今回は、プレミアレビューとして、ZIGSOW様よりご提供いただいた、SSHD…HDDとSSDの「いいところ取り」を行ったという、WD Blue SSHDをレビューしたいと思います。
今回ご提供頂いたWD Blue SSHDのスペックはこちら。
- 容量: 1TB
- インターフェース: SATA 6Gb/s
- フォーム・ファクタ: 2.5インチ
- 転送レート(バッファからホスト): 6Gb/s(最大)
- キャッシュ: 64 MB
- サイズ: 高さ 9.5mm/縦 100.2mm/横 69.85mm
- 重量: 0.12kg
今回は、これをPS4に導入した場合、どこまで、どんな効果があるのか、を検証していきたいと思います。
SSDに引けをとらない性能
さて、PS4の実機にインストールし、実際に使用する前に、既存のHDDやSSDとどれほどの違いがあるのかを、ベンチマークソフトを使用して確認してみたいと思います。
- 3.5インチHDD
- 2.5インチHDD(PS4内蔵HDD同等品)
- 2.5インチSSD
- WD Blue SSHD
1.以外は、すべて自作PCの同じSATAポートに接続して試験しています。
また、ベンチマークソフトにはお馴染みのCrystalDiskMarkを使用しました。
ベンチマーク条件もすべて同じ、1GiB/5回にそろえてあります。
1. 3.5インチHDD
まずは、デスクトップ用のHDDから。
こちらは、かなーり以前に購入した、Seagate ST31000528ASというHDDです。
スペックはキャッシュが32MB、7,200rpm、1TBで、昨今でも平均的な性能であろうと思われるデスクトップ用のHDDです。
最近はSSDの数値ばかり見ているので、「あれ?こんなもんだっけ?」と思ってしまいましたが、データストレージとしては必要十分な数値ですね。
2. 2.5インチHDD(PS4内蔵HDD同等品)
次にPS4に現在内蔵されているHDD…といいたいところですが、交換した後もバックアップとしてしばらくはとっておきたいですし、なによりこの時点ではデータのバックアップもとっていませんでしたので、同等品である(と思われる)、Western Digital WD3200BEVTをテストに使用しました。
これはキャッシュ8MB、5,400rpm、320GB。筆者が持っているPS4初期型のHDDとは、容量が違うだけのはずです。
シーケンシャルRead/Writeが、前述の3.5インチHDDの約1/2の性能ですね。ランダムRead/Writeに関しては、大きな性能差がでていないように見えます。
3. 2.5インチSSD
では、SSDの数値はどうなのでしょう。
手元に、かなり前にネットブックの強化用に購入して、その後死蔵しているIntel SSD 330(60GB)がありましたので、この製品のベンチマークを取ってみました。
シーケンシャルもランダムも、デスクトップ用のHDDを軽く超えている数値がでています。
そりゃ早いって感じるよねぇ…
しかし、PS4では、ゲームは基本的に内蔵HDDにインストールして遊びます。Blu-rayの2層式とかだったりすると、その時点で50GB程度。60GBでは何もできないことになります。これは流石に使えません。使いみちはありますが、このSSDはまだちょっととっておく予定です。
4. WD Blue SSHD
いよいよ今回のメインディッシュ、WD Blue SSHD のベンチマークです。
「学習型」ですから、一発勝負のベンチマークは参考程度として見てみましょう。
これは…予想以上でした。
シーケンシャルRead/Writeも、ランダムRead/Writeも、SSDのそれに匹敵しています。
これで1TB…学習しなくても十分な高速性。
比較対象のSSDが数世代前のものであることを考えても、十分以上の高性能であることが伺えます。あとは価格見合いですね。
PS4のHDD換装作業はとても簡単。
星が1つなのは、「簡単ですよ」という意味です。星が多ければ難しいってことで。
さて、ではいよいよHDDの換装です。
換装にあたっては、PS4の保証が気になると思います。メイカー品は、とかく手を加えた製品の保証は避けますからね。
PS4に関しては公式ではこのようになっており、HDDの換装程度ではアフターサービス対象外にはならない様です。これは嬉しいですね。
ただし、修理に出す際に、初期化される可能性があるそうなので、バックアップはきちんととっておく必要があります。このへんはメイカー製のPCを修理に出すときと同じ感覚を持っていれば、問題ないでしょう。
最も、筆者のPS4は初期型ですので、既にアフターサービスの対象外なんですけどね。
今回は特に、換装後、すぐに同じ環境で使用したいので、まずは換装の前にバックアップを行います。
1. バックアップ
PS4のバックアップの種類は3つ。
- ゲームのセーブデータのみのバックアップ
- 1.に加え、設定などを含めたバックアップ
- インストールしたゲームなど、一切合切のバックアップ
1.の場合は、容量も少なく、時間もかかりませんが、今回はHDDをまるごと交換するので、2.、できれば3.の形でのバックアップが欲しいところです。
公式では、1. の手順はここ、2.、3.の手順はここに手順の解説がありますので、この手順に従えば、すんなりバックアップできます。
ただし、注意することが一つ。
PS4に接続して利用できるのは、FAT32/exFATでフォーマットされたメディアです。
FAT32は、原則32GBまでのメディアしかフォーマットできませんので注意が必要です。
exFATであれば、この制限の限りではありません。
Linuxを使ったり、Windowsのフリーウェアや、メイカーのツールを使えば、32GBを越えるメディアのFAT32フォーマットは可能です。
今回は、前の性能試験で使用した、Western Digital WD3200BEVTをFAT32にフォーマットしてUSB接続し、すべてのデータをバックアップしました。
接続時に「このメディアはPS4では使用できません」というメッセージがでましたが、問題なくバックアップ/リストアできました。
時間は約1.5時間程度。バックアップを行ったら、あとは放置しておけば問題ありません。
2. OSファイルの準備
今回はまっさらのメディアに換装するので、OSを再インストールする必要があります。
これも公式のページからファイルを予め入手しておきます。
ここから、PCなどで入手可能です。ずーっと下にスクロールすると、以下の画面がありますので、ここから入手します。
最初、「えっ、どこから入手できるの?」と思いました。Twitterデザインが普及して以来、縦に長いページデザインが多くて困りますね。筆者はあまり好きではありません。
「PS4UPDATE.PUP」というファイルが入手できますので、それを適当なメディアの「\PS4\UPDATE」の中に配置します。筆者は8GBのUSBメモリを用いましたが、1GBありませんので、1GBとかで十分です。
3. HDDの換装
ここまで事前準備ができたら、いよいよHDDを交換します。
準備するものは、#1のプラスドライバー1本です。筆者はたまたま手元にあったビクトリノックスのサイバーツールを使いました。これはまた後日レビューを書く予定です。
まず、機器に接続している配線を抜き、本体を作業しやすい場所に持って行きます。
その後、本体上部のPSマークがある光沢が有る部分を両手で抑えつつ上にずらすと、「パキッ」という破滅の音フックが外れるような音がして、カバーが外れます。
カバーを取り外すと、もうHDDが見える状態になります。
この画像の右上あたりに見える、「◯△□✕」の刻印があるネジを、プラスドライバーで取り外した後、「凸」型になっている箇所を上にスライドさせれば、HDDマウンタごとHDDを取り外すことができます。
HDDはマウンタに4箇所ネジ止めされていますので、ドライバーでネジを外し、HDDをマウンタから取り外した後、新しいSSHDをマウンタに取り外す前のHDDと同じようにネジ止めします。
最近のSSDやHDDは、9.5mm厚ではなく、7mm厚になっていたりしますが、このマウンタはHDD底面部でネジ止めするようになっているので、7mm厚のものでもスペーサーは必要なく取り付けることができます。
画像の天地が逆になっていますが、お気になさらず(^^;)
後は、取り出す時と逆の手順でHDDを取り付け、カバーを元通りにして完了です。
手慣れた人であれば、10分もかからずに換装できちゃいます。
4. OSの再インストール
HDDの換装が終わったら、各種ケーブルを接続し、PS4のコントローラーと、2.で準備したOSアップデートファイルを入れたUSBメモリをUSB接続して、PS4を起動します。
あとは、ここにある通りの手順で、割とあっさりOSのインストールは終了します。
5. バックアップデータのリストア
最後に、1. でバックアップデータをとったUSB HDDをUSBポートに接続し、メニューからバックアップの復元を行います。手順はこちら。
バックアップしたのが、ゲームのセーブデータだけだと、この後ゲームの再インストールが必要になりますが、今回はゲームもバックアップしたため、その必要はなく、すんなり元の環境に戻りました。PS4のバックアップ機能は優秀ですね。
体感ではあまり早いとは感じなかったが…
さて、では、HDDの時と比較して、どれくらい変わったのか、以下の2点を見てみたいと思います。
- 電源を完全に切った状態から起動するまでの時間
- ゲームを起動する時間
時間計測は、ストップウォッチで行いました。結果はこんな感じ。
数秒の違いですね。筆者は今、「MGSV:TPP」しかプレイしていないので、他のゲームとの切替時間を計測していないのですが、新しいゲームを買ったら、それも試してみたいと思います。
【2015/11/11:追記】
約1ヶ月ほど経ちましたので、SSHDにて、上記と同じ計測を行いました。
- 完全停止から起動:約22秒
- ゲーム起動からスタート画面まで:約1分20秒
システムは基本的にシャットダウンせず、スリープ状態にしているので、起動時間は短縮しませんでした。
ゲーム起動については、数度ゲーム自体にアップデートがかかりましたので、その影響があると思われます。
数秒差、ということで、目立った性能差はでていないように見えますが、この「数秒」の積み重ねが、
次に、実際にゲームをプレイしたらどれくらい体感で違うのか、を確認します。
ゲームはもちろん、「MGSV:TPP」です。
共に、バックアップのタイミングで未プレイだったサイドシナリオ(SIDE OPS)の一つをプレイしています。ゲーム時間がHDDの方が長いのは、初見プレイだったからです。
まずは、HDDでプレイしたもの。
これが初見プレイです(大事な事なので2度いいました)。
思いっきり戦車に見つかってますけど、一応捕獲しました。できました。
SIDE OPS程度ですと、HDDでもそこまでストレスなくプレイできます。
ゲーム開始までの時間をストップウォッチで計測したところ、約24秒。
次に、SSHDの場合。
2回目のプレイですから、ちょっとだけスムーズになっています。
今度は発見されずに戦車を回収できてますね。うんうん。
ゲーム開始までの時間をストップウォッチで計測したところ、約23秒と、僅かですが向上が見られます。
前にも書きましたが、SIDE OPS程度のボリュームのシナリオですと、そこまで差が出ているようには感じません。が、学習型ですので、今後の性能向上に期待です。
【2015/11/11:追記】
こちらも追記を。
あれから一ヶ月近く経ち、遅ればせながら、MSGV:TPPのストーリーは一応完結しまして、あとは最後の高難易度バージョンのボス戦を残すのみとなっています。
ゲームをやっていて感じたのは、体感的にちょっとづつですが、HDDの時より読み込みが早く終わっている気がします。本当に、ほんの数秒レベルの話だとは思うんですが、次のシーンへの移動…例えば、司令部からヘリで飛び立って、現地に到着した時にビッグボスが大写しになるんですが、それまでの時間や、ミッション現場から司令部に帰還するときの「間」が、わずかですが早くなっているように思います。
体感なのでいい加減な部分はあるとは思いますが、「費用対効果」という部分では十分かな?と考えています。
容量も倍になっていますので、筆者のゲーム購入頻度(数ヶ月に一本)ですと、これで十分だと思っています。
(とはいえ、ゲームコンテンツのボリュームは、年々大きくなっていますし、今回のMSGV:TPPで筆者の眠っていたゲーム好きの血が再燃してしまいましたので(^^;)うかうかしていると埋まってしまうかもしれませんね。βテストをプレイして、思わず「STAR WARS BATTLEFRONT」を予約してしまいましたし…)
速度と容量の両立という課題の一つの解。
ベンチマークではHDDの約3倍というおおきな数値の違いが出ましたが、実際に換装し、使ってみた感じでは、そこまで差があるようには思えませんでした。
が、これは、ゲーム側の実装の努力によるものが大きいのではないか、と考えています。
最近は大容量コンテンツが多いですから、当然その辺りの先読み処理の技術も磨かれているでしょうし、オンライン対戦でそういう部分が大きなアドバンテージになると不公平ですし…
それに加えて、今回のSSHDは「学習型」ということですので、継続して使用して行かないと、大きな差は感じられないのかな?という気もします。
あとくわえるなら、筆者がプレイしているゲームが、今のところ「MSGV:TPP」のみ、というのも原因かもしれません。レースゲームで面白そうなものがあればやってみたいとは思いますが…ああ、早くグランツーリスモ出てくれないかなぁ(遠い目)
さて、PS4のHDDの換装を考える場合、その動機は容量の増量と速度の向上が動機になるかと思います。速度面で見た場合は、SSDは視野に入るわけですが、1TBのSSDは依然として高価で、PS4の本体価格とそう変わらないくらいのお値段です。増量を諦めて500GBにしても、やっぱり半額とはいきません。
それを考えるとSSDの換装には二の足を踏んでしまいます。
が、SSHDであれば、普通のHDD(7,200rpm)にちょいとお金を上積みするだけで、SSDと同等の性能で、かつ500GBモデルであれば、1TBへの増量も行えるわけです。
これはPCでも同様で、特にノートPCで、7,200rpmを使いたいけど熱が心配であるとか、そういう方にはうってつけではないでしょうか。
SSDまでは必要ないけども、普通のHDDでは速度が…という場合、または、SSDにはしたいけれども、そこまでお金がないという場合など、SSHDが活躍できるシーンは意外と多くあると思います。そういうニーズにはしっかり答えてくれる製品ではないかと思います。
ナンチャンさん
2015/10/24
SSHDのベンチマークは、どのような環境でされましたか?
Raincatさん
2015/10/24
ベンチマークについては、いつも使っている組み立てデスクトップPCに、
SATA接続して取りました。
記事中にも書いていますが、同じケーブル、同じ電源、同じポートです。
OS :Windows 7 Pro. SP1 64bit
CPU:Core i5-3470
RAM:16GB
M/B:ASUS P8H77-M Pro
組み立てた当時、安定しなかったため、HDDはAHCI接続ではなく、IDE接続としています。
使用したCrystal Diskmarkは、5.0.2 x64です。