pioneerがリリースする重低音シリーズに属するインナーイヤータイプのヘッドフォン(正式にはカナル型インナーイヤーヘッドフォン?)が、SE-CL722Tだ。
今回レビューする機会を頂いたので、重低音と銘打っているシリーズということで、重低音を中心に他のイヤホンと比較してみることとした。
金属ボディ、音質、重低音どれをとってもコスト以上の価値はある
SE-CL722Tだが、価格.comで調べてみると執筆時点での最安値は3,210円ととてもお買い得と言えるプライスだ。
この価格帯はスマホに付属しているイヤホンからの乗り換え組みも多く、各社がとても熾烈な競争を繰り広げている。
今回SE-CL722Tを使ってみた印象としては、3000円ちょっとという価格であればとてもコストパフォーマンスが高い製品だという印象だ。
なんといっても、亜鉛合金を使用したハウジングを採用していて、この価格というのはかなりバーゲンプライスであろう。
パッケージもしっかりとして、安価なブリスターパックとは事なり安心感がある。
各国共通のパッケージと思われ、表には日本語の表記が一切無い。
EXTREME BASSという表記はあるが、国内向けになにかシールでも貼っておいた方がわかりやすいように感じる。
箱の扉を開くと、中身が確認可能だ。
扉部分には各国語の説明書きが記されている。
扉はマグネットで本体にピタッとくっつく作りになっており、この価格帯のイヤホンの中でも、パッケージにもかなり力を入れている作りだ。
今回レビューしたのはブラウンモデルで、シリーズはRED、BLUE、BLACK、WHITE、BROWNの5色展開となる。
ブラウンモデルはブロンズメッキされた亜鉛合金ハウジングも美しく、お勧めだと思う。
ハウジングの内側には、低域増幅用のバスレフポートと思われる、小さく空いた穴が確認できる。
ケーブルの取付もしっかりしており、引っ張られたとしても簡単には破損は無さそうだ。
ケーブルもきしめん状のフラットタイプを使っており、絡みにくいのと共に、衣服と擦れたときのノイズも拾いにくくなっている。
嬉しいのはサイズ別に4種類ものイヤホンチップが付属する点だ。
私の耳はなかなか独特な形状をしているらしく、カナル型でもきちんと収まるものが少ない。
それもあって耳の上を通すSHUREがけタイプのSE535を使っているのであるが、SE-CL722Tでは一番小さいイヤーチップを使うと奥まで差し込むことが可能で、落ちにくく安定した。
特に、亜鉛合金で重ためのイヤホンだけあって、こういった細かい心がけはとても有り難いといえる。
イヤーチップを外した状態。
ドライバーユニットに繋がる穴は標準的といったところか。
異物混入を防ぐネットが貼られているが、使っているうちに取れてしまうことがあるので取り扱いは要注意だ。
以下のソースを用いて試聴を行った。
Extreme Bassを謳うシリーズなので、重低音バリバリなソースをチョイスしてみた。
L'orchestre De Contrebasses
Transes Formations
コントラバスの演奏家6人で結成された、コントラバスだけのグループ。
楽器がコントラバスなだけに低域バリバリなサウンドが楽しめる。
今回はその中でも低域が激しいFonqueをチョイスしてみた。
このアルバム、アコースティックな低域がこれでもか!と溢れんばかりなので、低域マニアの方にはぜひともお勧めしたい。
Phil Collins
Hits
アルバムのジャケットがご本人の顔ドアップなことが多く、額の専有面積順に並べるとアルバムの年台順に並べやすい(失礼!)という特長を持つ、フィルコリンズ。
今回はヒットアルバムの中から、おなじみAnother Day In Paradiseをチョイスしてみた。
冒頭部分をはじめ、低域が比較的求められる楽曲であると思う。
MACROSS PLUS ORIGINAL SOUND TRACK II
そして最期は、マクロスプラスのサウンドトラックから、Idol Talkを選んでみた。
こういうエフェクトをガンガンかけたサウンドって、安価なイヤホンでも鳴るようで結構差が出ることが多いのもまた事実。
試聴に使ったイヤホンは以下のモデルだ。
左から、SHURE SE535、Philips O'Neill SHO2205、SE-CL722T、Bang&Olufsen A8 Earphonesの4モデル。
価格帯から言うとダントツでSE535が高く、次いでA8となり、残り2モデルはほぼ同程度と思われる。
L'orchestre De Contrebasses/Fonque
低域の太さでは、SE-CL722Tが優位で次いでSE535とSHO2205が良い勝負、最期にA8という結果となった。
SE-CL722TはExtreme Bassというだけあり、バスレフポートを活用した重低音はかなりの厚みだ。
ただ、音の輪郭でいうとブーミーに感じるところもややある印象か。
バランスド・アーマチュア型のため低域が弱いSE535だが、質の良いというか、品のある低域なので絶対的な量は少なくても、バランス良くまとまっており破綻がない。
対照的なのがSHO2205で、低域の量はSE535と変わらないものの、質的にはぼわーんとした感じで解像度も低く、イマイチだ。
B&OのA8はカナル型と勝負するには厳しすぎるといったところで、シャリシャリなサウンドだ。
カナル型に慣れてしまうと耳かけ式は耳道とユニットとの間に距離があるため、勝負にならないというのが正直な感想だ。
Phil Collins/Another Day In Paradise
これもL'orchestre De Contrebasses同様の結果ではあるが、曲の始まりに流れる低音の出だしの部分のスケールはSE-CL722Tでも十分に再生出来ており、迫力があって良い印象だ。
SE535よりもベタッとした感じでズンズンと鳴らしたい場合は、SE-CL722Tの方が良いだろう。
SHO2205とB&O A8についてはL'orchestre De Contrebassesと同様なので、特にコメントは無しということで…。
MACROSS PLUS ORIGINAL SOUND TRACK II/Idol Talk
これはSE535でももちろん鳴らせるが、聴いていて楽しいのはSE-CL722Tという感じだ。
バランスド・アーマチュア型でモニター的なサウンドのSE535はもちろん綺麗なサウンドなのだが、少しばかり歪んだり解像度が落ちても、低域の迫力があると聴いていて楽しいのがこういった曲だと思う。
…さて、それならばと思い、試しにAmazon Primeのプレイリスト“一発屋・オブ・ザ・ワールド”に入っている、AquaのBarbie Girlやt.A.T.u.のAll The Things She Saidとか(懐かしい!)を聴いてみたところ、優等生的なSE535よりもSE-CL722Tの方が生々しい感じに受けることもあった。
やはり、ソースによってはSE-CL722Tの方が“楽しく”鳴るケースも多そうだ。
SE-CL722Tの素直さだが、ハウジングが亜鉛合金ということが効いているように感じる。
というのも、もちろんドライバもなにもかも違うので比較はしにくいが、SHO2205はドライバから前は真鍮製(と思われる)だが、後ろ半分が樹脂製となっている。
このため不要な振動を生んでいたり、ドライバをしっかりとホールドするということにかけてはSE-CL722Tの方が優れている可能性がある。
比較的手軽に買える価格帯であり、iPhoneの標準イヤホンと交換するだけで遙かに低域の迫力が増すこともあり、音にそんなにこだわりのないユーザーにも、SE-CL722Tは買い換えるときにはお勧めと言えよう。
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