肢がありますし、iPadでも各バリエーションにCellularモデルが用意されています。
しかしWindowsでは選択肢は大きく狭まってしまいます。SIMに対応するWindowsタブレットとしては、CLIDE9以外となるとDELL Venue 8 Proのショップ専売モデルとなるEveryPad Proや、一部販路で提供されるThinkPad 10 Docomo Xiなどもありますが、幅広い販売店で取扱があるものというとASUS TransBook T100TALやLenovo Yoga Tablet2辺りとなり、携帯性という意味ではEveryPad Proを除き大きく劣る物ばかりです。10インチクラスのタブレットは前述のOptimus Pad L-06Cとほぼ同等の重量のものが多いのです。
そのため、この中でもEveryPad ProだけはNexus7の後釜として一時期購入を検討したこともあったのですが、液晶解像度やeMMCの容量など、PCとしての基本スペックに難を感じたこと、そして8インチのWindowsタブレットとしてはどうしても割高感があることから、結果としては購入を見送っています。LTE通信対応という点はCLIDE9の3G通信以上に魅力はあるのですが…。
CLIDE9は3G通信に対応していることで、他の多くのWindowsタブレットに対して圧倒的な使い勝手の良さを持っていますし、全てにおいて最低限必要な物を満たすという絶妙のバランスで成立している製品です。
もちろんこれで完璧という訳ではなく、特にモバイル通信のLTE化は次期製品では必ず実現して欲しいところですし、無線LANをIEEE802.11acに対応させて欲しいとも思います。「もう少しここが良くなれば…」などと軽い不満をこぼすこともあるかもしれません。しかしAndroidのSIMフリー機とほぼ同等の価格帯で最低限の必要な要素が揃っていて、これ以上のコストパフォーマンスのWindowsタブレットが無いことにもすぐに気付かされるのです。現状で実売価格3万円台ということを考えれば、LTE通信対応の他のWindowsタブレット(他社製品は安くても5万円前後)と比べて大幅に安いことは間違いないのですから。
3Gの通信速度にしても、実験の通りMVNO SIMであっても平均2~3Mbpsは確保されているわけで、かつてのADSL程度の速度は出ているわけです。ADSL程度ということを踏まえて使えばそれほど不満も無いわけで、そこは使う側の考え方と工夫次第ということになります。
今回のレビューの本題となるCLIDE9のお薦めポイントは、この項のタイトルでも書いた通り「今、最もお買い得感のあるWindowsタブレット」ということに尽きます。何かがずば抜けて優れている製品ではありませんが、タブレットに一通り必要と思われる要素が揃っていながら、価格は格安といって良い水準なのですから。また、何かがずば抜けて優れている訳ではないのも事実ではありますが、比較対象のSi02BFと比べても明確な弱点が無いというところを見逃してはいけません。気になるような明確な弱点が無いということは、この製品の完成度が実はそれだけ高いということを示しているわけです。
私自身は3G通信対応という部分を抜きにしても、タブレットとしてSi02BF以上に気に入りましたので、今後はCLIDE9を常時持ち歩こうと思っています。Microsoft Surface Pro 3はタブレットとしてもPCとしても高機能・高性能でありもちろん気に入っているのですが、CLIDE9はタブレットに徹するのであればこれでも良いなと思わせてくれましたので。
おまけ:画面保護について
CLIDE9は、出荷時に一応画面保護シートが貼付された状態となっています。ただし、これは使用を想定した物ではなく、あくまで輸送時の保護用に過ぎない物であり、最初から気泡がたくさん入っていたりします。
レビュー執筆中はこの出荷時のフィルムを着けたまま使っていたのですが、数日使っただけで深い傷が入ったりするなど常用出来るものではなかったため、急遽保護フィルムを手配しました。フィルム自体も詳細や印象につきましては、下記レビューの方でご確認下さい。
やはりこの類の保護フィルムがあると、持ち歩く際の安心感が変わってきます。特にこのフィルムは高硬度タイプですので、以前ほど傷に対して神経質にならないで済むのが有り難いところです。
本当はジャケットなども用意したいところではあるのですが、大きさや重量が増してしまうと携帯性を損ない可能性もあるだけになかなか悩ましいところです。
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