最近はやりのハイレゾDAP。先鞭をつけたのはここZIGSOWでもプレミアムレビュー募集があったAstell&Kern AK100あたりで、2012年ごろのことだからまだ5年経っていない状況。
それまでのポータブルオーディオは、CD(DAT)グレードのデジタルデータを持ち歩けるCD WALKMANのようなものもあったが、大多数はmp3やATRAC3といった圧縮音源で、外ではカジュアルに音楽を聴くのであって、緻密に静聴するものではないという風潮だった。
それが通信速度の向上とメモリの大容量化というインフラ系の整備もあって、CDを超える音質の音楽データを持ち歩けるようになった...というあたりに登場したのが先のAK100。
その後2014年になって、ポータブルプレイヤーがそれまでのmp3プレイヤーからハイレゾDAPに一気に転換した。カジュアルに音楽を聴く層はCDレベルの音楽データであれば十分に高音質に再生できるようになったiPhoneなどスマホに流れ、わざわざ別体DAPを持ち歩く層は「それ以上」を求めるようになったからだ(もちろんiPhone⇒外部DACの二段積みでハイレゾ再生している人もいるが)。
その分野では先のAstell&Kern(iriver)以外は、COWONやFiiO、iBasso Audio、Lotoo、Cayinといった海外勢が優勢で、国内勢では2013年にハイレゾ対応したSONY WALKMANが気を吐くほかは、2015年初頭にTEACが製品リリースした程度だった。mp3プレイヤーの頃にはあれほどたくさんあった国内のポータブルプレイヤーメーカーも、分野製品自体の低価格化とスマホの台頭によるポータブルオーディオ専用機器のニッチ化ですっかり手を引いてしまっていたのだ。
そこに2015年末に満を持して登場したのがONKYO「DP-X1」とPioneer「XDP-100R」。もともとは独立企業だった両社が融合して現在は音響分野では「オンキヨー&パイオニア」として活動するが、そこからのリリース(オンキヨー&パイオニアイノベーションズ)。
さすがに先行機種をよく研究してあり使い勝手が良かったうえに、ハイレゾDAPに求められる機能ほぼ網羅しつつもリーズナブルな価格、国内企業のサポートも含めた安心感もあり多くの支持を得た。
その2機種が1年経たないスパンでそれぞれDP-X1⇒DP-X1A、XDP-100R⇒XDP-300Rと進化した。型番の違い通り?Pioneerの「XDP」の方が変化が大きく、スピーカーがなくなった代わりに2.5mmバランス出力を装備、ONKYOとPioneerの両DAPを外見的に分けていたバンパーも撤去とさまざまなところに手を入れてきた。
それに対してONKYOの方は型番に「A」が付いただけの「マイナーチェンジ」といった風情。事実仕様書で確認できる大きな差は内蔵メモリを32GBから64GBへ増量したことくらい。外見も変わらない。でも実は電源部にカスタムパーツ投入も含んだリファインを行っているらしい。手を入れるところがそれだけということは元の良さもあらわしているのかもしれないが、前作DP-X1ではバランス出力の有無と機能で分けた兄弟機XDP-100Rとの差が、より僅差になりながらも前作同様ONKYOブランドの方が高級機という位置づけが変わらないのは投入された内部パーツや改善のための回路変更がそれだけ効果があるということなのだろう。
そんな期待の最新DAP、「DP-X1A」を使用して見た。
まず外装だがわりに地味(^^ゞ
コンパクトな辞書、というような風情で、本体写真が載った箱型のケースから黒い内箱を引き出す。黒い内箱はパカッとわれる感じになっていて、一方には本体、一方には説明書類とUSBケーブルが入っているスペースがある。
そこそこ重くて大きいがアルミバンパーつけたiPhone Plusと思えば..
説明書を読むと最初に充電、ということなのでUSB-ACアダプタを介して数時間充電。その後再度の電源ボタン長押しで電源投入。
cybercatは実はAndroid OSベースのデバイスを触ったことがない(すでに持っているDAPは非ハイレゾ対応のWALKMANも含め独自OS、スマホはiPhoneのみ)。ここでびっくり?したのは初回電源投入時の初期画面が表示されるまでの時間。サイドの電源ボタン長押しで電源を入れた後、本機種の緑色のロゴマーク?が揺らぎながら表示されるだけでなかなか次の画面に行かない。そのうち画面がオートオフで消灯してしまう。こんなに長くかかるとは思っていなかったので時間を測っていなかったが、3分ほどはかかったと思う。初回以外の起動時にはそんなことはないので、自己診断初期化などに加えてSDカードの有無やWi-Fiなど周辺環境のスキャニングも行っているのかもしれないが、かなり不安な時間ではあった(説明書に「初回起動時は数分かかります」などとの記載があった方が安心できるかも)。
※ 2017/02/11追記:上記の評価は貸出機による。新品の起動時間は42秒だった。ただし、「リセット」を行った場合は、やはり3分以上の時間がかかった。上記現象はリセット時に起こることなのかも知れない。
起動後はAndroidデバイスとしての設定に入る。自分はGoogleアカウントを持っているので、今回はそれを使用した。言語選択⇒Wi-Fiの設定⇒Googleアカウント設定⇒支払い設定(今回登録せず)とAndroid系の設定が終わったら、次はオンキヨー&パイオニアのソフトウェアライセンス許諾など⇒ヘッドホン設定(ONKYOの型番一覧が出てきてBluetoothマークのあるのもあったので持っていればここでペアリング設定もできるのかもしれない)も含めて一通り終えて、やっとホーム画面にたどり着く。
今回このDAPはプレイヤーを起動しなければ、Wi-Fi Android端末なので当然Chromeではネットが見れたりする...が、単にDAPとして使うにはこの多機能がよくわからない。こちらは「DAP」を使いたいのにマップやハングアウト、GmailなどGoogle系でおなじみのアイコンが並んでいて、音楽再生がどれなのかがわかりづらい。
添付されていた説明書は「クイックスタートガイド」で詳しくないし。
実はホーム画面の「取扱説明書」が本機の詳細版説明書。紙の「クイックスタートガイド」には「さらに詳しい使い方については、取扱説明書(PDF形式)をお読みください。」と記載があるが、これを読まなければほぼ始まらない、という感じ。
この初回はWi-Fi接続が必要なオンライン「取扱説明書」に必要なことが書いてあることにはあとで気が付いたが、触っているうちにアイコンを見つけたので起動してみた。...が、最初は何も入っていないのでよくわからない。
「とりあえずなんか入れてみるか」ということで、PCに「クイックスタートガイド」にあるデータコピーソフト「X-DAP Link」をダウンロードしてみた。
楽曲転送Mac/PCアプリケーション 「X-DAP Link」。PC(Windows)用最新ヴァージョンは2016年11月現在「ver 1.1.0(2016/9/7)」。ONKYO DP-X1Aサイト内からダウンロードする。
setupファイルを実行すると、「Microsoft visual C++ 2013」のインストールが先行して行われ、その後ソフトのインストールが行われる。起動させるとPC上にある音楽ファイルを拾って来ようとするが、cybercatはiTunesなどは使っておらず(今回「X-DAP Link」をインストールしたPCとは別PCでiPhoneバックアップ&動画転送用としてのみ使用)、マニュアルで管理しているのでその楽曲が入っているフォルダを指定した←このことで後で結構苦労することになる。
「X-DAP Link」は上側に指定したフォルダにある曲がずらりと並び、下に下向き矢印が3つあるという画面構成。ソフトをインストールしたPCに画面のロックを外したDP-X1Aを接続し、矢印の横の「選択」ボタンを押すとDP-X1Aのストレージを割り当てることができる。DP-X1Aには内臓ストレージとmicro SDカードスロットが2つあるので、3つ矢印があるわけだ。曲の左側にはやはり3つのチェックボックスがあり、どのストレージに転送するのかが視覚的に分かるようになっている(重複して転送も可)。
今回cybercatは左の青矢印を内臓ストレージ、中央の黄色矢印をmicro SDカードスロット 1に入れた(micro)SDカード
を割り当てた。
ここで各楽曲を「タイトル」「アーティスト」「アルバム」「ジャンル」「フォーマット」という並び替えボタンを駆使しながらDAPのメモリに転送する楽曲を選ぶ....のだが。
アルバム整列時。この二つの同名のアルバムってどう内容違うんだっけ(^^ゞ
自分の環境では使い物にならなかった。
今まで持っていたAK120BM+は「iriverPlus4」という転送ソフトがあって、それを使えばアートワークなども確実に転送できるのだが、対応がWindows7までであることと、音楽データの検索範囲のフォルダ指定ができないため、自分でコンバートしたFLACファイルも、ラジオの過去音源CDをコピーしたmp3ファイルもそのPCにある音楽ファイル形式のものをすべてひっかけてしまって収拾がつかないこともあって転送ソフトは使わず、SDカードのハブ機能があるため、エクスプローラから直接フォルダを作ってファイルを書き込んでいた。N5の方は中華DAPならではの文字化けがあって、タグの日本語名がほぼ使えないため、ファイル名を「XX_曲名.flac(XXは曲順)」としていた。....というような状況なので、タグがきちんと書き込まれていないファイルが多い。さらにダウンロード購入楽曲も「e-onkyo music」以外のサイトから入手したのもあり、それらもタグ情報がバラバラ....という状態。
それでいて音楽ファイルを置いているフォルダは3000曲が収められている...
このフォルダ全体をX-DAP Linkの「曲の置き場」と指定してしまうと、とても探せないほどの曲がリストに並ぶ。そのファイルがどこのフォルダにあった音楽ファイルかという情報が表示されないため、例えばハイレゾと非ハイレゾを持っている曲はどちらなのかよくわからない。あと自分は(後でフォーマット変更に対応可能なので)ダウンロード購入はwavファイルで行って、自分でFLAC化することが多いが、この時今までは「アルバム名」フォルダの中に「FLACフォルダ」と「wavフォルダ」を作ってデータを分けていた。それがこのX-DAP Linkのフォルダ指定で上位の「音楽データフォルダ」を指定してしまうと、wavもFLACも引っ張ってきてしまうので、選択が難しい(こちらは表示はあるが)。
この状態を改善するには、現在の「並び替え」機能ではなく「選択」機能が必要だし、検索機能も(可能ならあいまい検索)必要。
また現在バグと思わしきものもある。
転送に失敗したファイルでサイズが「0バイト」のものがあったのだが、その情報が残ってしまって、削除して再転送してもその「0バイト」のファイル情報が復活するだけ。転送元や転送先のフォルダ名を変えてもその楽曲ファイルを記憶しているらしく何度やっても「0バイト」ファイルの復活で終わる。
以上のように自分の環境ではX-DAP Linkはとても使いづらかった。少数の楽曲を特定のサイトでダウンロード購入しているひとであれば、操作性は直感的なのでよいところもあるのだが...
そこで結局エクスプローラでファイルを直接送り込むことに。
Windowsデバイスではないので、USB接続しても解除時に警告が出なかったり、内蔵メモリとSDカードが一つのストレージのフォルダのように見えたりと、Androidに慣れていないcybercatには若干「試行錯誤」が必要だったが、慣れればこっちの方が全然早い。ただちょっと毎回びっくりするのはファイルコピー時に出る「変換推奨」の警告。ただここは無変換で行くのが正しい。
こうして転送すれば、あとはミュージックアプリを起動させれば普通に再生できる。
ちなみに曲の転送も結構高速。DP-X1AはUSB2.0ポートだが、USB3.0のN5と比べてもめちゃくちゃ遅いわけではない。12曲計1.33GBのFLACファイルをエクスプローラ経由で転送した場合、N5は1分10秒で終了したが、DP-X1Aも1分30秒でさほどに遅すぎるわけではない。これが同じUSB2.0のAK120BM+は3分21秒かかり、さらにPCへのマウントを解くと、現在DAPに300曲くらい入っているので3分ほどインデックスの更新にかかるためこれを入れると6分25秒とお話にならない。AK120BM+に慣れていて、N5を購入したら転送が早かったので「さすがUSB3.0は激速!」と思ったが、どうもそういうわけではなかったらしい(この比較、各DAPに仕込んだSDカードの容量が違うのと、その使用率も違うので純粋に公平な比較でないことはお断りしておく)。
このほかの楽曲導入方法としてWi-Fi機能がある本機では直接ダウンロード購入、というテもある。特に関連会社のハイレゾ音源配信サイト「e-onkyo music」はアプリ内にショートカットもあり、手軽に導入できるようになっている。
アプリ内のメニューから「e-onkyo music」には行けるようになっている。
今回比較のためにすでにCDを持っているTRUEのアニソン「サウンドスケープ」
を購入してみた。
基本Wi-Fiインターネット端末なので、画面などは一般的なパッドなどと同じで迷わない。圧縮されている場合の解凍ソフトもGoogle Playで見つけることができる。ただし、解凍時の名称などがわかりづらく、せっかく本体内にe-onkyo musicフォルダがあるのに、指定したストレージのルートに曲名とは関係ないフォルダができてしまうなど連携は今一つだ。
上記で触れたタグを編集した場合の表示の位置は以下の通り。タグ編集ソフト「MP3TAG」
でのタグ情報ではメイン画面で「タイトル」、「アルバム」と「アーティスト」が表示される。その位置は以下の通り。
「アルバムアーティスト」や「ジャンル」は表示されないが、プレイリスト作成時にはジャンル縛りの抽出などもできるので、タグ編集はきちんとしておいた方があとあと便利だ。
DP-X1にはBluetooth機能がある。Bluetoothレシーバー&イヤホン用ポタアンとも言うべき「SoftBank SELECTION Astell&Kern XHA-9000 (SB-XB10-BTHA)」
と連携させてみた。
メニューのBluetoothをONにしてXHA-9000をペアリングモードにすれば機種が表示されるのでペアリングさせる事ができる。このペアリングは複数可能で、以降は自動的に接続をとるようになる。Bluetooth機能付きカーステなどとペアリングしておき、車に入ってカーステのソースを「Bluetoothオーディオ」にすればその音源として、XHA-9000をオンにすればその音源として使うというようなことが特にいちいちペアリングを取り直さなくともできるようになる。
この機能を使えば、どうしても絡みがちなケーブルをなくせるので快適。
XHA-9000はリモコン機能も持っているため、DP-X1Aの再生・停止、曲送りと音量が変えられる。とくに曲送りは画面に表示されている情報も連動して送られるので見ていて楽しい。
Bluetoothの設定確認とXHA-9000での曲送り時の画面
とても便利に使えるDP-X1AのBluetooth機能だが、DP-X1AのBluetoothの電波は強くはないようだ。通勤鞄にDP-X1Aを入れてXHA-9000を背広の胸ポケットにつけてリスニングした場合、鞄を座席の足元に置いて聴いた場合は椅子の上で身体をよじるような事をしても一切音の途切れはないが、鞄を肩にかけ、歩行すると時々切れるようになり、鞄を背側に回すとそれが頻繁になる現象が見られた。検証すると身体を挟むと(DP-X1AとXHA-9000の間に身体がはいると)駄目なようだ。
これはレシーバー側の問題ではなく、再生機をiPhone6 Plus
にした場合、同じシチュエーションでは一切切れない。
また人体だけでなく、距離や障害物でも同じ事が言え、iPhone6 Plus⇒XHA-9000の場合は隣接する部屋に置いた本体から飛ばしても音が途切れることはないが、DP-X1A⇒XHA-9000の組み合わせだと見通せる位置関係だと聴こえるが間に壁やドアが挟まるとプチプチ途切れたり、距離自体も見通せても3m離れるとややキツイ感じに。
従ってDP-X1AのBluetooth機能はレシーバーと同じ側に本体を置いて、身体の動きによってイヤホンケーブルが絡まないようにする効果に留めることがリスニング中の瞬断を防ぐ使い方だと思われる。
長期の運用ができたのでバッテリーの保ちについて検証した。当初はバッテリーが切れるまでの時間を計測しようと考えたが、意外に長く保ったので各種パターンの計測に長時間かかるのと、その結果のブレも大きくなりそうなので、東京大阪間の新幹線での検証が数回できたので各種モードでの3時間半での消費電力を調査した。
DP-X1Aの音量は「135」固定(この音量、かなり大きい←自分はかつて楽器演奏しながらヘッドホンでモニターするというようなシチュエーションが多く、慣れているが)。
そして次の3パターンで音楽を聴いた。
・XHA-9000を用いたBluetooth接続
・通常モードでの有線接続
・Wi-Fi、Bluetooth機能、液晶表示をオフにして音質を向上させるStand-alone modeでの有線接続
これを3.5mmアンバランス接続と2.5mmバランス接続で検証した。
Stand-alone mode以外の2つのモードでは、サイドボタンでの曲送りだけでなく、画面を使っての曲選択などもある程度やる「普通」の使い方。その結果は以下の通り。
上記の表の数値は3.5時間使用後のDP-X1Aの「電源」の数値。
全体として、残り時間はアンバランス接続>バランス接続となった結果だが、この時は本体ヴォリュームを固定したが、聞こえる「音量」であわせるとバランス接続の方が音量が稼げるので、もう少し差が縮まるかもしれない。また3.5時間の間の画面操作がどうしても均一にはできないので、消費電力が大きな「画面」の消費率の差が残り時間に直接影響する感じだ。
しかし、Stand-alone modeで禁欲的に?使った場合だけでなく、いずれの使用法であっても3.5時間使用後7時間以上の残量があったため、つねに画面を表示させるような事をせず、普通のミュージックプレイヤーとしての使用では、常識的な「1日」は保つ、と考えてよいだろう。
このDP-X1Aには多くの再生にかかわる機能がある。
まずイヤホンなどの再生デバイスの接続方法が、一般的なアンバランス(3.5mm3極)だけではなくバランス接続(2.5mm4極)も選べる。さらにこのバランス接続は一般的なBTL接続のほかに、GND側を強制0にして安定させる「ACG(アクティブコントロールGND)駆動」という方式も選べる。
さらにイコライザーもグラフィカルでバンドが無段階なものがついているため積極的に音を造ることもできるし、有名音楽家のプリセットEQも用意されているので、気に入れば使ってみればよいだろう。
有名音楽家のEQセッティング。ヘヴィメタバンドAnthraxのScott Ianの名も見える。
さらにデジタルフィルターの切り替えやジッターのロック幅調整などマニアックな設定もあるし、リアルタイムアップサンプリングもあるといろいろな音を積極的に創っていくこともできるDAPとなっている。
特にEQであまり劇的にブースト/カットをいじらず、DAPの素の音を好みのイヤホン・ヘッドホン・CIEMで好みの音に変えながら聴くのが、クリエイターの意図を汲み取りつつ音楽を愉しむには一番良いと考えているcybercatにとっては、この3種がキモかも知れない。
このうち「ロックレンジアジャスト」はロックレンジ精度を調整することでジッターノイズを軽減する機能で、狭めるほどジッターノイズが減り音が締まってくる効果がある。しかし、限度を超えて狭めると音がぷつぷつ途切れるようになる。CDレベルの音(FLAC44.1kHz/16bit)を追い込んでいくと、「Narrow」から2番目というかなり攻めた値がカッチリ感があって良い。
「デジタルフィルター」は3種のフィルターによって音の傾向を変えるもの。DACに元々備わるデフォルトの「SHARP」、よりやわらかな「SLOW」、パイオニア独自開発の応答性の高い「SHORT」があったが、自分的には「SHORT」が良かった。
そして「アップサンプリング」に関してはヘッドホン/イヤホン出力での最大、192kHzの耳への優しさが好印象。
ただ、これぜんぶ最良の組み合わせができないところが悩ましいところ。デジタルフィルターは良いのだが、アップサンプリングのサンプリング周波数を上げるとロックレンジアジャストの設定が厳しくなるのだ。
いくつか試行錯誤した結果、cybercat的にはCD音質ファイルの再生は
・ロックレンジアジャスト:Normal
・デジタルフィルター:SHORT
・アップサンプリング:192kHz
と言うのが一番心地よかった。
Musicアプリも地道に改良が続けられており、2017/03/14公開のVer.1.6.0では画面下部にミニプレイヤーが追加された。
【改良前】
【改良後】
そうそう、音楽試聴後はホーム画面の壁紙が最終再生曲になるので、要注意?だ。
ハイレゾイヤホンでハイレゾ楽曲を聴いた結果を他のDAPと比較したもの、およびDP-X1Aでアンバランス接続と2つのバランス接続を比較したものは別項にまとめてある。
⇒DP-X1A のハイレゾ/バランス接続使い倒し
DP-X1Aは比較的手ごろな価格ながら、内容的には高級機といってよい音質といろいろ追い込める調整機能を持ったDAPだった。
特徴としては
○アンバランスに加えてバランス接続も装備し、後者はACG接続という他にない方式も備える
○音質はハッキリ、クッキリタイプでイヤホンや楽曲方式の違いを堪能できる
○イヤホンドライブ力はなかなかのもので、駆動力的には多くのイヤホンではポタアン不要
○広い画面で操作がしやすく、アルバムアートも美しい
●X-DAP Linkは熟成不足。大量の音楽ファイルを持つひとでは使い物にならない
●Android機のため、システムファイルなどが多くあり、特に内蔵メモリは見通しが悪い
●ボタンの反応に一呼吸の「間」がある
●e-onkyo musicとの連携は今一歩
というようなあたりであろうか。
ただ総合的に見れば非常にコストパフォーマンスが高いDAPであり、スマホからのステップアップとして値ごろ感がある価格設定ながら、多くの人にはファイナルアンサーになりうる機能と音質を備えたDAPであると感じた。この高機能・高音質なDAPが日本に生まれたことを喜びたいと思う。
末筆とはなりましたが、今回このような機会を与えてくださったオンキヨー&パイオニアイノベーションズ株式会社様 、ZIGSOW事務局様に御礼申し上げます。またレビューアップまでの応援など常に支えとなってくれたおものだちの皆様はじめジグソニアンのみなさまに感謝いたします。
ありがとうございました。
【仕様】
OS:Android OS 5.1
ディスプレイ:4.7型静電容量タッチスクリーン(1280×720)
内蔵メモリ:64 GB(システム領域含む)
拡張メモリ:microSDスロット×(最大各々200GB、SDXC対応)
Wi-Fi:802.11 a/b/g/n/ac (Wi-Fi Direct / WPS)
Bluetoothプロファイル:A2DP/AVRCP/HSP/OPP/HID/PAN
コーデック: SBC / aptX
オーディオ形式 DSD(DSF/DSDIFF)/ FLAC / ALAC / WAV / AIFF / MQA / Ogg Vorbis
MP3 / AAC
再生対応
サンプリング周波数
および量子化ビット数 44.1 kHz / 48 kHz / 88.2 kHz / 96 kHz / 176.4 kHz / 192 kHz / 352.8 kHz / 384 kHz (16 bit / 24 bit / 32 bit*)(*32 bit float / integerは24 bitにダウンコンバートして再生)
DSD 2.8 MHz / 5.6 MHz / 11.2 MHz (1 bit), PCMに変換して再生
対応プレイリスト方式 M3U / PLS / WPL
対応ビデオ形式 H.263 / H.264 AVC / H.265 HEVC / MPEG-4 SP / VP8 / VP9
対応静止画形式 JPEG / GIF / PNG / BMP / WebP
実用最大出力 75 mW + 75 mW (Unbalanced /JEITA)
150 mW + 150 mW (Balanced /JEITA)
歪率 0.006 %以下
S/N比 115 dB以上
再生周波数帯域 20 Hz ~ 80,000 Hz
インピーダンス Unbalanced: 16 Ω ~ 300 Ω / Balanced: 32 Ω ~ 600 Ω
入出力端子 2.5 mm 4極バランスヘッドホン出力(Line outモード対応)(先端からR- R+ / L+ L-)
3.5 mm 3極ヘッドホン出力(Line outモード対応)
Micro USB-B / OTGデジタル出力(充電・データ転送兼用)
ゲイン切替え Low2 / Low1 / Normal / High
再生時間 約16時間(96 kHz/24 bit FLAC アンバランス再生時)
寸法(HxWxD) mm 129.0 mm x 75.9 mm x 12.7 mm
重量 205 g
付属品 Micro USBケーブル(1.0 m)※充電・データ転送用
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2016/11/23 調整機構詳細追記
2017/01/11 本レビューが最優秀レビュアー賞受賞
2017/02/11 タグ編集/Bluetooth機能/バッテリーの持続時間の項および情報追加
2017/04/16 Musicアプリヴァージョンアップによる機能追加追記
*DP-X1Aの画面のスクショ取得機能:「電源」と「曲戻し」の両ボタンの同時長押し
DP-X1A のハイレゾ/バランス接続使い倒し
まずはハイレゾDAPであるDP-X1Aの特徴が出るはずの「ハイレゾ楽曲を」「ハイレゾ対応DAPで再生し」「ハイレゾ対応イヤホンで聴く」という試み。
今回2種のハイレゾ対応イヤホンで、所持する他の2つのハイレゾDAPと比較した。
比較対象機:
①Astell&Kern AK120のバランス出力追加改造機「AK120BM+ (Balanced Mod+)」
②DSD128ネイティブ再生対応機Cayin N5
一つ目のイヤホンは純国産ハイコストパフォーマンスハイレゾイヤホン、SATOLEX Tubomi DH298-A1Bk。
イヤホン自体のレビューのときはAK120BM+での評価となり、その時は若干中低域にピークがあるほかはかなり素直なバランスで、左右に広いのが特徴という印象。どちらかと言えば高音の伸びよりも低域の充実が感じられたイヤホン。
これでハイレゾ楽曲としては、小編成の近い「録り」でプレイヤーの息吹までも感じられる吉田賢一ピアノトリオの“STARDUST”(PCM24bit/96kHz)
から「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」。この曲は左にピアノ、右にドラムス、中央にベースが位置するが、音の傾向によって特に右のドラムスの「大きさ」(音量的な意味ではなく)が違って聴こえる曲。
まずAK120BM+ではレビュー通り、スネアのリムショットとハイハットのフットクローズがシャキッと鋭い音で、ライドシンバルのレガートも、右端から中央まで広がってかなりドラムスが大きい。一方途中のベースソロではきちんと中央にベースが沈むが、ボディの音より弦の音が強い感じの硬めの音となる。
それがCayin N5では中低域がぐんと出る感じに。リムショットとハイハットクローズは相変わらず目立つのだが、スティックの鳴りやスナッビーの響きが大きかったAK120BM+に比べると、スネアヘッドの音が優勢となる。高域が抑えられた感じでシンバルは少し安っぽい音に。ベースソロになると質量は圧倒的で、ぐんとバランスが下に沈むが、あまり明晰さはない感じ。
これがDP-X1Aになると、ちょうど音色傾向的にはAK120BM+とCayin N5の間くらいのイメージ。シンバルの広がりはAK120BM+よりはやや小さいが、心地よく上に伸び、質感もよい。リムショットのキレもよくリズミカル。一方ベースソロになると弦よりボディが鳴っている音が響くような低い重心だが、きちんとフレーズが明確で基礎がしっかりしている。これは両DAPの良いところ取りのちょうどよい塩梅。
宇多田ヒカルのハイレゾコレクション(PCM24bit/96kHz)“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”から「First Love」。
なんと言っても当時16歳だったヒカルの震える声と、1コーラスサビ前でヴゥゥゥゥンと割り込んでくるベース、生ギターのタッチやストリングスの震えのリアリティが欲しい曲。
AK120BM+は最初のギターが鳴った瞬間に部屋の広さがわかる感じ。ブレスノイズがやや大きめで近くにいる感じのヒカルの震える声がいとおしい。高域寄りのAK120BM+の倍音の美しさと低域寄りのTubomiの良さが両方出るのか、ベースは結構存在感があっていい。
N5はギターは感動を覚えるレベルではないが、ヒカルの声が近く、太い。途中から入ってくるベースはやや中低域にピークがあるイヤホンTubomiではゴリゴリ来るかな、と思ったけれど量はあるものの押し出しはさほどではなく、意外にまろやか。
DP-1XAは、出だしのギターのタッチやヒカルの声の存在感がいい。Tubomiとの組み合わせではベースは一番押し出しが良く、緩やかなグルーヴを刻む。何よりよいのはツリーチャイムやストリングスというバックの広がり。ラストコーラスでのドラムスがこれでもかと盛り上げた後、スッと引いてストリングスとギター、ピアノだけになるところの響きが美しい。
ハイレゾと非ハイレゾの聴き比べもしてみようと、同じ楽曲の音源を用意した。fripSideの「Luminize」
は打ち込みメインで、刺激的なSEやサンプリング音がちりばめられた音過剰気味の曲。このTubomiはその刺激的なところをうまくカバーして耳に優しい感じにする。
AK120BM+では両者の差はギター。右chで聴こえるギターの音が厚いのがハイレゾ、薄い感じの音になってしまうのが44.1kHz/16bit FLAC。
N5の音をtubomiで聴くとどの組み合わせよりもバスドラが前に出る。アタックの後のボディが薄く、硬い感じのする44.1kHz/16bit FLACに比べると、96kHz/24bit FLACはボディがある感じだ。
DP-X1Aはこういう「かっちりした」曲調には合う。硬いベース+バスドラのデジタル感もよく出ている。両フォーマットの違いもわりに判り、この曲レベル飽和気味なのだが、ハイレゾの方がダイナミクスが大きいことがわかるし、ギターソロのバックで鳴るSE音が柔らかい(きめが細かい)。ただ面白いのが44.1kHz/16bit FLACファイル再生時。DP-X1Aの表示が「PCM 48kHz」となるのだ。これは内部的に44.1kHz⇒48kHzにアップコンバートしているのだろうか。
この曲のほかもCDクオリティのファイルは「PCM48kHz」と表示される
これらの曲を聴くイヤホンを高音美麗なもう一つのハイレゾイヤホン、SoftBank SELECTION SE-5000HR
に替えてみる。
ジャズナンバー「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」は、AK120BM+はちょっと高音が刺さり気味なほど前に出る。シンバルに耳を近づけて聴いている感じの音になる。ベースも腰高でちょっとバランスが良くない。
Cayin N5はふくよかなベースとピアノの音量バランスは結構いい。ドラムスはシンバルレガートのアタックの刺さりはなくなり、軽やかなリムショットが曲をまとめる。途中のベースソロではベースの音量は上がっているのだが、刺激的ではないのでむしろドラムのブラシの音が目立つ。
これをDP-X1Aに変えるとベースが明確。量的にはN5の方が多いのだが、ぼんやりとしたところがなく、やや硬めの音に。ベースのリアルさはこれが一番!シンバルも高音域がありながらも刺さらないため広がりがあっていい。
「First Love」は秋山浩徳のギターがリアルなのはAK120BM+。弦を滑る指のノイズが素晴らしくリアル。ストリングスが上に抜けていくところや、シンバルの広がりが心地よい。さりとて下がないかというと、2コーラスのベースやライトのタム回しのアタックが強いのでガッツがある感じで鮮明。
中低域が充実しているN5と、高音が伸びるSE-5000HRは、短所補い合う補完関係に行くか、利点消し合いの組み合わせになるかわからなかったが、わりに前者。全体に柔らかく優しい音になり、耳障りな感じがなくなる。
DP-X1Aはすべてが鮮明。N5とは逆方向で、SE-5000HRが出せる能力を全部出したという感じ。ストリングスのボウイングは切れそうなくらいだし、2ndコーラスのベースの実在感がゆっくりとしたグルーヴを出している。ヒカルのブレスの実在感や、部屋の大きさ感という「雰囲気」も出ているし、すべてがきめ細やかになった感じ。
ハイレゾ/非ハイレゾの聴き比べ、fripSideの「Luminize」は曲調がこのイヤホンの特性との相乗効果で、高音域が良く言えば華やか、悪く言えば過剰になるが、いずれのDAPでも高音域の刺激的なSEがむしろハイレゾの方が耳に優しいのが意外。パッと聴き、派手なのはCDから起こしたFLACで、96kHz/24bitの方がまろやか。
AK120BM+の44.1kHz/16bit FLACは、ビームガン?の音ようなSEとリバースサンプリングのシンバルが刺激的。高音域のピコピコとしたシーケンスパターンやギターのリズムがよく聴こえるのが、96kHz/24bit FLAC。刺激的と感じていた44.1kHz/16bitの音が、これの後に聴くと耳障りに聴こえる。
N5は、SE-5000HRの高音の伸びとまろやか目のDAPの下の充実が、刺激的でともすれば神経質なこの曲に肉付けしていい感じに仕上げる。ただその分、44.1kHz/16bit FLACと96kHz/24bit FLACの差は小さくて、後者の方がやや飽和感が少ないほかは大きな違いがない。
DP-X1Aは、薄いAK120BM+とも膨らんだN5とも違う、低音域のかっちりとした土台がデジタルなこの曲を支える。またピコピコとしたシーケンスパターンがパンしているのも明確。44.1kHz/16bit FLACと96kHz/24bit FLACの違いは一番わかる。音が緻密な感じだ。
全体を通して言うとAK120BM+は高音域が美しく繊細だが少し線が細い、N5は中低域のエネルギーがあるが高域の伸びはさほどではなく、肌理もさほどに細かくないのでハイレゾのメリットを感じ取りづらい。DP-X1Aは一番音がしっかりとしていて上から下まで出ている。その分ハイレゾファイルの耳触りの良さが一番感じ取れた。組み合わせ的に最良なのはDP-X1AとSE-5000HRが一番「ハイレゾの満足感」を享受できた。
画面が大きく輝度の高いDP-X1Aは屋外でも操作しやすい(↑かすかに画面が見える)
では、バランス接続にしてみるとどうこのサウンドが変化するのだろうか?
接続環境としては一番違いを聴き取りやすい片耳10ドライバーのCIEM「HEIR AUDIO Heir 10.A」
に適合バランスケーブル「NOBUNAGA Labs MEDUSA」
を装着し、バランス視聴時はこれをDP-X1Aの2.5mmバランスアウトに、アンバランス接続時には4極2.5mmバランス⇒3極3.5mmアンバランス変換ケーブルである「BriseAudio UPG001CONV」
をさらに繋いでDP-X1Aの3.5mmアンバランスアウトに接続した。アンバランスアウトの方が接点が増えるので若干不利だが、装着具合によって音が変わりやすいCIEMを外してMEDUSAをカスタム2pin⇔3.5mmアンバランスのケーブルに付け替えるよりは影響を最小化できるし、聴いた音が新鮮な記憶の内に比較できるため、この方法を採った。
では例によって、吉田賢一ピアノトリオの「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」からだが、まずは一般的?と思われるアンバランスアウトから。
3.5mmシングルエンドは、スネアとハイハットクローズが「近く」、ピアノが比較的大きめに聴こえる音。さすがに10ドラの10.Aだとベースソロの低域側への沈み込みも結構ある。...が、これを2.5mmバランス接続に替えると、シンバルやスネアの「出」は少し引っ込んだが、キレは上がって、もっとベースが出てくる。音に芯がありベースソロはホントに気持ちよい。あとドラムスの各パーツの分離が良い感じ。これをDP-X1Aに備わるもう一つのバランス接続、「ACG接続」にすると音色のバランス的にはむしろアンバランス接続に近いイメージのハイハットやリムショットが目立つバランスに。ただベースの力強さが違うのとシンバル音の鮮度が高い。
宇多田ヒカルの「First Love」も元々優秀録音だが、シングルエンドとバランスではやはり違う。音を写実的に聴かせるDP-X1Aではアンバランス接続でも十分ベースの存在感はあるが、バランス接続ではCIEMが低音がしっかり出る10.Aである事もあって、ベースの存在感がもの凄い。2コーラス目はベーアンの前で聴いているような音圧と力強さ。これをACG接続にすると各楽器の音量バランスはシングルエンド接続とそこまで大きく変わらず、でも各楽器の「芯」が強くなった印象になる。
このレビューで購入した楽曲、元気なアニソンTRUE(唐沢美帆)の「サウンドスケープ」
はCDレベルのファイルとハイレゾがあるので、6パターンで評価。一般的なCDレベル(44.1kHz/16bit FLAC)に3.5mmアンバランス接続。さすがに10.Aではオーバーフローすることはないが、結構刺激的でレベルいっぱい使った飽和系の音。これをバランスにすると例によってベースがグンと膨らんでグルーヴィー。これでACG接続にするとまたアンバランスと同じ感じかな..と思ったらこれはチガウ!ベースの量自体は普通の方が多いのだが、ACG接続の方が締まってるのと、端の楽器類(ブラス)がよく聴こえるのでゴキゲン!今までの2曲ではあまりACG接続のおいしさがわからなかったが、これはよかった。今度はファイルをハイレゾファイル(96kHz/24bit FLAC)に換えてまずはアンバランスアウト。..これハイレゾと普通のでミックス変えてるのかな?若干ヴォーカルが遠目でむしろ普通のほうのが良いかな...元気なブラス隊の音の粒立ちはよくわかるのだけれど...バランスにするとヴォーカルに輝きが戻った!ヴンヴン唸るベースとバスドラの連打で爆裂系のリズムがすごい気持ちいい。これはACG接続でも変わらず。ベースとバスドラはアタック重視で少し重心は上がるが、代わりにタムの響きがドゥンと来てこれはこれで!
オーケストラ系楽曲はどうだろう。ピアニスト紅い流星が率いる交響アクティブNEETsによる「艦これ」オーケストラアレンジの第一弾“艦隊フィルハーモニー交響楽団”
より勇壮で激しい「鉄底海峡の死闘」。比較試聴に使っているCIEM、「HEIR AUDIO Heir 10.A」はその前の8.Aとともにクラシックでチューニングしたと言うだけあって、アンバランス接続でもかなり低音が押してくる。でもこれをバランス接続にするとさらに低音がマシマシになり、コントラバスの胴鳴りや、ティンパニの打音に伴う地響きも聴こえてきそうな充実度。ACG接続はキメは細かいながらも音域バランス的にはアンバランス接続にどちらかと言えば近い。ラッパ隊の燦めきはこちらの方があるかな。
一転、近頃のイヤホンなどの一連の聴き比べで、「美味しく」いただこうとすると実は機材的にかなり難易度が高い楽曲であることに気がついた音飽和系ビート優勢のアニソン、洲崎綾渾身の色気表現をぶつけたデレマス楽曲「ヴィーナスシンドローム」
は、さすがにモニターが10.Aだとシングルエンドでも美味しくいただける。中央低域でドカドカ鳴る4つ打ちのバスドラ+ベースもそこそこ「いなして」いる。これをバランスに替えると低域はさらに暴力的に上がる。でも歪み感が全くなく、あやちゃんのヴォーカルが真っ芯に定位するのと、左右に駆け回るシーケンスパターンも明晰で、閉塞感がなくてこれはバランス接続の圧勝。そこでこの機種独自のバランス接続ACG接続を試すと、低域の量感はノーマルのバランス接続に譲るが、バランス的には中域が充実してこれはすごくいい!バスドラの音は響きは十分ありながらも、アタックが出てくるのと相対バランス的にヴォーカルが一番前に出る。この曲、今までのどんな機材の組み合わせよりもこのACG接続⇒10.Aの組み合わせが一番気持ちよく聴けたかも。
一気に時代を遡り古典ロックの神曲、複数のギターの調べが美しいEaglesの「Hotel California」
は、10ドラCIEMの10.Aを使うとアンバランス接続でも、左右に十分広い音場と、各楽器の描き出しができている。これをバランス接続にすると、スネアのチューニングが下がったように感じられ、ベースラインが支配的になり、まるでギターリフのよう。自分はドラマーだったのでベースラインを一番聴いているためこれで良いけれど、人によっては「出過ぎ」と思うかも。ACG接続は初っ端の12弦ギターの音からもう美しい。ベースは低音の量は普通のバランスに譲るけれど、低次倍音のあたりがハッキリクッキリしているので、やはり存在感はある。中央のベースがそこまで主張しないので、アンバランスと同じく左右端の楽器などが明晰で、ギターのプレイを聴きたければこっちかなぁ...アンバランスを一皮剥いて鮮度を上げた感じの音。
最後に一番聴く系統のフュージョンは、T-SQUAREが日野'JINO'賢二をラップとベースに迎えたセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”
の「RADIO STAR」。ファンキィなこの曲はなんと言ってもベースのキレと迫力。既に持っている2つのDAPより締まった低音と繊細で緻密な高音域が身上のDP-X1Aはこのファンキィフュージョンにはツボハマリ。シングルエンド接続でもJINOのタイトなベースがグイグイ攻めてくる。...が。バランスにするとさらにガンガン来る。イントロで弾ける爆発音のようなSEもバァァァァァァァンと左右に散りながら深く沈むし、スラップのプルの力強さが違う。ACG接続も低音の力強さでは負けていないが、絶対量ではやはり普通のバランス。ただピアノソロのバックのバランスはACG接続ぐらいの方がいいかな。
一言で言えば、どんなフォーマット、曲調、録音状態のものでもアンバランス接続が勝っている場面は皆無。一部にはアンバランス接続に否定的なメーカーもあるようだけれど(明確な効果が得られない)、きちんとアース対策をした据え置きならいざ知らず、どうしてもアースが浮き気味になるポータブルオーディオ分野ではその優位性は揺るがない。
一方今回2種のバランス接続があるが、これは一長一短...というか曲によって合うあわないが違う感じ。ゆるぎない定位や音場の広さは共通なのだが、音量も稼げて低いところにパワーがグンと乗るバランス接続と、もう少しアンバランス接続に近い帯域バランスですべてをふた皮くらい剥いた感じになるACG接続。アンバランス接続からの「わかりやすい変わった感」が欲しければ通常のバランス接続、アンバランス接続とあまり全体の雰囲気を変えずにすべてを底上げしたければACG接続というのが結論か。ただ、この二つの接続、いったん再生は止める必要があるが簡単に切り替えできるので、気分や楽曲に合わせて変えてみてもよいのかも(止めなくても切り替えはできるがノイズが入るし、かなり遅れて音が再生される)。
いずれにしてもこのDP-X1A(と兄弟機のXDP-300R)にのみ備わるACG接続、曲の印象を変えずに底上げする、というシブイアプローチで他のDAPに対する大きなアドバンテージだと感じた。
解像度が高く上から下までかっちりとしている
AKMの「AK4495」が出るまで、性能的にも高音質DA変換機への採用実績でもぶっちぎりでトップだったESS社製のDAC「ES9018」の2ch版、「ES9018K2M」をツインで採用する。この価格帯でこれが実現できているのがすごいが、音質的にも上から下までかっちりとした出方。あまり脚色はなく、イヤホンやヘッドホンによる色付けに素直に反応する。
日本製DAPということを考えるともうひと頑張りほしい
画面の遷移の仕方が少しわかりづらい。あまり頻繁にやる作業ではないと考えられたのか、普通のバランス接続とACG接続の行き来などでたどり着きたい画面になかなか行けない。また現在表示されている画面によってアプローチの仕方が異なる(ので最後は画面再上端の「BAL」「ACG」アイコンを引き下ろして変える方法に変更)。あと動作がワンテンポ遅れるのが物理ボタンのN5などから変更するとややストレス。
EQのようにわかりやすいものから、ジッターノイズ軽減等マニアックなものまで幅広い
EQのように大胆に音を変えるものから、デジタルフィルター、ロックレンジアジャストのようなかなり微細な差の調整まで様々。本体だけでかなり好みの音を作り得る。
北のラブリエさん
2016/11/24
私はこれ
で満足してますが、たぶんいろいろなところが進歩しているのだろうと感じます。
UIはAndroidベースというところで似通ってますね。
こちらのほうが画面の大きさなどで使いやすそうですが。
興味を惹かれたのはアップサンプリング。
それとバッテリが気になりますね。
なんにしろ約7万円で買えるならコストパフォーマンスもいいと言えそうですし、個人的にONKYOが好きというのも◯。
レビューおつかれさまでした。
cybercatさん
2016/11/24
自分にとっては最近のAstell&Kernは(もちろん悪いDAPではないものの)価格が釣り上がり過ぎてついていけません。上を見ればきりがないのでしょうけれど、大多数のひとにとって満足いくはずのこの音質の本機が、ハイレゾ対応DAP専用機としては低価格寄りのこの価格で供給されていることに拍手を送りたいですね。
フェレンギさん
2017/01/13
流石の内容でしたので、当然のことでしょうが、改めて おめでとうございますを お伝えいたします。
cybercatさん
2017/01/13
>DAPもお手元に。
まだ着いてませんケドネw
音色的にはかなり好みだったのと、今持っているDAPを凌駕するストレージ容量が便利そうです。
ただ追記のノルマがあるので、なにをしようか考えています←なんかやりつくした感が(^^ゞ