「モバイルモニタ」。文字通り持ち運べるモニタ。古(いにしえ)の?CRT時代なら知らず、今では大画面のノートPCも持ち運べる重さになってきたし、「画面を持ち運ぶ」だけなら、タブレットという選択もある。
それでもなお単機能のモニタを持ち運ぶ必要/もしくは/可搬性のあるモニタを所持する必要があるのか?そのメリットや使い勝手は?
今回、13.3インチのGechic On-Lap 1305H モバイルモニターを用いて、いろんな可能性を追求してみた。
GeChicは2011年に設立された台湾のメーカー。主力製品はモバイルモニターやタッチモニター。10~15型の可搬式モニターがラインアップされており、三脚に取り付けられるタイプやバッテリー内蔵型、タッチパネル対応型とさまざまなモニターが提案されている。
ここZIGSOWでも今から5年前にノートPC(Ultrabook)に吸盤でくっつき、背負わせることが出来る「On-Lap 1301」がプレミアムレビューに登場したこともある(型番から言うと本レビューで取り上げるOn-Lap 1305Hの直系の先祖?)。
今回、今年11月に発売されたばかりの13.3型モバイルモニターOn-Lap 1305Hをいろいろなシーンで利用してその使い勝手を検証してみた。
製品は薄型のモバイルモニターらしく、薄い段ボールの箱に入っている。
多色刷りの段ボール入り。外装にお金をかけすぎていないのが好感。
スライドして引き出すと、開けやすいように「つまみ」のついた保護フィルムにくるまれた本体とそれにセットしてあるスタンド兼用の保護カバー、付属品が入った小箱がある。付属品は、専用の接続用ケーブル、給電用USB延長ケーブルとACアダプタ、英日2か国語の説明書に2つのケーブルタイ。ケーブルタイは専用接続ケーブルとUSB延長ケーブルを束ねる目的だと思われるが、モバイルモニターという性質上、カバンなどに入れて持ち運ぶ可能性も高く、蛍光イエローっぽいカラーは探しやすそうだと感じた。一方、タイをケーブル側に固定する機構がないので紛失が若干心配か。
注意すべきは日本代理店(テックウインド株式会社)の保証書は外箱シールとして貼り付けられている点。本品は画面保護用のカバーも付属しているので、ふたたびこの箱に入れる状況は少ないかもしれないが、保証期間内は廃棄しないようにしたい。
説明書は、図中の文章が中国語のままだったり、フォントの一部と言葉遣いが少し怪しかったりと、若干「こなれていない」感じだが、OSDの説明の部分などではスクリーンショットや文中に記号をふんだんに使い、判り易いものとなっている。
OSDの項目自体も表記がわかりやすいが、説明書にも図を用いて詳説されている
本体自体は最薄部7mm、HDMIやイヤホンのジャックがある部分でも9mmととても薄い。また本体だけで685g、スタンド兼カバーを入れても950gと1kgを切っており、持ち運びが苦にならない。
端子類、操作部がある手前側(横向き使用時下側)のみ厚めだが全体に薄くスタイリッシュ
カバーはディススプレイの裏側に着ければスタンドにもなる構造。ロックもついており鞄やトランクの中でカバーが外れて画面が傷つくということが起こりづらくなっている。
スタンドは、カバーの中央のラバー部分が分離⇒変形して、横から見ると「三角」の形になることで実現されている。このスタンド部は一方がカバーに固定されており、紛失の危険性はない。
卓上カレンダーの一部にもあるような機構だが、カバー側の固定は穴への差し込みではなくマグネットによる。この機構によって無段階に角度を変えることができるため、天井からの明かりの反射を避けるためなどの目的で細かく角度を調整できる。
その一方、ラバー部分を上手く使って摩擦係数を高めているとは言っても、倒し気味にして長時間使用していると(特に縦置き時には)徐々に角度が変わってくるので一長一短か。なお、「どこまで倒せるか」というのを示す説明がこのスタンド部内側に挟み込んであって、それは携帯時は邪魔にならないのでそのまま使用してもよいのだが、材質は普通の紙のため、経年変化などによる汚損が心配。カバー裏に目印の筋彫りでもあると便利かと感じた。
横置きならブルーのライン、縦置きならオレンジのラインまで倒せる
接続は「基本」ケーブル一本。付属の「On-Lap 1305専用HDMI-A + USB-Aケーブル」を使う。二又になった側は、HDMIプラグは映像出力側の機器へ、USBプラグは給電のために映像出力側の空USBポートに、あるいは付属のACアダプタをつないでコンセントから給電する。
USBの延長ケーブルは、両端ともにA型でメス⇒オスの一般的なもの
一番「ありそうな」ノートPCの拡張ディスプレイとして使用する際には、ノートPCのHDMIポートとその近くのUSBポートに挿す、という運用。ただ、USBポートが離れている場合(HDMIポートが左側でUSBポートが右側など)にそれにも対応できるように、USBの方は延長ケーブルがセットされている。
これはデスクトップPCで使用する際も有効で、今回用いたPCも上から2つめのスロットに積んだビデオボード(msi R9 270X Twin Frozr 4S 4G OC)のHDMI端子と、M/B(ASRock Z87 Extreme6)背面のUSB端子がかなりギリギリの距離だったので、延長ケーブルを利用したほうが安全だった。
単なる給電なのでUSB2.0端子を使おうとすると結構ツンツン
今回色々な状況で、このGechic On-Lap1305H モバイルモニターを使用して見たので、それは「On-Lap 1305H を仕事やゲームで徹底活用」に記載したが、このモバイルモニターをデスクトップPCの参照画面として使用する際には延長コードなどを用意した方が良い。
というのも、右利きの多くの人は、書道の手本と自分が書く紙(半紙など)の位置関係などで「左側が手本(参照資料側)」というのに慣れていると思われるが、On-Lap 1305HのHDMIポートの位置関係上、On-Lap 1305Hを横置きしてメインディスプレイの左側に置く形にすると、HDMIケーブルが回り込む形になり、多くはケーブル長が足りないと思われるからだ(PC本体が机上右側、あるいは右足元にある場合)。給電用のUSB延長ケーブルは付属するが、HDMI延長ケーブルは付属しないので、このような場合は、別途準備する必要がある。
On-Lap 1305H縦置きの時は、右側にHDMIポートが開口するため、このようなケースは起きづらいかも知れないが、横置きのときはメインディスプレイが21型程度であっても取り回しがキツい。
回路的に楽なのか、2つのHDMIポートは隣接しているので、縦置きと横置きでは差込方向が逆になる
縦置きの際は右からの接続だが、横置きのときは左側からの接続となる。
USB側の延長に加えて、別途HDMI側も延長ケーブルを用意した
また縦置きの際も、横置きの方向でカバーを使うので、左右あわせて10cmの「はみ出し」 部分が発生する。これは狭小な作業スペースで使う場合にはもったいない(縦置きの際には別途コンパクトなスタンドを使えばよいだけだが)。
なお縦置きで使う時にはWindows側でディスプレイの設定が必要だ。
接続当初は当然?「1920×1080」の横向きになっているので、ここを「1080×1920」の「縦(反対向き)」に変更する。
最初はこんな感じなので、ディスプレイの配置をいじった後....
スケーリングは当初150%になっていると思われるが、ここは必要に応じて適宜変更する。
あと一点、調整が必要な場合があるポイントが音。HDMIは音声の伝送も可能なので、専用ケーブルで接続するとデフォルトでは音声はHDMIケーブルを経由してOn-Lap 1305H側に行ってしまう。そのため、On-Lap 1305Hのヘッドホン端子にヘッドホン/イヤホンか、スピーカーをつながなければならなくなる。デスクトップPCはスピーカーなどをつないでいる場合も多いので、そちらから出したい...という場合には、音声の「再生デバイス」を切り替える必要がある。
デフォルトの「Onlap1102I」からデジタルオーディオに。
なぜだか表示上「Onlap1102I」とタッチパネル対応の小型機の名称となってしまっているが、ここを普段使っている「デジタルオーディオ(S/PDIF)」(←自分の環境によって内容は異なるはず)などのオーディオデバイスに切り替えてやる必要がある。
自分の環境では一度切り替えると、その後On-Lap 1305Hを切り離したり再接続したりといったことを繰り返しても、メインPC側が優先となった(メインPC側は常時稼働PC)。
今回Gechic On-Lap1305Hを色々なケースで使用してみた。広い画面を持つノートPCもかなり軽量になってきたし、この程度(13型)の画面の大きさが欲しいだけならば、単体で動くタブレットなども最近はかなり安価だ。そんな時代に「ディスプレイだけ」のOn-Lap1305Hがどれほど使えるか、を検証した。
結論から言うと、細密で広視野角なOn-Lap1305Hは臨時のデュアルディスプレイとしてとても使いやすい。特に縦置きに関しては「何かを参照しながらPC入力する」時は最強。pdfのカタログを見ながらその内容を入力するというようなケースでは最高に使い勝手が良い。また、ながら見の動画鑑賞などでも使い勝手が良く、モバイルバッテリーでも動作可能であることから、外出時も使えるのが大きい。
一方いくつかオシイ!と思われるところもある。
・HDMIポートの向きがOn-Lap1305Hと映写元機器の位置関係を制限するが、横置きと縦置きでその位置関係が逆になってしまうのは、右利き左利き問わず使いにくいかも。
・映像(含む音声)と電源が一本の「On-Lap 1305専用HDMI-A + USB-Aケーブル」で接続できるのは便利な一方、この独自規格のケーブルの紛失や断線で、On-Lap1305Hが完全に「使えなくなってしまう」のは将来的に不安が残る。本体サイズ的に設置位置の問題はあるが、汎用のミニ/マイクロHDMIにマイクロUSBという入力もあれば、いざというときに「替えが効く」。
・出力側の問題でもあるが、iPhoneのように出力映像回転機能のないデバイス用に「強制画像回転機能」でもあれば最強だった。
使用してみると、拡張ディスプレイとしてよく考えられていたGechic On-Lap 1305H モバイルモニター。「すぐに取り出せ、簡単にしまえる拡張ディスプレイ」として、今後の使用頻度が高くなるような予感がしている。
【On-Lap 1305H製品仕様】
パネル:13.3インチFFS
表示エリア:294mm×165mm (W×H)
ドットピッ チ:0.153mm
最大解像度:1920x1080 フルHD
最大表示色数:1677万色
輝度:300cd/m2
コントラスト比:1000:1
視野角(水平/垂直):178°/178°
表面処理:ノングレア
応答速度:12.5ms
ビデオ解像度:1080P(60Hz)、1080i(30Hz/25Hz)、720P(60Hz)
サポート解像度:1920×1080(60Hz)、1600×900(60Hz)、1440×900(60Hz)
1366×768(60Hz)、1280×1024(60Hz)、1280×960(60Hz)
1280×800(60Hz)、1280×768(60Hz)、1280×720(60Hz)
1024×768(60Hz)
ビデオ入力:HDMI専用入力端子(HDMI+USB)×2
オーディオ出力:ヘッドホン端子(3.5mm)
消費電力:5V-1.6A
本体サイズ(幅×高さ×奥行):320mm×203mm×9mm(モニタ)
325mm×214mm×15.4mm(モニタとカバー)
重量:685g(モニタ)、265g(モニタとカバー)
付属品:カバースタンド
1305シリーズ専用HDMI-A&USB-Aケーブル(1.2m)×1
USB-A to USB-Aケーブル(1.2m)×1
電源アダプター(5V-2A)
ユーザーマニュアル
保証:1年間保証
持ち出させる/片付けられるサブ(場合によってはむしろメイン)ディスプレイ
デュアルディスプレイ(1366×768の15.6型デスクノートPCと1920×1080の21.5型FullHDディスプレイ)は会社では使っており、資料を比較しながら手直しする...なとの用途にはすこぶる便利だが、自宅では設置スペースの問題と、PCで音楽を聴く際に左右のスピーカーが離れすぎるという理由で、シングルディスプレイで運用している。
しかし、「何か資料を見ながらそれを(多少編集などして)写す」という際には、デュアルディスプレイが圧倒的に便利だ。ここで出てくるのが、「持ち帰り仕事などをするときのみは、デュアルディスプレイにしたい」という欲求。特に自分がよくやる持ち帰り仕事が、
・Webページを参照しながら資料を作る
という作業。この場合は、フルHDディスプレイと言っても23型のシングルディスプレイの中に2つのウインドウを切って並列表示させるのはツライ。
参照する資料が紙資料そのものだった時は左手にボードを立てかけて、それに挟んだ資料を見ながら資料を打ち込んだりしていた。
しかし、参照する資料がHPで公開されているデータやWebパンフレットになるにしたがって、1画面中でのウインドウ分割を強いられるようになった。
このような場合には、臨時のデュアルディスプレイが構築できれば最高だ。
そして、「参照側ディスプレイは縦型表示できれば言うことない」。
この「ペーパーレス時代」が謳われて久しい今日にあっても、会社文書や資料は「A4縦」という紙資料のサイズに縛られたフォーマットが多い。またHPのレイアウトはある程度「想定の幅」で折り返し、下へ下へと延びていく(これはhtmlのフォーマット上そうならざるを得ない)。
そうなると参照側のウインドウは縦移動が多くなる。
会社ではノートPCと外部ディスプレイの2画面だが、両方横広の画面なので、参照資料側は結構縦送りが多くなってしまう。
これが参照側画面の縦表示ができれば効率がとても上がる。
実際、このレビューを書く際も、メインディスプレイにZIGSOWの編集画面を立ち上げ、左方に参照用にこのGechic On-Lap1305H モバイルモニタを置いて、テックウインドのHP公開のpdfカタログを参照しながらスペックを転記したが、スクロールの回数が少なくて済み、非常に快適だった。
諸元は実際にWebカタログのスペック表を見ながら転写した部分もある。
デュアルディスプレイのもう一つの効用として、動画などを流しつつの作業で、メインの画面を占有しない、というのがある。今まではiPhone 6 Plus
をWi-FiでつないでYoutube等を流していたのだが、FullHDとはいうものの5.5インチ。基本メインの画面を見ていて、動画の方は「聴いて」はいるが、観る方は「ながら見」なので許容していたが、それでもやはり絶対的な大きさとしては小さい。
それをこのOn-Lap1305Hに変更する十分な大きさで見られるために、チラチラ見ながらでもベースとなる情報量が多いのでそれで満足でき、気になるところを凝視するということがなくなる。また画面の大きさと細密さは動画のレビューなどでもとても便利。
動画のレビューなどは小さいウインドウでやるより全然効率が良い。
あと、これらデュアルディスプレイ使いは「使わないときはしまえる」というのが利点としては大きい。会社と違って、机はいろんなことに使う。広く使いたいときに/もしくは/画面一つで十分なときに隙間にしまえるというのは大きい。
iPhoneを接続するには、純正のLightning⇔HDMI変換アダプタである「Lightning - Digital AVアダプタ(MD826AM/A)」
を用いた。この時は「外でiPhoneに保存した画像・動画を他人に見せる」「iPhoneの画面より大きな画面でWebページなどを閲覧する」というケースを想定した。
そのためここからはOn-Lap1305Hをバッテリー駆動している。マグレックスの2.1A出力が可能なモバイルバッテリー、MB-HP8800-BK
を給電用USB端子につないだ(MB-HP8800-BKには5V-1AのUSBポートもあるが、今回は5V-2.1A側に接続)。
こうして接続し、画面のミラーリングを行うと無事、画面が複製される。
On-Lap1305H側に回転機能はないので、縦置きにしても画像が回転するわけではない。
ただ映るには映るものの、少し期待はずれ。というのも向きが...iPhoneをはじめとするスマホを使う時って基本縦。On-Lap1305Hの上下(短辺側)いっぱいにiPhoneの画面が拡大されるものの、そこまで。せっかく縦置きしても画像が横倒しになるだけ。
最新のiPhone Xでも同じで、MD826AM/Aを経由すると画像は出力されるものの、やはり向き固定。縦置きの利点が活かせない。
iPhone側を横長に回転させると横置きには合った画面になるが..
PCからの出力の時もOn-Lap1305H側で画面を回転させるわけではなく、PC側の映像出力機能で調整を行ったが、iPhoneやLightning - Digital AVアダプタ側には外部出力映像回転機能がないため、せっかくのOn-Lap1305Hの広い表示エリアがiPhone縦置きスタイルの時は活かせないという残念な結果に。
最近ちょっとした調べ物はiPadのようなタブレットを使うことも多く、その時は手書きを使ったりもするが、長い文章を打ったりする場合はスクリーンキーボードが便利。
ただこれ、画面の専有面積が広く、結構邪魔。
そこで、タブレット(ここではスレートPC ONKYO TW3A-A31C77Hを利用↓)
からの出力をOn-Lap1305Hに繋ぎ、スレートPC側はスクリーンキーボードとして使い、On-Lap1305HをノートPCPCの画面のように使う試み。
これ結構快適だった。まさにノートPCの使い心地で、スレートPC側はデスクトップ上に散らしたショートカットが、まさに「専用起動ボタン」のよう。
ただ接続そのものは苦労した。なんにせよOn-Lap1305Hが音声出力以外の外部インターフェース専用HDMI-A + USB-Aケーブルのみというのが結構重い制約。この時は外での使用想定だったので、二股となった給電用USB端子は当然モバイルバッテリーだが、映像の方はスレートPC用にフルサイズHDMI(オス)をミニHDMI(オス)に変換してやらなければならない。探せばフルサイズHDMI(メス)⇒ミニHDMI(オス)変換プラグもないわけではないのだが、メジャーなメーカーからは発売されておらず、全て通販で供給が安定しない。そこでフルサイズHDMI(オス)⇔ミニHDMI(オス)のケーブル
とHDMIセレクター
を使うことで、専用ケーブルのHDMIプラグをミニHDMIプラグに変換することに。
副次的効果としてはこの方法だと、複数のPCやスマホの画面を切替でOn-Lap1305Hに表示することが可能なわけだが...結構大がかりな仕組みになってしまった。
カバー兼スタンド、しかもそのスタンドの無段階調整機構は秀逸
画面カバーを背中に付けるとそれがスタンドになる。そのスタンドはカバーにくっついており、紛失の恐れはなく、マグネットによって無段階調整が可能となっている。ただ縦置きの時も横置きと同じ幅をとってしまうのは機構上仕方がないことだが、ザンネン。
明るく細密で、「オプション画面」の役割を考えると最適
IPS(In-Plane Switching)方式の改良方式であるFFS方式(Fringe Field Switching)を採用しており、明るく広視野角。かなり斜めから見ても色調と明るさが変わらない。
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