レビューメディア「ジグソー」

16Phase電源回路でハズレ石でも5GHz到達!

GIGABYTEのZ68搭載マザーボード、GA-Z68XP-UD4のレビューとなります。
GA-Z68XP-UD4はZ68チップセットを搭載したLGA1155対応のマザーボードで、PCI-Express Gen3対応と16フェーズの電源回路を備えたモデルとなります。
今回は16フェーズ電源回路を生かしたオーバークロックと、Z68ということでQuick Sync Video(以下QSV)についても挑戦してみることにします。
パッケージ
パッケージ


■ハードウェア構成

今回のレビューに使用したハードウェア構成は下記の通りです。

マザー:GIGABYTE GA-Z68XP-UD4およびintel DP67BGB3
CPU:intel Core i7 2600K
メモリ:CORSAIR DOMINATOR DDR3-1600 CMP8GX3M2A1600C9×2 16GB
HDD他:intel X25-M 160GB
VGA:ZOTAC ZT-50203-10M GeForce GTX570 1280MB DDR5(825MHz/2200MHzにOC)
電源:Antec Signature 850
ケース:Antec P183
CPUクーラー:CORSAIR CWCH80


■GIGABYTEにおけるZ68マザーボードのラインナップ確認

GIGABYTEのWebサイトでは、なんとZ68を搭載したATXマザーボードだけで15種類(!)もラインナップされており、まったくモデルごとの差が解りません…。
そこで、現在発売されている(ショップでよく見かける)マザーボードを中心に、今回のレビュー対象であるZ68XP-UD4のポジションを探ってみます。

【GA-Z68XP-UD3R (rev. 1.3)】
PCI-E Gen.3に対応した中堅クラス。
8フェーズ電源にCFX/SLI対応の2基のPCI-E x16(内1はPCI-E x8)を搭載し、拡張性も十分。
HDMI端子搭載でLucidLogix Virtuに対応。
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3980

【GA-Z68XP-UD4 (rev. 1.3)】
PCI-E Gen.3に対応したマザーボードでは現在もっともグレードが上のモデル。
16フェーズの電源にMarvell 88SE9172による合計6つのSATA3対応コネクタと、基本スペックも充実。
USB3.0はEtron EJ168により、バックパネルに2ポート、内部ピンヘッダ2ポートの計4つを搭載。
HDMI端子搭載でLucidLogix Virtuに対応。
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3977#ov

【GA-Z68X-UD3H-B3 (rev. 1.3)】
オンボードVGAの利用を主眼に置いたマザーボード。
型番が似ているGA-Z68XP-UD3RはHDMI x1のみだが、こちらはD-Sub x1、DVI-D x1、HDMI x1、DisplayPort x1と多彩な端子を搭載。
CFX/SLI対応にも対応しているが、5フェーズ(外見より判断)の電源回路であり、オンボードVGAを使って定格駆動の安定動作を狙った製品といった印象を受ける。
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3973#ov

【GA-Z68X-UD5-B3】
3基のPCI-E x16コネクタ(x16動作:1、x8動作:1、x4動作:1)を搭載した、拡張性が高いアッパーミドルモデル。
外部ディスプレイ端子を持たないので、LucidLogix Virtuの利用は不可。
電源も20フェーズとかなりの豪華さ。
現時点ではPCI-EはGen.2対応止まり。
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3848#ov

【G1.Sniper2 (rev. 1.0)】
PCI Express Gen.3に対応したゲーマー向けマザーボード。
Creative 20K2とBigfoot Networks Killer E2100をオンボードという豪華さで、弾倉を模したヒートシンクなど外見も至ってゲーマー向け。
電源は8フェーズとやや控えめ。(といっても、十分多いのですが)
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3962#ov

【GA-Z68X-UD7-B3】
2-Way/3-WayのCFXおよびSLIに対応した最上級ボード。
24フェーズ電源、USB3.0が10ポート(!)、SATA3.0も6ポート(Z68+Marvell 88SE9128)と最上級にふさわしいスペック。
ただし、現時点ではPCI-EはGen.2対応止まりなのが残念なところ。
http://www.gigabyte.jp/products/product-page.aspx?pid=3847#ov

今回レビューでお借りしたGA-Z68XP-UD4は、位置づけからいうとミドルクラスのマザーボードとなります。
ハイエンドはGA-Z68X-UD7-B3ですが、PCI-E Gen.3対応という意味では選択肢から外れてしまいます。
ミドルクラスとはいえ標準的な拡張性は備えており、もちろんCFX/SLIも可能です。
SATA3も6ポートと十分な数が揃っていますので、問題になることは無いと思います。
GIGABITEは電源のフェーズ数拡張に力を入れている印象があるのですが、ミドルクラスのGA-Z68XP-UD4でさえ、16フェーズという豪華さを誇ります。


■付属品など

早速、中身を確認することにします。
付属品はシンプルで、マニュアル、ドライバCDのほかSATA3対応のケーブルが4本、SLIブリッジコネクタとなります。
付属品
付属品


GIGABYTEのマザーボードに付属するSATAケーブルはラッチ付きのものなので、しっかりと固定ができるので好感が持てます。
マザーボードが黒一色で統一されていることもあり、SATAケーブルもGIGABYTE製のマザーボードでよく見る黄色ではなく、黒のケーブルが付属していました。
4本のケーブルのうち2本はL字のコネクタなので、使い勝手も良好です。


■基板の確認

基板の主要なパーツを眺めしつつ、マザーボードの詳細について確認していきたいと思います。
まずはマザーボード全景写真を。
マザーボード全体
マザーボード全体


【16フェーズ電源回路】
まずは、特徴の一つである16フェーズもの電源回路です。
CPUソケットの周りに、L字型にコイルとMOSFETがずらっと並んでいます。
配置が特徴的で、コイルのサイズが上位モデルと比べて大きいこともあり、かなり縦に長く配置されています。
電源回路まわり
電源回路まわり

ヒートシンクを外したところ
ヒートシンクを外したところ


そのため、一番CPUに近い部分にある拡張スロットの場所が電源回路で埋まっており、他社の同価格帯のモデルに比べて拡張スロットが1本少なくなっています。
電源回路のコンデンサは小さめのものが採用されていますので、CPUクーラーと干渉する可能性は無さそうです。
コンデンサは今時のマザーボードらしく、すべて耐久性に優れる固体コンデンサが使用されています。
コンデンサまわり
コンデンサまわり


電源回路は放熱の良さそうなヒートパイプで連結されたヒートシンクに繋がっています。
空冷の場合はCPUクーラーのエアフローで冷却可能ですが、水冷やサイドフローのCPUクーラーの場合には、ヒートシンクまわりのエアフローに気を付ける必要があります。
MOSFET用ヒートシンク
MOSFET用ヒートシンク


MOSFETはVishay Siliconix社のSiC769CDが搭載されています。
http://www.vishay.com/docs/64981/sic769cd.pdf
MOSFET
MOSFET


【PCI-E スイッチチップ】
PCI-E x16をx8 2本分に振り分ける役目を担うチップです。
GA-Z68XP-UD4はPCI-Express Gen3に対応していますが、これはスイッチチップにPCI-Express Gen3搭載品を採用していることで実現しています。
スイッチチップにはPCI-Express Gen3に対応したPericom社製のPI3PCIE3415が使われています。
スイッチチップにPCI-Express Gen3対応製品を搭載したことで、Ivy BridgeのPCI-Express Gen3であってもスイッチすることが可能になり、PCI-Express Gen3対応と謳っていると思われます。
PCI-Eスイッチングチップ
PCI-Eスイッチングチップ


PCI-Express Gen3に対応するのはIvy Bridgeに直接繋がるPCI-E x16スロット2本(x16またはx8を2本)のみとなり、Ivy BridgeにCPUを交換しても、Z68から出力されているPCI-EスロットはPCI-E 2.0のままとなりますので注意が必要です。
Sandy Bridge世代のCPUで使用した場合には、マザーボードはPCI-E3.0に対応していますが、CPUはPCI-E 2.0までの対応となっていますので、当然ですがPCI-Express Gen3は使用できません。

【Dual BIOS】
GIGABYTEのマザーボードにはBIOS用のFlas ROMが2つ搭載されています。
片方のBIOSが故障してもバックアップが備わっていますので、安心感があります。
写真のように、メインBIOSとバックアップBIOSの2つのFlash ROMが搭載されていました。
Dual BIOS
Dual BIOS


【その他】
そのほかで使われているチップは下記の通りです。
Super I/O:ITE IT8728F
PCI変換チップ:ITE IT8892E
IEEE1394:VIA VT6308P
サウンド:Realtek ALC889
LAN:Realtek RTL8111E
USB 3.0:EtronTech EJ168 x2(I/Oパネルおよび内部ピンヘッダ)

個人的には、LANがRealtekなのがちょっと…ということで、intelのPRO/1000 PT DualPort Server AdapterをPCI-E x8に装着して使用しています。
PCI-EをPCIに変換する変換チップにはIT8892Eが採用されていました。
音源はDigitalで出力してAP-U70のDACで処理しているので、オンボードの質はあまり気にしていません。
サウンド回路まわり
サウンド回路まわり


【I/Oパネル】
バックパネルは下記の端子が揃っており、十分な拡張性を備えています。
7 x USB 2.0/1.1対応ポート
1 x PS/2対応 キーボード/マウスポート
1 x 同軸 S/PDIF Out対応コネクタ
1 x 光デジタル S/PDIF Out対応コネクタ
1 x IEEE 1394対応ポート
1 x eSATA/USB Combo対応コネクタ
1 x eSATA 6Gb/s対応コネクタ
2 x USB 3.0/2.0対応ポート
1 x HDMI対応ポート
1 x RJ-45対応ポート
6 x オーディオジャック (センター/サブウーファースピーカーOut/リアスピーカー Out/サイドスピーカー Out/Line In/Line Out/マイク)
I/Oパネル
I/Oパネル



■ちょっと微妙なスロット配置

GA-Z68XP-UD4に搭載された拡張スロットは、Gen.3に対応したPCI-E x16スロットが2本(x16動作:1、x8動作:1)とPCI-E x1が2本、PCIが2本の合計6本の拡張スロットとなります。
GA-Z68XP-UD4でもっとも致命的だと感じたのがこのスロット配置。
PCI-E x16に2スロット占有のビデオカードを装着すると、PCI-E x1スロットが実質使えなくなってしまいます。

2スロット占有のビデオカードを装着しても、一番下のPCI-E x1スロットは実際には埋まらないのですが、ここにカードを装着してしまうとビデオカードによっては冷却ファンをカードが塞いでしまう形になり、ビデオカードの冷却性能に多大な影響を及ぼすことがあります。
この問題を避けるため、拡張カードは可能であればビデオカードとは1スロット分の間隔を空けて装着したいのですが、GA-Z68XP-UD4ではその回避方法が使えません。
PCI-Eスロット配置
PCI-Eスロット配置


CPUに近い場所にPCI-E x1がある製品も多いのですが、GA-Z68XP-UD4では電源回路の影響でCPUに近いところにあるPCI-E x1が搭載できないため、ここも使うことが出来ません。
せめて、PCIのうちの1本とPCI-E x1が逆になっていれば良かったのですが…。
冷却効率を考えた場合、PCI-E x16にカードを装着する方法もありますが、そうするとPCI-E x16がx8に分割されてしまうというデメリットが生じます。

ただし、逆に言えば「PCIを2本使おう」と思っている方には、最適な配置と言えるかと思います。


■基板レイアウトが違う?!

GIGABYTEの公式サイトに掲載されている写真と、実際の製品が微妙に異なっています。
シルク印刷のレイアウトが全体的に微妙に異なっている上に、届いた製品ではPCI Express 3.0ではなく2.0となっています。
パッケージではPCI-Express Gen3対応と謳われていますが、マザーボードのシルク印刷では2.0のままとなっています。
また、PCI-Eのスイッチチップの位置や電源回路のコイルの搭載位置なども微妙に異なっています。
基板比較
基板比較


PCI-Eに関しては上記で確認したとおり、PCI-Express Gen3対応のスイッチチップが搭載されていますので、3.0対応で間違いありません。


■組み立て

組み立ては他のLGA1155マザーと変わるところはありませんので、とても簡単。
マザーボードのパーツが黒一色で統一されている上に、LGA1155の金具も黒色のクロームメッキがなされており、高級感があります。
LGA1155ソケットまわり
LGA1155ソケットまわり


CORSAIRのDOMINATORメモリと組み合わせましたが、このメモリも真っ黒なヒートスプレッダーで覆われており、マザーボードにメモリを装着した図はかなり格好良いです。
ケースに入れてしまったら見えなくなってしまいますが、こういった格好良さって重要ですよね。
DOMINATORを装着
DOMINATORを装着


CPUクーラーはCORSAIRの簡易水冷クーラーであるCWCH80を使用しました。
16フェーズと割とリッチな電源回路を搭載していますが、背の低い電解コンデンサやゆとりのあるヒートシンク配置と相まって、ポンプと一体化された水冷ヘッドの取り付けは至って簡単でした。
手が入りやすくネジを回しやすいのも、ポイントの一つかと思います。
CWCH80の取り付け
CWCH80の取り付け


■Core i7 2600Kを使ってOCにチャレンジ

早速、メインの目的であるOCにチャレンジ。
用意したのはintelのDP67BGB3ではどうやっても4.6GHzまでしか安定しなかったL103A962という微妙なロットのintel Core i7 2600Kとなります。
今までは5GHzでの動作はどうやっても不可でしたので、目標は5GHz達成とします。
また、DP67BGB3では、起動中にフリーズはしないもののブートシーケンスが途中で止まってしまう謎な現象や、起動した後にCPU温度などの取得がうまくいかず、非常にOSが重たくなる現象がたまに発生していましたが、その点についても改善されるといいな…と思っています。


■5GHzでの起動を確認!しかし…

DP67BGB3でこの2600Kのだいたいの特性は解っていますので、CPU電圧(Vcore)を1.42Vに、Loadline Calibration(以下LLC)をLevel4に設定してテストを行います。
LLCはCPUの高負荷時に供給される電圧が下がるのを補正することで、OC時の挙動を安定させる機能です。
LLCはGIGABYTEでは1~10の10段階とDisabledから選択可能で、レベルが上がるごとにCPUに印加される電圧が加算されます。
私の場合、LLCでの増加分を考慮して、CPU電圧はターゲットに設定したい電圧から少し割り引いた(0.05V程度)値を設定し、LLCをLv.4~5で設定しています。

LLCの補正範囲はマザーボードメーカーごとにまちまちですから、解りづらいように感じます。
一番確実なのは、実際に設定した電圧との差分をモニターツールでCPU電圧をモニターしつつ変化を確認することですが、マザーボードメーカー以外のツールですと正しいCPU電圧を認識していないことがあるので注意です。
今回はEasyTune6のモニター機能を利用して確認を行いました。

5GHzに設定して起動したところ、見事にBIOS画面が表示されることを確認。
今までは拝んだことすらない画面ですので、GA-Z68XP-UD4のOC耐性はかなり高いと言えるかと思います。
ただし、Windows起動途中でBSOD(BlueScreen of Death、いわゆる青画面落ち)が発生してしまいましたので、この個体ではまだVcoreの盛りが足りないようです。
そこで1.45VにVcoreを上昇、LLCも5にレベルを上げて再チャレンジ。
結果、見事にWindowsも起動、5GHzのスクリーンショットを撮ることが出来ました。
5GHz達成時のCPU-Z
5GHz達成時のCPU-Z

EasyTune6でのモニタリング
EasyTune6でのモニタリング


しかし、5GHzではなかなか安定しません。
OCCTでは最初のほうでフリーズしてしまい、安定動作は望めない結果に。
VcoreもLLCの補正込みで1.5Vまで印加されていますので、これ以上の設定はちと危険な水準です。
ということで、5GHzはスクリーンショットと低負荷な作業のみでしたが、確認が取れたということで満足することにしました。
マザーボード自体は5GHzでも余裕でしたので、CPUの耐性さえ高ければ、もっと性能を引き出せるように感じました。


■4.8GHzで常用することに決定!

最終的に、Vcore1.4V、LLC Lv.5に設定し、倍率48倍の4.8GHzにて常用することにしました。
5GHzとはほぼ差がありませんが、この2600kの場合4.8GHzまでならかなり安定します。
DP67BGB3では4.8GHzでも使用可能でしたが希にフリーズすることがあったため、最終的に4.6GHzに下げて使っていましたが、GA-Z68XP-UD4ではOCCTでのテストを行っても問題なく安定しています。
LLC Lv.4では1.40VのVore設定に対し1.44Vが印加されています。
5GHzの設定ではVcore 1.45V、LLC Lv.5で1.50Vでしたから、感じとしてはLLCのLvが1段上がると、印加される電圧も0.01V上がるような印象を受けます。
4.8GHz時のBIOS設定は下記の通りです。
4.8GHz時のBIOS設定その1
4.8GHz時のBIOS設定その1

4.8GHz時のBIOS設定その2
4.8GHz時のBIOS設定その2



■EasyTune6でのOCについて

GIGABYTEのOverclockツールであるEasyTune6ですが、QuickBoost機能を使うとものすごく簡単にOCを行うことが可能です。
しかし、ちょっと疑問に感じたのが、QuickBoostでの設定値。
ご存じのように、Sandy Bridge世代のCPUではBCLKがすべてのデバイスで共有されているため、従来の「BCLKの上昇によるOC」が事実上行えなくなっています。
そのため、OCを行うにはK型番の倍率アンロックCPUを使用し、BCLKは据え置きのまま倍率によるOCを行うのが一般的です。

しかし、EasyTune6ではわずかながらですがBCLKも上昇します。
私が今まで試した環境では、DP67BGB3ではBCLK102MHzまで、Z68XP-UD4ではBCLK101MHzまでしか正常に動作しませんでした。
このため、EasyTune6におけるBCLKの上昇にはちょっと疑問を感じます。
K型番を使うのが前提になってしまいますが、BCLKは100MHzで据え置いたまま、倍率の上昇のみに限定したプロファイルの方が動作する確率が上がりそうな気がします。
ですので、個人的にはEasyTune6を使うよりも、手動のOC設定の方がいいのでは…?という気がします。
EasyTune6でのOCセッティング
EasyTune6でのOCセッティング



■Touch BIOS

GIGABYTEが売りにしているもう一つの機能が、簡単にBIOSを設定可能なTouch BIOSというツール。
タッチパネル液晶を使っている方は少ないと思いますので、タッチによる操作はほぼ実用性皆無かと思いますが、Windows上からGUIを使ってほぼすべてのBIOSの設定を変更できるのは、便利という場合もありそうです。
操作は若干もっさり感はあるものの、十分に許容範囲。
それよりも気になったのが、アイコンの配置などのインターフェース設計です。
Touch BIOS
Touch BIOS


前のページに戻るボタンの隣に再起動があったり、「アイコンの変」と書かれたアイコンの意味が分からなかったり(アイコンの変更ではなく、画面に表示する機能の選択)、「ホー」ボタンが意味不明(ホームに戻る)だったりと、使い勝手が悪いのが残念なところ。
「CMOS保存」というボタンがあるのですが、これがCMOSの内容をファイルに保存するのか、BIOSに設定内容を書き込むのかもはっきりしません。
せめて「更新を適用」などの方がわかりやすいと思うのですが。
Touch BIOSについては便利そうではあるものの、成熟にもう少し時間がかかるような気がしました。

少なくとも、前に戻るボタンはもっと使いやすいところに表示して、パンくずのような現在開いている階層が解るようになると、使い勝手は良くなるように感じました。


■消費電力

マザーボードを変えたことによって、消費電力にどれくらいの差が生じるのか、比べてみました。
CPUの設定はいずれも4.6GHz、CPU電圧1.36Vでの比較となります。

【アイドル時】
DP67BGB3:152W
GA-Z68XP-UD4:164W

【高負荷時】
DP67BGB3:450W
GA-Z68XP-UD4:468W

いずれもGA-Z68XP-UD4の方が消費電力が高くなっています。
いくつか原因が考えられそうですが、
・core i7 2600Kに内蔵されているグラフィック機能がenableになったこと
・Loadline Calibrationや電圧設定AUTOのデバイスへの供給電圧の上昇
・オンボードデバイスの増加
といったあたりかと思われます。


■EnergySaver2による電源Phase数制御

16フェーズもの電源回路を搭載していますが、多フェーズ構成の電源回路は省電力時には逆に効率が落ちてしまい、消費電力の増大を招きます。
電源回路のPhase数を動的に制御するEnergySaver2が搭載されていますが、私の環境ではこの機能を利用するとPCがハングアップ、その後起動できない(電源ON→そのままシャットダウンを永遠に繰り返す)症状が発生してしまいました。

常用限界ぎりぎりに近いOCを行っているためだとは思いますが、通常複数回起動に失敗すると自動的に起動可能な設定に初期化されますが、その機能が働かないのはちょっと厄介です。
一度電源を落とし、CMOSクリアで復旧は可能ですが、慣れていないとCMOSクリアは面倒ですし、あまりオススメ出来ません。
OCをしない、あるいはライトなOCを行っているときのみに限って使用した方が良さそうなユーティリティかと思います。


■QSVを使ったエンコード

Z68の大きなメリットとして、CPU内蔵GPUを使用したハードウェアエンコードが使用可能なことが挙げられます。
QSVによる高速エンコードを利用する方法について確認してみます。
今回はGeForce GTX570でDualモニター環境を使用しつつ、内蔵GPUはQSVのみという形態での利用を目的とします。

QSVを使うには、CPU内蔵GPUを利用可能にする必要があります。
BIOSで内蔵GPUの動作を設定可能ですので、Always Enableに設定してみました。
デバイスマネージャーを確認すると、P67時代には確認出来なかったIntel(R) HD Graphics Familyアダプタが確認出来ます。
intelから最新のIntel HD Graphics 3000用ドライバをダウンロードし、インストールします。
1つのOSに複数メーカーのVGAユーティリティをインストールするのは少し奇妙な感じです。
2つのグラフィックチップを認識
2つのグラフィックチップを認識


エンコードテストはTMPGEnc Video Mastering Works5とMediaEspressoで試してみます…といきたいところなのですが、QSVを使うには内蔵のIntel HD Graphics 3000を有効にするだけではどうもダメで、マザーボードにあるHDMI端子にモニターを繋がないといけないらしいです。
あいにく、HDMI→DVIケーブルまたは変換コネクタが手元にないので、これ以上の確認は出来ず。
近日中に変換アダプタを購入してリベンジ予定です。


■グラフィックテスト

FF14を用いてベンチマークを行ってみました。

FF14 High:6179
FF14-High
FF14-High


FF14 Low:8226
FF14-Low
FF14-Low


これだけ出ていれば十分快適に遊べるかと思います。
CPUが定格でのベンチマークはHIGHで5500弱ですから、かなりのスコアアップです。
特にFF14はCPUがスコアに与える影響が大きいゲームですので、16フェーズ電源回路によるOCの安定性はそのままスコアの向上に繋がります。
2600Kであれば相当のハズレでなければ4.5GHz程度であれば動くと思いますので、OCを常用で使うのも一つの選択だと思います。


■その他

【隠しBIOS画面】
GIGABYTEのBIOSには[CTRL]+[F1]を同時押しすると表示される隠し項目が存在しますが、GA-Z68XP-UD4にも同様の画面が存在します。
設定可能な項目は少ないのですが、Advanced Chipset FeaturesとPnP/PCI Configurationsが増えています。
隠しBIOS項目
隠しBIOS項目


【0.1MHz単位で設定可能なBCLK】
intelのDP67BGB3は1MHz単位でしたが、GA-Z68XP-UD4は0.1MHz単位でのFSB設定が可能です。
100MHzに設定しても、実際は99.8MHzだったりすることがあり、ちょっと残念(?)なこともありますが、細かいですがきっちりと4800MHzに合わせることが可能です。
私の環境では、0.2MHz低く設定されていましたので、100.2MHzにBCLKを設定したところ、100.0MHzにピッタリと合いました。
ほんの些細なことですが、ピッタリとBCLKが揃うと良い感じです。


■P67環境からの移行

今回はintelのDP67BGB3の環境をそのまま移行しましたが、もともと同じ系統のチップセットということもあり、いきなりつなぎ替えただけで正常に稼働しています。。
ただし、一度すべてのデバイスを再検出してインストールされますので、セーフモードでドライバを削除する必要があったりするデバイスが少しだけありました。
OSやiTunes、Adobe製品などのPC固有のIDでライセンスを認識するソフトウェアの場合、一度ライセンス認証を解除しておくか、あるいはマザーボード交換後に再認証が必要になる場合がありますので注意してください。


■感想

1週間ほど使用していますが、ちょっとじゃじゃ馬なところがあったDP67BGB3に比べ、遙かに安定度は高いと言えます。
5GHzではCPUの耐性もあり、常用に至るまではいきませんでしたが、4.8GHzではOCCTなども無事に通過し、安定して動いています。
OC時の安定動作には16フェーズの電源回路が効果的に機能していると思われます。
CPU温度も冬が近づいてきたこともあり、アイドル時には36~38℃で安定していますので、快適に使用することが出来そうです。


■PCI-Express Gen3について

Ivy Bridgeで実装されるPCI-Express Gen3ですが、ビデオカードなどはまだPCI-E 2.0 x16であれば帯域に余裕があると思われますので、本格的にPCI-Express Gen3が必要とされるのはもう少し後のことかと思われます。
それよりも個人的に期待しているのが、SATA3やUSB3.0、RAIDカード、DualPort NICなどの250Mbpsでは収まらないPCI-E x4などのカードが、PCI-Express Gen3ではx1の形状のスロットで収まるようになるメリットです。
x1形状のコネクタで様々なデバイスが接続可能になれば、装着位置などの柔軟性が上がると思われます。
ただし、x1スロットもPCI-Express Gen3に対応するにはチップセットレベルでの対応が必要となりますので、実際にはZ68より後のマザーボードを待つ必要があるかと思いますが、コネクタの幅が狭くなることによるメリットもいろいろとありそうです。

PCI-Express Gen3の世代では、HDDなどのデバイスを接続するSATAの新規格であるSATA Expressも登場すると思われますので、マザーボードもかなり様変わりするのではないでしょうか。


■QSVによるエンコードテスト

DVI→HDMI変換アダプタを購入しましたので、QSVのテストを行ってみます。
Intel Quick Sync Video(QSV)を使用するにはマザーボードのHDMIコネクタにディスプレイを繋げる必要がありますので、早速変換アダプタを使用してモニターを繋ぎ替えます。
現在24インチワイドと20インチのデュアルモニターで使用していますので、メインモニターのDELL 2407WFPをGeForce GTX570へ、サブモニターのSAMSUNG SyncMaster 204BをIntel HD Graphics 3000に接続することにしました。

ディスプレイを繋ぎ替えて電源を入れたところ、解像度、アイコンの位置、モニターの位置など全く以前と同じまま起動しました。
なんらかの設定変更が必要かと思っていましたので、これには驚きです。
見た目では片方のディスプレイがIntel HD Graphics 3000に切り替わっているとは思えません。
デバイスマネージャーで確認すると、確かに2407WFPはGTX570に、SyncMaster 204BはIntel HD Graphics3000に繋がっています。
デバイスマネージャー
デバイスマネージャー


Intel HD Graphics3000が有効になりましたので、早速QSVを使ったエンコードテストを行います。
エンコードに用いた素材は、PT2でキャプチャした15分のMPEG2-TS動画となります。


■MediaEspressoでエンコード

CyberLinkのMediaEspressoを起動し、エンコードの設定画面を開くと、今までは表示されていなかったIntel Quick Sync Video検出という文字と、intelのアイコンが表示されています。
MediaEspresso設定画面
MediaEspresso設定画面


早速、MP4(H.264)/AAC/1920x1080/4Mbpsの設定でエンコードを行ってみます。
QSVでエンコードに要した時間は4:20ときわめて高速でした。
CPUでのエンコード時間を確かめようとしたところ、Trialバージョンでは出力できないために挫折。
それにしても、フルHD解像度のH.264動画を録画時間の1/3でエンコード出来るのは、凄まじい能力です。


■TMPGEnc Video Mastering Works 5でエンコード

CPUとの性能差について計測できなかったため、TMPGEnc Video Mastering Works 5を用いて比較を行うことにします。
テストに用いる動画はMediaEspressoと同じく、15分のMPEG2-TS形式の動画となります。

出力設定画面を開くと、映像エンコーダにCUDA、Intel Media SDK Hardware、Intel Media SDK Software、x264が選択可能です。
Intel HD Graphics3000にモニターを繋がないと、Intel Media SDK Hardwareが出現しません。
TMPGEnc Video Mastering Works 5エンコード設定
TMPGEnc Video Mastering Works 5エンコード設定


早速、動画のエンコードを行ってみます。
出力設定はMP4(H.264)/AAC/1920x1080/4Mbpsとなります。

x264:22分11秒
CUDA:10分10秒
Intel Media SDK Hardware(QSV):7分7秒
Intel Media SDK Software1時間25分
エンコード時間
エンコード時間


速度順に並べると、QSV>CUDA>x264>>>>>Intel Media SDK Softwareとなりました。
QSVが高速なのはMediaEspressoのテストで解っていましたが、x264のソフトウェアエンコードが22分台というのは驚きです。
すべてのコアを100%使い切ってエンコードを行っていますので、マルチスレッド処理が非常に効果を発揮しているのが解ります。
ハードウェアエンコードであるQSVとCUDAですが、QSVの方が約30%も高速と、かなりの差が生じています。
Intel Media SDK SoftwareはなぜかほとんどCPUリソースを消費していないので、どえらい時間がかかってしまっています(途中でエンコードをキャンセルしていますので、数値は想定時間となります)

AMDのRADEON HDシリーズで使用可能なGPGPUであるATI Streamは、CUDAのように対応アプリケーションが多くはないこともありエンコードには不向きの面もありましたが、QSVを利用することによりこの問題も解消されます。
また、nVidiaのGeForceシリーズをお使いの方も、CUDAよりもQSVを使用することで、さらにエンコード時間を短縮することが可能かと思われます。


■LucidLogix Virtuについて

Lucid Logix Virtu(以下Virtu)は、簡単に言うと「低負荷時はオンボードのビデオ機能を使用し、高負荷時にはビデオカードの映像をオンボードのビデオ経由で出力する」という機能を持つソフトウェアです。
ビデオカードにケーブルを接続しなくても表示できるのはいささか奇妙でもありますが、ビデオカード側が処理した3DのフレームバッファをそのままIntel HD Graphics 2000/3000が取り込んで出力することで実現しています。
Virtu設定画面
Virtu設定画面


もう少し詳細に説明すると、LucidLogix Virtuにはi-Mode(docomoではない)とD-Modeの2つがあります。

i-Modeは描画負荷が低い2Dなどを利用している場合はCPU内蔵のIntel HD Graphics 2000/3000を使用することで消費電力を抑え、負荷が高い場合は増設したビデオカードに切り替えることで、高速な処理を実現します。
この場合、ビデオケーブルはマザーボード上のコネクタに接続します。
D-Modeは負荷に関わらずビデオカードから出力を行いますが、CPU内蔵のIntel HD Graphics 2000/3000のQSV機能も利用可能になるモードです。
この場合、ビデオケーブルはビデオカードのコネクタに接続します。

今回はGTX570とIntel HD Graphics 3000にそれぞれモニターを繋いだデュアルディスプレイという変則的な使い方でVirtuを設定してみました。
Virtuでは内部、外部どちらか一方にモニターケーブルを接続することを想定しており、今回の構成については対象外のような気がします。
試しに上記のデュアルモニターで接続したところ、D-Modeで動作していました。
とはいえ、Virtuを使わなくてもQSVは利用可能でしたので、内蔵/外付けのGPUそれぞれにモニターを繋いだ場合には、Virtuは不要(というより意味が無い)といえるかと思います。

ビデオカード側にモニターを2台繋いだ場合には、VirtuのD-Modeを使用することで、Intel HD Graphics 2000/3000によるQSVが利用できるかと思います。

それにしても、Virtuのあの3Dキャラクター、もうちょっとどうにかならないんですかね…(汗


■トリプルモニターの実現について

トリプルモニター環境を構築するには、特殊な方法を除くと
・RADEON HD 5000移行のEyefinity機能を利用する
・ビデオカードを2枚装着する
という選択肢があります。

Eyefinityは1枚のビデオカードでトリプルモニター環境の構築が可能ですが、Display Portを必ず1つは使用しないといけないため、Display Portを持っていないモニターの場合、アクティブタイプのDisplay Port→DVI変換アダプタなどを購入する必要があります。
アクティブタイプの変換アダプタはなかなか売っていない上にパッシブ型と見分け方が難しいなどの問題点があり、気楽に構築とは行きません。
ビデオカードを2枚装着する場合、PCI-Express x16スロットがないと装着出来ないというデメリットがあります。
また、安定性を考えるとAMDかNVIDIAのどちらかに統一した方がよく、手持ちの余っているカードはあるけどもメーカーが異なる…なんてときは使いづらい欠点があります。

Z68チップセットの場合、簡単にIntel HD Graphics 2000/3000と共存が可能ですので、簡単にトリプルモニター環境が構築可能です。
私の環境ではGTX570とIntel HD Graphics 3000が同居していますが、両方のドライバを入れても不具合などはまったくなく、拍子抜けするほどすんなり動いています。

また、例えばスリムケースのPCを使用している場合に、ロープロファイル対応のビデオカードがディスプレイ端子が1つしかない、あるいはビデオカードの出力端子のうち片方がアナログでHDCP対応のデジタルコンテンツが両方の画面で楽しめないといった問題が起こることもあります。
そういった場合でも、ビデオカード側の出力端子とオンボードの出力端子を併用することで、両方ともモニターをデジタル接続することも可能です。
気軽にモニターを増やすことができる選択肢としても、Z68チップセットは魅力です。

※ビデオ機能の併用はBIOSが対応している必要がありますので、すべてのZ68マザーボードで対応している訳ではありません。

コメント (8)

  • リンさん

    2011/10/30

    非常に読み易いレビューでした。
    基板上のチップの説明などが細かくて勉強になりましたし、
    PCI-E スイッチチップについてはCPUに依存する事を初めて知りました。
    勉強になりました。

    なんにしても、全てをひっくるめてZ68羨ましいですT-T
  • ちょもさん

    2011/10/30

    リンさん:
    コメントありがとうございます~
    PCI-Eのスイッチチップは、x16スロットの後ろのほう8レーン分を、もう1つのPCI-E x16スロット(形状だけx16で配線は8レーン)に振り分けるためのチップです。
    コイツがGen.3.0に対応していないと、PCI-Express 3.0のCPUを装着してもPCI-Express2.0相当でしか動きません。

    Z68を使って思ったのは「なんで最初からこいつを出さないんじゃー!」ってことでしょうか(爆
    P67が全力で“いらない子”になってしまってますよね…
  • kazさん

    2011/10/30

    レビュー、お疲れ様でした!

    流石のレビュー内容ですね。
    非常に詳しくて、とってもタメになりました。(^^)
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