パッケージの外観はさすがセルシス!と感じさせられるシンプルだけど素敵な外観です。
私は先にDL版を持っていたのですが、やはりパッケージ版ですと、より詳細なマニュアルや、トーンのカタログなど、手元に置きながら作業したいものが付いてきてくれると期待していましたが、実際はわざわざパッケージ版を購入しなくてもよいな・・・と感じさせる内容物でした。
むしろダウンロード版の方が、最新版のアップデートが適用されているのでオススメだと感じました。
アプリケーションディスクは2枚付属しておりますが、Windows用とMac用ですので、該当OS用ディスクのみでインストール作業は可能です。アプリのインストール後にファイルメニューから素材のインストールを選ぶのもComicStudioと同じとなります。
ですがComicStudioと違って収録トーンの数などはとても少ないので、インストールにかかる時間は少なくすみます。
それでは、ここからは実際にCLIP STUDIO PAINT PROを触って感じた点などについて記載していきたいと思います。
あくまで現時点(9/23)でのVer.1.0.3での使用感となります。
規定のサイズの部分を見ていただきたいのですが、こちらの解像度が多くても「350dpi」であるというのを見ても、このソフトが現時点では、基本的に印刷用のモノクロ画像制作はあまり対象にしていないということが読み取れます。
印刷のことになってしまうので、詳細は省きますが、基本的に印刷所でモノクロ漫画を刷る時に指定されるデータというのは「グレースケールの最低解像度600dpi」か「モノクロ二値の600dpiもしくは1200」dpi」となります。
それが規定サイズとして選べないのですから、対象にしていないと感じた訳です。
また「72dpi」という既定サイズが多いことからも、ネットでの公開の方を重視していく方針なのかもしれません。
なにより、現時点では「RGB」でしか出力ができないのですから、そもそも印刷についてはあまり意識していないのでしょう。(※ver.1.1でプロファイル付のCMYK書き出しができるようになるようです。)
ComicStudioの様に「下書きレイヤー」は存在しませんので、ラスターレイヤーに書いていきます。
出力時に下書きレイヤーを一括で非表示などにはできないので、下書きを使わなくなった時は該当レイヤーを不可視にしておかないと、最後の最後で叫ぶことになりそうです。
ペン入れに関して、「CLIP STUDIO PAINT PRO」のブラシツールはComicStudio、IllustStudioよりも書き味が格段に良くなっていると感じました。
より細かい設定も可能になりましたし、なによりベクターレイヤーでの消しゴムの使用感がより正確になった気がします。
要望があるとすれば、ブラシツールを使う際の直線の引き方なのですが、現状は線を始めたい場所にポイントを打ってから「Shift」を押しながら線を描画なのですが、Photoshopと同じように最初から「Shift」を押した状態で線を引くと直線が引けるようにして頂けると嬉しいなと感じました。
色塗りの作業に入っていきます。
まず各パーツのフォルダーを制作して、下地の色をバケツツールにて塗っていきます。
これからは「肌の塗り」を見本に説明をしていきます。
次に色が意図しない場所にはみ出さないように各パーツごとにマスクを施します。
下地レイヤーを選択し、右クリックをして「レイヤーから選択範囲>選択範囲を作成」を選びます。そうしますと、下地レイヤーで色を塗った部分が選択されます。
選択範囲はそのままにして、「肌」フォルダーに移動し、右クリックをして「レイヤーマスク>選択範囲外をマスク」を選びます。
(もしくは、右下のマスクアイコンをクリックするとマスクされます。)
この状態で、下地レイヤーの上に任意のレイヤーを作り、乗算で色を塗ったり、色々塗りを進めていきます。
今回はフォルダーにレイヤーマスクを適用する方法ですが、クリッピングフォルダ機能を使用したり、「下のレイヤーでマスク」機能をつかったりと、様々な方法があります。
この方法ですと、管理は楽なのですが、レイヤーの数がとても増えていきますのでご注意ください。
せっかくですので、背景を「CLIP STUDIO PAINT PRO」の素材「3D背景」を利用してみます。
素材の「3D」の中から使用したい3Dのサムネイルを選択し、画面にドラッグします。
下に表示された「オブジェクトランチャー」の「レイアウト」で使用したいレイアウトを調整します。
また右上に表示される「移動マニピュレータ」にてカメラの位置や回転などを変更して、背景を調節します。
オブジェクトランチャーにて、扉の開閉や、背景の昼と夜の切り替えなどもできるので、色々といじってみると楽しいです。
そうこうしてるうちに、3D背景の完成です。
3D背景をそのまま合成だと違和感があったので、白の網目トーンを重ねたり、濃度をいじったり、人物との境目に白ぼかしを入れたりしました。
それから、文字を打ち、フキダシを作っていきます。
最初に文字入力なのですが、これが本当に「使いづらい」です。
新規に文字を打つと、文字レイヤーが何故か、収録フォルダーの最下部に追加されてしまいます。
背景に写真を引いているような上記の画像ですと、打っている文字が見えません・・・。普通は選択されたレイヤーの上に新規文字レイヤーが自動生成されると思うのですが・・・改善を望みます。
また行間の調整がセリフ全体に適用されてしまいます。セリフの一部分だけ適用したくても、全ての文字に自動的に適用されてしまいます。
そして字間の調整がないというのも非常に不便です。
字間は2012年秋に追加予定となっているので、実装が待ち遠しいです。
そしてフキダシに関してですが、「フキダシペン」が非常に便利です!
驚いた時のフキダシやフキダシのしっぽの追加を「スプライン」でやるよりも自分の意図的に作れますので、ありがたかったです。
でもなぜフキダシの背景色のみの透過ができないのでしょうか・・・。
色は変えられるのになぜ・・・。背景がトーンのフキダシも作るのに手間がかかります。
需要はあると思いますので、ぜひ改善して頂きたいです。
着色・文字入れなどが終わり画像が完成したので、zigsow用にカット&リサイズしたいと思います。
このように、1ページそのままではなく一部を利用するという需要はあると思うのですが、「CLIP STUDIO PAINT PRO」には切り抜きツールはありません。
公式の質問掲示板によりますと「編集>キャンパスサイズを選択範囲に合わせる」で切り抜きをしてくださいとありました。
実際にやってみましたが
現時点では、全体をPSDで書き出して、Photoshop上でカットしてしまった方が早いかもしれません。
完成マンガはこんな感じになりました。
これまでにも色々と要望は書いたのですが、いずれも漫画製作向けの改善点だった気がしますが、実はイラスト製作などでも地味にストレスを感じていて、個人的にぜひ改善していただきたいものがあります。
それが「カラーセット」です。
カラーチップの並び替えなどの編集機能も欲しいのですが、できれば1つ1つのカラーに名前を付けたりしたいとの要望はあるのですが、それよりも
「CMYKカラーの数字を左下に出してください」
これにつきます・・・。現時点ではCMYKカラーで出力できないので、あっても意味がないのですが、印刷用のカラーイラストを描く場合は、ベタ色部分は色見本見ながら色指定しますので、カラーセットの方もCMYKで表示して欲しいのです・・・。
あとは文字周りです。先ほどは書きませんでしたが、モノクロ漫画用の出力用に「文字のアンチエイリアスをなくす」機能を導入していただきたいです。
そうじゃないと、文字の周りが印刷時に微妙にぼやけます・・・。(Webで見たり、カラー印刷の時は気にならないでしょうが)
他にも、文字をクリックしただけで編集画面に入ってほしいとか色々ありますが、今後のバージョンアップに期待しております。
散々ひどいことをこのレビューで書いておりますが、では「他の人にオススメできないの?」と聞かれれば「オススメします」。
カラーのイラスト制作や、Web上に発表する漫画を制作するには本当に素晴らしい機能を持ったソフトです。
私もDL版を使い始めてからは、すっかりにてzigsow用の漫画は大体「CLIP STUDIO PAINT PRO」にて書いています。(ものによっては別のソフトも併用したり、主線は手書きだったりもしますが)
期待し、愛情があるからこその辛口レビューだと思っていただければ幸いです。
そして実はこの「CLIP STUDIO PAINT PRO」現在進行形で、改良中のソフトとなります。
前回、DL版にてレビューさせていただいた
は、あの時点で「Ver.1.0.1」文中にて「IllustStudio」にあったクリッピングフォルダーがないと嘆いておりましたが(下のレイヤーでクリッピングがクリッピング元と該当レイヤーの2枚しかクリッピングしてくれなかった)
その後のバージョンアップで参照元とクリッピングを押したレイヤーの間に制作した新規レイヤーにも、クリッピングが適用されるようになりました。
このように、大量の改良が現時点(9/23)までに多数いれられております。
そして9月27日には正規版 Ver.1.1.0のリリースが行われますので、さらなる進化を遂げます。
そもそも
CLIP STUDIO PAINT PRO/EX 機能一覧
こちらを見ると分かるように、「時期をみて提供予定」と書かれた機能が非常に多いです。
良く言えば「常に進化中」、悪く言えば「開発途中での提供」と言えるでしょう。
ですが、
CLIP STUDIO PAINTサポート
こちらを見て頂ければわかるのですが、本当にユーザーさんの声を聞いて、改善に取り組んでくださっています。
またIllustStudio、ComicStudioともに愛用者の多い素晴らしいソフトで、その後継となるCLIP STUDIO PAINT PROへの期待や改善要望は並々ならぬものがあります。
そういった方々の多くのフィードバックがあり、それに真摯に取り組んでくださっているセルシス様ですので、たとえ現時点で不満点がある「CLIP STUDIO PAINT PRO」も改良・進化を遂げて「IllustStudio」「ComicStudio」を超えるソフトになってくれるはずと期待しております。
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