最近はマウスだろうがキーボードだろうがネットワークだろうがヘッドセットだろうが何でもかんでも無線。で、ワイヤレスディスプレイ環境も出てきてるけど個人的にはまだ馴染みが薄いしハードルが高いイメージがある。
そんな中マイクロソフトが自ら出してきたのがその名も「マイクロソフト ワイヤレスディスプレイアダプター」。ド直球すぎるネーミング。
パッケージからして小さく軽い。歯磨き粉の箱のほうがよっぽどデカイかも。
ワイヤレスディスプレイの規格として対応機器が出てきている「Miracast」規格に対応している。Wi-Fiアダプタを介してディスプレイと音声を送信するので本体側がMiracastに対応していれば全く機器を追加せずに画面を出力できる。マイクロソフトが出しているがAndroid端末にも対応している。
本体はアダプターというよりもうなんか単なるケーブルのような物体。HDMIコネクタ側に細長い本体が一体化しており、背後から出るUSBケーブルは給電用。
付属のHDMI延長ケーブルを繋ぐと余計ケーブル感がアップ。
Microsoftのロゴと側面にびっちりと書かれた認証系のマーク以外はシンプルそのもので、質感はSurface用電源アダプタと同じサラっとした感じのダークグレー。
電源スイッチすらなく、電源が入ると普段は見えない箇所に白LEDが光る。この白LEDの使い方もSurface用電源アダプタのソレ。本当に言われなければなんか変わったケーブルにしか見えないコンパクトさだ。LED反対側にあるスイッチ的なものの用途は不明。
付属品は短いHDMI延長ケーブルとHDMIコネクタ用のキャップ、そして説明書類のみ。
説明書もとにかく簡易だが、実際使って分かったのだが確かにこれ以上書くことが無い。
ストアからユーティリティをダウンロードするように案内されているが、このユーティリティが実質操作説明用。画面のスケーリングやファームのアップ機能もあるらしいが特に今回は必要なかった。
もう箱から出したら即モニタやテレビに繋いで使えてしまう。
今回使用したBenQG2420HDでは物理干渉がなく本体を直接挿せたが、LG W2361ではHDMIコネクタ下にカバーがあるので付属の延長ケーブルが必須だった。またPC用モニタの場合USB給電能力を持ったものは殆どないので別途USB給電アダプタやUSB延長ケーブルが必要。
セルフパワーUSBハブを持ったモニタや録画用HDDを接続するためのUSBがあるTVならそこから給電してしまえばOK。
接続するとMicrosoftのロゴが出て接続待機状態になる。後はもうモニタ側に手をつける必要はない。ちなみにここや機器側に表示される名前はユーティリティで任意に変更可能。
判り易い名前にしよう。
出力側接続方法に関しても端末側のMiracast対応さえ確認できていればあっという間だ。
Windows8.1の場合ドライバもいらない。接続・表示だけなら先ほどのユーティリティすら不要。OSの設定画面からワイヤレスディスプレイに接続を選択して少し待つだけ。
一度操作すれば暗記できるレベル。Bluetoothのマウスやキーボードを繋ぐのと同じ感覚…いや初回のドライバインストールが無いのでそれよりも簡易に感じるかもしれない。
HDMIなので音声も同時にモニタ側から出力されるようになる。
ワイヤレスディスプレイアダプタの電源を入れてから接続待機状態になるまでが24秒、Surface側から接続要求を送って画面が表示されるまで6秒程度。操作時間を考慮しても40秒もあれば接続できるというのはなかなかすばらしい。
当然OS上から接続処理を行うのでBIOSの操作などWindows起動前の画面は表示不能。またBluetoothのように自動ペアリングも無いのでその都度接続する形になる。
接続後はOS上から通常のセカンダリモニタとして扱えるのでミラーリングだけではなく別の内容を表示することもOK。
但しさすがに本体との遅延は僅かに発生するので、ゲーム等を行うと手元のタッチと出力先の画面に違和感を感じてしまう。
上の写真は動くクラウディアさんだが、遅延のせいで少し表情が違う。またモニタ側にHDMI音声入力機能が無い場合、音声は端末側スピーカーから出すことになるがこうなると音までズレる。
そしてミラーリング表示時はワイヤレスディスプレイ側に引きずられるのか、本体側を巻き込んで一部フレームレートが落ちたような動きになることがある。ミラーリングではなくデスクトップの拡張表示を行った場合は影響無い。
Windowsでの対応機器については基本的に「Miracast」対応を謳っているWindows8.1がプリインストールされたノートPCやタブレット。それ以外の機器でも使用できる可能性はある。手堅い所ではSurfacePro(初代)はWindows8を8.1にアップグレードしたものだがしっかり接続可能だった。
対応PCであるかどうかの一つの見分け方としてはディスプレイのカスタマイズ項目に「ワイヤレスディスプレイに接続する」の文字が出ている場合は使用できる可能性が高い。というか出てないとその時点でムリ。
自作PC等のデスクトップマシンで使えるものはかなり少ないと思われる。手持ちのWindows8.1搭載PC3台で接続を行えたのはIntel DH77DF(MiniPCIeスロットにWireless-N 2230)/Core i7 3770(内蔵グラフィック)の組み合わせをしたPCのみで、全く構成が異なるAPU機はもちろん、比較的構成が近いASRock Z68 Pro3M(PCIeスロットに変換基盤経由でWireless-N 2200)/Pentium G2020T(内蔵グラフィック)のマシンでも使用不能。そもそも設置型のデスクトップPCで使うメリットはほとんど無いので「使えたらラッキー」程度に思っておこう。
対応Android端末でも基本は同じ。今回はXperia SO-04Eを使用。このSO-04EはAndroid4.2になっているが、既に回線契約の無い白ロム状態だが問題なし。ワイヤレスディスプレイを待機状態にしてから画面設定から「スクリーンミラーリング」を選ぶだけ。
Androidに関しては機種によって設定の位置が異なるようだ。
またHDMI→DVIアダプタを使えばHDMIの無いモニタへの出力も可能だった。
但しこの場合音声は出力されない点と、今回テストした環境だとモニタ側が対応していてもフルHD出力ができず1280x1024pxまでの画面出力となってしまったので「やろうと思えばできる」程度と思っていいだろう。
出先でもすぐに使える手軽さ
SurfaceのDP接続の場合重い変換コネクタ部を持ったケーブルがずるりと本体から垂れるので、動かしたてると最悪すっぽ抜ける。DP接続を使う場合はもうしっかりと設置しデスクトップ機のような状態にする場合が多かったがこのアダプタならお気楽だし持ち運びも苦にならないサイズ。
今回はインターネットのイの字もない親戚宅に持ち込んでで32型テレビ(DXアンテナLVW-324)に接続してみた。
このテレビは側面にHDMI端子があるので背面に回りこむ必要すらない。
特に大画面テレビの場合ワイヤードだとどうしてもテレビに近くなってしまうので不自然になるので、コタツにポンと操作側を置いて皆で見れるというのはアドバンテージ。
WiFiアダプタを使用するといってもネットワークには依存せず、本体と端末でのみ完結するので、今回のようにネットワーク環境の無い場所での使用も可能だ。まさにケーブルと同じ扱いにできる。
但し家のモニタ類と異なりHDMIスケーリングに差が出てしまっていたので確実に全て表示するには事前に設定ユーティリティをインストールしておく必要があるだろう。
今回テスト用にXperia SO-04Eも持ち込んでいたのだが、ここである事を思いつく。画面をテレビに飛ばしつつXperiaをカメラモードにすれば簡易無線カメラにできるのではないか?親戚は最近脚が悪く自分の庭も気軽には見れないのだから大画面でリアルタイムに見れるのは新鮮なはず。
狙いは的中。古い木造家屋でテレビから木製の扉程度しか遮蔽物が無かったので、15m以上離れても映像送信に成功。厳密に測ったわけではないが20m程はなれた箇所で接続が切断された。
ほぼ庭はフォローできるし、Xperia自体カメラ性能がマクロもできるので庭に咲いている花も見れる。あっち見たいとかこっちみたいとかは人力遠隔伝達(大声)するしかないのだが。
解像度も文句無し、テレビの色使いもあり本来より彩度が高い状態で映っていたが、そのせいかまるでテレビ放送で映る花のようで親戚には大好評。
ほかにもこういうことを実現する方法はあるが、ポケットに入るほど軽量なアダプタとスマホを持ち込んでテレビにプスっと挿すだけでこれができるし、今回のようにインターネットとは縁の無い家でも確実に使える。
図らずも親戚宅に行った本来の目的である家の修理箇所の確認にも役に立ってしまった。
サックリ使えるワイヤレス環境
とにかくこのワイヤレスディスプレイアダプタのメリットは「小型軽量かつ簡単」という点。接続に要する時間も短く、今なら多くのモニタについているHDMIコネクタとその辺のUSB給電可能機器を使えば出先でもすぐに大画面を楽しめる。
Surfaceの場合DP出力を持っている為、本格的な作業ならそちらに部がある。ただ画面出力を持ったSurfaceのようなタブレットは少数派。画面出力端子を持たないスマートフォンや8インチ程度の小型タブレット端末との相性は抜群。
正直な感想はついに他人にも薦められるワイヤレスディスプレイ環境が出てきたかといった感じ。今まではどうも癖が強かったり人柱的イメージが強かったのだが、本体側の対応さえ事前確認しておけばPCやスマホに詳しく無い人でも気軽に扱える。
遅延の体感はどの程度あるのか
ここからは蛇足な検証。
ワイヤレスで画面を送信する以上、先述の通り遅延はさすがに発生する。
そこで2系統の入力を同時に使用できるNEC LCD-PA241Wを使ってチェックしてみる。
出力するのは冒頭でワイヤレスディスプレイへの出力に成功した自作PC。当初DP出力を持つSurfaceProで行おうとしたのだが、どうも「本体」「DP」「ワイヤレス」の3枚に画面を出そうとすると設定に制限が入ってしまうのかうまくワイヤレスディスプレイに接続できなかったのだ。
なので本体モニタの無い自作PCを使う。PA241WにはHDMI入力が無いのでMSワイヤレスディスプレイアダプタはDVIに変換。そしてIntel内蔵グラフィック側から通常のDP出力でミラー画面を表示してみた。DVI変換をかましているのとうまく2系統入力を揃えるために解像度は1280x768pxまで落としている。
1つの画面の中に2出力分の画面が連結されている状態。右がワイヤレス、左がDP。こうしてみると(DVI変換でTVと認識されたからか)色にも随分な差が出ている。
この状態で画面スクロールや動画再生を行ったのがこちら。2つの画面を連結しただけあって遅延が非常に判り易い。
じゃあ実際のところ体感はどうなのかと言えば、やはりマウスやキーボードの操作がワンテンポ遅れる感がある。ちょっと前の性能不足のPCを触っているような感覚だ。ブラウジングや動画視聴(音声はHDMI出力必須)ならいいが、ゲーム等のリニアな操作が必要な動作にはやはり向かない。
積極的に追加ディスプレイとして作業領域にするような感じではなくあくまで本体側の画面を拡大表示させるサブディスプレイと思った方がいい。
XL2420Tでの使用
最後に少しだけ。当初BenQ製のゲーミングモニタ「XL2420T」での使用を検討していたのだけどなぜかMSワイヤレスディスプレイを挿しても画面が真っ黒のママ。HDMIの系統を変えようが、DVIに変換しようが真っ黒のママ。
その状態でワイヤレスディスプレイアダプタに接続・認識させる事は可能なのだがどうあがいても画面ま真っ暗のままだ。思いつく対処はするだけしたのだが、症状に変化はない。
今回使用した他のモニタ・TVでは一切問題が起きなかった上に、別の方のレビューでは同じXL2420Tでの動作が問題なく行えているとの事なので、これは手持ちのXL2420T個体不調の可能性があるという事で。元々の応募がXL2420Tでの使用だった為こちらに表記しておきました。
アラクレさん
2015/05/29
私用で使うことはほとんどないと思いますが、プレゼン用途には中々使えそうですね。
ノートPCやタブレットで真価を発揮する、おもしろい製品という感じがしました。
cybercatさん
2015/05/29
Androidアプリのナイトビジョンカメラ使えば簡易防犯カメラにも使えそう。
下小川さん
2015/05/29
カメラはほんと現地での思いつきだったんですが、おかげで自分にしては珍しくまともな利用シーンが…!
ちょもさん
2015/05/29
harmankardonさん
2015/05/29
HDMI→DVI-D変換しても使えるのですね.
HDMI→DVI→HDMI変換したら,使えなかったので,てっきりダメだと思っていました.
しばさん
2015/05/30
下小川さん
2015/05/30
うまく送受信できれば夢がひろがりんぐ!
DVI-D変換は解像度の制限が入る以外問題なかったんですが、イレギュラーなので確実性は低そうですよねえ。
Miracast内蔵してるテレビもあるらしいし、このアダプタなら手軽なのでワイヤレスディスプレイがやっと身近になってきましたねえ。
砧順一さん
2015/05/30
使い方によっては本当にあれこれできそうです。
下小川さん
2015/06/01
猫好人さん
2015/06/06
『Wi-Fi不要』とありますが、Wi-Fiオフ接続しない状態で
『マイクロソフト ワイヤレスディスプレイアダプター』デバイスは、
認識しますか?
下小川さん
2015/06/06
ルーター等がなく、インターネットに接続しない環境or切断している環境でもワイヤレスディスプレイは使用可能です(今回試した親戚の家はインターネットなんてなんもないケータイの電波すらここ数年で届いた地区なので)。
但し機内モードなど「無線LANアダプタ自体が無効化されている状態」だとワイヤレスディスプレイは使用できません。
猫好人さん
2015/06/07
やっぱり、使ってみたい一品になりました。