スピーカーとは音を出力する最終デバイスのひとつである。パーソナルな没入感と周囲からの隔絶を提供するイヤホン(ヘッドフォン)と、地球上に与えられた音媒介物質である空気を最大限に利用した音場を形成するスピーカーが通常入手できるこの手のデバイスである。
スピーカーは空気を振動させて音を発するデバイスではあるが、100円ショップで入手できるものから高級な車と同等な価格のものまで千差万別。もちろん音質も「音が鳴る」レベルから「聴かせる」ものまでありとあらゆるスピーカーが存在しているのも周知の事実なのです。
「今度スピーカーを買おうと思っているんだけどどれがいいと思う?」と他人に聞いたとしましょう。返ってくる答えを想像するのはかなり難しいと思います。
その人がオーディオマニアなら、音源からプレーヤー、アンプ、更には電源ケーブルや視聴環境までありとあらゆる知識を総動員して懇切丁寧に答えてくれた後に藤田恵美さんの音源を貸してくれることでしょう。
その人がPCで音楽を聴いている人ならPCに接続するニアフィールドスピーカーについて夜を徹して語ってくれるかもしれません。もちろん100円ショップで入手できるものを可能な限り入手し、聞き比べてお勧めを教えてくれる人もいることでしょう。
実はどの人も正解を教えてくれているんですよね。それくらい音というのは身近であり、また満足できるレベルやシチュエーションは無限にあるのですから。
それでも質問してしまいますよね、「どれがお勧めですか?」って。
では質問の仕方を変えてみましょう。「このスピーカーはどうですか?」、こんな風に聞いてみるのはどうでしょう。
スピーカーについて質問するときって、自分が気になっているスピーカーがあるのだけどそれについての情報が欲しい時とか、複数の気になる製品があって迷っている時などでしょう。ただ、この場合は特定のスピーカーについての質問になるので一般論を欲しているのではなく、実際にその製品を使っている人の感想・意見を求めるわけですから質問する相手は限られてしまいます。新製品が気になっている場合は更に条件が厳しくなりますね。
[第二章 AS-BT33はどうですか?]
KENWOODのワイヤレススピーカーAS-BT33は発売されたばかりのBluetooth対応ポータブルスピーカーです。これが気になる人は多いのではないでしょうか。でも近隣に質問できる人はまだ少ないかもしれません。何せ発売されたばかりですから。
ここにAS-BT33があります。かっこいいです。でもAS-BT33について質問されても私が満足の出来るお答えができるか分かりませんが私なりのインプレッションを書いていきます。
まず私についてですが、音楽を聴くのは好きですが音楽が手放せないというわけでもありません。週に何回か好きなジャンルの曲を流したり、車の中や就寝時にBGMとして聴くくらいです。ジャンルとしてはjazzや女性ボーカルを聴くことが多いのですが、たまにロック(60's~70's)なども聴いています。
普段使っているスピーカーはPCについているのがBose Companion2、Orasonic TW-S7、Onkyo GX-77M です。これらのスピーカーはモバイル用途には使えませんが、AS-BT33と比較するのはこのあたりのスピーカーだと思っています。
PCとiPhone4SをAS-BT33に組み合わせて使用してレポートしていきます。では早速AS-BT33に火を入れてみましょう。
[第三章 声が大きいよ!]
AS-BT33は上面にスイッチがまとまっています。なかなかデザイン的にはよいですね。スイッチのピクトはバックライトにより青と赤に光ります。
ただ、このスイッチ類はデザイン的にはかっこいいのですが操作しようとするとどのボタンが何処にあるのか手探りでは分かりにくいですね。暗闇で操作をする場合には迷うかもしれません。でもボタンの場所を覚えてしまえばボタンは4つでスイッチエリアは四角。四角の角を押下すればいいので慣れれば問題ありませんでした。
最初に電源SWを長押しすると電源が入ります。このときスピーカーからは「Power ON」という女声が聞こえます。この女声の大きさが電源をOFFにしたときに設定されていた音量で聞こえてくるのです。もちろん再度電源SWを長押しすると電源が切れ、そのときには「Power Off」という女声とともにバックライトも消えます。
音声で知らせてくれるのは便利だなと思ったのですが、すぐに困った事態に遭遇しました。前述の通りこの女声は電源を落とした時の音量で固定されるのです。就寝前に音量を大きめにして使用していました。夜も更け、AS-BT33をベッドサイドに持って行き就寝前に小音量でPodcastを聞こうとしたときです。電源ONと同時に大音量で「Power ON」と絶叫するではないですか。これには若干焦りました。それ以来電源を落とす前に音量を下げる癖が付きました。
取扱説明書には「音声ガイドは音量0になりません」と書いてあるだけです。どうやら音声ガイドの音量を本体の音量設定とは別に設定することは出来ないようです。これは使い勝手に影響するところですから是非改良を望みます。ボタンが4つしかないので複数押しシーケンス等の隠し操作でもよいので是非対応して欲しいと思います。
[第四章 肝心の音はどうですか?]
ひとことで言うと「いい音」です。
こんなに小さな筐体で正直言って音には期待していませんでした。筐体のサイズからして低音は期待できないしスピーカーの小ささからするとシャリシャリ系の音かもしれないという先入観を持っていました。
ところがどうでしょう。ズンズン響く低音は期待できないものの実に素直な音です。低音が無いのではなく、低音も明瞭に聞き取れるが過度には響かないと言ったらいいでしょうか。jazzのウッドベースも違和感なく耳に入ってきます。
高音はシャリシャリせず素直に高音域が出ている感じです。筐体のビビリも皆無です。私的に例えるなら「和風」の音でも言いましょうか。日本語のボーカルの息遣いが聞こえてきそうです。
難点があるとすればかなり音量を絞ったときに高音に比べて低音の落ち込みが大きい事でしょうか。これは予想通りなので別に違和感がありません。低音量にしたときに無理に低音側をブーストしてバランスが崩れるより素直でいいと思います。
逆に音量を上げたときはびっくりするくらい 大音量+いい音 で鳴ります。音量最大にしてもビビらず割れず、さすがKenwood。KenwoodといえばTRIOだと思うのは昭和世代の生き残りだからでしょうか。このAS-BT33はトリオの製品だといえば通じる人には通じそうですね。
更新: 2014/09/15
AS-BT77 、 AS-BT70 、 AS-BT33 の活用術
PREMIUM REVIEW
ノマド御用達
えーと、ケーブルは何処に置いたかな。あったあった、あれ?これはコネクタが違うよ。そうだ、こっちのケーブルだった。ありゃりゃちょっと短くて届かないよ。ところで何処に挿すんだったかな?
ケーブル文化は「メカに強い」と称される男子が「メカに弱い」と自称する女子へのアピールに絶好のスキルだったのは20世紀の話になってしまったわけです。更に21世紀に入ると、これからはノーマディックカルチャーの時代がやってくると喧伝していたわけですがそれも既に昔のこと。
すでに時は2014年。「ケーブルって何?」「何に使うの?」と問いかける人種が出てきてもおかしくないのかもしれないと思わせる時代の幕が切って落とされようとしているわけです。
どの時代においても技術が移り変わっていくときには試行錯誤の製品が巷に溢れるのですが、ワイヤレススピーカーというものも今まさにその戦国時代にあるのかもしれません。
AS-BT33はBluetoothによるワイヤレス再生をサポートしています。というよりワイヤレスがメインの形態でライン入力用のミニジャックは過去への互換性を残すための遺跡と化しているようです。ワイヤレスでの使用経験は一方通行でもう元には戻れません。それくらい快適です。
さて、このワイヤレス再生を活用できるシチュエーションをご紹介しましょう。それはアウトドアです。外で煩わしいケーブル配線から開放され、スイッチオンが即再生につながるのは快適そのものです。
このワイヤレス機能を活用する私なりの活用法をご紹介しましょう。活用法といっても特別なことではなく、AS-BT33をアウトドアで使うだけなんです。ケーブルを忘れて使用できないこともなく、iPhoneとAS-BT33さえあれば何処でも音楽を聴くことができます。
私の場合は星の写真を撮影するのが趣味なので晴れた夜には海辺や山の中に出かけています。さすがにひとりで撮影していると寂しいので車のオーディオを鳴らしていたりするのですが、車のオーディオを鳴らすにはエンジンをかけていないとバッテリーあがりの心配がありますのであまりエコではありませんし、車から離れるときにはこの手は使えません。
AS-BT33を入手してからはAS-BT33をひとつカメラバッグに放り込んでおけばいつでも音楽を聴くことができてとても便利です。最近は音楽プレーヤーもBluetooth搭載のものが安価で出てきていますのでそちらにすればいPhoneにモバイルバッテリーを接続する必要もなく更に便利になりそうなので検討中です。
星空の撮影中に音楽があることの最大のメリットは、実は、熊対策なのです。近年熊が人里近くに出没する事例が増えていますが、今年は特に多かったような気がします。
熊鈴は持ち歩いているのですが、鈴は動いているときにしか鳴りません。星の写真は1枚撮影するのに数分から数十分かかり、複数枚撮影するのが常ですのでその場で動かずに1時間2時間いることは珍しくありません。その間ずっと熊鈴を鳴らし続けているのは厳しいものがあります。
AS-BT33があれば好きな音楽を大音量で聴きながら熊対策も出来る。実に快適な環境が手に入りました。何より精神的に安心できることでゆったりと撮影出来ることが一番の収穫かもしれません。
もちろん撮影を終えて帰宅準備をするときにはAS-BT33の音量を下げておくことを忘れないようにしています。
更新: 2014/09/15
AS-BT77 、 AS-BT70 、 AS-BT33 を一言で表すキャッチコピー
PREMIUM REVIEW
どこでも いい音 大音量
ただ、スタミナがありすぎるためつい充電を忘れてしまうことが唯一の難点でしょうか。毎日充電しなければならない機器だとそのようなことは無いのですが、電池がもちすぎる故の悩みですね。
秋を迎え、熊さんたちが冬眠するまではAS-BT33に守ってもらいながら星空の撮影を続けます。
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