ZENアーキテクチャを採用することで、驚愕のコストパフォーマンスだけではなく、今までAMDが苦手としていたハイエンドCPUに匹敵する性能をも叩き出すRyzen CPU。
先日レビューさせていただいた8コア16スレッドというRyzen7でも、intelのCoreシリーズと比べてコア数の多さと手頃な価格帯、そしてマルチコアからもたらされる強力なコンピューティングパワーに圧倒されていたのだが、それを遙かに上回るモンスターなCPUが、今回レビューするRyzen Threadripper 1950Xである。
狂気ともいえる16コア/32スレッドの圧倒的なCPUパワー
Threadに狂人、あるいはぶっちぎり、最高といった意味の英語であるRipperが付くだけあって、なんとコア数はRyzen7の倍の16、スレッド数は32という、まさに“Thread最高!”という名にふさわしいCPUに仕上がっている。
そんなエンスージアスト向けなRyzen Threadripperだが、最上級モデルである1950Xでも執筆時点で12万円前後で購入できてしまう、割と現実的な価格帯のCPUでもある。
もちろん、メインストリームである3~4万円前後のCPUから比べると圧倒的に割高だが、今までこういった超マルチコアのCPUはintelのXeonシリーズのみであり、価格も20万はざら、という世界であったので、12万円という価格はCPUのスペックから考えたらお買い得であろう。
Ryzen Threadripperがリリースされることを受け、intelが急遽Core i9シリーズを対抗としてハイエンドのラインナップに加えるなど、一昔前のAMDの低迷期とintelのパワーを知っている人間としては考えられない衝撃であった。
それほどに、Ryzen Threadripperはintelを追い詰める破壊力を秘めたCPUなのである。
11~12万円前後のCPU同士の頂上対決
AMDのRyzenラインナップの頂上に君臨するRyzen Threadripper 1950Xだが、迎え撃つintelのCPUはCore i9-7900Xだ。
こちらは市販価格で11万円~といったところで、価格帯としては約12万円のRyzen Threadripper 1950Xとガチンコでぶつかるモデルとなる。
コア数こそ10コア20スレッドと、Ryzen Threadripperの16コア32スレッドと比較すると見劣りはするが、Core i7などよりも多いコアと、intelが得意とするスレッドあたりの処理速度の良さも生かした、こちらもモンスタークラスといってよいCPUとなる。
今回は、ベンチマークの比較だけではなく、消費電力、冷却のしやすさ、自作PCとしての組みやすさといった観点も含めて、それそれのCPUの特徴について検証してみたいと思う。
レビュー機材の構成
レビューでの比較性を確保するため、マザーボードとCPU以外は共有の機材にした。
当初、ビデオカードはAMDのRadeon R9 290Xの予定であったが、途中でビデオ信号が途切れるなど不具合が生じてしまったため、急遽nVidiaのGTX970となっている。
CPUクーラーは、120mmのラジエーターを採用した水冷クーラー、H80i v2をチョイスした。
本来このクラスのハイエンドCPUには、240mmラジエーターのクーラーが推奨なのだが、最終的に組み込むケースがThermaltakeのLevel10のため、240mmのラジエーターは設置できないのだ。
Socket TR4対応の120mmラジエーター搭載CPUクーラーではH80i v2が唯一の選択肢となる。
AMD Ryzen Threadripper 1950X
X399マザーとして最も売れた、ASRockのX399 Taichi。
ハイエンドシリーズながら4万円半ばという比較的安価な価格設定で、コストパフォーマンスに優れるマザーボードだ。
PCI-E x16も4スロットあり、WiFiも搭載するなどハイエンドとしてのツボをしっかり押さえた作りになっている。
X299を搭載したマザーボードの中では廉価版に属する、X299 TOMAHAWK/AC。
廉価版といってもPCI-EスロットにはSTEEL ARMORを装備し耐久性能を高めるとともに、M.2 SSDスロットには大型のヒートシンクを備えるなど、ゲーミング向けの機能が充実した製品だ。
それでいて、3万円前後から購入できるコストパフォーマンスの良さも魅力的。
共通パーツ
G.Skillのメモリの中でも選別チップを搭載し、OC向けに特化したTRIDENT ZシリーズのDDR4-3200メモリ。
クロックで言えばもっと上のモデルもあるが、このF4-3200C14D-16GTZの最大の特徴はなんといっても14-14-14-34というレイテンシの低さだ。
通常、高速なメモリでもCL16などが多い中、CL14という超アグレッシブな設定に詰められているので、かなりの高速動作が可能となっている。
しかも、DRAMチップが両面に実装されているメモリだが、1Gb×4のDRAMチップを16枚使っているのでシングルランクなのだ。特にRyzenはランク数によってメモリの上限クロックに制約があるため、シングルランクのメモリというメリットは極めて大きい。
今回はCPUの能力を最大限引き出すべく、4枚揃えてのクアッドチャネルで動作を試してみることとした。
X399とX299で同じCPUクーラーを使うため、両方に対応したクーラーでかつThermaltake Level10に導入可能な120mmのラジエーター搭載のCPUクーラー…ということで、唯一の選択肢がこのCorsair H80i v2。
Ryzen ThreadripperのSocket TR4に対応したクーラー自体が少ないのだが、そもそもRyzen Threadripperはその消費電力の多さから240mmラジエータが推奨されているため、120mmのものはこのモデル以外には皆無である。
ラジエータの厚みもしっかりとしており、品質の高さはさすがCorsairのクーラー。120mmではあるが冷えそうなラジエーターでどこまで頑張れるか期待大だ。
このほか、12cmファン×3、DVDマルチドライブ、ファンコントローラーという構成で、ベンチマークを行っていくこととする。
Ryzen Threadripperの性能を左右するメモリアクセスモード
Ryzen Threadripperを使う上できちんと理解しておきたいのが、UMAとNUMAと呼ばれる2種類のメモリアクセスモードだ。
Ryzen Threadripperは大雑把にいうと、8コア/16スレッドのRyzen7のコアを2つ、MCM(Multi Chip Module)という形でパッケージングしたCPUだ。
コア同士はInfinity Fabricという方法でインターコネクトされており、合計で16コア/32スレッドを達成している。
Ryzen7はDDR4のデュアルチャネル対応のメモリコントローラーを内蔵しているが、このコアを2つ使っているRyzen Threadripper 1950Xは、メモリコントローラーも倍となるので、クアッドチャネルに対応している。
それぞれのコアに接続されたメモリコントローラーだが、NUMAとUMAという、2種類のメモリアクセスモードがあり、それぞれユーザーが切り替えることができる独特の仕様となっている。
このメモリアクセスモードの違いを理解することが、Ryzen Threadripperの性能を引き出す上で重要なポイントだ。
クアッドチャネルでメモリのバンド幅を生かすUMA
UMA (Uniform Memory Access)またはDistributed Modeと呼ばれる方式は、それぞれのメモリチャネルに分散してアクセスするモードだ。
このため、4chの帯域を使うことが可能であり、クアッドチャネルのバンド幅を生かすことができるモードとも言える。
ただし、処理を行っているコアに接続されたメモリコントローラーには低レイテンシでアクセス可能だが、他方のコアに接続されたメモリコントローラーにはインターコネクトを介してアクセスする必要があるため、平均的なレイテンシが増えてしまうデメリットがある。
メモリに低レイテンシでアクセスできるNUMA
NUMA (Non-uniform Memory Access)またはLocal Modeと呼ばれる方式は、それぞれのコアに接続されたメモリコントローラーを介してメモリにアクセスするモードだ。
上の図では、黄色い枠のコアでメモリアクセスが発生した想定であるが、コアに直結されたメモリコントローラーを介してメモリへアクセスをする。
このため、低レイテンシでメモリにアクセスできる反面、デュアルチャネルでのアクセスとなるため帯域は狭くなってしまう。
メモリアクセスモードの切り替え方法
メモリアクセスモードの切り替えは、BIOSまたはRyzen Threadripper用のOCツールであるAMD Ryzen Masterで行うことが可能だ。
両方とも再起動を必要とするが、BIOSはわかりづらいところに設定項目があるため、AMD Ryzen Masterを使うことをお勧めする。
AMD Ryzen Masterを起動した画面。なぜかフォントが8ビットゲーム機のようなガビガビになってしまっているが、とりあえず使えるので問題なし。
下の方の右側に「メモリアクセスモード」とあるのがUMA/NUMAの切り替えスイッチで、分散がUMA、ローカルがNUMAとなる。
一方、BIOSでメモリアクセスモードを変更する場合は、Advanced→AMD CBS→DF Common Optionsとメニューを開き、Memory Interleavingの値を変更する必要がある。
DieがDistributedでUMA、ChannelがLocalでNUMAとなる。
しかし、NUMAとChannelとLocalと、呼び名がたくさんあるのは混乱の元となる気がする…
ということで、AMD Ryzen Masterから変更した方が簡単なのでお勧めだ。
ベンチマークの計測項目とオーバークロックについて
ベンチマークを使って、Ryzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xの実力を探っていこう。
単にCPUの差を見るだけではつまらないので、以下の条件のスコアを測定し、OCメモリの効果とオーバークロックの効果についても併せて確認してみることとした。
- 定格クロック、DDR4-3200 OCメモリ
- 定格クロック、DDR4-2400メモリ(CL17を想定)
- オーバークロック、DDR4-3200 OCメモリ
また、Ryzen Threadripperについては、UMAモードおよびNUMAモードの2種類について計測を行い、アプリごとの優位性についても確認してみよう。
オーバークロックについて
常用可能なライトなOCという条件で、以下の設定でOCを行い、ベンチマークスコアを計測した。
Ryzen Threadripper 1950X
BIOSでクロックを設定したほか、コア電圧を1.2Vに昇圧、Load Line CalibrationをLevel1にして高負荷時の電圧を落ちにくくしている。
4GHzと4.1GHzの間に壁があるように感じたため、1.2Vの電圧で安定する4.0GHzにOCを行った。
Core i9-7900X
電圧はそのままで安定動作した4.4GHzでのベンチマークを測定した。
BIOSでクロックを設定したほか、Load Line CalibrationはLevel2にして高負荷時の電圧降下を防止している。
LoadLine CalibrationをLevel1ではなくLevel2にしたのは、Level1設定だと高負荷時に電圧を盛る設定のようで、Level2が電圧を保つ設定となっているためとなる。
電圧はデフォルトの値で安定動作したため、昇圧は行っていない。
1950X vs 7900X:CPUパワー
CPU-Z Benchmark シングルスレッド
CPU-Zのベンチマークを使ってCPU1スレッドあたりの処理速度を測定した結果は、Core i9-7900Xが頭一つリードしており、Core i9-7900Xはスレッドあたりの処理能力が高いという、一般的に言われている意見を裏付ける結果となった。
また、Core i9-7900XではOCメモリによる処理速度の向上が思ったよりも影響が大きく、7%ほどの差が付いている。
Ryzen Threadripper 1950XではOCメモリによる恩恵はCore i9-7900Xほどではないという結果となり、対照的である。
CPU-Z Benchmark マルチスレッド
こちらはマルチスレッドでのベンチマーク結果だ。
コア数の違いがスコアに直結しており、Ryzen Threadripper 1950Xが圧倒的なスコアを叩き出している。
細かく見ていくと、Core i9-7900XのDDR4-2400時のスコアがDDR4-3200の時よりも速いこともあって異常のように見えるが、実際に出た数値なので謎だ。
Ryzen Threadripper 1950Xは4GHzへのOCにより7%ほど高速化する効果が現れている。
Sandra CPU
CPU-ZではCore i9-7900XとRyzen Threadripper 1950Xで予想外の大きな差が生じたので、CPUの処理速度を厳密に比較すべくSandraのCPUで計測してみたのが上記の結果だ。
Ryzen Threadripper 1950Xでは4GHzにOCしたUMAモードで500GOPSを超える値を叩き出しており、まさにぶっちぎりだ。
Core i9-7900XとRyzen Threadripper 1950XともにOCしたことにより順当にスコアも伸びている結果となった。
ただし、Core i9-7900Xも健闘しており、4.4GHzのOCでは定格動作のRyzen Threadripper 1950Xに対し約84%のスコアまで上げてきた。
※DDR4-2400でのスコアは差がなかったため割愛している
1950X vs 7900X:メモリ帯域
Sandra Memory
メモリコントローラーの能力を確認するため、SandraのMemory Bandwidthで測定した結果が上記だ。
OCによる差はなかったため、DDR4-3200および2400によるスコアを集計している。
Core i9-7900XでもDDR4-3200では62.74GB/sと圧倒的な速度だが、驚くべきはRyzen Threadripper 1950XとDDR4-3200を組み合わせNUMAで利用したときで、72.42GB/s(!)もの速度を叩き出した。
帯域が生きる(と説明されている)UMAでは結果が振るわず、レイテンシ重視で帯域は狭くなるNUMAでスコアが伸びるのはどう説明すれば良いのか不明だが、それにしても圧倒的なスコアだ。
…しかし、Core i9-7900XとRyzen Threadripper 1950Xでこれほどの差が生じるのもちょっと微妙な感じがしなくもない。
メモリの設定はXMSでAutoにしているのだが、マザーボードメーカーも異なるため、なにかしら条件が異なる可能性もありそうだ。
1950X vs 7900X:3Dレンダリング
CINEBENCH R15
レンダリング速度を計測する定番ベンチマーク、CINEBENCH。CPUによるレンダリング速度を比較したのが上記の結果だ。
16コア32スレッドと圧倒的なコア数を誇るRyzen Threadripper 1950Xが圧勝している。
傾向としては、SandraのCPU演算能力と似たような傾向の結果となった。
とくに4GHzにOCしたRyzen Threadripperの性能は圧倒的で、Core i9-7900Xの定格クロックの1.5倍のスコアである3400を超えるスコアを叩き出している。
Ryzen Threadripper 1950XのUMAとNUMAの差はほぼない結果となった。
おそらくメモリアクセスよりもCPUの処理速度にウェイトを置いたベンチマークなので、メモリアクセスの違いはあまり差とならなかった可能性が高いと思われる。
OCによるスコアアップはRyzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xともに9~10%と大差はない結果となった。
1950X vs 7900X:動画エンコード
HWBOT x265 Benchmark 1080p
HWBOT x265 benchmarkは動画をx265形式でエンコードするベンチマークだ。
HD画質である1080pでのエンコードは、やはりCore i9-7900Xが強く、定格で約67fps、4.4GHzのOCでは78fpsというスコアを叩き出している。
HD素材を60fpsを超える速度でエンコードできる時代になったとは、恐るべしである…
Ryzen Threadripper 1950XはメモリをUMAモードにした時の処理速度が優位で、AMDが推奨するようにマルチメディア系はUMAが相性が良いようだ。
UMAモードにすることでCore i9-7900Xとほぼ同等のスコアを叩き出し、OC状態でも71fpsと十分高速と言えるスコアとなった。
性能としては、定格で使うならCore i9-7900Xと同格、OCをするとCore i9-7900Xの方が一歩リード、といったところか。
HWBOT x265 Benchmark 4K
こちらは同じHWBOTのベンチマークで、4k素材のエンコードを行ったスコア。
Ryzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xはほぼ互角の戦いを演じており、1080pとは事なり差はほぼ認められない結果となった。
エンコードというとintelのCPUが強いイメージがあったが、1スレッドあたりの処理ではintelに劣るものの、16コア/32スレッドという物量で押しまくるAMDのRyzen Threadripperの強さと、メーカーによるアプローチの違いが明確に現れている。
1950X vs 7900X:3Dゲーム
3Dmark
まずは定番の3Dmarkから。
3DmarkはRyzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xともに似たようなスコアとなっているが、Ryzen Threadripper 1950XはメモリモードがNUMAだと遅くなる傾向が現れている。
NUMAのほうがレイテンシの問題で有利そうだと思ったが、3Dmarkは複合テストなので、メモリの帯域幅に左右される傾向があるのかもしれない。
OCによるスコアアップはほぼ効果が認められないレベルで、OCメモリについても有意義な差を見いだせない結果となった。
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク
負荷をあげるため最高品質にプリセットを変更した上で、グラフィック設定3の「キャラクターの影のLODを有効にする」にチェックを入れ、解像度を3440×1440の全画面に設定してベンチマークを行った。
FF14はRyzen Threadripper 1950Xの勝利となった。
特に4GHzにOCしたRyzen Threadripper 1950XのUMAモードでのスコアは5170と頭一つ抜きん出ている。
FF14はメモリレイテンシの差が効くという報告が多いが、OCメモリとの差はそれほど有意なものではないようだ。
ファイナルファンタジーXV ベンチマーク
先日公開された、PC向けのFF15のベンチマーク。
これもFF14と同様の傾向で、Ryzen Threadripper 1950Xの4GHz OCが一番高速という結果であった。
Core i9-7900XがOCの方が遅いという結果になっているが、Turbo Boostでは4.5GHzまで上昇するのに対し、OCではマニュアル指定で4.4GHzにしているので、最大クロックの差が起因している可能性がある。
SUPERPOSITION ベンチマーク - Medium
Unigineエンジンを用いたベンチマークテスト。
MediumではRyzen Threadripper 1950XのUMAモードが最速で、その後をRyzen Threadripper 1950XのNUMAとCore i9-7900Xが追いかける展開となっている。
といっても差はそれほど大きなものでは無く、互角の展開といってもよいレベルだ。
3DゲームでもRyzen Threadripper 1950Xの健闘が光る結果となった。
SUPERPOSITION ベンチマーク - Extreme
Extreme設定ではほぼ同一の結果となり、CPUよりもビデオカード側がボトルネックになってしまっていると思われる結果となった。
ここでもRyzen Threadripper 1950XはNUMAよりもUMAのほうがスコアがよい結果となっている。
1950X vs 7900X:アプリケーション総合評価
PCmark 総合スコア
PCで利用される様々なアプリケーションのトータルパフォーマンスを計測するPCmarkのスコア。
Core i9-7900Xが圧倒的で、Ryzen Threadripper 1950Xは2割ほど低いスコアとなってしまっている。
エンコードやOfficeアプリケーション、ドロー系や3Dレンダリングなどの複合テストということもあり、メモリのUMA/NUMAによる差異はほとんど認められない結果となっている。
PCmark スコア詳細
PCmarkにおけるスコアを詳細に見ていこう。
PCmarkは次の各項目でベンチマークを行い、それぞれEssentials、Productivity、Digital Content Creationとしてスコアリングされる。
- App Start-up:アプリケーションの起動に要する時間
- Web Browsing:Webブラウジングの性能
- Video Conferencing:1対1または多数対多数のビデオ会議をシミュレート
- Writing:ワープロソフトの処理性能をシミュレート
- Spreadsheets:表計算ソフトの処理性能をシミュレート
- Photo Editing:写真に対するフィルタリング処理
- Video Editing:動画加工処理の性能
- Rendering and Visualization:レイトレーシングによる3Dグラフィクス制作
このうち、EssentialsにはApp Start-up、Web Browsing、Video Conferencingの項目が、ProductivityにはWritingとSpreadsheetsが、Digital Content CreationにはPhoto Editing、Video editingおよびRendering and Visualizationがそれぞれスコアとして集計されている。
Core i9-7900Xが強かったのは、上記のうちのEssentialsとProductivityであり、Digital Content CreationはRyzen Threadripper 1950Xとほぼ同スコアである。
上記のことから、ざっくり言うとビデオ会議やWebなどの利用、あるいはオフィス系アプリを使うのであればCore i9-7900Xが有利と言えそうだ。
1950X vs 7900X:消費電力
システム全体消費電力比較
システム全体の消費電力を、ワットチェッカーを使って測定したのが上記の結果である。
アイドル時はRyzen Threadripper 1950XおよびCore i9-7900Xともにほぼ同じ100W弱に収まっているが、アイドルで100Wとはやはりかなりの大食いCPUである。
ただし、マザーボードおよびオンボードデバイスの種類・数が異なるため単純に比較はできない点は注意だ。
100%負荷をかけた状態の消費電力は、Core i9-7900Xはノーマルクロックは221WなのにOCすると一気に330Wに跳ね上がる。
これにビデオカードの消費電力を加えると500W近くなることも予想されるので、このクラスのCPUをOCするにはやはり1000Wクラスの電源がほしいところだ。
Ryzen Threadripper 1950Xは標準クロックで251W、オーバークロックで342Wと、やはりCore i9-7900Xよりも消費電力は高めだ。
CPU消費電力比較
CPU用電源ケーブルの間にクランプメーターを挟み、CPUの消費電力を測定して比較してみた。
システム全体の消費電力では接続しているデバイスの差による影響がないので、クランプメーターでの計測であれば純粋なCPUの消費電力の比較が可能だ。
使用したのはMS2108Aという中華製クランプメーター。5000円前後で購入でき、AC/DCともに計測できる優れものだ。
CPU用のATX電源ケーブルの+側をクランプメーターで挟み、CPUへの供給電力を測定し、12Vを乗算してワット数を算出した。
CPUの消費電力は、アイドル時のRyzen Threadripper 1950Xの低さが際立っている。
X399 Taichiは8ピン+4ピンの仕様になっているので、両方の+12Vラインをクランプメーターで挟み込んで計測したが、数回計測しても同様の結果だったので、おそらく正しいと思われる。
Core i9-7900XのTDPは140W、Ryzen Threadripper 1950XのTDPは180Wであるが、Core i9-7900Xは139.56WとTDPギリギリの値に収まっている。
一方、Ryzen Threadripper 1950Xは144Wと、TDPのMAXまで40W近く残す結果となっている。
OC時を行うと消費電力は一基に跳ね上がる。
Core i9-7900Xに至っては、CPUだけで240Wオーバーであり、こうなると120mmの簡易水冷ではなかなか厳しいと思われる発熱量だ。
Ryzen Threadripper 1950Xであるが、全体的に消費電力が少なめ…とレビューを書いていて気づいたが、もしかするとCPUに負荷をかけるソフトが、100%の負荷をかけきってない可能性がある。
CPU-Zの負荷テストを使用したがこの負荷テストはOCCTなどと比べるとシステム全体の消費電力も控えめだったため、いまいち怪しそうだ。
後日再度検証してみたいと思う。
1950X vs 7900X:CPUの発熱とCPUクーラー選び
CPUの発熱を比較するため、CorsairのH80i v2を使って、CPUに負荷をかけた状態のCPU温度とファン回転数を計測してみた。
H80i v2は空冷ファンをマザーボードではなく、ポンプ側に接続するタイプの簡易水冷CPUクーラーだ。
ポンプユニットにはUSB端子があり、マザーボードのヘッダピンと接続することでCorsair Linkによるモニタリングが可能となる。
今回はCPUパッケージ温度とH80i v2の水温、空冷ファンの回転数をグラフにしてみた。
Ryzen Threadripper 1950X
Ryzen Threadripper 1950Xの定格クロックは、負荷をかけても56℃と安定しており、このレベルであれば冷却については問題ないと予想される。CPUファンもH80i v2の水温上昇に伴い回転数が上がっているが、1800rpm付近で打ち止めとなっているのがわかる。
Ryzen Threadripper 1950X 4GHz OC
4GHzにOCしたRyzen Threadripper 1950Xだが、CPUに負荷をかけると同時に70℃弱までCPU温度は上昇するが、そこで打ち止めとなり、70℃を超えることは無かった。
H80i v2の水温も35℃程度であり、ファンも1800rpm付近とそこまで騒々しい音をたてておらず、通常利用としても問題ない騒音レベルだ。
Core i9-7900X
Core i9-7900Xは標準クロックでは53℃と、こちらも10コア/20スレッドのCPUとしては温度を抑えられている。CPUのファン回転数も1800rpm前後で安定している。
Ryzen Threadripper 1950Xと比べると、H80i v2の水温が4℃ほど低くなっており、まだゆとりがあることがわかる。
Core i9-7900X 4.4GHz OC
4.4GHzにOCしたCore i9-7900Xはさすがに熱く70℃を超えるあたりまで温度が上昇している。
しかしH80i v2の水温は35℃くらいで安定しており、ファンの回転数も1800rpmと標準クロックと同じレベルであり、まだ余力はあるように感じる。
おそらく、CPUダイとヒートスプレッダーの間がソルダリングではなくグリスが使われているため、CPUの発熱が水冷ヘッドに伝わりにくいといったあたりが問題だと思われる。
両CPUとも、定格で使用するには120mmのラジエーターでもどうにかなりそうだ。
しかしながら、ベンチマークを行ったのは室温16℃程度の涼しい部屋であり、なおかつケースも側板をオープンにした状態であるため、エアフローとしては理想的な状態である。
ThermaltakeのLevel10に組み込むとエアフローが不足すると思われ、また、発熱する他のパーツの排気で冷却効果が劣る可能性が高い。
しかもこれからのシーズンは夏に向けて温度が上がるため、120mmのラジエーターでは酷なシーズンともいえよう。
このクラスのCPUを使うのであれば、冷却能力に余力のある240mmのラジエーターを搭載したCPUクーラーがお勧めだと感じた。
Ryzen ThreadripperのCPUクーラー選び
Ryzen Threadripperはこれだけ巨大なCPUだけあって、クーラー側の冷却プレートよりもCPUのほうが巨大、という事象が発生する。
H80i v2の水枕とCPUのサイズ比較だが、水枕の方がCPUのヒートスプレッダーよりも小さいため、CPUの周辺を冷やすことができないのが見て取れる。
Ryzen Threadripperをがっつり冷やして使うなら、Socket TR4専用のクーラーを使うなどの選択肢がお勧めである。
上の写真は、一度取り付けたH80i v2を取り外したRyzen Threadripper X1950にコアの位置を加工して合成した写真だ。
グリスの痕が残っている部分がH80i v2と接している部分で、こうやって見てみると4つあるコアをギリギリでカバーしているものの、巨大なヒートスプレッダーの左右はカバー出来ていないのが見て解る。
上記はEnermaxのSocket TR4に対応したLIQTECH TR4の水冷ブロックであるが、専用品だけあって巨大なヒートスプレッダーを100%カバーできるサイズとなっている。
クーラーを選ぶ際には、巨大なヒートスプレッダーを覆うことの出来る専用品がお勧めなのがお分かりだと思う。
Ryzen ThreadripperのCPU装着とOSインストール方法
普段は手にすることすら無いハイエンドCPUなだけに、外見についても詳しく見ていこう。
Core i9-7900Xとのパッケージ比較。パッケージもやたら豪華というか、サイズ的に圧倒される。
所有する満足感はあるものの、秋葉原で買って持って帰ることを考えると、かなりかさばるパッケージでもある…だが、そんな経験めったに無いし、そこがいいのだが。
PCショップのARKで内部にLEDを埋め込んでディスプレイしているのだが、確かに飾りたくなるパッケージだ。
それに対し、Core i9-7900Xはペラッペラでとても軽い。
パッケージの豪華さで言えばRyzen Threadripper 1950Xの圧勝だ。
パッケージはこのような構造になっており、帯となっている紙を剥がすと発泡スチロールのユニットが上下に分割でき、CPUが入っているパッケージが取り出せる。
裏にある矢印が付いたノブを回転するとCPUが収まったパッケージが分離される仕組みだ。
PCの組み立てよりも、CPUを取り出す方が難しいような気もしなくもない…
付属品一式。下段中央はCPUソケットをガッチリと留めるためのトルクスドライバ。
一定のトルクになるとドライバからカチッと音が出るしくみのもので、確実なトルクでカバーを取り付けることが可能だ。
右側にある巨大なのがRyzen Threadripper 1950Xのパッケージ。
右奥はSocket TR4のリテンションで、クーラーではなくCPUに付属するのも珍しい。
Ryzen Threadripper 1950XとCore i9-7900X、そしてLGA1150のCPUとの比較。
LGA1150と比べるとCore i9-7900Xも大きく感じるが、圧倒的サイズのRyzen Threadripper 1950Xの前には、小さく見えてしまうのが不思議である…。
Ryzen Threadripper 1950Xだが、名刺サイズくらいと言えばわかりやすいだろうか。
こんな巨大なCPUは未だかつて扱ったことがないので、ひたすら驚きである。
裏側はこのようになっており、Socket TR4もソケット側にピンがある構造となっているのがわかる。
さすがにこの裏面にピンを取り付けるのは無理といったところか。
そして、そのピン数はなんと4096!。Core i9-7900Xのほぼ倍である…。
これだけのピン数のソケットなので、間違いなく確実に取り付けるために、ソケットも独特の作りとなっている。
オレンジ色の樹脂パーツはキャリアフレームと呼ばれるパーツで、このキャリアフレームにCPUが取り付けられており、そのままCPUソケットに装着するのだ。
取り付け方法についても、ざっと紹介していこう。
トルクスドライバでネジを緩めるとカバーが持ち上がるが、そのカバーが2つのパーツに分かれている。
その間に挟まっている透明のカバーを外し、キャリアフレームに取り付けられたCPUを差し込み、そのままカバーを倒してネジで固定すれば取り付けは完了だ。
intelのようにソケットの上にCPUを置くのでは無く、カバーの間にCPUを差し込んでそのまま倒せば確実な位置にセットができるので、CPUを落としてピン曲げしてしまうといったトラブルを回避できるのはメリットだ。
あとは、OSをインストールして完了なのだが、Windows10がインストールできないという不具合が生じてしまった。
症状としては、WindowsのインストールDVDから起動し、Windowsロゴが出たあたりでフリーズしてしまっていた。
BIOSを開き、AMD IOMMUをDisabledに設定することでインストールが進む状態になった。
事例をネットで探したところあまり該当しなかったので、もしかするといつも利用しているインストーラーのISOイメージのバージョンによって挙動が異なるのかもしれない。
OSをインストール後、早速タスクマネージャを確認。
16コア、32スレッドの圧倒的なCPU利用グラフがインパクト大。しばらくの間、これを見てニヤニヤするだけでもご飯3杯はいけそうだ。
しかし、これだけのCPUが10万円ちょいで購入でき、コンシューマ向けにラインナップされる時代になったと考えるとすごいものである。
Ryzen Threadripperでもうひとつ注意なのは、独自ドライバをインストールし、電源プランを専用のものにする必要があるという点だ。
標準の設定でも使えると思うのだが、AMDがRyzen用のプランを用意しているので、これを使うようにしよう。
AMDのサイトからRyzen Threadripperのドライバをダウンロードし、インストールすると上記のようにAMD Ryzen バランス調整というプランが設定される。
Ryzen Threadripperのコストパフォーマンスのヒミツ
あまりにも巨大なパッケージからも想像できるように、16コア/32スレッドを実現するために、ものすごく巨大なCPUパッケージとなっているRyzen Threadripperであるが、最上級の1950Xでも約12万円と、ダイサイズを考えるとお買い得感があるのも確か。
実際、8コアのZeppelinダイは1つあたり213m㎡のサイズであり、1枚で16コアのCPUを作ると777m㎡(!)にもなったそう。
これだけ巨大なダイサイズだと歩留まりも悪そうで、価格もとんでもない事になると予想されるが、Ryzen ThreadripperはMCMという手法を採ることで、コストの削減を可能としている。
※上記はあくまでもMCMのメリットを説明するための参考資料なので、実際のRyzen Threadripperとは異なるので注意して欲しい
なんとなくイメージが付くように、適当なサンプルを作ってみた。
上記のように、16コアのCPUを1枚で作ろうとすると、1枚のウエハーから9個のCPUが取り出せるとする。
しかし、赤いマークが付いたところに不具合が出てしまった場合、全て機能するCPUは5個しか取り出せず、歩留まりが悪化してしまう。
(ちなみに、赤いエラーが出たCPUは、その部分を無効にして、例えば12コア/24スレッドとして販売したりする)
右側は、4コアのダイを大量に取り出し、インターコネクトしてMCMとした場合だ。
4コアのダイのためサイズが小さく、1枚のウエハーから40個のコアを取り出すことが可能だ。
左側と比べて、1つのコアのサイズが小さいので効率よく取り出せるのもメリットだ。(左は9×4で36個、右は40個)
エラーが発生した箇所は左側と同じだが、コアのサイズが小さいため、影響を受けて使えなくなっているコアは6個で、40-6の34個を取り出すことができる。
4つのコアをMCMで1つにするため、34個のコアがあれば、8個のCPUを作ることが可能となり、1枚で作る場合の5個と比べると、3個も多くCPUを作ることができるのだ。
もちろん、MCMとしてパッケージするためのコストなども別途発生するが、そのコストを差し置いてもMCMによるメリットは大きいようで、AMDの情報ではMCMの採用により製造コストが59%に削減出来たとのこと。
あまりにも巨大なRyzen Threadripperだが、サイズからすると破格とも思える価格でリリースできたのは、MCMによる恩恵が大きいと思われる。
なお、Ryzen ThreadripperにはZeppelinダイの中でも特性の良いものを選別して利用しているとのこと。
今回、4GHzにOCして使用してみたが、16コア/32スレッドが全て4GHzでも安定動作していたのは、選別コアの耐性の良さの影響も大きいと思われる。
それぞれに個性のある、モンスターCPU
Ryzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xだが、性能としてはかなり接戦を演じるよいライバルだ。
実際に使ってみて感じたのは、ベンチマーク結果こそ似たような感じではあるが、取り扱いや満足感、発熱などを含めるとかなり違いがあるCPUである、という点だ。
ゲーミング
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★★
Core i9-7900X:★★★★★
どちらもハイエンドにふさわしいスコアを叩き出しているので、文句なしの★5つだ。
そもそもこのクラスのCPUにGeForce GTX970という組み合わせ自体どうなのよ…という気もしており、ここがボトルネックになってしまっている印象だ。
是非とも、Radeon RX Vega 64やGeForce GTX1080などのハイエンド製品と組み合わせて使いたいところだ。
Webアプリおよびオフィスユース
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★☆
Core i9-7900X:★★★★★
PCmarkのスコアによる結果だが、ブラウザやオンラインチャット、あるいはオフィス系アプリにはCore i9-7900Xの方がベンチマークスコアは良好であった。
とはいえ、この手のアプリはRyzen Threadripper 1950XやCore i9-7900Xにとっては「超軽い」類いのアプリであるし、これだけのCPUパワーがあれば不足すると感じることはほぼ無いと思われる。
実際、Ryzen Threadripper 1950Xを使って組んだPCでOffice 2013を使って作業を行ってみたが、インストール直後のOSの機敏な動作と相まって、快適そのものであった。
デジタルコンテンツ制作
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★★
Core i9-7900X:★★★★★
PCmarkのスコアによるDigital Content CreationはRyzen Threadripper 1950XとCore i9-7900Xともに同じスコアであり、どちらとも互角の性能を有していると言えよう。
Adobe Creative Suiteを契約しているのでPhotoshop CCを入れてみたが、短期間の利用では共に遅く感じるようなことは無かった。
もっとも、Photoshopは10コアや16コアといったマルチコアには最適化されておらず、一部のフィルタがマルチコア対応しているような状況であるので、どちらかと言うとSSDの速度やメモリの容量に影響されることが多く、今回は共に同じハードウェアを使っていたため差が体感できなかったと思われる。
動画エンコード
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★☆
Core i9-7900X:★★★★★
僅かではあるが、動画エンコードについては1080pにおいてはCore i9-7900Xの方が高速であったため、Core i9-7900Xを★5個とした。
ただし、これはあくまでもx265でのエンコードテストであって、実際には様々なコーデック・エンコードソフトが存在するので、あくまでも一例ということに注意だ。
エンコードに関しては、AMDのVCEのように、エンコード処理が得意なGPUを使って行う方法もあり、また、GPU内蔵のCore i7などであればQSVも視野に入るため、CPUだけで比較するのはなかなか難しい。
しかし、GPUでは利用できるアプリケーションが限られるのに対し、CPUでは汎用的な作業が可能なため様々なエンコードソフト、コーデックに対応可能である。そう考えると、できる限り並列処理が可能なマルチコアCPUを導入することは大きなメリットとなり得る。
組み立てやすさ
Ryzen Threadripper 1950X:★★★☆☆
Core i9-7900X:★★★★★
ここから先の項目については、完全に主観での評価となるのでご了承いただきたい。
Ryzen Threadripper 1950Xは、Windows10のインストールにあたってBIOSの設定を変更する必要があったこと、インストール後独自の電源プランのインストールなどが必要なことに加え、UMA/NUMAという2種類のメモリアクセスモードがあり、アプリによってそれぞれ得手不得手があるといった玄人好みする仕様となっている。
逆に言えば、ある程度自作スキルを有していないとハードルが高いと思われ、自作初心者にはRyzen Threadripper 1950Xはお勧めしかねるCPUでもある。(はじめての自作がRyzen Threadripperという人もいないと思うが…)
その点、Core i9-7900Xは組み立てたあとも一発でWindowsのインストーラーも起動し、なんら難しい場面に遭遇することは無かった。
組み立てやすさという観点で評価すると、Core i9-7900Xが優勢と言えるだろう。
対応パーツの豊富さ
Ryzen Threadripper 1950X:★★★☆☆
Core i9-7900X:★★★★★
自作のメリットというか楽しみでもある、CPUクーラーやマザーボードなどのパーツ選びだが、これに関してはCore i9-7900Xに軍配が上がる。
例えばCPUクーラーであるが、Ryzen Threadripperは240mmラジエーターの水冷クーラーが推奨でありケースを選ぶこと、そもそものCPUクーラーの選択肢の少なさなど、手を出しにくいと感じる点だ。120mmラジエーター採用の簡易水冷や空冷クーラーもリリースされているが、それぞれ1モデルのみと悲しい状況だ。
これに対しCore i9-7900XはCPUクーラーのラインナップも多岐に渡り、好みのCPUクーラーが見つかると思う。
また、Core i9-7900Xが対応するX299搭載マザーボードのラインナップの幅広さに比べ、Ryzen Threadripperが対応するX399搭載マザーボードではラインナップが限られるのもマイナスポイントだ。
ハイエンドマザーは各社からリリースされているが、エントリーレベルのマザーボードが、X399は圧倒的に少ない。
価格.comで調べてみたところ、X299対応のマザーボードは30種類あるのに対し、X399では10種類と圧倒的な差が生じてしまっている。
価格帯も、X299は29,000~79,000円と多くラインナップされているのに対し、X399では38,000~63,000円と最低価格で9,000円程度の差がある。
また、X299では29,000円~32,000円の間に9モデルがラインナップされており、各社のエントリーモデルが出そろっているが、X399では38,000~40,000円の価格帯のマザーは3種類と寂しい状況だ。
OCメモリとの相性
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★★
Core i9-7900X:★★★★☆
Ryzen Threadripper 1950Xは他のRyzen CPUと同様、2ランクのメモリに対するクロックに上限があるなど注意事項は多いものの、OCメモリと組み合わせることによって70GB/sを超える超高速なメモリ環境を構築可能だ。
アプリにもよるが、OCメモリによる処理速度向上はCPUのOCとは異なり消費電力・発熱の大幅な増大にはつながらないため、全体的な性能の底上げとしては魅力的な選択肢だ。
対するCore i9-7900XもOCメモリによるメリットは享受出来るのだが、OCメモリに追加投資するよりも、メモリはDDR4-2400に据え置いてCPUをワンランク上のモデルにするといった選択肢も可能である点は最上位モデルであるRyzen Threadripper 1950Xとは異なる。
どちらのCPUも、今回利用したメモリとの相性に関しては相性の悪さはなく問題は無かったが、Sandraで圧倒的なパフォーマンスを叩き出したRyzen Threadripper 1950Xに★を1つ多く付けさせていただいた。
発熱
Ryzen Threadripper 1950X:★★★☆☆
Core i9-7900X:★★★☆☆
どちらもメインストリームのCPUとは別次元の発熱であり、冷却には気を遣うCPUである。
とはいえ、Ryzen Threadripper 1950XもCore i9-7900Xも120mmのラジエーターを搭載したH80i v2でも定格クロックであれば問題ない程度に冷却はできているので、がっつりOCを行わない限りは、エアフローのよいケースさえ使っていればあまり冷却に気にしなくても良さそうだ。
ただし、Socket TR4は対応クーラーが少なく、おそらく導入の際にはCPUクーラーもあわせて購入することとなると思われるので、その際は240mmラジエーターの製品をおすすめしたい。
共に定格では発熱に特に気を付けることはなさそうだが、OCをすると一気に発熱が増える点は要注意だ。
消費電力
Ryzen Threadripper 1950X:★★★☆☆
Core i9-7900X:★★★☆☆
どちらも電源大食いのCPUであり、フルロードになると一気に200Wを超え、オーバークロックをすると優に300Wを超える、まさに暖房器具とも言えるCPUだ。
といっても、エンスージアスト向けのハイエンドCPUだけあって、エコとは正反対の、怒濤のCPUパワーを求める製品だけあって、消費電力など気にしていたら負けであるのも確かだ。
予想ではRyzen Threadripper 1950Xのほうが発熱で手こずるかと思ったが、Core i9-7900Xとほぼ同じような感じで扱えることもあって、印象より扱いやすいCPUであった。
消費電力が多いものの、そこまで手こずることもなかったので、両方とも★3つとした。
満足度
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★★
Core i9-7900X:★★★☆☆
Ryzen Threadripper 1950XはCPUパッケージからして特別感が半端なく、その巨大なCPUパッケージ、Socket TR4の複雑さ、機能満載のマザーボードと、導入のハードルは高いが16コア32スレッドという性能を実現するための専用ハードであり、所有する満足感は非常に高い。
Core i9-7900XはRyzen Threadripper 1950Xに比べると至って“普通”であり、普通であるが圧倒的なパワーを秘めたCPUである。
しかし、Core i9のハイエンドがCore i9 7980XEであることを考えると、Core i9-7900Xのプレミアム感は薄れてしまう気がするのだ。
ハイエンドは正義と思わせる物量が詰まったCPUが、Ryzen Threadripper 1950Xであり、いろいろ癖はあるものの、組んでよかった、買ってよかったと思うCPUであることには違いない。
Ryzen Threadripper 1950Xは、トラブルもあったものの、久々に自作が楽しいと感じるCPUであった。
総合評価
Ryzen Threadripper 1950X:★★★★★
Core i9-7900X:★★★★★
どちらも甲乙付けがたいCPUのため、玉虫色的な決着となってしまったが…。
印象としては、
Ryzen Threadripper 1950X
1コアあたりの処理能力ではCore i9-7900Xに一歩譲るが、16コア/32スレッドという弩級の力押しでエンコードもCore i9-7900Xに負けない性能を叩き出す。
しかし、その圧倒的なマルチコアがどのようなアプリにでも生かせるかというとなかなか難しく、ゲームやPhotoshop、IllustratorやOfficeアプリなどのように、数コアもあれば十分、といったアプリも多く存在するため、なかなか真価を発揮するタイミングが難しい。
しかも、前述のように組み合わせるCPUクーラーも限られるため自ずとケース選びも制約があり、マザーボードのラインナップもX299に比べると1/3という状態で、選択肢が狭いのが泣き所だ。
その上メモリの動作クロックとランクの制限もあり、さらにUMA/NUMAというメモリモードによって特性も異なるなど、最近の自作PCとしてはかなりハードルが高い。
しかし、そのハードルを乗り越えた先には、16コア/32スレッドという弩級のパワーと、CPUの耐性にもよるが全コア4GHzでのOCでも楽々作業をこなすだけのポテンシャルを秘めた、別世界が待っている。
Core i9-7900X
Ryzen Threadripper 1950Xと事なりこちらは優等生といった雰囲気のCPU。OSのインストール、設定などはさすがintelでなにもトラブル無くすんなり終了し、メモリだってランク数と速度への影響についてもAMDのようなかなりシビアな制限があるという訳でもない。
CPUクーラー、マザーボード共に選択肢も多く、ハイエンド環境をサクサクと組めてしまうのはさすがintelといったところか。
プラットフォームとしての安定感とメモリへの対応の広さなどは、エントリーモデルからハイエンドまで長年手がけてきたインテルの強みといえよう。
コア数こそRyzen Threadripper 1950Xのコア数に見慣れてしまうと、Core i9-7900Xは10コア20スレッドと控えめのコア数であるが、コアあたりの性能の良さもあり、性能的な不満はまったくない。そのままの設定でサクッと4.4GHzへオーバークロック出来てしまうOC耐性の高さは、OC時の処理能力を目の当たりにすると、Core i9-7900Xの大きな魅力だ。
Ryzen Threadripper 1950Xのような気難しさはなく、万人にお勧めできるCPUといえよう。
Thermaltake Level10に組み込んでみよう
今でも色あせない、BMWがデザインした弩弓のPCケース、Thermaltake Level10。
大変気に入っているケースなのではあるが、最大の問題はマザーボードの区画が狭く、しかも120mmのラジエーターしか搭載できないという点。
さらに、電源、5インチベイ、3.5インチベイ、マザーボードと各区画が完全に仕切られたデザインのため、マザーボード周りのエアフローは割と貧弱なのが弱点だ。
今回は、あえてLevel10にRyzen Threadripper 1950Xを導入してみたいと思う。
どうにか押し込んだ…ではなく、組み込んだ図。
ラジエーターのホースがかなりきわどい曲がり方になっている。
ビデオカードは外排気のGTX970なのでまだ安心だが、これがケース内排気だったりすると、ゲーム時にCPUの温度がしゃれにならないレベルにすぐに到達してしまう。
室温14℃で、どうにかアイドル時38℃で安定するようになった…が、やはり温度は高めだ。
そもそも、Level10がリリースされた時期のCPUは初代Core i7だったりするので、まさか16コア32スレッドのCPUが中に収まるなんて、当時は想像すらできなかったと思う。
やはりRyzen 1700クラスが限界そうな気がするが、とりあえずこのケースで夏場を乗り切れるか、トライしてみようと思う。
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