レビューメディア「ジグソー」

超低振動・静音・超高品質ファン

山洋ファンファンとして、今回このファンを試す機会を頂けたのは非常に嬉しいです。
Zigsow様、オウルテック様、プレミアムレビュー関係者様のご厚意、そして数々の素晴らしいファンを生み出す山洋電気様、この場を借りて御礼申し上げます。

ケース用DC軸流ファン
山洋電気製Silentシリーズ、低振動タイプ
今回は120mm25mm厚タイプである
『SF12-S4』のレビューとなります。
検証にはSeasonic製の電源を用いています。


■ スペック ■

119x119x25mm
リブ無し
回転 1500rpm
音圧 17dB
風量 48.0CFM
静圧 1.52mmH2O
電圧 12V
電流 0.08A
ケーブル:800mm
パルスセンサー付き3pin
付属品:3→4pin変換ケーブル


■ キーポイント ■

【信頼性】
MTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)3,000,000h
MTBFは耐用寿命をあらわす指標にはなりませんが、
品質・信頼性の指標となっています。
MTBF3,000,000hはざっと計算すると、
『システムで10台同時稼働で1年間回した場合1年で0.029台故障し、
100台同時だと0.292台、1000台同時だと2.916台故障する。』
と言う事になります。

【長寿命】
標準時期待寿命(60℃環境下)40,000h(4.56年)
標準時期待寿命(40℃環境下)66,000h(7.53年)
例に上げた年数は24時間稼働の場合の数値ですから、
一日の半分しか稼働させない場合は倍になります。
安物のファンは数ヶ月で軸音が激しくなったりしますし、
かなりの長寿命です。

【2ボールベアリング】
シャフトとファンが面で接するスリーブタイプに対して、ベアリングタイプは点での接触。
そのため摩擦が少なく、精度が保たれ、
さらに潤滑油が漏れにくいなど、信頼性も高いです。
が、一方衝撃には弱く、軸音などもスリーブタイプに対して劣ります。

【低振動・低ノイズ】
『5dBA~10dBA』の静音化に成功し、
最大風量は約20%向上、消費電力も低減との事です。

【保護機能】
ファンブレードに何かの障害物が挟まり回転が止まってしまった時に過電流により劣化や故障が起こる事を防ぐ機能が付いています。
配線が細かく匍っているシステムだとファンガードの隙間を抜けてブレードに挟まってしまう可能性もありますし、安心の出来る機能ですね。


■ 公式PR資料 ■

かなり分かりやすい資料ですのでお時間のある時に読まれるとファンについての理解が深まるかと思います。
(リンク先は強制的にウィンドウのサイズが変化します。)
http://www.owltech.co.jp/products/case_fan/sanyo/all_abou...
http://www.owltech.co.jp/products/case_fan/sanyo/SANYOFAN...
http://www.youtube.com/watch?v=r98B6uqCmN8


■ 導入:ファンについて ■

ファンのスペックで気になるのは殆どの場合、
[風量と静圧][回転数と騒音]
だと思います。
もちろん特殊なファンでは
[光量・色・直進性]
などあるかとは思いますが、今回はおいておきましょう。
(個人的にはこれに[質・振動]もつきますが、表記スペックには現れない部分ですので、それがファンを買う楽しみにもなります。)

まず、[風量と静圧]
風量とは1分間にファンから送られる風の体積、
(一般的に使われるCFMとはcubic feet per minuteの略で、立方フィート毎分という意味です。)
静圧とはファンから送られる風の圧力で、
(○○mmH2Oとは水柱ミリメートルで、簡単に言えば○○mmの液柱がその底面に及ぼす圧力という意味です。たぶん。)

風量はファンの面積に、
静圧は厚さにより変化します。

つまり同一の回転数のファンにおいて、
80mmに対しては120mmファンの風量が、
25mm厚に対しては38mm厚ファンの静圧が
それぞれ優るという事になります。

そして、[回転数と騒音]
回転数が上がると風量・静圧共にあがりますが、
騒音は上がってしまいます。

現在コンシューマーレベルで最も使われているのが、
120mm25mm厚タイプの物で、
SF12-S4も例に漏れずそのタイプです。

殆どのパーツがその寸法のファンが装着される事を前提としているため、
面積も厚さも大きくする事が叶わない場合が多くあります。
という訳で冷却性能を向上させる最も一般的な手段が回転数の増加と考えて良いでしょう。

個人的な調査では平均的なファンで、
800~1200rpmがフル回転常用で気にならない『静音』、
1500rpmクラスで負荷時なら仕方がないと思えるレベル、
2500rpmクラスはうるさくてたまらないレベルでしょう。

冷却のために回転数を上げたいが、
騒音は気になる。
そう言った問題を解決するためにも、
こういった高回転数の静音モデルには期待が高まります。
さて、どのような性質を見せてくれるのでしょうか。




■ Openbox ■


例に漏れず8点支持採用のブリスタパッケージ。
ブリスタパッケージは他の120mm25mmファンと共通です。
開封しながらご対面までの楽しみは皆無。
(とはいえ山洋ファンファンとしてはブリスタパッケージを見た瞬間からテンションが上がりっぱなしな訳ですが^q^)

開封、
付属品はタップネジと3→4pin変換ケーブルだけのシンプルな構成です。
本体を持ち上げるとほのかな違和感。
個人的に山洋を代表するDCファンはF12-PWMだったので、同じぐらい重いかと考えていたら非常に軽くて驚きました。相対的にかなり軽く感じてしまっていた様です。一般的なファンと重量は変わりません。
(個人的には手にのし掛かる様なあの重量感が好きだったので少しショックでした。)

回転は至極、この上なく、段違いに、際立って滑らかです。
そっと指先が触れるだけで動き、
ふっと息を吹きかけると回りだし、
すっと回して見るといつまでも止まりません。
NIDECのGentle Tyhoonもかなりのものでしたが、
それを超えて滑らかですね。
これも低騒音・低振動の鍵なのでしょうか。
画像の茶色いのは職人さんがブレード重心の調整のためにつけている小さな錘らしいですよ!

軸は43mmとかなり小さいですね。
いや、これも一般的なファンと同じぐらいのサイズですが。
軸が小さくなった分面積が稼げ、
風量は上がると考えて良いでしょう。
(いつの間にか軸がある程度大きくないと満足できなくなっていた自分が少しショックでした。)

80cmのコードです。
サーバー等の巨大マザボ・ケース目的で長いらしく、長さに関しては私も有効的に利用しているので全く文句はないのですが、その80cmものコードがスリーブもツイストもされていないのはケーブルマネージメントの面でもかなり面倒くさいです。これは本当に要改善の部分です。フォントを弄れるシステムでしたら今の部分はすべて太字の72ポイント赤字下線付きで書いていました。

リブ無し・有りの長短はありますが、
個人的にはリブ無しが俄然好きです。
取り回しがいいですからね。
強度も問題ありません。

全体
ブレードの付け根がなかなか面白い形をしています。
これも低振動・低騒音の鍵でしょうか。




■ 振動検証 ■

2ボールベアリングファンは上記の通り衝撃に弱く、
なるべく安定させて利用したい所です。
他のファンの振動で少しずつ痛んでしまう事もあり得ます。

HDD周辺で使うファンの振動にも気を遣っておきたいです。

また、騒音を考えたとき、
原因は回転音や風切り音だけではありません、
かなりの割合で振動が絡んできます。
防振グッズの多さを考えても『振動を殺す』事の重要性はおわかり頂けるでしょう。

今回のモデルは、低振動を謳っていますが、
さて、どれほどに低振動なのでしょうか。

行き成りネタバレすると、超低振動です。
手で持って回しても全く振動を感じません。
集中しても全く。
他のファンは低回転数の物でも手に伝わる振動があるのですが、このファンを手で持って回しても全く振動を感じず、ファンのジャイロが無ければ回転してるかどうかも感覚だけでは分からないでしょう…。

というわけで、
振動を視覚化する簡単な実験を行いました。
メーター尺を50cm宙に浮かせ、その先端にファンを取り付け回転させます。

検証した順番は
SF12-S4
UCMA12 MAGMA
SST-AP121
Gentle Tyhoon 1850rpm (1500rpm)
F12-PWM (1500rpm)
すべて1500rpmに調整済み。
左上の白い点をトラッキングし、
Y軸方向の変位を10倍に増幅して左端に表示させています。
単調な動画ですが、どうぞ。


色々な要素に影響されてしまっている少しいい加減な実験ですが、
SF12-S4は回転開始時、回転中、回転停止時のどれにおいても他のファンより振動が少ない事が分かりました。他のファンが始動時・停止時共にかなりの振動をケースに伝えている中、このファンは安定して低振動です。
手持ちで振動の大きさを比較しても
SST-AP121>F12-PWM>UCMA12>Gentle Tyhoon>SF12-S4
と、私の経験した中では最も低振動なファンでした。
他の機械に与える影響も少なく、
まさに『信頼性』の山洋ファンです。




■ 風量・騒音検証 ■

SF12-S4の風量は48.0CFMです。
ざっと計算すると
1359208.636416CCMMM
わかりやすく言うと、
1分間にHAF932の体積の17.7倍の空気を移動させる事が出来ます。
また、6畳間を考えると、体積はだいたい24立方メートルですから、
17.7分で一部屋分の空気を移動出来ます。
ちゃんと考えた事はありませんでしたが、具体的に考えるとかなり凄いですね…w

と、言うわけで20cm先のティッシュに向けて風を送りました。


20cm先のティッシュなので
指向性、静圧等の要素も絡んできてしまいましたが、
手センサー(主観)も混ぜた風量の評価は
F12-PWM≧UCMA12>SF12-S4≧Gentle Tyhoon>SST-AP121
といった感じです。
騒音については
UCMA12>F12-PWM>Gentle Tyhoon>SF12-S4≧SST-AP121
のように感じました。
とはいえ音色には差があるので、
かなり主観的な表現となってしまいますが、
SF12-S4は
・極端な静音ではないが、風量に対しての音はかなり小さい。
・ケースにつけると全く目立たない。
・振動が無いのでケースとの共振音は無い。
と、なかなかの好印象です。
少し『17dB』という数字に期待しすぎていたので第一印象は『意外と音が大きいかな?』という物でしたが、風量と同時に判断した場合にはかなりの静音モデルだと感じました。






私が山洋電気製のファンに付いて、
たった一つ、たったでも一つ不満があるとすれば、
それはケーブルが抱える問題に他なりません。

80cmものサーバー目的のコード、
長さ自体は私も有効活用出来ているので一切の不満はありません。

が、

80cmの間を3本の細い線が
お互いに何の拘束もなく、
そこにある。
それだけで非常に取り回しが悪くなるのです。

サーバー用に購入するのであれば、
配線の問題は埋もれると思いますが
(他のケーブルに文字通り)
個人で使用するとなるとかなりの問題です。

私は裏配線をきっちりして、ケースをスッキリさせる派なので、
ケーブルマネージメントにはかなり神経を使います。
特にファン好きですから、現在一つのPCで11個ファンが回っています。
多い日は12個です!
それらのケーブル配線を隠すのはかなり面倒で、
裏でまとめるときに一本一本絡まないようにファン毎にまとめながら… という非常に面倒くさい作業をしなくてはいけませんでした。それもこれも、その半数を山洋ファンが占めており、まとまっていない何本もの80cmのコードを他のコードと絡まらないようまとめながら裏配線するのは正直苦痛でした。
もちろん自分でスリーブ化をすることも視野には入れています。
が、それにしても…というのが正直な感想です。

ケーブルの長さは問題ではないが、
ケーブルは商品レベルでスリーブ化、ないしツイスト、ないし接着されて有って欲しいというのが私のささやかな願望です。





■ 結論 ■

さて、数日間このファンを使用し、得た感想は何よりもその低振動・静音性です。
私は高回転ファンを使用している事もあり、
騒音と共に暮らしておりますがこのファンはほぼ『無音』です。
昨日の夜中(07/21)から今日(07/23・0時01分)と机上で24時間運用していましたが、
ファンが回っているのを視覚的に確認した時以外は完全にその存在を忘れていました。

TDP95WレベルのCPU(Q6600定格)と高性能の空冷クーラーであれば、
負荷時でもこのファン一つで十分に冷やせています。

とはいえ個人的にはケースファン運用がベストだと思います。
静音を守りながら高エアフローを確保するには最適でしょう。
現在私はGentle Tyhoon 1850rpm とF12-PWMとUCMA12をケースに使っていますが、
おかわりしてこのファンでUCMA12を置き換え運用しようかと考えています。
ケースファンに高回転ファンを用いながら、ファンコンを介す必要が無いのは良いですね。
そして寿命を考えるとケース二世代にまたがって使用出来ると考えると、
コストパフォーマンスは最高です。
安い物は数ヶ月で壊れる事もありますからね、2年保証もあるので安心です。
そういう事を踏まえて値段を考えると、かなり安い物だと思います。
特に安いファンを大量買いして段ボールに詰める仕事をしている人には打って付けでしょう。

さて、話は変わりますが(?)
私の様な静音性は忘却の彼方にそっと投げ捨て、
冷却性を崇拝する人間であれば同価格で買える山洋のF12-PWMが絶対にオススメです。
F12-PWM、『至高』と崇め奉り候、みたいな。

つまり!
ケースはSF12-S4で固め、
CPUはF12-PWMとF12-N/38のサンド
至高の冷却システムのできあがりです。

■Pros 
超低振動
静音
多風量
低定格電流
→低消費電力
長寿命
高信頼性
→長期的に見て高コスパ

■Cons
短期的に見ると高額
ケーブルは自分でツイスト必須

■超個人的な我儘要望
商品レベルでツイスト・スリーブされていて欲しい
38mm厚低振動モデル商品が欲しい。
コンシューマーレベルでも140mm・25mm厚モデルがあれば…。



星-1に付いてはケーブルの件です。
もちろん足りない部分は自分でどうにかするのが自作erの基本理念ではありますが、こういった本当に良い商品を私などがケーブルを弄って品質を落としてしまう事にかなり抵抗があるのです。今回自分でツイストしてみましたが、本体の質に対してケーブルツイストの質の悪さが…。と言うわけで私は工場・商品レベルでケーブルのまとめをしていただきたいと考えているのです。されていないことに理由がある事は理解できるのですが…。

1ユーザーの戯れ言ですが、一応参考までに。

それではこれでSF12-S4のレビューを終了させていただきます。
zigsow様、オウルテック様、プレミアムレビュー関係者様、
山洋ファンレビューを私に任せていただき、本当にありがとうございます。

コメント (14)

  • 4453さん

    2010/07/18

    たった数日間でここまで書けてしまうとはw

    まだ途中とのことですが、残りのレビューも楽しみにしています^-^

    それにしても、「軽量化」「FANの動きがなめらか」「軸の小型化」
    という事を考えると、今までの山洋FANとはまるっきり別物っぽい
    感じですね。

    なんか、試しに欲しくなって来ましたw
  • flammulinaさん

    2010/07/18

    >>4453さん

    少しずつ忙しくなっていくスケジュールなので早い内にと思いまして、勢いで書きましたw

    後は単純な温度比較や使用感を書いて総合的に感じた事を書こうと思っているのでもう少し使用してから更新しようと思っています。

    はい、性質は全く違いますね。とはいえ山洋の『誠実な作り』は変わらず、ファンの質はかなりの物です。手にした時の満足感はF12-PMW等の高冷却性能ファンには劣ってしまいますが、適材適所・信頼性・低振動・低騒音を考えてケースファンとして使うには素晴らしいファンです。
    音を気にする方はケースファンに~1200rpmのファンを使用している方が多いと思いますが、静音を保ちながらエアフローを改善するにはこのファンが最適かと思います。


    軸音の事を書きましたが、
    残念ながら今お金に余裕が無いのでおかわりして軸音の異常(?)を確かめる事は出来ません…。少し他の方のレビューを待って軸音に関して対応しようと思っています。
  • ぽんさん

    2010/07/20

    なるほど、ティッシュを使われたんですね♪

    軸音がでたんですか、、、それは確かに気になりますよね。。。
    他の方のレビューで、なにかわかればいいですね。
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