CPU側では、これらを利用したハードウェアとその処理性能について検証したが、こちらではSSD自体の性能についてと、WHS2011で行った「ムービー・ストリーミング・サーバ」のソフト的な構成や設定、及び実際の運用において気付いた部分などを書いていこうと思う。
まずSSDについてだが、今回レビューの対象となったIntel510シリーズは、コントローラーがMarvel製であること、NCQの効きが悪いためにCrystalDiskMarkでのQD32スコアが低いことなどから「実際に使っていない人からの評価」が不当に低い。
というか、私も実際に入手して使ってみるまでそうだったから、人のことをとやかく言えないのだけども、このSSDはベンチマーク上の性能はともかく「体感速度はVertex3-120Gに匹敵する」と断言出来る。
ちなみに、WHS2011の起動速度(Ctrl+Alt+Del表示まで)はBIOSを含めて僅か17秒。
UEFIの爆速起動を加味したとしても、信じがたい韋駄天っぷりである。
一応、参考としてWHS2011インストール状態でのCDM3のスコアを掲載しておくが、今回は我が家の定番チューンであるアライメント調整は一切行っていない。
WHS2011はWin7同様、インストールの時点でアライメントが正しく調整されるからだが、決定的な理由は「データが入った状態でのアライメント調整は、結構な回数を読み書きする作業である」ということ。
サーバーという安定性優先の代物で、さほど改善効果が望めない(XPや2003なら話は別だが)のに、SSDの寿命をわざわざ縮める作業を施しても仕方ない。
それに、思った通りと言うべきか、アライメント調整無しでも十分に速い(笑)
ただ、サーバーというものは「一回設定を済ませてしまえば、サーバー自体の操作を行う必要は余り無い」代物だけに、「体感速度の向上に効果のあるSSDを用いる意義はあるのか」と問われると、少々考えてしまう。
自分でコンセプトを決めておいて何だが、SSDをサーバーに使う場合において最大の効果を発揮するのは、実はOS自体ではなく「アクセスされるデータの側にある」のは確実だ。
SSDの持つランダムアクセス性能の高さは、サーバーでは「不特定多数が同時にアクセスするデータの側」でこそ効果を発揮する。実際にシステムドライブの残り190GBにデータを置いてみたところ、非常に快適ではあった。
ただ、WHS2011はホームサーバーである。
自分以外の利用は、せいぜい家庭内だけ。ならば、データへの不特定多数同時アクセスなど殆ど発生する余地はない。
ならば、SSDは作業領域として確保しておくのが適当だろう。
利用率も下がるから寿命は延びるし、OSの反応や処理速度へのボトルネックも減る。
今回、サーバーで実施している「ストリーミング配信」自体は結構負荷のかかる処理だけに、ここの動作が遅ければ、それは受信する映像がラグる(細切れ再生や映像の停止)ことに直結する。
なにしろ、WHS2011のストリーミング配信機能は、その場でエンコードしつつ実施されるものだからだ。
要するに再生している間、ストリーミング配信に最適な形式へ全自動でエンコードしているわけで、ここの処理が遅いと、受信する側での再生がスムーズにならない。
こうした処理をスムーズに行うためには、システム側のボトルネックを出来るだけ取り除いてやる必要があり、そういう意味では高速なSSDをシステムに採用する意義は十分にある。
Windows Home Server 2011が、前バージョンと決定的に異なる点は、主に二つに集約される。
ひとつは、OS自体が32Bitから64Bitになったことだ。
これにより、メモリを大量搭載することが可能となり、処理数が増えてもメモリ内で完結出来るパターンが増え、動作マージンがメモリを積んだだけ(最大8GBの制限があります)拡大出来るようになった。
そして、もう一つが今回取り上げる強力なメディア・ストリーミング配信機能の追加である。
この機能の実装により、WHS内に格納した映像は「その形式を問わず」に、Webを介して鑑賞出来るようになった。
無論、鑑賞はSilverrightの走るブラウザ上のみに限定されており、フルスクリーン化出来るにしても、画質は映像ソースと比較して多少劣化する傾向はあるが、回線さえ安定していればかなり快適に鑑賞可能だ。
ファイルをDLせずとも、「見たいときだけデータにアクセスしてサーバーに配信してもらう」という使い方は、DL待ちというまどろっこしい時間が発生しない分、安定さえしていれば快適かつお手軽。
標準機能でここまでの性能なら、十分に合格点をあげられる出来だ。
ただ、この機能はあくまで「PCへのストリーミング配信」しかサポートしていない。
ウェブアプリにそこまで期待するのは酷っちゃ酷なのだが、やはり今時としてはスマートフォンへのストリーミングが出来たらいいなあ、と思ってしまう訳だ。
というか、本当の事を言ってしまうと、応募の時点ではスマホ対応という部分を鵜呑みにしてWHS2011だけで出来ると思っていた。
しかも、WHSの標準機能で出来ないと知ったのは、実はWHSを注文した二時間後だったりする。
「これは全力でマズい。当初予定してたスマホでストリーミングというコンセプトが根幹から崩れ落ちる事になる。パーツ発注までした後で、今更レビュアー辞退とか出来ねーぞオイ。」
とか、この事実に気付いた時は本気で凹んだのだが、それから三時間後に解消法が判明。
スマホでもストリーミング配信を可能とするソフトを見つけたのだ。
それは、パーソナルクラウド・ソフトウェア「Pogoplug Software」である。
お手軽にUSB-HDDをクラウドディスク化出来るNASアダプタ「Pogoplug」のソフトウェア版で、WinだけでなくMacやLinuxにも対応している。しかも、原則として無料で使えるという太っ腹な製品だ。
ただ、ストリーミング配信機能については有料版たる「Premium version」のみの機能となっているので、どのみち追加投資は必要だったが。(お値段は32$)
ちなみに、アップロード・ダウンロード機能は無料版でも使うことが出来る。
この機能だけでも結構使えるので、是非一度試して欲しい逸品だ。
で、こいつを使うときにWHSなら是非ともやっておきたい事がある。
それは、サービス化によるログオフ下での常駐動作だ。
基本的にPogoplug Software(以下PogoSW)は、動作中のPCにおいて常駐起動させねば利用出来ない。
それは即ち、前編のTrueRemote同様「ログオフ状態では動作しない」という事であり、基本的にログオフしっぱなしで動かすサーバーのアプリとしては致命的欠点となる。
しかし、PogoSWはサービス動作モードが用意されていない。
そうした使い方をするなら「ハードで買え」ということだろうが、それではWHSに入れた意味がない。
そこで、無理矢理にサービスとして動作させることにした。
ここで使うのが、軟式ソフトウェアの「SEXE」で、これは本来レジストリを弄る必要があるアプリのサービス駆動を一発選択で実現してくれるという、オイラのような俄には非常に有り難いソフトウェアである。
使い方は、サービス化したいアプリを参照から選択し、OKを押すだけだ。
これで、PogoSWをサービスで駆動させることが出来るようになり、WHSは以後「メンテが必要なときか、IQSVによる連続エンコを実施するとき以外、一切ログオンしないで良い」状態となった。
今回はSSDの特性を検証するレビューのため、PogoSWの設定等の詳細は省く(というか、基本的には設定弄らなくてもいい)が、これらの準備が整ってしまえば、あとは標準設定のままで、スマホでストリーミング鑑賞が可能となる。
ただ、このスマホによるストリーミング鑑賞だが、正直言って画質が良くない。
映像だと分かりづらいのだが、その画質はY●utubeの240pをも下回っており、スマホですら明らかに画質が悪い事が分かってしまう。
これは、PogoSWがストリーミング配信時に「全自動でスマホの受信速度に映像を最適化・変換」してくれるからだが、映像の質がここまで劣化しては「俺様専用Y●utube」とは呼べない。
この全自動変換機能をオフにすれば、映像はそのままの画質でストリーミング配信されるのだが、元の映像容量は軽く400~500MBを超えている。
容量が大きすぎるため、スマホの受信環境がちょっと悪化するだけで、映像が完全にスタックする。
それどころか、映像配信がスタックしたままブラウザがハングアップすることも多く、快適な鑑賞とはとても言い難い状態だ。
一応、Wifi受信なら平気で鑑賞可能だが、3G回線で快適に見られないなら、スマホを使う意味がない。
このあたりを解消するには、どうすればよいか?
答えは簡単だ。配信する映像を「スマホに最適化」しておけば良いのだ。
そう、ここでようやくi5のレビューで説明した「IntelQuickSyncVideo」の存在が大きくなる。
IQSVで最適化した上で、自動変換をOFFにした状態でのストリーミング鑑賞の映像がこちらだ。
どうしても差が分かりづらいと思うが、実際に見ると雲泥の差がある。
また、途中で途切れたりスタックすることも殆どない。
・・・・うん、映像だと分かりづらいどころか、さっぱり分らん(汗)
というわけで、双方の再生中画像をスクリーンショットしたので、比較用として掲載。
・・・・うん、これなら雲泥の差であることが分る。(映像撮影の努力が水泡に帰する気もするが)
これならば、俺様専用Y●utube"HD"を名乗っても良さそうだ。
そういうわけで、タイトルも差し替えでおこう。
さて、前編であるi5のレビューを読んだ方は、なぜこれをWHSでやる必要があるのか?、i5のレビューなのにCPUを生かしていると言えるのか?、IQSVだけならI3でも出来るだろうに?・・・正直、こういった感想を持ったと思う。
実は、このWHS2011でPogoplug Softwareによるストリーミング配信を行う場合、最適化された映像を作る場合にも、配信する場合にも、かなり強力なCPUパワーを必要とする。
なにせ、配信時のCPU占有率は楽勝で70%を突破し、IQSVの同時利用時は85%近くまでハネ上がる。
要するに、このストリーミング・サーバーを「不満無く快適に利用したい」と思ったら、高速変換を可能とするIQSVが利用出来、かつストリーミング配信時の負荷に余裕を持って耐える「Core-i5」が絶対に必要なのだ。
しかも、2405sは65W級のCPUであり、省電力駆動をも実現してくれる。
今回のパーツ構成でなければ、このサーバーを構築するのは不可能に近い。
では、SSDについてはどうなのか?
こちらも、やはり「必要であった」というのが私の結論だ。
これから提示する検証データが、「Intel-SSD 510」の必要性を証明している。
以下に示すグラフは、WD1001FALS(7200rpm-1TB DualController)とIntel-SSD 510に、それぞれ全く同じ環境(ディスクのドライブ構成・容量も完全に同一)を入れて、今までに行ってきた処理の所用時間を携帯電話のストップウォッチにて計測したものだ。(IQSVエンコードのみ、MediaEspressoの所要時間を記載)
WD1001FALSは、世代的に多少古いとはいえ、WesternDigitalのコンシュマー向けHDDではフラッグシップモデルとなる製品であり、現在でもOS用として十分な性能を持っている。
しかも、今回SSDと全く同じドライブ構成とした関係から、使用領域はHDDの外周に集中したはずで、本来よりも高速に動作しているはずだ。
しかも、データの保管先は同じ「HDDでRAID1を組んだドライブ」にも関わらず、配信能力に明らかな差が出た。
そして、映像スタックからの復帰についても、明らかな差がある。
ストリーミングにおいて、映像のスタックというのは不快以外の何物でもない。
回数差、復帰速度差共に、快適なストリーミング視聴には重要な要素。
そこに明らかな差が付いた以上、SSDの採用は「たとえOS領域であろうとも十分に価値があった」と判断して良いだろう。
今回レビューさせて頂いた「i5-2405S」と「Intel-SSD 510」は、私に「コンピューターの使い道と可能性」を再認識させてくれる、非常に面白いアイテムだった。
特に、「i5-2405S」は今までに無い使い道を実現する上で非常に重要な役割を果たし、ビデオエンコードの利便性を一気に高め、エンコードは時間がかかって面倒なもの、という概念を一気に払拭するだけの威力があった。
自他共に認めるAMD派たる私としても、このCPUが持つ可能性には脱帽する他ない。
単にGPGPUを追加しただけでも、「応用範囲は結構増えるものだ」と、素直に感心させられた。
また、Intel-SSD 510についても、上辺だけのスペック比較やベンチマークだけでは、その使い勝手を全て把握するものではないという、実証主義の重要性を再認識させてくれた。
レビュー本編が変則過ぎて言及出来なかったので、この場を借りて追記しておくが、今回Intel-SSD 510を使っていて非常に感心したことは、やはりIntel製品として提供されるツールの優秀性だ。
今回のレビューで最後に言及した、SSDとHDDの同一環境動作比較において「IntelDataMigrationSoftware」を利用してOSをクローンしたが、これは完全にAcronisTrueImageHome 2010の製品版と同一のクローン機能を無償提供しており、ソフトを一本買わずに済んだ。
IntelSSD ToolBoxにしても、Trimの手動・定期実行機能の提供という「管理側が把握出来る形での最適化」を可能としており、Trim非対応のOSでの利用時にはかなりのアドバンテージとなるだろう。
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ちなみに、WHS2011は最後発のOSだけあってTrimコマンドに対応しているようだ。
CrystalDiskInfo4と、fsutil behavior query DisableDeleteNotify(これをコマンドラインで入力すると、Trimの有効・無効がわかる。結果が0なら有効)でも、TrimはONであると判定された。
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SSDは、現在のところ「メンテナンス無しに運用し続けることは難しい」製品だ。
だが、少なくともIntel-SSDを利用している限りにおいては、320であれ510であれ、煩わしいメンテナンスや性能低下の懸念が大きく減る。
Intel-SSD 510は、少なくとも「沢山あるMarvelチップ搭載SSDのひとつ」で終わっていない。
信頼性、可用性、保守性の全てにおいて、これは明らかに「Intel-SSD」である。
その点だけでも十分に「他のMarvelチップ搭載SSDに対する、大きなアドバンテージだ」と断言し、今回の締めとしたい。
最後に、今回このように変化球なレビューの機会を与えて頂いた、Intel各位とZigsow運営各位に深い感謝の意を。
bibirikotetuさん
2011/09/11
WHS2011を使用してのレビュー、私の疑問に回答していただけているよな
とっても参考になる内容で色々スッキリしました。
ありがとうございました。
Vossさん
2011/09/11
今回は本当に手間かかるというか、解消しなけりゃならないトラブルとか、情報収集とか色々やらねばならず、内容の割には苦労しました。
なので、一人にでも「役に立った」とするなら、やった甲斐はあったと思います。
つーても、「スマホでの暇つぶしアイテムを増やしたい」だけのために、これほど大規模なシステムを用意するのも、ある意味で無駄の極致なんですが・・・・