東芝の高解像度タッチパネルディスプレイ搭載Ultrabook「dynabook KIRA V832」のプレミアムレビューです。
追記情報(2013/05/03)。
・サイズ比較
・電子マニュアル
追記情報2(2013/05/05)。
・SSD換装
追記情報3(2013/05/13)。
・バッテリーライフ検証
【dynabook KIRA V832とは】
「プライベートを愉しむためのウルトラブック」
高解像度タッチパネルディスプレイ、高品位サウンド、
長時間バッテリー・・・
2013年から新たに登場したKIRAシリーズの本機は、
デザインと機能を高い次元で融合させた東芝渾身のウルトラブックである。
今後のウルトラブックが進むべき方向性を見せてくれる心躍る逸品だ。
【外観と仕様】
・デザイン
一目見てわかる素性の良さ。
作り込まれた設計は外観にも如実に現れている。
部品の加工精度が高く、寸法公差はかなり詰めた設計のようだ。
重量バランスも優れ、手に持った時の満足感は確たるものだ。
・基本仕様
液晶サイズ 13.3インチワイド
解像度 WQHDタッチパネル (2560x1440)
CPU Core i5 3337U(Ivy Bridge)
ビデオチップ Intel HD Graphics 4000
SSD 128 GB(ソフトウェア占有量 約38GB)
メモリ 8GB(DDR3 PC3-12800)
サウンド機能 harman/kardon® ステレオスピーカー
OS Windows 8 64bit
外形寸法 約316.0×207.0×9.5~19.8mm
質量 約1.35kg
カタログスペック主要項目を抜粋して転記。
やはり目を引くのは解像度の項目。液晶を抜きにKIRA V832を語ることは出来ないだろう。
詳細は実用編にて画面サイズ比較結果を提示する。
好感を持てる項目がメモリ。
従来のウルトラブックは4GB搭載機が主であったが、余裕のある8GB。
ユーザー側で増設することを念頭に置いていないウルトラブックにおいて、
余裕のあるメモリサイズは安心材料である。
反面、残念なのはSSD。
128GBのサイズに対し、リカバリ用の回復パーティションなどに裂かれ、実際に使える領域は約95GB。
ソフトウェア占有量を考慮すると、ユーザー仕様領域は50GB前後となる。
メーカー直販サイトからは256GBサイズのものを購入できるがCPUやOSもスペックアップしている上位グレード。
高解像度液晶を有する本機の用途を考えれば店頭モデルも256GBである方がより訴求力があるように思う。
本機はサウンドにも妥協は無い。
ハーマン・インターナショナル社と共同開発したharman/kardonステレオスピーカーが搭載されており、
「床面の反射を生かす」ことで、高音質を実現している。
アイソレーションタイプのキーボードも魅力の一つ。
納得いくまで作り込まれたキーボードは、
19mmのキーピッチ、1.5mmのキーストロークを誇る。
このキーストロークがしっかりした打鍵感を生み、非常にタイピングをしやすい。
優しい光のバックライトも搭載されており、照明を落とした室内でも心地良い。
・USB3.0
左側面に2基、右側面に1基あるUSBポートはすべてUSB3.0仕様。
ポート数もさることながら、3.0仕様なので今後対応機器が増えてきても安心である。
左右両側面にあるため、接続の自由度も高い。
拡張性の多くをUSBに頼るウルトラブックにおいて、この点は見逃せない利点である。
・SDカードリーダー
ここは実は残念ポイント。
SDXCまで対応している点はさすがは最新モデルだが、
コネクタがハーフサイズで、使用時にはSDカードがはみ出す。
このためSDカードを拡張ドライブとして常用することができない。
前述のSSD容量の心もとなさと合わせて、記録容量の少なさがネックになる可能性がある。
【ファーストインプレッションまとめ】
すべてが非常に高い次元でまとまった良機種。
初めて触った時に感じた、偽らざる感想だ。
KIRA V832のファーストインプレッションとして、
不満はSSDの容量くらい。
これも用途を工夫すれば大きな問題では無く、直販という回避策もある。
注意点は、高解像度故の功罪。
解像度が高い分、文字が小さい。
OS側の制御で文字サイズを拡大することもできるが、ソフト依存文字は変えられないため、
少なからず小さい文字ともお付き合いが必要だ。
デザインと機能の両立を達成した妥協のない製品づくりによって、
所有欲を満たす最高級の一台に仕上がっている。
乱立するウルトラブック製品の中で間違いなくオンリーワンの個性があり、
今後のウルトラブックを含むパソコン全体の方向性を示す試金石となろう。
【実用編】
以降で、実用に向けたカスタマイズを紹介する。
まずはセットアップの状況から。
OSはWindows8。セットアップ方法は従来のセットアップと大きく変わらないため割愛。
セキュリティソフトはウイルスバスター体験版が付属しているが、
私はカスペルスキーの方が好みなのでこちらを導入した。
付属ソフトにOfficeやAdobe Photoshop/Premiere Elementsが付属しており、
ホームユースで必要そうなものは一式揃っており、満足感が大きい。
officeはタイルUIにある「Microsoft Office」タイルをクリックすることで導入が始まる。
画面指示に従い添付のプロダクトキーを入力すれば、使用できるようになる。
Adobe Photoshop/Premiere Elementsはインストール用のSDカードが付属。
その他、セキュリティソフトやブラウザ等の通常使用するソフト類を追加してから、
リカバリメディアを作成した。
本機はリカバリメディアが付属しておらず、SSD内に回復パーティションが作られており、
不慮の自体にはこちらからリカバリをすることとなる。
とはいえ、SSD自体が故障した場合には対処ができなくなるため、
外部メディアにバックアップを作ることにした。
東芝の独自アプリ「デスクトップアプリメニュー」内に「リカバリメディア作成」アプリがある。
対話式のメニューから選択するだけでリカバリメディアを作れるため、
初心者でも簡単に対応できると思う。
今回はUSBメモリをリカバリメディアに設定した。
リカバリメディアも作成し、いよいよカスタマイズを行っていく。
最初に行った対応は文字サイズ変更。
本機の最大の特長である、13.3インチワイドのサイズに搭載されるWQHD(2,560×1,440)という高解像度のタッチパネルディスプレイ。
1366x768サイズの解像度と情報量を比較してみると一目瞭然。
映像や音楽などクリエイティブな活動をするのに心強いディスプレイである。
反面、文字が小さい。
設定にて、文字サイズ変更を行うことである程度この現象を緩和できる。
(初期では165%のカスタムサイズに設定されているが、200%にして使用)
ただし、ソフト依存の文字サイズは変えられないため少なからず小さい文字とも付き合う必要がある。
例として「Movie Pro MX」を使ってみたが、テキストボックス内は文字サイズ変更が適用されているが、
その他はソフト側で文字サイズが決まっているようで大きくならない。
ソフト依存の文字が小さいままで見辛くなるものの、その分画面を大きく使えるのでメリットともデメリットともいえよう。
以上で、セットアップは終了。
いよいよ、レビューテーマに入る。
【レビューテーマ】
私の選択したテーマのコンセプトは、「V832 >ノートPC + タブレット」。
今まではノートPCとタブレットの2台持ち体制であったものを、
ウルトラブック一台に集約できるかを検証することだ。
2台体制で運用している理由
タブレットのメリット ・・・ 軽い。(立ち上げが)早い。(バッテリライフが)長い。解像度が高い。
タッチ操作における簡単操作。
ノートPCのメリット ・・・ CPUスペックに基づく高度な編集能力。
キーボード&マウスによる柔軟性のある操作性。
まず、KIRA V832のノートPCとしての基本機能は、余裕の合格点。
CPUはさることながら、8GBメモリが安心感を演出。
よほどヘビーな3Dゲームや動画編集などを行わない限り、スペック不足を感じることはないだろう。
SSDも高速。
搭載されているのは東芝製 mSATA規格SSD 「THNSNF128GMCS」である。
さて、ここまでは従来のウルトラブックでも達成し得る領域である。
本命はタブレットの優位性をどこまで取り込めるかに他ならない。
タブレットの優位性に挙げた項目に対して、KIRAの感想を以下に述べる。
・軽い。
カタログスペック上の本体1.35kg(1350g)。
タブレットの代表格であるiPad Wifiモデルの重量は652gであり、約2倍の重量差。
しかし、タブレットと異なり画面保護用のケースを使用する必要がない。
我が家のiPadはケース込で872gであり、ケースまで含めるとその差はだいぶ小さくなる。
実際は持ち運び時の重量バランスが良いため、数値よりも軽く感じるのだ。
・早い。
Ultrabookの定義の一つ、休止からのキーボード操作開始まで7秒以内。
本機も勿論達成しており、スムーズに使用開始ができる。
PC立ち上げが面倒だから・・・という理由でタブレットを使うことは激減するだろう。
・長い。
駆動時間9.5時間。
WiFi環境下で10時間というiPadと同格のロングライフを実現。
可搬性を重視するとトレードオフになりがちなバッテリーライフだが、
このライフの長さは見事としか言いようがない。
バッテリ駆動時間について、まだ十分に検証は出来ていないものの、
数回の使用した感じではほぼスペック通りであることを確認している。
外出時にバッテリーを持ち運ぶ必要性が無いのは心強く、タブレット同等の使い方ができると言えよう。
・解像度が高い。
従来のノートPCでも最大の不満点はここである。
iPadが10インチサイズにフルHD超えの解像度(2,048 × 1,536)を詰め込んでくる中、
モバイルPCの解像度は高くてもフルHDまでが多く、こと画像ビュアーとしては後塵を拝していた。
KIRAはWQHD(2,560×1,440)の解像度であり、もはや遅れを取ることはない。
ここまではカタログスペックの比較から想像に難くない領域だが、
実際の使用感についてはどうか。
iPadの主用途である画像閲覧について、KIRAでの流れをまとめてみた。
タッチパネルの感度が良く、動作も軽快。
違和感無く操作でき、画像ビュアーとして十分な性能であることが確認できた。
尚、今回使用したビュアーは「フォト」。Windows8の標準ソフトだ。
KIRAには東芝独自ソフトである「TOSHIBA Media Player」が組み込まれているが、
こちらはフリックの後一瞬引っ掛かりがある。
音楽や動画も同一アプリで閲覧できるのはメリットだが・・・操作性は「フォト」に分があるようだ。
実際にKIRAで写真を閲覧してみると、画像の綺麗さに驚く。
記憶色の再現性は高く、細部まで仔細に見れる。
おかげで、画像撮影の腕を問われることになりそうだ。
以上の感想を総合すると、今までタブレットで行っていた(タブレットの方が優位性が高かった)画像閲覧に関して、KIRAはその代わりになり得ることが分かった。
一台で二役を担えるため、値段以上のコストパフォーマンスがあると思う。
【番外編】
梱包状態や付属品についてもレビューしよう。
箱が2重梱包になっており、外箱>緩衝材>中箱になっている。
輸送を考慮した構成。
メーカー直販モデルもあることから、こういう仕様になっているのだろう。
中箱の品が良く、さぞかし梱包も凝っているんだろうと思って開けてみると、
いきなり取説その1がお出迎え。
う~ん、ここら辺は従来機種と変わらないということか。
引っ張りだすと何冊も出てくる。
サイズも厚みも違う冊子を何冊も入れるより、1~2冊にまとめた方が読む気がおきると思うが。
なんとマニュアルを紹介するガイドが付属している。
メーカー側も、ユーザーがどのマニュアルを読めば良いかわからないことを認識してはいるようだ。
ならばこそ、冊数を減らす努力をすべきだと思うが・・・予想外の展開。
KIRAの品位を損なわないようマニュアルまで気を配って頂けるよう要望したい。
追記情報(2013/05/03)。
【サイズ比較】
KIRAを連れて外出してみた。
重量1.35g。
けして軽くはないものの、バックの中に入れて歩く分には無理の無い範囲。
ブリーフケースに入れると、余裕のサイズ。
それもそのはず、13インチサイズにしてはかなり小さい。
同じ13インチのLenovo U310と比較する。
並べてみると明らかに一回り小さい。
下に敷いているのはELECOM ZEROSHOCKシリーズの13inch Ultrabook向け。
Lenovoはピッタリサイズだが、KIRAには明らかに大きい。
この差はベゼルの差が生み出している。
サイズダウンを達成した上でこれだけの高精細液晶を搭載したKIRAの技術陣には脱帽である。
このサイズダウンによって、市販のケース類ではサイズが合わなくなってしまう嬉しい悲鳴がある。
http://dynabook.com/pc/campaign/kira-amadana/index_j.htm
メーカーサイトでは専用サイズのアマダナPCバックプレゼントキャンペーンを行っているが、
デザインも良く、単独で使っても遜色ない出来のようだ。
市販品の選択肢も少ないため、これは是非市販して欲しい。
【電子マニュアル】
紙の取説は種々入っておりどこから読めば・・・という感はぬぐえなかったが、
なかなかどうして、電子マニュアルは見やすい。
デスクトップ上にあるリンク「パソコンで見るマニュアル」から入る。
開くと、ブラウザから閲覧ができる。
尚、元データはSSD上にPDFデータとして保管されているため、
PDFリーダーで直接読む方が取り回しは良いだろう。
これだけまとまっているマニュアルがある以上、
ペーパーメディアは最小限に絞っても問題無いと思う。
追記2
【SSD換装】
当初は少し使ってからと考えていたが、
SSDの容量不足が気になってきたのでSSD換装を実施。
設定をあまり弄っておらず、独自データも少ないうちに換装するため、
データ退避の手間はほぼ無しにできたのが今回の良かったところ。
導入したSSDは定番、m4の256GB。
尚、換装し、リカバリすると購入当時の状態に戻る。
つまり、もともと入っていたソフト(officeなど)は入っている状態、
後から入れるソフト(Adobe系)は入っていない状態になるので、
アクティベーションが必要なソフトは換装前に認証解除を忘れずに行う。
最後に、OSの完全シャットダウン(SHIFT押しながら再起動>電源を切るをクリック)をして事前準備終了。
換装の手順はいたって簡単。
背面のネジを外すと、背面パネルが丸ごと分離。
オーディオジャックが出っ張ってるので、うまく逃がす方向に傾けるとすぐに外れた。
mSATAなので非常に小さい。画面の赤丸の箇所にある。
2点ネジ止めされているので、外すとすぐに取り換えられる。
再インストールは、事前に作成しておいたリカバリUSBから行う。
F12を押しながら起動するとブートドライブが選択できるので、
USBを選択。
後は画面指示に従いながらセットアップをすれば良い。
この際、シリアル情報が埋め込まれているようで、入力をする必要が無い。
ほとんど選択するだけで、せいぜい無線のキーやOS紐づけ用のメアド入力程度でセットアップが終わってしまう。
換装前後のベンチマーク比較。
旧世代のSSDなのでガタ落ち、かと思いきや結構奮闘している。
これなら、速度低下を気にせずに使用ができそうだ。
追記3
【バッテリーライフ検証】
実用的な状態でバッテリーライフを確認してみた。
公称値としては9.5時間となるが、
実使用では環境が異なるため、短くなると考えられる。
今回はバッテリーベンチソフト「BBench」を用いて、2種測定を実施した。
<共通測定条件>
輝度 中心(数値が出ないので目算)
音量 20
無線LAN ON
終了タイミング 電池残量無しによるシャットダウンまで(残量2%)
<測定1 Full HD動画リピート再生>
FullHD動画をWindows8標準のアプリ「ビデオ」にてリピート再生。
計測はBBenchにて行った。
<測定2 Web巡回>
BBench機能にあるWeb巡回、キーボードエミュレーションを実施。
Web巡回間隔は60秒、キーボード打鍵の間隔は10秒。
測定1、2のバッテリーライフを下図に示す。
Full HD動画再生の経過時間は18894秒(5.25時間)。
Web巡回の経過時間は17014秒(4.72時間)。
予測では動画再生は短くなるもののWeb巡回はもう少し長くなる、と予想していたが意外な結果。
この結果から、PCで「何をやるか」よりも、
無線LANや輝度などをどんな設定で使うかの「使用状況」の方が、
バッテリーライフへの影響は支配的と考えられる。
出先などで長時間使いたい場合は、省エネ設定を有効にすると良さそうだ。
【まとめ】
非常に「買い」な一台である。
ノートPCとしての基本機能はもちろんのこと、高解像度液晶の付加価値によってタブレット端末の牙城にも切り込める傑作だ。
用途によってはSSDの容量がネックになりえるので、
どうせなら直販モデルを選択される、ないしは自分で換装してしまった方が頼もしい相棒として長期に渡って使用できるだろう。
砧順一さん
2013/05/21
特にSSDの容量がネックでして128GBではなく初期搭載で256GB以上
理想を言えば512GBあればよかったのですがユーザーが自己責任で交換も
意外と容易みたいなようなので来月末に在庫があったら購入します。
いやはや楽しみです。
Manyaさん
2013/05/21
コメントありがとうございます。
メーカー直販じゃないと純正で256GBは無いのが残念。
交換自体は手軽&封印シールも無いので、自己責任交換も悪くないと思います。
在庫あるといいですね^^
購入レポ待ってます♪
砧順一さん
2013/05/22
確かに他の海外メーカーにありがちな「封印シール」も店頭で実機を確認した限りでは確認できなかったので
SSD自体の交換は容易にしれっと交換できるというのはありがたい限り。
ただ、この機種は意外と価格が高く性能自体は凄いのですが売れ行きは
可もなく不可もなくという感じらしいですね。
実際店頭売価が約15万円程度というのはやはり高額の部類に入っていますし
設計陣のこだわりは確かに凄くその心意気は買いたいと思います。
ただ、であればこそ細かいSDカードスロットやヘッドホン・マイク端子の共用など
細かい点における私から言わせれば「仕様上の不備」をなんとかしてほしかった。
特にSDカードスロットは工夫の余地があったはず。
そういった細かいところをやらないのが国内メーカーの悪いところ。
詰めが甘いんですよ。
同じやるなら徹底してやれと。
徹底してやれないなら作るなといいたくなってしまいます。
Manyaさん
2013/05/25
この機種は価格帯が他のUltrabookより一回り上ですからね。
それだけのモノとは思いますが、なかなか販売数には結びつかないのかもしれません。
SDカードスロットは残念なところです。
裏蓋開けると、スペースに余裕がない事がわかりますが、
もう一頑張り欲しかったところではありますね。