数年前までは2TBでも凄い!と思っていたHDDだが、いつの間にか8TBを越え、10TBが現実味を帯びるようにまで大容量化が進んでいる。
大容量化が進むと怖いのが、HDDクラッシュによるデータの消失だ。
バックアップするにも大容量だとメディアへの待避は現実的ではなく、NASのRAIDを利用した冗長化が最善の策であると思う。
最近ではNAS用に最適化されたHDDもリリースされており、高信頼性のストレージとベアドライブのNASキットを組み合わせて好みの容量のNASシステムを手軽に構築出来るようになった。
今回、8TBのNAS用HDD、ST8000VN0002をお借りできることが出来たので、NASに組み込んでその実力を探ってみることにした。
現時点では唯一無二のNAS向け8TB HDD
NAS向けのHDDはWestern Digital(以下WD)のREDシリーズ、HGST NAS Desktopシリーズ、そしてSeagateのNAS向け製品とHDDメーカー各社からリリースされているが、執筆時点では8TBのNAS向けドライブはSeagateのST8000VN0002だけとなっており、WD REDおよびHGST NAS Desktopでは最高で6TBが最大容量の製品となっている。
4台でRAID5を構築した場合、6BTと8TBでは6TBもの差が生じてしまう計算となり、大容量のNASストレージを組む場合には、現在のところSeagateが一歩抜きんでている状態だ。
NAS用のHDDといえば、以前プレミアムレビューにも登場したWestern Digital(以下WD)のWD REDシリーズが有名だろう。
Seagateも同様に、NAS用のストレージをリリースしており、モデル名にVNの名称が与えられているのが、NAS向けのモデルである。
今回レビューさせていただいたHDDは、8TBのNAS向けモデルなので、型番はST8000VN0002と、容量表記とNAS向けストレージのVNが組み合わさった型番となっており、わかりやすくて好感が持てる。
ST8000VN0002の外見と仕様
まずは、外見から確認していこう。
HDDの表側は、至って普通のHDDだ。
NASに最適化されたHDDであるのは、Seagateのロゴの下にある“NAS HDD”という一文だけであり、控えめな表示となっている。
超大容量HDDだけあってプラッターが目一杯詰まっており、裏からHDDを見てもまったく“くびれ”のない、スクエアなボディとなっている。
プラッターはおそらく1枚あたりの容量が1.33TBであり、6枚プラッターで1.33×6枚で8GBを実現している。
プラッターが6枚ということもあり重量もかなりのもので、実測で774gとかなり重量級であった。
CrystalDiskInfoで確認した仕様は以下の通りだ。
回転数は7200rpmであることが確認出来る。
電源投入回数2回、使用時間0時間なのでまさに新品おろしたてホヤホヤである。
垂直記録方式(PMR)で8TBを実現
Seagateの8TB HDDといえば、昨年リリースされた、実売で3万円を割る超バーゲンプライスを掲げるST8000AS0002が有名だが、こちらは記録方式にSMRという方式を採用している。
SMRによる記録方法は下記のイメージ図のように、記録領域を重ねることで幅を狭くすることで、記録密度を高めている。
一部分を重ねて配置しているため「瓦記録方式」とも呼ばれているのだが、瓦とは言い当て妙な表現だと思う。
SMRの採用によってHGSTのように高価なヘリウムを使うこと無く8TBという容量を実現していることもあり、8TBとしてはきわめて安価な価格を実現しているのが、ST8000AS0002の特長だ。
このSMR、大容量化が可能である反面、隣接されたエリアに書き込みを行う際はそのまま書き込むと重なっているデータ記録部分まで消し去ってしまうので、移動した上で書き込みを行うという、トリッキーな挙動となる。
キャッシュなどを使って速度の低下は抑えているものの、ランダムアクセスについては垂直記録方式
(PMR)のほうが有利であり、SMR方式のHDDはOS起動ドライブには適さないとも言える。
ST8000AS0002がリリースされた当時、従来の垂直記録方式(PMR)で8TBを実現するにはHGSTの製品のようにヘリウムを用いて抵抗を抑えた上でプラッターを7枚搭載するしか無かったのだが、技術革新の速度は恐ろしく、今回のST8000VN0002ではなんとPMRで8TBを実現している。
しかも、6TBおよび8TBモデルは7200rpmという高回転を誇るドライブであり、プラッターの高密度も相まってベンチマーク結果も期待できそうな製品である。
※1~4TBモデルは5900rpm
NAS用HDDのメリット
NAS用のHDDといっても、SATAで動作するHDDには変わりは無く、デスクトップ用途でももちろん使用可能である。
しかし、NAS用のHDDはデスクトップ用とは異なり連続稼働が求められるため、以下のような下記のような機能・特長を有している。
・連続稼働を前提とした設計・構造
HDDに限らず、デスクトップPC向けのパーツは24/365(24時間×365日)での稼働は想定されておらず、大抵8時間/日程度の使用を前提としていることが多い。
利用者が活動している間だけ使用するデスクトップPCであればそれで良いのだが、サーバーやNASでは24/365での稼働が前提となるため、連続稼働においても故障しにくいよう、パーツに求められる精度も高い。
・発熱の少なさ
比較的ゆとりのあるPCケースに組み込まれるデスクトップPC向けのHDDとは異なり、NASやサーバーでは限られたスペースに大量のストレージを実装するため、非常に密度が高くなってしまう。
モーターを内蔵し、物理的にディスクが回転しているHDDは発熱しやすいパーツでもあり、しかも温度が上がると故障率も比例して高くなるため、適度な温度に冷却することが重要だ。
データセンターに格納するサーバーでは騒音は大した問題にならないが、自宅で使用するNASではサーバーのように轟音を奏でるファンでガンガン冷やすと言うことは出来ないため、低発熱であることが求められる。
・騒音の少なさ
HDD自体の騒音も問題だ。HDDが発するノイズは大きく分けて、モーターの回転音とヘッドのシーク音に分かれる。
モーターの回転音は常時「キュィィーーーン」という音が鳴るのに対し、ヘッドのシーク音は動作時に「カッッカカカッカカカカッ」というような軽やかなノイズが発生する。
いずれも家庭で使用するNASとしては最低限に抑えたいノイズだ。
・振動対策
HDDにとって振動は大敵だ。HDDのプラッターとヘッドの間は数ナノメートル、髪の毛の100万分の1という僅かな隙間で磁気ヘッドが浮いている状態であり、僅かな衝撃でもプラッターにヘッドが接触し、磁性体にダメージを与えてしまう危険性がある。
さらに、NASでは高密度にHDDを実装するためHDD同士が隣接しているため、故障で振動が増加したHDDがすぐ隣にあると長期間にわたり振動を受けてしまうほか、複数台のHDDの振動が同期し、より大きな振動となってしまう問題が生じることもある。
このような状況でも壊れにくいよう、HDD自体の振動の少なさ以外に、外部からの振動に対する耐性も求められる。
・RAIDでの利用を前提としたパワー制御
デスクトップ用のHDDでは、アクセスが無いと省エネの為に自動的にヘッドが待避する仕組みが備わっているものが多い。
NASが採用するRAIDでは大量にディスクアクセスが発生するため、ヘッド待避→アクセス発生→ヘッド待避→アクセス発生…という処理が短時間に繰り返されることでヘッドの退避が大量に発生、逆にトラブルの原因となってしまうことがある。
NAS用のHDDではRAIDでの利用が前提となっているため、このあたりの対策も行われている。
・エラーリカバリ
HDDにエラーが発生した場合、デスクトップPC向けのHDDでは、HDDまたはOSが自動的にエラーを修復し、動作に支障を来さない仕組みとなっている。
具体的には、データを読み書きする際にエラーが発生したセクタを利用不可にし、代替セクタを確保することで自動的に修復が完了する。
しかし、NASではRAIDのパリティまたはミラー領域に書き込まれたデータは、ディスクが故障するか、あるいはデータ領域に更新があった場合でないと読み書きが行われないため、前述の代替処理が行われない。
このため、RAIDコントローラーが整合性検査という機能を有しており、HDDよりも上位のレイヤーで、RAIDコントローラーがディスクの状況を監視、エラーのリカバリを行うのだが、この機能がHDD側のエラー訂正処理とバッティングしてしまうことがある。
この問題を回避するため、NAS向けのHDDではRAIDコントローラー側のエラー訂正機能との不具合が生じない対策がなされたファームウェアを搭載している。
ST8000VN0002は、NASWorksファームウェアにより、こまめな電源制御による発熱抑制、高度なエラーリカバリを実現しつつ、デュアル・プレーン・バランスにより複数台のHDDを搭載した状況においても、振動が共鳴して増幅する現象を防止する仕組みも備わっている。
このような仕組みはデスクトップ用のHDDには搭載されていないものであり、NASで使用するHDDは、やはりNAS向けに設計された専用のHDDを積極的に使っていきたい。
NAS用HDDに相応しい、高信頼性
ST8000VN0002はNAS向けのHDDということで、信頼性も高くなっている。
デスクトップ向けの製品であるST8000DM002とスペックを比べてみたのが、以下の表だ。
【用語説明】
ロード/アンロードサイクル:省電力モードに移行しHDDのヘッドが待避エリアに移動する回数
MTBF(平均故障間隔):63.2%の確率で壊れるまでの平均的な間隔のこと。HDDの耐用時間ではないことに注意。磨耗や経年劣化の程度を考慮しないため、実際の故障率はMTBFを上回ることが多い。
63.2%とは統計学上意味がある数値らしい。
大きく異なるのは、通電時間とロード/アンロードサイクルの値だ。
通電時間とは1年で許容されている通電時間のことで、NAS向けのST8000VN0002は24時間×365日の8760時間となっているのに対し、デスクトップ向けのST8000DM002は2400時間(9時間×週5日程度)と大幅に少ない値となっている。
もちろん、この時間を越えたら壊れるということではないが、そもそもST8000DM002は24/365の運用を前提としていない設計であることには要注意だ。
MTFBについてはST8000DM002は公表されていなかったため比較は出来ないが、同社製のデスクトップPC向け製品は750,000時間に設定されているものが多く、同程度だと仮定すると1.33倍ほど故障率が高い計算となる。
回復不能読出エラー率も桁が1つ違っており、NAS向けのST8000VN0002の方が信頼性が高くなっているのが見て取れる。
補償期間とRMAの利用のしやすさ
地味に有り難いのが、補償期間が3年という点。
デスクトップ向けのST8000DM002は2年なので、1.5倍長いのは魅力的だ。
特に、24/365での運用が前提となる製品のため、1年の有無はかなり大きいと言えよう。
Seagate製品で気に入っているのが、RMA(返品交換)がしやすいという点だ。
Seagateに限らず、他社製のHDDでも同様に言えることだが、HDDは駆動部品が多いこともありPCのコンポーネントとしては比較的壊れやすいパーツであると思う。
私が使っていた一昔前のSeagate製品が立て続けに壊れたのでRMAを利用しまくった時期があったのだが、RMAを利用する際は国内に送付すれば良いのがきわめて便利だ。
Western Digital製品はシンガポールに送付する必要があり、EMSなどを利用して送付先や免税書類などを英語でいろいろ記入する必要がある。
しかも、中国経由で返送されてくるため結構時間がかかってしまう。
これに対し、Seagateは千葉県の白井にあるディストリビューションセンターに送付すれば良いので、ゆうパックや宅急便が利用可能だ。
私は千葉在住ということもあり同県内配送なので送料もかなり割安だ。
壊れてしまっては困るHDDだが、万一故障した際の交換手続きが簡単というのは、地味なメリットである。
ただし、今回レビューさせていただいたHDDはOEM扱いとなっており、直接SeagateへRMA手続きが出来ない品であった。
OEM向け製品はOEM業者を通じての補償となるので、修理の際に少し面倒だ。
特に、今回は販売店が不明なので、壊れたときはZigsow運営事務局経由での交換になるのかな…?
きわめて静かで全く振動が発生しない高精度
振動とノイズを確認するため、デスクトップPCからSATAケーブルと電源ケーブルを引き出し、ST8000VN0002に接続して動作させてみたのだが、驚くことにまったく振動は発生せず、回転時のノイズも皆無という優秀さだった。
アクセス時のシークノイズもとても低く抑えられており、この程度のノイズであればNASに組み込んでしまえば気にならないレベルである。
実際、NASに組み込んだあとは動作している際のノイズはPCのほうが遙かに多く、まったく気にならない。
なかなか言葉では伝えにくいのだが、今まで使用したHDDの中でも、ノイズの少なさ、振動のなさはかなり高いレベルでまとまっている製品だと感じた。
シーケンシャルリードで300MB/sを越える超高速HDD
※300MB/sを越える速度が出ているが、他の方のST8000DM0002のレビューを拝見するに、このスコアは高すぎるような気がしている。
しかし、念のため1GB×5セットを2回測定した結果であり、なぜか当方の環境ではこのスコアであったため、今回のレビューではこの数値を採用させていただくこととした。
早速、ドライブの性能をベンチマークソフトで確認してみよう。
測定に使用したPCは、Core i7-6700、intel Z170搭載のASRock Z170 Extreme 4という構成のPCだ。
CrystalDiskMarkを使って測定した結果は、下記の通りである。
Q32T32でのシーケンシャルリードが、なんと300MB/sを越えてくるとは思わなかった。
1.33TBプラッターの7200rpm恐るべし、といった結果だ。
ライティングもシーケンシャルでは225MB/s、Q32T32でも194MB/sときわめて高速であり、デスクトップ用途で使っても十分に快適なHDDだと感じた。
NAS用と名乗っている製品であるが、もちろんデスクトップPCでも高信頼性のHDDとして使用可能なので、7200rpmの高速性を活かしてストレージとして使用するのも十分アリだ。
Synology DS215jと組み合わせてみる
単体でのベンチマークが済んだところで、実際にNASに組み込んで使用してみよう。
我が家で使っているNASはWDのSentinel DX4000なのだが、このNASは同社製のHDDでないと認識されない仕様となっているため、残念ながら今回のST8000VN0002は使用が出来ない。
そこで、ベアドライブのNASを新規に購入することとした。
組み合わせるNASはSynology、QNAP、NETGEARなど各社から魅力のある製品が多数リリースされていて迷ったのだが、ここは一番人気のNASと組み合わせてみようということで、執筆時点でkakaku.comで人気1位のNASである、SynologyのDS215jをチョイスした。
今回は1台でのシングル構成として使用することとした。
1台用のNASであればDS115jもラインナップされているのだが、DS215jに対し以下の点で劣るため、DS215jを選択した。
- シングルコアCPUでデータ転送時にCPUがボトルネックになってしまう(DS215jはデュアルコア)
- 筐体サイズが小さいため小口径のファンを搭載しており、DS215jに対して静音性で劣る
- ケース内の容積が少ないため発熱の点で不利
DS215jに対応するHDDは下記のリストから調べることが可能だが、残念ながらSeagateの8TBモデルは1台も動作対象HDDには入っていない。
DS215j対応HDD一覧
海外のフォーラムなどを見ると、ST8000AS0002については動いたという報告もある反面、どうやら安定しないような意見もあり、実際のところ???といった状態であった。
NAS専用HDDであるST8000VN0002については、ほぼ情報がなかったため、今回はレビューでのチャレンジということもあり、敢えてDS215jでの動作を確認してみることにした。
Synology DS215jの動作対象HDDリストに載っていない理由
残念ながらSynologyの動作リストには載っていないST8000VN0002であるが、SeagateのWebサイトの情報では、Synologyをはじめ各社のNASで最適に動作するように設計されている旨の記載がある。
Synology、QNAP、NetGear、ASUSTOR、MyCloud、D-Link、Drobo、LaCie、Lenovo、SimplyNAS、Thecus、そしてもちろんSeagateなどの人気のNASエンクロージャとの互換性を実現し、NAS HDDの信頼性を向上させます。
※http://www.seagate.com/jp/ja/internal-hard-drives/nas-drives/nas-hdd/?sku=ST8000VN0002より引用
ここで疑問になるのが、なぜDS215jではリストに載っていないのか、という点だ。
この点については、実際に組み込む際にあっさりと解決した。
(おそらく)理由は単純で、ねじ穴が合わないからである。
通常、3.5インチのHDDは側面に3カ所ねじ穴が設けられているのだが、ST8000VN0002は真ん中のねじ穴が省略され、両端の2カ所のみとなっている。
同社製の最近のHDDではこの位置の穴が省略されていることが多いようなのだが、HDDのケース目一杯にプラッターやメカを詰め込んでいるため、真ん中にねじ穴を設けるのが難しくなっていることが原因であろうか。
DS215jは写真のように、SATAコネクタ側を前とすると、前と真ん中の2カ所でディスクを固定するのだが、ST8000VN0002は前しかネジ止めが出来ないため、しっかりと固定することが出来ない。
このため、動作対象HDDから除外されているものと思われる。
実際にDS215jにST8000VN0002を搭載してみたが、片側につき1カ所しかネジ止めをしていないため、シーソー状態となってしまっており、SATAコネクタにかかる負荷が大きいように見受けられた。
完全に固定出来ている状態ではないが、ST8000VN0002自体の振動の少なさもあり、実際に使用してみて不具合は今のところ発生していない。
推奨できる方法ではないが、DS215jでの動作については問題無いと思われる。
DS215jにST8000VN0002を取り付け、電源を入れてみたところすんなり認識し、セットアップもサクサク進んであっという間に利用可能となった。
管理画面からストレージマネージャーを開いて確認してみたところ、容量も正しく8TBを認識していたので、問題無く利用可能と言って良いだろう。
容量は7542GBとなっているが、これは本来2進数なので1TB=1024GBなのだが、スペック上の容量表記は1TB=1000GBで計算されているためである。
NASにおけるパフォーマンス
NASに組み込んで使用した際のパフォーマンスは、以下の通りだ。
NASの設定はJumboFrameは9Kに設定し、PC側のNICはintel PRO/1000 PT DualPort Server Adapter、スイッチはDellのPowerConnect 2716という環境でのテスト結果となる。
驚くべきはライト時の速度で、100MB/sを大きく越える速度を叩き出している。
リード時も73~82MB/sとなっており、NASとしてはかなり高速な部類だ。
また、キャッシュが効いているのかランダム性能が大幅に上昇しているのが驚きだ。
今までの経験上、大抵NASでは単体時に比べてランダム性能が落ちる傾向があるのだが、大幅にスコアが上昇している。
もしかすると、DS215jとHDDの相性が良いのかもしれない。
実際にファイル転送をしてみたのが、以下のスクリーンショットだ。
録画した動画ファイルをNAS to NASにコピーしている際のスクリーンショットであるが、コンスタントに90MB/s前後の数値を叩き出していた。
前述のCrystalDiskMarkの値通りの性能を実際に叩き出しており、NASであることを忘れるくらいの快適さだ。
7200rpmとは思えない、低い動作温度
NAS向けに発熱を抑えた作りになっているNAS向けHDDであるが、実際にNASに組み込んだ時のアイドル時と負荷時の温度を計測してみた。
負荷時は録画した大量のtsファイルを1時間連続でNASに転送した時の温度を、SMARTの値を利用して計測している。
なお、計測時の室温は19度であった。
■アイドル時
■高負荷時
アイドル時の温度は28度ときわめて低く、とても安心できる温度だ。
2ベイ用のNASに1台のみ、ということも温度を低く抑えることに貢献しているものと思われる。
高負荷時には温度は上昇しているが、37度と40度を割り込む結果となった。
50度を超えると危険ゾーンだが、この温度であればまったく問題無い範囲だ。
問題は夏場に室温が上昇した際の温度だが、静音モードに設定しているNASのファン制御を標準または冷却重視にすれば対応は可能なので、温度が原因で壊れるということは回避可能である。
高速性を活かした活用方法
前述のベンチマーク結果の通り、シーケンシャルライト性能が高いため、NASへのバックアップがきわめて高速なのは大きなメリットだ。
DS215jを使うと秒間100MB/sで転送できるため、たとえば300GB程度使っているシステムドライブをまるまるバックアップした場合、単純計算で50分でバックアップが完了する。
実際には圧縮しながらデータを書き込むため、50分よりも短い時間で作業完了してしまう。
基本性能が高いHDDが故、組み合わせるNASも出来るだけ高性能なCPUを搭載したモデルがオススメだ。
また、我が家ではWindows Storage Server 2008 R2搭載のWD Sentinel DX4000にEye-Fiのクライアントソフトをインストールし、デジイチのD7100で撮影したRAWデータを自動的にNASに格納するようにしている。
Eye-Fiは撮影した写真を自動的にWi-Fi経由でストレージに保存できる便利なSDカードだが、クライアントソフトをNASにインストールすることで、24/365いつでもデジカメからデータを転送することが可能なのはきわめて便利だ。
今まではSentinel DX4000にRAWファイルを保存していたが、徐々にSentinel DX4000のファイル転送速度が遅くなっており、また、容量も逼迫してくる中、どうしようか…と悩んでいたのだが、今回の8TB NAS導入を機に、Synology DS215j側にRAWファイルを保存するように設定を変更してみた。
この結果が大当たりで、100MB/sを越えるシーケンシャル性能と相まって、体感でもはっきりと差が出るくらい、高速化される結果となった。
画素数に比例してRAWファイルサイズも肥大化し、D7100では写真1枚で30MB弱にもなる。
このような大容量ファイルを多数扱う場合には、高速なNASというのはきわめて便利だ。
気になるお値段(予想価格)
8TBのHDDといえば、HGSTからヘリウム充填HDDのHUH728080ALE600とSeagateからST8000AS0002がすでに国内でもリリースされているが、今回レビューさせていただいたST8000VN0002はまだ国内での販売が始まっていないため、価格が不明となっている。
そこで、アメリカcnetでの最安値を調べてみたところ、
ST8000VN0002:$399.00
HUH728080ALE600:$459.99
ST8000AS0002:$220.10
となっており、価格的にはST8000AS0002とHUH728080ALE600の中間あたり、といった感じだ。
HUH728080ALE600の国内価格は¥68,580円が最安値であり、逆算するにST8000VN0002はおおよそ5万円台半ばあたりかな…?というプライスになるような予感である。
HUH728080ALE600とST8000VN0002の金額差はそもそもの設計思想が違うことに起因しており、HGSTは空気に比べ軽いヘリウムを充填することで空気抵抗を減らすことが可能となり、プラッターの薄型化を実現、なんと7枚ものプラッターを搭載しているモデルとなっているのだが、希少となりつつあるヘリウムガスを使っていることや、7枚ものプラッターを詰め込んでいることなどからコストの上昇に繋がってしまっている。
7200rpmという高速性と従来のPMR方式による性能の良さを併せ持ち、価格的にもヘリウムなどを使用しないためNAS用の8TBストレージとして比較的リーズナブルな価格で登場すると思われるST8000VN0002は、価格次第ではNASだけではなくデスクトップ用の大容量ストレージとしてもオススメできるHDDであると感じた。
実際に販売になるのが待ち遠しいHDDである。
使ってみた感想(まとめ)
ST8000VN0002を使ってみた感想は、ざっと挙げると
- まさかの300MB/sを越える超高速
- きわめて静か、振動無し、発熱も少なく扱い安い
- 3年という長期保証
- NASでの利用を前提とした、24/365の高耐久性
- 従来のPMR方式で8TBを達成
というメリットがあり、とても素晴らしい製品だと感じた。
特に、1.33TB、PMR、7200rpmというスペックを有しているだけあって、Crystal Disk Markでは300MB/sを越えるスコアを叩き出すという、前代未聞の性能を発揮している。最初計測するドライブを間違ったと勘違いし、2回目を測定してしまったくらいだ。
問題は国内での販売価格であるが、HGSTのヘリウム入りドライブよりは安価でリリースされると思われる。
そう考えると、NAS用ストレージとしては文句なくお勧めといっても良いだろう。
デスクトップ用途としてもお勧めであることは前述の通りであるが、8TBの大容量HDDとしては、超バーゲンプライスを掲げるST8000AS0002の存在があるので、お財布と用途で選ぶと良いと思われる。
(長期的なファイルの保管用であれば、SMR方式で安価なST8000AS0002がお勧めだ)
一方、欠点としてはやはり真ん中のねじ穴がないという点に尽きる。
このネジ位置を利用するNASやPCケースはそれなりに多いと思うし、なによりもNASでも売れ筋モデルであるDS215jの動作HDDリストに掲載されていないのは、やはり痛手であろう。
片方のネジだけ固定して使えないことはないが、完全に固定することが出来ないため、耐震という点でもお勧め出来かねる。
この点を考慮して、★は1つ少ない4とさせていただいた。
出来れば、中央にねじ穴を設けてもらいたいものだが、やはり難しい相談なのであろうか。
CR-Xさん
2016/02/26
ちょもさん
2016/02/26
昔、ST2000DM001を使っていた時は5台中3台故障→2台RMAで交換となったのですが、その頃と比べると今回のST8000VN0002は振動、騒音共に良好です。
SMRで8TBを実現したところも含め、かなり頑張っていると思います。