レビューメディア「ジグソー」

アンロック8コア16スレッド!超弩級CPUの実力を活かしきれるのか?

Intelのコンシューマ向け最上級クラスとなるX系チップセット。CPUには同じCore i7の名を冠しながら規格の異なるソケットを使用し、コンシューマ向けブランドでありながらサーバー・ワークステーション向けに近い性格を持つハイエンドプラットフォーム。


2011年発売のX79及びSandyBridge-Eが長らくその座に居たが去年10月にはプロセスを進めたIvyBrdge-E世代が登場、消費電力の低減や性能の底上げが行われた…が、マザーボード・チップセットに関してはX79のまま。

既に普及価格帯には設計の新しいZ87・Z97チップセットやHaswell世代のi7が投入されており、SATA3ポート数やUSB3.0への対応といった足回りに不安を抱えていたのも事実。それら不安要素を払拭してくれる一新されたハイエンドプラットフォームが今回のHaswell-EとX99マザーボード。

ソケット名こそX79時代と同じLGA2011だが今までのLGA2011とは互換性のない別物「LGA2011v3」となっている。

あわせてメインメモリもDDR4となった。DDR3ではオーバークロック扱いとなっていた速度も定格としてサポートされ、動作電圧も1.5Vから1.2Vへと低下した新規格メモリだ。
裏を返せばメモリ含め過去のパーツを流用できず、初期投資のハードルが更に高くなってしまっているのも事実なのだが。

今回は「ASUS X99 DELUXE」「Crucial DDR4 2133 8GB*4」を使用させて頂いてレビューを行った。だいたいの内容はこちらのCPUレビューに含まれているが、それぞれの詳細はこちら。


現品はCore i7ブランドとしては初の8コアCPU「i7-5960X」だ。

今までもXeonブランドでLGA2011用8コアモデルは登場していたが、ついにインテルコンシューマ向けにも8コアの登場という訳。定格クロックはその分3.0GHzと6コアの旧モデルや下位モデルに比べて控えめになっているが、ExtremeEditonの名を冠するだけに倍率変更が可能な点は見逃せない。

 

こうしてみるとLGA775や1155に見慣れた身には、LGA2011がでかく感じる。しかしソケット370も意外とでかかったようだ。

当然ピンの密度は別物。

奥はSandyBridge-EPのXeon E5-2620。スプレッダ形状は大きく変わった。

 

実使用においてのパフォーマンス云々という訳で私の場合、かつては重いソフトの代名詞だった画像編集ソフト「Photoshop」を使って既存環境との比較行いたい…のだが、今現在使っているX79環境は先ほどのXeon E5-2620…当時の6コア12スレッド最廉価モデル。Photoshopのフィルタ速度ではivy世代のi5に負ける始末のCPU。

今回使用するCPUとある程度比較対象になるであろうモデルのスペック一覧はこちら。

こうしてみると同時発売された6コアモデル5930Kの方がクロックやスペック的には過去のX型番に近いスペックを持つ。

ベンチマークでは手持ちのi7 3770K、消費電力やフォトショフィルタ速度ではi7 2700KやE3-1260Lとの比較も行うが基本的にはE5-2620との比較。


内容が長くなるので大きな流れはこのような形。
●オーバークロック設定
●各種ベンチマーク
●消費電力テスト
●X79環境からの実環境移行
●画像編集ソフト使用時のパフォーマンス
…まあ消費電力テストまで見ればだいたい必要な内容はあるきがしますが。

 

いきなりOCの話かよとなるのだが、後述のレビューではOC状態のデータも含まれている為先にOC設定を紹介しておこうという訳。

 ただでさえモンスターなこのCore i7 5960X。8コア16スレッドな分定格クロックは下位モデルや前モデルに比べて控えめな3GHzだが、倍率可変でOCが容易。


で、8コア4GHz(TB可変無し)の設定であっさり安定。電圧オフセットは+0.025V、負荷時のソフト読み電圧1.200V。これなら常用OCでも使っていいレベルだ。
逆に同じ電圧で8コア3.8GHz/TB1コア4.1GHzにすると不安定になったのでこの電圧だと4GHzが一つの壁になっているようだ。

今回はケースが旧型で放熱面で不利。かつ電源が500Wという事で4GHzを一区切りとしたが、マザー(ASUS X99 DELUXE)側の自動OCであっさり4GHzオーバーの設定にされてしまうくらいなので、コレにふさわしいケースや電源を与えればもっともっと上は狙えるだろう。

この4GHzOC状態でも温度はケース次第ではあるが空冷クーラーで十分フォローできる範囲だ。なぜか自分の環境ではアイドル温度が室温-2度とかいう物理法則を無視した温度を表示したので、この計測値をほかのPCと比べる場合は+5度程度を見積もっておいた方がいい。

(追記:最新版UEFIでは恐らく治っているのか最近は普通の温度)

↑起動直後のUEFI画面…室温30度を越えていたがCPU温度が28度。

他の2011CPUの例に漏れずクーラーは別売り。今回はXIGMATEK SD1283NHEDとPhanteks PH-TC12DXを使用した。どちらもX79/X99環境でもメモリへの干渉をし難い12cmクラスのサイドフロー薄型ヒートシンククーラーで、決して極端な冷却力を持ったクーラーではない。

 

3.9GHz動作時のテストだがPrime95実行時の温度変化はこんな感じ。横軸が秒(30秒単位)、縦軸が℃となっている。300秒でPrime95を停止させている。

一見どちらもほぽ同じ52度で安定だが、SD1283NHEDはファン回転数が1800rpmと大きめになっていた。一方より高価なPH-TC12DXはファン全力の1800rpmにならず1300rpm程度で温度を維持させていたという点が大きく異なる。但しPrimeより電圧がかかるMP4エンコードの場合はPH-TC12DXでも全力の1800rpmになった。

温度変化の動きは以前2700KをOCした時に近いので、コイツはソルダリングじゃないかと思っていたが、これを書いている間に公式にソルダリングという情報があったようだ。


もちろん消費電力は相応に大きくなる。プラチナ電源使用でのPrime95負荷時は+40W近い。またマザー側に電圧を任せると安定性を考慮してか300W以上まで上がる。

定格 3GHz                       230W
手動設定4GHz(+0.025V) 268W
マザー自動設定 4GHz         303W

定格3GHzという設定は発熱はもちろん実用的な消費電力に抑えるためかもしれない。

またDDR4 2133メモリが電圧1.2Vそのまま2400(CL 16-16-16-39)設定で動作する事が判明したのだが、それに気づいたのが締め切りギリギリだったので本レビューではほぼ全て2133の定格動作によるテストとなっている。

 


 さて、何はともあれベンチマーク。
8コア16スレッド3Ghzとi7でありながら多スレッド方向に進化を遂げた5960X。Xeon E5-2620及びi7 3770Kとの比較ではお値段的に差がありすぎるが、GeForce750Tiを搭載してのベンチマークを見てみる。

…スケジュールの関係で750Tiを古いVGAと比較する時に取ったベンチスコアを流用しているのでベンチが3Dmark06とFF14ベンチなのはご容赦を。

3Dmalk06はさすがに当時からマルチスレッド環境を意識して作られていただけにある程度スコアは出している。しかし定格だと3770Kに肉薄されておりCPUスコアの差で勝っている印象。


 ネットゲームベンチマークFF14だとマルチスレッド環境を生かせないせいか、3770Kに僅かながら負けてしまった。OC状態でも負けている。ベンチ向けのクリーンなOSではなく色々入った実使用環境のためその辺もあるかもしれないが、負けは負け。この辺のベンチだとi7 3770Kとi5 3570Kのスコアが肉薄するくらいなので予想はしていたが。大幅にクロックの下がるXeon E5 2620は目に見えて処理に詰まる部分がありそれでスコアを落としている。

 

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 CINEBENCHでは16スレッドを存分に発揮し、超弩級と呼ぶのに相応しいスコアを叩き出す。

定格状態で既に1283cbと既に化け物的なスコアだったが4GHz状態ではさらにアップした1563cb。確かにマルチスレッドの恩恵が大きいベンチマークではあるがこれは恐ろしい。
 CINEBENCHはこれまでのゲーム系グラフィックベースのベンチより3D製作ソフトに近いベンチなので、よりワークステーション的な用途に向く傾向が読み取れる。

 

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 お次は個人的にきになるメモリ速度。X79の強みの一つがクアッドチャンネル動作によるメモリ速度の速さで、X79を導入・メインとして使っていた最大の理由がそのメモリ周りのスペックだった。

今回X99はCrucialのDDR4 2133メモリ8GBを4枚の32GB環境だ。X79はメーカー混載のDDR3 1600 4GBを8枚という無理やりな構成だが、32GBには変わり無いのでX99有利は承知でそのままベンチマークとRAMディスク速度を計測…したかった。

 何故か今回RAMディスクの生成ができない。ソフト側がX99及びDDR4に対応していないのか不明。いかんせんコレを書いている時点では判らない。

代わりに古いベンチであるもののCM2004R3…尋常じゃないメモリスコア。

CM2004R3メモリベンチスコア
X99 5960X DDR4 2400 16-16-16-39 1.2V 8GB*4  166166
X99 5960X DDR4 2133 15-15-15-36 1.2V 8GB*4  150252
X79 E5-2620 DDR3 1600 9-9-9-24  1.35V 4GB*8   74987
Z77 3770K DDR3 2400 10-12-12-31  1.65V 4GB*2 94583
Z77 3770K DDR3 1600 9-9-9-24 4GB*2 1.5V         68992

何なんですかこのスコア。今まで手持ち最高スコアだった3770Kの2400をあっさり超えた。X79クアッドチャンネルのWriteの速さとZ77環境高クロックメモリ動作のReadの速さを兼ね備えている。メモリアクセスの多いソフトはもちろん、メインメモリをキャッシュとして使用するSSD高速化ユーティリティ等との相性がよさそうだ。


しかも忘れてはいけないのがDDR4の動作電圧の低さ。DDR3 2400メモリは1.65Vで動作させており、X79環境はDDR3としては低めの1.35V動作。しかしコレは定格で2133を叩き出しつつ1.2V動作だ。追々更なる高クロックメモリや低電圧メモリがラインナップされる事がDDR4には期待できるだろう。
また低電圧動作に関しては消費電力云々より、発熱の低さによる信頼性・安定性が期待できる。今回は4枚動作だが、8枚動作での安定性が上がっているとの情報もあるのでこちらも楽しみだ。

大容量メモリとメモリ速度はやはりCG製作などにおいて強みを発揮する部分なので、しつこいようだがワークステーション的な方向に強みを持っている。

 

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 最後にX99チップセットのSATA3速度だ。X79チップセットはZ77やZ97といった環境に対してSSDの速度が出難いという評価があったが、X79もドライバの改善もありだいぶ挽回していた。


今回はシステムドライブとして使用した東芝製SSD(128GB)をシステム状態のままX79とX99でテスト。ご覧のとおりスコア差は…項目によって勝ったり負けたりバラバラ。システム状態のディスクなので他のソフトの挙動影響を受けやすいし、それまでX79に入れていたIRSTより、X99マザー付属のIRSTの方が古かったのでそのせいもあるかもしれない。

128GBのSSDでここまで速度が出るのだからそれだけでも十分すぎる。むしろSATAExpressやM.2といった最新規格への対応がトピックか。

 



 お次は消費電力。X79は実装部品の多さもあり、アイドル消費電力が大きくなる傾向があり弱点の一つだった。実にZ77環境の倍近い。またオンボードグラフィックが無いのでVGA必須となる。そこでX79環境で計測した時とあわせるためGeForce GT220を搭載。

計測方法は、Antecの380W スタンダート認証電源EA-380を使用し、マザーボードにのみ給電、それをワットモニターで計測する方法だ。それ以外のドライブ・ファン類は外部電源で供給する。


同じ条件で過去何年も消費電力データは計測しているのでここはもう大・放・出。


 もうお前何考えてんだのデータ量。さすがに何年も前から同じ電源ユニットでとっているので電源ユニット自体の劣化も考えられるし、マザーボードによって同じCPUでも大きな変化があることはご了承頂きたい。

こうしてみると今回はX79環境に対してアイドル消費電力に関してはさほどの変化は見られない。Z68やZ77でもそうだったのだが、アイドル消費に関してはマザーボードのメーカーや設計思想でかなり変わってくるので一概には言えないものの、同等と見てかまわないだろう。
しかしマザーボード側が多機能化しているのでその分を考慮すれば効率は上がっているか。

注目すべきは負荷時の消費電力。ついにこのグラフではPentiumD 830以来となる200Wの大台を突破。212Wと僅かにPentiumDを上回る消費電力を叩き出して堂々の(?)一位。

 

更に8コア4GHz動作のOC状態では更にアップする。最初に紹介したのシステム全体のOC時消費電力(500Wプラチナ電源使用)より消費電力の上昇率が高いのは恐らくEA-380の出力限界に近づいてしまい出力効率が下がってしまったようだ。いや、CPUとアイドルVGAだけの計測でEA-380がヤバくなるとかPentiumDくらいしか思ってなかったんで。

しかも今回試した4GHzオーバークロック設定、Prime95やOCCT CPUだとCPU電圧が上がりきらない。MP4エンコードを行うと更にコア電圧が上昇し、瞬間的に300Wをオーバーすることも。


 圧巻の消費電力となってしまったが、コイツは3GHzの8コアCPU。かつてPentiumDを使っていた人も少しは居るだろうが、定格なら同等の消費電力でこのモンスターCPUを扱える時代になったのだ。
不釣合いであるが消費電力の少ないグラフィックボードなら500Wクラスの電源ユニットでも十分運用を狙える。恐らくコレに手を出すような人なら高品質の電源を既に持っているだろうから流用するのもぜんぜんアリ。OCを楽むのなら話は変わるが。

 


 先にベンチマークやOC結果を持ってきた為内容は前後するが、実際の組み込みだ。今回は既存のX79環境(Xeon E5-2620 / ASRock X79 Extreme6)を置き換えると言う事でパーツ・ケース類は流用する。

で、はっきりいって作業用環境のOS入れなおしというのは結構面倒。いろんなソフトの再設定・再認証が必要となるのでできれば避けたい。
そこで今回はX79環境で使っていたWindows7 64bitがインストールされたSATA3 SSDをそのまま今回のX99環境に繋いでみる事に。

まずは既存のマザー用のアプリ・ドライバ、また環境依存の大きいRAMディスクソフト・SSD高速化ユーティリティ等を抜けるだけ抜いておく。
X79は当初AHCIドライバに「Intel Rapid Storage Technology enterprise」を使用していたがいつのまに他のチップセットと同じ「Intel Rapid Storage Technology」に統合されていた。X99でもそのままだろうが念のためアンインストール。


グラフィックドライバはGeForceやRadeonならユーティリティがあるので抜いておいたほうがいいだろうが今回はユーティリティが任意起動なMATROX M9138なのでそのまま。コイツのせいで性能台無しだがキニシナイ。
後はドライブレターが狂った時を考えて常駐のバックアップソフトを停止して準備完了。

 


X79からの流用といいつつ、元々はPentium4時代に購入した2000円ケース。今の目で見ると内部の余裕や放熱面で不利だ。ケース後方の排気ファンは8cmが二基、側面には本来8cmサイドファンが搭載可能だったがクーラーとの干渉もありアクリルパネルで封鎖済み。また一般的レイアウトのATX規格のケースとしてはギリギリまで小さい寸法なのでドライブベイはマザーボードの一部に重なる。

本来長尺のカードを回避する為の横向きコネクタはHDD回避に役立つ始末。


恐らく世界で屈指のケースに不釣合いなX99マシンになる。流用できるパーツは全てX79時代と共通にしようとしたのだが、クーラーはソケット位置の変化のせいか今まで装着できていたXIGMATEK SD1283NHED(写真もそれ)がサイドパネルにぶつかり、無理をしないとサイドパネルが閉まらなくなってしまったので、僅か2mmの差を信じてPhanteks PH-TC12DXに変更、なんとか収まった。


そしてPCIのサウンドカード「ONKYO SE-90PCI」を使用していたが、X79と異なりX99は残念ながらPCIサポートが無くマザーにもスロットが無い。別PCからPCIexpress用のサウンドブラスターを奪い取ってきた。X99 DELUXEのオンボードサウンドも優秀ではあるのだが、ヘッドフォンではなくアンプとスピーカー接続なのでやはりサウンドカードはあったほうがいい。

CPU : Intel Core i7-5960X
M/B : ASUS X99 DELUXE
MEM : Crucial ct8g4dfd8213.16fa1 8GB*4 32GB DDR4 2133
PSU : Huntkey 黒風500 X7-500 80PLUS PLATINUM 500W
Cooler : Phanteks PH-TC12DX RD
VGA1 : MATROX M9138
VGA2 : MATROX M9125
Sound : Creative SoundBlaster X-Fi Titanium Fatal1ty Champion Series SB-XFT-FCS
SSD : CFD CSSD-S6T128NHG6Q 128GB
HDD1 : HGST HDS721010DLE630 1TB
HDD2 : WD Black WD4001FAEX 4TB
BD:LG WH12LS39
ケース : MX09/5015
アクセサリ :
Owltech OWL-B5BA2 アクリルディスプレイBOX
COOLERMASTER LLC-U02 Musketeer
Dual X Holder TTC-SC07TZ(RB)
光るファンたくさん


組み換え作業を行った後UEFIの設定に入る。UEFIは一新されておりASUSらしい先進的なデザインでなかなか悩む。設定項目もかなり多い。

一旦オンボードの追加SATAやサウンド、他もろもろを無効化し最低限の機能にし、HDDのモードがX79時代と同じAHCIになっている点を確認してブートドライブの設定をして終了。
USB機器もキーボードとマウスだけにしてOS起動だ。注意すべきはASUS X99 DELUXEのバックパネルはUSB2.0ポートが2つだけで残りは全てUSB3.0という事。

OS上でドライバが当たるまでは3.0ポートは正しく動作しない可能性が高いので2.0にマウスとキーボードを繋いでおく。

繋いで起動すると…OS起動後に画面が真っ暗に。アチャー、やっちまったか?と思ったがHDDアクセスランプはピカピカ光っている。恐らくグラフィックボードかPCIexpress周りがうまくドライバが当たらず画面が出ていないのだろうと少し待っていると画面が出てくれた。


マザー付属のディスクに入っているチップセットドライバをインストールし、再起動を繰り返し、オンボードデバイスも随時有効化していくと…出来上がりだ。幸いOS自体に不安定さは無く起動時に何か詰まっている様子も無い。環境ポン付け移行成功だ。後は認証が必要なソフト(OS含む)を通せば出来上がり。


…が、何故かWEIが途中で停止する。MATROXなんて変なボードを挿しているのが原因かと思えばそうではなく、i7-5960Xの化け物的スペックのせいでコレに引っかかっていたのだ。

マイクロソフトサポート WinSAT test fails in Windows 7

要はL3キャッシュが16MB以上だとWEIが正しく動作しないというオチ。今までXeonくらいでしかひっかからなかったのだが(Core i7 4960XはL3キャッシュ15MB)コイツはXeonばりのL3キャッシュ20MB。思いっきり引っかかる。化け物め…

定格ならWindows7 WEIプロセッサスコアは7.8だが、OCをかましてクロックを上げる事で伝説?のプロセッサスコア7.9を叩き出す(3.9GHzで確認)。はじめてみたよ。

 
 心配なのが排熱。過去このPCケースは発熱の大きいPrescott世代のPentium4を搭載していた事があるが、その時は常時爆音PC。2700K時代は高負荷になると唸るような音を上げていた。案の定今回ケース内温度は隙間から手を突っ込んで判るほどに温度が上昇している…そりゃそうだ。こいつはTDP140Wだ。


しかしある事を思い出す。XeonE5時代から搭載しているHuntkey黒風は一定の負荷・温度にならないとファンが回転しないセミファンレス電源。試しにPimeをブンまわしてみるが260W程の負荷なのにファンが回る気配がない。コイツいつになったらファン回るんだよ。真夏の室温30度オーバーの時回っていたのを見ているので決して故障ではない。


 電源上配置でしかもマザーギリギリまで電源が迫るケース。この状況で電源ファンが停止しているのはCPUの放熱面での影響が大きいハズだ。そこでマグネット固定式ピンを使って電源部に9cmファンを増設。セミファンレス電源の存在を全否定する暴挙


ギャグのような存在のファンだがこのファンのおかげで負荷テストもOK。実使用ではそこまで長時間Primeのような負荷がかかることはないのでもう大丈夫。もちろんアイドル時はHDDの音がきになる程に静か。

 という訳で排熱面で不利なケースでも、決してムリなわけでは無さそうなので、昨今の静音ケースを使えば静かなハイエンドマシンだって狙える。高度な電源管理で実使用時における発熱はかなり抑えているのではないだろうか。

もちろん負荷がかかった時のために冷却力に余裕を持たせておく必要はあるし、TDP140Wという事は考慮しておきたい。

 


 さて今回は元々Photoshopをはじめとした画像編集ソフトを多く入れたPC。そもそも私が10年前に最初の自作PCを作った理由というのが「パソコンでお絵かきしたい」だったのだ。当時はHT2スレッドのPentium4に1GBのメモリでうおーすげぇー!だったのだから隔世の感がある。現在もこのPCの最大の用途は画像編集…結局お絵かきだ。


 但し自作PCの方にハマってしまったせいで10年間の間にPCの性能はガンガン上がったものの腕の方はどんどん引き離されてしまっている上に最近は「お絵かきする為に自作PCを作ったつもりが自作PCの性能を確認するためにムダに重いお絵かきをする」という本末転倒な事をやっている始末。

10年間このPC(ケースそのまま)に使用してきたPentium4 3.2EGHz/Core2Duo E7600/Core i7 2700K/Xeon E5-2620全てでOS・ソフトのバージョン違いこそあれどフォトショを使っていたので記憶を辿れば比較できないこともないが、やはり直接の比較対象となるのはベンチの時も登場し寸前までこのPCに組み込まれていたXeon E5-2620だ。


クロックが低いのでCore i7 2700Kの方が速い場面も多かった。それでもXeon E5-2620を使っていた理由は当時廉価に入手できたおかげで有り余っていたDDR3 4GBモジュール8枚挿しによる32GB環境の成功とクアッドチャンネルによるメモリ周りの性能。そして6コアによるソフト同時起動時の安定感。また負荷をかけても発熱が少なく古い筐体でもムリが無かった。あと何よりハイエンド環境のX79を使ってみたかった。
既にクロックの低さ以外は過剰性能の域に入っていた感があったが、今回は…

Xeon E5-2620から更に増えた8コア16スレッド 
Core i7 2700Kに迫る動作クロック OCで更にアップ可能
DDR4クアッドチャンネルにより更に高速化したメモリ(容量は維持)

ともう完全無欠の体制だ。これで遅いわけが無い。心配だった発熱もなんとかなったので今回の実用テストは4GHzOC状態でも行った(埋め込んだ動画は4GHz動作中のもの)。

先にファイル展開とフィルタ速度を実際にキャプチャした動画を。スクロールがカクついているがこれはキャプチャソフトとの相性のようでXeonもi7も関係無しに発生してしまった。キャプチャソフトが無ければ滑らかにスクロールする。



 さて細かく見ていこう。フィルタ速度…その中でも特にCPUをぶん回してくれる「放射状ぼかしフィルタ」だ。過去にとったデータから流用する為に古いPhotoshopElements4.0で計測したものをメインに、Xeon E5 2620とi7 5960Xは64bit版のPhotoshop CS6の計測も行った。

使用するファイルは4500px*3200pxのイラスト画像、設定は放射状ぼかし強さ50高画質だ。
 


 オーバークロックで後継3770Kを凌駕するスコアを叩き出した2700K(4.2GHz)を定格で振り切り11秒。4GHzOC状態ではなんと9秒で2700K(4.2GHz)の倍近い速度。コア数が倍でクロックは若干低いのだからまさにその通り正直なタイムが出ているともいえるがいざ見ると圧巻だ。

 そして64bit対応で新ハードウェアへの最適化が進んだPhotoshopCS6での同じフィルタ速度はPhotoshopElements4.0(Photoshop7.0も同じエンジンなのか速度は同じ)の4割増しといったところでソフトの側の進化もまざまざと見せ付けられる。やはり新しいハードウェアを生かすには新しいソフトウェアが必須だ。 …プラグインの関係で7.0も併用してるんですけどね。

 

更に8000px*8000とかいう過剰解像度のイラスト画像に放射状ぼかし強さ100高画質とかいう意味が判らない重い設定も計測。先ほどの動画はコレだ。


計測のためにわざわざ重い設定でやってやっとシークバーが出るレベルなのだから普段の処理なんてi7-5960Xにとっては片手間レベルだろう。

 


一方バッチ処理(40枚の写真を解像度縮小および色調補正した上でJPG圧縮保存)、及び8000*8000ピクセルのファイルをPNG圧縮保存する時の所要時間は…


Xeon E5-2620   40枚バッチ処理1分23秒   大解像度PNG保存1分18秒
i7-5960X 定格    40枚バッチ処理1分17秒  大解像度PNG保存0分55秒
i7-5960X4GHz   40枚 バッチ処理1分16秒  大解像度PNG保存0分55秒


 と差はでているもののフィルタ速度程ではないしOCは変化なし。PNG圧縮処理中は1コアしか働いていない上にその1コアさえ動ききっているわけではないのでこういう結果になったのだろう。複数のファイルを同時にバッチ処理する機能があったらいきなり変わりそうなのだが。

 

 

実際の動作でXeon E5-2620と大きく違うのがやはり重い高解像度ファイルにおいての特殊ブラシや選択範囲生成といった細かい部分のCPU処理レスポンス。スクロール等はメモリ速度も影響してくるのでE5-2620でも十分すぎる体感速度を提供していてくれたのだが、更に高クロックという武器が加わったi7-5960Xはもう全部速い。

 

試しに今回その手で使われるテンプレートの中ではもっとも大きいクラスになる「抱き枕カバー」サイズのファイルを作ってみた(1日の突貫なので途中まで)が、その体感速度は重たい解像度のファイルを開いている事を忘れさせる程だ。忘れて単なる作業動画になっている。

 

 

 

今回は換装前後共合計32GBのメモリを実装している訳なのだが、さすがに32GBとなるとメモリ大食いの代名詞だったPhotoshopでさえ単体でメモリ不足を起こすのは難しい。

結局1つのファイルでは到底消費しきれず、いくつもの重量級ファイルを開いてメモリ不足エラーを表示させたのがコレ。なんと7つのファイルだ。しかもそれぞれ重い。

普通重量級のファイル同時に開くのはせいぜい2つ程度(パーツのやり取り時等)、複数開く時は大抵軽いファイルが混じるのでX79時代からメモリ不足を起こした事は無い。やはり動画編集等をしないと使いきれないかもしれないが、動画編集ソフトを開きつつ素材作成用のPhotoshopを動かしてもビクともしない。

 


 さて長々と書いてきたがその性能はやはりマルチスレッドで本領を発揮する。ゲーミングやベンチマークより、動画・画像編集や3Dグラフィックスといったワークステーション的用途で高い性能を発揮し、DDR4メモリもそれに拍車をかけている。今まで8コア以上のモデルがCoreブランドではなくXeonブランドで投入されていた理由が伺える。


 しかし8コア16スレッドと倍率可変は超弩級CPUと言うのに相応しい存在。生かせる場面では間違いなく文句のない体感速度とパフォーマンスを提供してくれる。レビュー中消費電力など不満のありそうな書き方をしていたが、それらデメリットを吹き飛ばす速さだ。ワークステーション的用途においては人間の方が追いつけなくて逆に悲しくなってくるほどにこのCPUとX99プラットフォームは速い。速すぎる。私の使うPhotoshop程度では歯が立たない。
かつて重いソフトの代名詞だったPhotoshopをPhotoshop程度と言い切ってしまうほどコイツは恐ろしい。

一方シングルスレッド性能や高いクロックが必要なベンチマークやゲーミングでは不利な面もある。 オーバークロックについても予想していたよりあっさり回ったものの、8コアだけに相応の電源・冷却系が必要だ。

これまでの「Extreme Edition」シリーズに求められてきた「オーバークロック」「ベンチマーク」「ゲーミング」においては下位モデルではあるものの6コアでより高い定格クロックを持つCore i7 5930Kがライバルになってくるし価格差も大きい。当然コストパフォーマンスでは圧倒的に優れる4790K&Z97マザーの存在も無視できない。このクラスに手を出すならコスパは気にするなと言われそうだがCPUだけで12万…それだけでZ97環境なら1台組める勢いだ。

Extreme Editionの名を冠しているものの場面によっては旧型や下位モデルに水をあけられる可能性がある「ある意味Extreme Editionらしくない面も持つCPU」というのが素直な感想。いっそ5960Xと5930Kの間に高クロックな6コア版「Extreme Edition」モデルがあってもいいんじゃないだろうか。

コメント (7)

  • カーリーさん

    2014/09/08

    ドスパラのイベントで見かけないなーと思ったら既に手にしていたとはwwwwwwwwwwww
  • 退会したユーザーさん

    2014/09/08

    こんにちはーレビューお疲れ様です!
    自分のところも温度表示がおかしかったので、対策まちです。
    ちなみにBIOSを0505に上げてユーティリティを最新いれてみたら
    コア温度10度とかなったので、戻しました・・・・w
    今BIOS800番台でてるようなので、またいれてみようと思います!
  • パッチコさん

    2014/09/08

    レビューおつかれさまでした♪
    参考にさせていただきます!
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