☆ 今回の応募のいきさつ
去年の今頃、友人の結婚式の引き出物としてカタログギフトでもらったのが、呉竹の万年毛筆で、ポリエステル毛のものでした。もとから欲しかったという事もあって、使わなくなった便せん、広告の裏、中途半端に余ったノートなどに書き込んで練習しました。
「書く」ことはとても楽しいです。あ、好きや楽しいということと、文字の上手下手は別の話で、きちっとした練習でもないので、文字自体はほとんど上手くなってません。(笑)年賀状はもう書いていないのですが、たまに懸賞の応募ハガキなどを万年毛筆で書いて出したりして。
使っているうちにやはり本毛のものが欲しくなり、実用の事を考えると既に手持ちにポリエステル毛のモノがありますし、使う頻度も多くはありません。いや、全くと言っていいほどない。価格もやはりポリエステル毛のモノに比べると高額で…
と踏ん切りが付かないなか募集されたのがこの企画。自腹先行、入選しなけりゃ単なるもちもの登録。文房具の限界性能なんて自分が思いつく事なんてたかが知れてるし、そんな程度で選出されるんかいな、と。
応募してみてだめならそれでよし、選出されれば購入に踏ん切りも付く、入選すれば先行自腹も回収できて、ウマー。まぁそんなうまい話にはならんやろけうど、応募してみるかと。
というのが今回の応募の経緯です。
レビュー必須要項。
1. 商品のレビュー
2. 限界チャレンジの企画
1.については、手持ちのポリエステル毛のモノとの比較を主にやっていこうと思います。元箱まだあったかな…
2.については表題(ひとことコメント)の通り、インクカートリッジひとつで、何文字かけるのか? 地味ーな企画です。文字の大きさや画数によって書ける文字数も違って来るでしょうし、使う紙の紙質でしみ込むインキの量も違うと思います。書ける文字数なんて正確にはだせない、あまり意味が無いと自分でも思いますが、厳密な検証企画ではありせんしチャレンジ企画は自己申告。選出されたということはそれでもよいということで。
☆ 商品レビュー
呉竹の万年毛筆という商品群のうちひとつです。シリーズがあって 万年毛筆/蒔絵物語 /スターリーナイト/夢銀河。 万年毛筆の中でも 万年毛筆(13号)/漆調(15号)皮調/べっこう調 があります。漆調は 黒/赤/茶 べっこう調は 赤/金 があります。
手持ちのポリエステル毛の商品は「漆調 茶」、今回のメインは本毛の商品「べっこう調 金」で、実は1年以上に大阪でやっていた文房具の展示会で、呉竹のブースによった時に知った商品で、使ってみて面白く思い、長い間気になっていた商品です。そのとき係の人が「人気があって、いまも手持ちにないんです」と。まぁ、色柄のバリエーションは他にもあって、書き味だけなら同じ本毛ならどれも変わらないのですけれど、無いとなると欲しくなるのがサガ、ということでそのときに刷り込みされてしまいました。
★ パッケージ
外観
開けたところ
「漆調 茶」はプラケースに紙パッケージ。
「べっこう調 金」は木製のケースに紙パッケージ。
見た目、パッケージの高級感がちがいますが。といっても中の土台部分は同じプラケースで、「漆調 茶」はまんまプラスチックという感じですが「べっこう調 金」は同じプラでも表面がマット調というかビロードのような感じの加工がしてあります。
インクカートリッジ
インクカートッジが同梱されています。同じ物で、数も三本でおなじ。インクカートリッジとは当然別売りもされています。それは5本入り。
★ 外観
外観 上 「漆調 茶」 下 「べっこう調 金」
キャップ側
軸尾側
「漆調 茶」はいたってシンプル。丸みを帯びてやさしい感じ。言えば女性的。色は茶で落ち着いた感じ、金のクリップやラインは良いアクセントだと思います。いえば地味ですが、常用品として考えれば、神経質に扱わなくても良いので、気安くに使えます。
「べっこう調 金」は「漆調 茶」に比べると角張った感じ。言えば男性的。金粉をちりばめた感じでちょっと高級感があります。でもこれも価格帯から言えば安い方なので、常用品として使い易いと思います。
柄模様 「漆調 茶」
柄模様 「べっこう調 金」
模様を撮ってみたのですが、「べっこう調 金」はそれらしく見えますが、「漆調 茶」は柄があまりわかりませんねぇ。
★ 穂首 グリップあたり
穂首 上 「べっこう調 金」 下 「漆調 茶」
「漆調 茶」
胴側の部分に縦に刻みがありますが、持つときの滑り止めなのでしょうか?この位置で縦では滑り止めとしては効果がなさそうな。穂首を交換するときにねじって外すときのためのものなのでしょうか?
筆先が悪くなってくるとこの部分ごと交換します。ここが肝なので、この部分だけで本体価格の3分の1くらいします。
「べっこう調 金」
「漆調 茶」と形状が若干違います。刻みは同じ。こちらも本体価格の3分1くらいします。
★ 筆先
筆先 左 「べっこう調 金」 右 「漆調 茶」
「漆調 茶」はポリエステル毛です。本毛と比べると堅めで弾力性があり、跳ね返りが強いです。
これはもう先端が開いてしまって悪くなってしまっています。交換しないといけないのですが…
インクを入れていない状態では、本毛と同じような茶色です。インクを入れてしまうとほとんど真っ黒になってしまいます。あまり毛の状態はわかりません。
「べっこう調 金」は本毛(いたち毛)です。インクを入れていない状態で状態で茶色。インクを入れても毛の状態がわかります。本物の筆みたい。いや、本物の筆ですけど。
★ インクカートリッジ
形状はプラチナの万年筆のインクカートリッジと見たところ全く同じ。スチールボールが蓋になっているタイプ。これを本体を穂首と軸を離してダミーカートリッジと交換します。ダミーカートリッジには何か液体が入っています。穂先を湿らせておく為のものでしょうか。ただの水ではないような。正体不明。
ダミーカートリッジ
ダミーカートリッジは「漆調 茶」には入ってなかったと思うのですが… 天然の物より科学合成された物質の方が、安定しているので必要ないという事なのでしょうか。逆に言うと本毛のほうはそういう保全が必要という事なのでしょうか?
万年筆のインクカートリッジと同じように差し込んで装填するのですが… 堅い。結構力を入れないとはまりません。壊してしまいそう。それでも押し込むとやっと入ります。
最初のうちはダミーカートリッジに入っていた液体が筆先までしみているので、それが切れてインクが穂先までしみてくるまで色が付きません。説明書にもインクが出てくるまで試し書きを、と書かれています。これが後のチャレンジ企画でめんどくさい事に…
★ インクに関して
色は黒。墨のように漆黒という訳ではありません。粘性というか密度?濃さ?は万年筆のインクよりは高い感じがします。半紙に書いてみたのですが、サインペンの様な黒。
墨で半紙に大文字を書くように、文字が乾いた後紙が突っ張るような感じはほとんどありません。書いたのは小文字程度の大きさでしたがそのせいでしょうか。
問題があるとか気に入らないとかいうことは感じませんでした。
★ 書いた感触
まず、キャップを外します(笑)万年筆やボールペンではキャップを軸の後に付けてかくもノモ多いですが、コイツはそれをせずに使ってくださいと「漆調 茶」のパッケージには書いてました。「べっこう調 金」には書かれてませんでしたが、同じでしょうからキャップは付けないで使います。
で、書き具合。ポリエステル毛は弾力性があって本毛のモノより押しす力が強いので、それが筆先の位置を安定させやすいです。逆に押し返す力が強いせいで、払いの場合ゆっくり払う事はやりにくい。
本毛の方は柔らかく、戻すという作業も自分で調整しないといけないので、筆先を安定させにくい。筆先の位置を定めるのが難しいので、まっすぐ線を引くのが難しくふらふらし、線の太さも変わってきてしまいます。払いは丁寧にゆっくり払う事が出来ます。
おおざっぱに、ポリエステル毛のほうはさっと手早く書くのに向いていて、本毛のほうは丁寧にゆっくり書くのに向いていると感じます。
本毛の方は時間をかけて丁寧に書くとき向け。先述の通り筆先が柔らかく調整が難しいので、そういう筆遣いがきちんとできる、より上級者向けの感じがします。
私はポリエステル毛の方が書き易いです。あぁ、せっかく本毛のモノを買ったのに(笑)
★ その他
○ キャップの取り外し。
万年筆やボールペンと違って、筆先がデリケートな物なので、キャップをはめる時に筆先がキャップに当たらないように気をつけないといけません。万年筆やボールペンの先は堅い材質で出来ているので、少々キャップの縁にカチンとペン先が当たっても、問題ないですが、筆の場合はそういう訳にはいきません。万年筆やボールペンの感覚でキャップをはめようとして、強く筆先に当てようものなら、毛を痛めて筆先が整わなくなってしまいます。いや、私くらいですかね。キャップをはめるときにキャップの縁にペン先を当ててしまうような(不)器用なことが出来るのは(笑)
○ 替え穂首
「漆調 茶」の替え穂首は「DAM3-999」、「べっこう調 金」の替え穂首は「DAM2-999」。ネット通販のレビューなどをみてわかっていたのですが、入れ替えて使えます。ねじ切りのサイズも、全長さも同じ。キャップのはめ合いの構造も本体でなく穂首の方に作られていて、キャップを交換してはめてもはまります。キャップをはめても筆先がキャップの内側に当たるという事は無いと思います。
「漆調 茶」本体に「べっこう調 金」の穂首
キャップもしまります。
実用重視で本体は「漆調」穂首は「本毛」、見た目重視で本体は「べっこう調」穂首は「ポリエステル毛」という使い方もできます。まぁ、否推奨。
○ いろいろ思うこと
本来の筆と違って、墨の用意やその他道具の準備も片付けもありませんし、インクも早く乾くので汚れることもほとんどありません。そういった取扱が簡単ということが本来の筆に対する圧倒的な優位性。
しかも、いままでの筆ペンとは全然違い本来の筆と同様の書き味。筆は年に一度の年賀状くらいでしか使わない、なんていう人でも使ってみればその違いはわかるはず。
面白いと思えば、何か書きたくなると思います。上手くなりたいと思ったら、練習もすると思います。実際私は毎日ではありませんけど、するときは一日一枚以上写経みたいな事してますし。文字はうまくなってませんが。
でも、やっぱり買わないと始まりません。万年毛筆て筆ペンに興味を持ったのでいろいろ検索していると、あかしや、ぺんてるでも似た様な物で廉価なものがあります。筆先が交換できないという事もありますが、安い物をあれこれ使って見るとか、安い物を使い倒してから、高額な物に移るとか、するのも楽しいかなと。
○ オマケ。
実は過去にいろいろ試した上でここに至っているという。それを全てまとめてここに書くと膨大になってしまうので、リンクだけしておきます。古いものもあるので今回のプレミアムレビューと内容に齟齬があるかも知れません。
★ まとめ
この2本だけに限って言うと、ぶっちゃけ要は穂首。ポリエステル毛か本毛か。筆を日常的に使うとか、上級者は本毛。そうでないならポリエステル毛で充分。すこしでも初期投資を押さえたいなら、本体は「漆調」ですませましょ。という感じ。
そもそも、ミーハー的にポリエステル毛より本毛のほうが欲しかったのですが、本毛の「べっこう調」がやはり高いなぁと感じたので、まるまるは買う踏ん切りはつかず、穂首だけ使えれば安く付くんじゃないか、という考えを持ってました。でもこの企画で使ってみて、実際はだいぶ書き味も違うことがわかったので、使い分けする事になりそうです。いや、日常ではほとんど使う機会もないんですけど。
商品のレビューは以上です。
☆ 限界チャレンジ企画
自己申請した通り。
カートリッジひとつで何文字かけるか。
○ 使うもの
- 筆 呉竹万年毛筆 べっこう調 金 (本毛)
- 半紙 むか〜し、むかし、兄弟が学校の授業で使い切れなくて残した半紙。たまたま保管状態がよかったのか、そう酷く変色していませんので使います。
- 下敷き 半紙に格子の線を引いたもの。全くのフリーでは、字数をあわすのも難しいで。
○ 準備
新品の穂首にインクカートリッジを装填。ダミーカートリッジと入れ替えることになります。ダミーカートリッジに入っていた溶液が切れてインクがでてくるまで試し書きせよ。とのことなのでその通りに。
ちょっと困りました。文字が薄い文字から段々濃い文字になっていきます。どの濃さからカウントすれば良いのでしょう…
ということで文字が濃くなりきったら、一旦カートリッジを外し、それでかけなくなるまで書いて、新しいカートリッジを装填。そこからカウントすることにしました。
一本使い切るには時間も労力もかかるので。
手本として書く文字は「教育勅語」最近知って練習に書いてました。
教育勅語の「朕〜〜御名御璽」まで319文字。丁度半紙1枚に収まります。
下敷きに半紙に枠を書いたモノを敷いてます。この上に半紙をもう一枚置くと下がすけて枠が見えます。それをガイドに書きます。
下敷きの半紙の上にそのまま半紙を置いたのでは、インクがしみて下敷きも汚れてきます。見にくくなると困るので、下書きをさらにクリアファイルに挟んで使います。
○ 手順・決めごと 文字のカウントの規準やどこまで書くかなど。
- 文字を抜かした場合。どのマスにどの文字が来るのかは決まっていますので、書き直しはせず、次のマスに正しい文字を書き始めます。
- 文字を書き間違えた場合。画数1の文字もあります(例えばノや一)ので、間違えた文字も一文字でカウント。書き直しはせずに次のマスに正しい文字を書き始めます。
- インクの終わりでインクのながれが悪くなり文字がかすれそうになったら、文字の書く速度を落とし、インクの流れが追いつくようにして、文字がかすれないようにします。
- だんだん文字を書く速度が遅くなってきて、ついにはかすれるのは防げなくなってきます。そこから、かすれ切って文字として判別できなくなるまで書きます。
- 正座しないと書きにくいですが、長時間の正座はムリ。一枚書くのに40分くらいかかります。時間と集中力の問題で、一日、一~二枚書くのが限度。
- これで何枚かけるか。最終的に何文字かけるのか。
始めます。
○ 経過
4枚目。1276文字。問題なく
ざっとインクは半分くらい消費しています。このペースだとインクが無くなるのは8枚くらい。
8枚目。2552文字。文字はかすれていません。やはりインクはほぼ無くなっています。
9枚目。2722文字目。「旦」のいちばん下の線を引いたときに、かすれを感じたので、書く速度を落とします。
2757文字目。「カ」でまたかすれを感じ始めたので、さらに書く速度を落とします。
徐々に書く速度は遅くしていますが、2788文字目の「斯」からかすれは防げなくなってきました。
「書ける」と言うことを重視していますので、筆の文字の体はなさなくなってきました。
2842文字目。「爾」が最期までかけませんでしたので、ひとつ前の「朕」までの2841文字まで書けたということになります。
ここで終了。
○ 結果
枚数で8枚と四分の三くらい。文字数2841文字。
普通に書ける(インクのかすれに気を使わなくて良い。筆の速度に気を使わず自由に書ける。)のは最初にかすれを感じるまでですね。今回の場合は2772文字目「旦」まで。
○ いろいろ概算。
2772文字でで考えると…
慶弔に住所名前を30文字程度書くとして92回
一生を通じてそんなにありませんねぇ…
執筆作業で400字づめ原稿用紙に約6.9枚。
小説を書くには少ないでしょうか。ショートショートくらいなら書けるかも。
まぁ、いまやパソコンなので…
印刷した年賀状にちょっとした自筆のコメント20文字程度書くとして138枚。
これが一番実用的で使い出がありそうですが、最近年賀状出す人も減ってきているみたいですからねぇ…
こういう当てはめも意味があるかわかりませんけど…
○ その他。
カートリッジの容量からするとかなりの文字数をかけていると思いますが、ボールペンや万年筆に比べるとやはり少ないと思いますし、練習の際、1日2枚書くと4日でほぼ使い切ってしまうので、練習で使う際にはちょっと足りないかなぁと。いや、練習で使う際には。
インクの補充がカートリッジしかないので、コンバーターと瓶インクも販売してくれると有り難いですけれど。いや、そこまでハードに使う人はいなさそうなのでムリですか…
ということで、チャレンジ企画はこれで終了です。
☆ 終わりに
買うのを悩んでいた商品ですが、買う踏ん切りが付いて良かったです。実際買ってみると違いもわかり、やはり気に入りました。使いこなしは難しいですが。
チャレンジ企画はかなり辛かったです。写経みたいなもので、長いこと正座していないといけませんし、手もだるくなります。
文字のかすれはじめから書けなくなるまでは、文字数にしてたいしたことはありませんが、時間はとてもかかっています。ひと文字書くのに最期の方は30~40秒くらいかかっているので。途中で止めたいと何度思ったことか(笑) もうすることは無いでしょうが。
以上にて今回のプレミアムレビューは終了です。
おつきあいくださりありがとうございました。
(この文章はNICOLA配列で書いています)
atsuo@tokyoさん
2013/10/22
万年筆もそうですが、しばらく使っていないとインク切れで必要な時に書けなかったりして面倒なんですよねぇ。
1年放ったらかしていても使える万年毛筆なんて出るといいんですけどねぇ。
某支配人@名古屋定住@イベント行きたいさん
2013/10/22
安物で試したのがカートリッジ再充填です。
100均のコスメコーナーにある針付の注射器でインクの充填をしてみました。
インク次第の相性はあると思いますが、すでに8年ほど継続して使っています。
atsuo@tokyoさん
2013/10/22
万年毛筆ではリスクが高そうですが、オマケでもらった万年筆とかで試してみよっと。
万年毛筆の毛先って、書きなれていない人ほど毛先が固めのポリエステル毛の方が書き易いですよね。
かくいう私もそうなんですが、替穂首で本毛の固さとか選べると良いのですがそこまで需要は高くなさそうですよね(^^;
hatahataさん
2013/10/23
一年… やっぱ年賀状需要ですかね。万年筆では結構長いこと放って置いても大丈夫なのが出て来ましたが。
結構いろんなメーカーが出してるみたいなので、そこそこ需要はありそうな感じなのですけどね…
>某支配人さん。コメントありがとうございます。
インクの再充填は私も試しました。試したのはひとつだけですが、相性みたいなのはあるみたいです。