Fractal Design製mini-ITX規格のPCケース,Define Nano Sのプレミアムレビューになります.
Fractal Design社は,北欧スエーデンにあり,評価の高いスカンジナビアデザインを受け継いでいます.
そんなDefine Nano Sのレビューテーマは,”様々なCPUクーラーを試す”としています.制約の多いMini-ITXケースで,どれくらいのCPUクーラーに対応できるのか確認していきたいと思います(これは,途中で勘違いしていることに気がつきました).
外観
まずは,いつものように外観から.
大きさは,W275 x H485 x D420mmです.同じmini-ITX用のMinimo.Qが,W225 x H186 x D370mmですから,比べるとかなり大きいです.ATX用のSHA-BD28が,W270 x H568 x D521mmですから,m-ATX対応ミドルタワー並の大きさです.
minimo.Qと大きさを比べると,こんなに違います.
mini-ITXで,出来るだけ小さな省スペースPCを組むのが目的なら,今回のDefine Nano Sは向いていませんが,ATX規格の汎用パーツで,妥協なく,フルスペックPCをmini-ITX規格で組む場合には,最適です.Mini-ITX特有のレイアウトではなく,ATXライクな内部レイアウトなので,パーツの組み込みは,難しくなく,苦労なく,普通に組み込めます.よほど大型のパーツでない限り,(M/B以外)ATXからもそのまま移植できます.
あと,このDefine Nano Sは,ツールレス化が図られています.残念ながら,完全ツールレスではありませんが,mini-ITXケースとしては,かなり進んだツールレス対応だと思います.ただし,この手回しネジが非常に硬く締め込まれています.最初だけ,手では回らないので,ツールレスにならないのがちょっと残念です.
各部をもう少し詳細に見ていきます.
内部構造は,スケールが無い写真で判断すれば,シャドーベイの無いミドルタワーケースに見えます.
mini-ITX特有の変則レイアウトではありません.電源は後方下,M/Bは正立右側面とオーソドックスです.内部空間には非常に余裕がありますので,ケーブルマネジメントも楽です.Mini-ITXケースで,背面配線とか,M/Bを取り付けたままのCPUクーラー交換とか,CPU電源の長さが足りなくなるかもという心配とか,普通では考えられない事ばかりです.今回,minimo.Qからそのまま移植しましたが,まるでATXケースに組み込んでいる感覚になりました(これは,ほんの序の口であることを後で知ることになります).
mini-ITXとしては,非常に大きなCPUカットアウト部があることがわかります.ミドルタワーATXケースに引けを取らない,または勝っている位です.
mini-ITXケースは,ドライブベイアレイを持たず,専用のアタッチメントでドライブを搭載する工夫がされているものが多いです.Define Nano Sも同様に,フロントドライブベイアレイは持たず,3カ所にある専用アタッチメントを用いて,2.5/3.5インチドライブを搭載するように工夫されています.裏配線エリアのフロント側,CPUカットアウト部,底面部の3カ所です.裏配線エリアは,搭載できるドライブ厚さに制限があり,13mmまでとなっています.
HDDの場合には,ゴムブッシュ付きの専用アダプターが必要になりますが,SSDの場合にはしっかり固定する必要もないので,底面に置いておくだけの設置も可能で,M/BのSATAコネクタ数の設置も可能になります.
mini-ITXケースでありながら,冷却ファンの取り付け台数が多いことにも驚きます.標準でも,フロントに140mm×1とリアに120mm×1とATXケース並みです.しかもです.どちらのファンも取り付け位置調整が出来ます.この微調整が非常に有効に働くことを,後で知ることになります.
冷却ファンと最大限に設置しようとすると,フロントには140mm×2または120mm×2,リアには120mm×1,トップに140mm×2または120mm×2,ボトムに120mm×1が可能です.ミドルタワーATXケースでもここまで設置できるのは,非常に希です.トップもボトムも,どちらも設置可動範囲が設けられており,非常に考えられています.
なお,トップファンを設置する場合には,トップパネルの一部(ModuVent™ファンスロットカバー)を外しますが,プッシュピン方式なので,内部からアシストしながら外すのが楽です.これは,フロントパネルにも言えます.
ファン設置も拡張性の一つですが,このケースの拡張性は水冷クーラーにあります.非常に驚きの結果でしたが,後ほど詳細に記載します.
もう一つ,グラフィックボードへの対応力も申し分ありません.Mini-ITXなので2スロットに制限されますが,長さ方向には300mmオーバーまで可能です.
また,空冷CPUクーラーも,M/B上での干渉さえ問題無ければ,PCケースでの干渉は起こらないと言えます(mini-ITXなので,唯一,リアファンと干渉する可能性は残ります).高さ方向は,162mmまでOKなので,ほとんどカバーでき,ミドルタワーATXケースに全く負けていません.
もう一つの特徴である静音性についても,十分配慮されています.サイドパネルやフロントパネルの吸音材が,単なるスポンジではなく,しっかりとしたものが貼り付けられており,パネル自体の厚みも十分あります.今までの感覚で手に持つと,その重さにびっくりします.実際,何度か床に落としました.
吸気で使うことが想定されるフロントとボトムには,防塵フィルターが完備され,ホコリの進入を防いでくれています.特にボトムフィルターは,底面設置の電源部までをカバーする長いもので,電源の外部吸気設置も問題ありません.しかも,このフィルターは,前面方向に取り外せるため,PC設置後の清掃で苦労することがありません.リアに引き出したり,再度に引き出したりするタイプが多いですが,ユーザビリティが良く考慮されています.
フロントパネルIOは,上面に位置し,電源/リセット/マイク/スピーカー/USB3.0×2の構成です.電源ONでBlue-LEDが点灯(HDDアクセスLEDとダブル表示)しますが,この表示部を含めて,筐体の一部になっています.このため,フロントパネルを取り外す際,フロントパネルIOケーブルが,邪魔になる心配がありません.
Define Nano Sのデザインは,脚部にもこだわっています.こんな綺麗な脚を初めて見ました.
Fractal Design製のPCケースを選ぶのは,そのデザイン性だと思います.その点に於いては,文句なしの出来だと思います.
前面フラットパネルによるシンプルなデザインは,静音ケースの特徴であり,ファンノイズ低減に期待できます.静音ケースが好きなので,今まで,CoolerMaster Silencio RC-550,Antec P280,Corsair 550Dと使用してきましたが,このDefine Nano Sも全く遜色ありません.いや,それ以上の静音対応が図られていると感じる部分もあります.
パーツの組み込み
それでは,PCパーツを実際に組み込んでいきます.
今回のパーツは,こちら.Minimo.Qのレビューで使用しているパーツをそのまま移植しました(レビュー時とCPUクーラーとメモリが異なります).
今回のレビューテーマは,”CPUクーラー”ですので,いろいろなタイプを試しますが,初めはminimo.Qで使用していたXIGMATEKのDURIN D982をそのまま移植します.D982は,高さ65mmの薄型タイプで,92mmのシングルファン構成ですが,92mm×2台のタンデム構成にしてあります.
メモリーは,CORSAIRのDDR3-1600としています.今回はPCケースのレビューになりますので,メモリーとの干渉でレビューできないのは不本意ですので,背の低いヒートシンク付きを選びました.
mini-ITXケースの場合,CPU交換には,毎回M/Bを取り外さなければならないものが多いですが,Define Nano Sは,大きなCPUカットアウト部のため,その必要はなく,簡単に行えます(ただし,CPUクーラーの取り付け方法には依存します).
①電源
今回使用する電源は,玄人指向のKRPW-GN550W/90+という,125mmのショート電源です.ATX規格ですが,minimo.Qに組み込む関係でショート電源を選択しています.Define Nano Sは,160mmまで対応可能ですが,裏配線するケーブルホール位置を考慮するとショート電源のほうが,楽です.電源はケース底部で,リア面固定ですので,外吸気の向きで設置します.電源抑え部のありますので,振動対策もバッチリです.
[2016.5.4追記]
180mm電源ならどうなるか,確認してみました.
CORSAIRのHX1050です.
180mm長の電源では,ケーブルホールが隠れてしまい,裏配線できません.ただ,裏配線しなければ,設置自体は可能ですので,使用出来ます.
※HX1050は,160mm電源だと思って試しました.しかし,設置してみた後,長さを測ったら,180mm電源でした.他の160mm電源は,使用中で,直ぐには試せないので,今回はココまでです.
[追記ココまで]
②M/B
CPU,CPUクーラー,メモリを取り付け済みのM/Bを組み込みます.M/Bは,Z97E-ITX/acで,メモリスロット数と拡張スロット数以外は,ほぼフルスペックです.バックパネルカバーを取り付けた後,M/Bを組み込み,4カ所ネジ止めします.Define Nano S側のM/B固定用スタッドは取り付け済みです.
邪魔なものが一切ありませんので,mini-ITXとしては,別格の組み込みやすさです.
③SSD
SSDを取り付けます.M/B裏,裏配線エリア前方,底面の3カ所選択可能ですが,今回は裏配線エリア前方のアタッチメントを使用することにしました.M/B裏は,CPUクーラー交換で必要なので,アタッチメントは取りはず事にしたため,却下.底部は,ファンや水冷ラジエーターを設置する際邪魔になるので却下.残るアタッチメントが,裏配線エリアになりました.
取り付けは,一旦アタッチメントを取り外し,SSDを背面からネジ止めします.
④配線
電源やSATAケーブルを配線し,フロントパネルIOケーブルも接続します.
おそらく,この配線が一番大変だと思います.Define Nano S自体は余裕があるのですが,mini-ITXのM/Bが非常に凝縮されているため,M/Bへの接続が大変です.裏配線をフルに活用して,頑張りましょう!
そして,この配線作業を行ってみてわかるのは,必要な箇所に必要なケーブルホールとケーブルタイとケーブルフックが必ずあるということです.これは,非常に考えられています.このDefine Nano Sをデザインした人は,間違いなく自作erだと思います.自作したことにないデザイナーなら,ここまで配慮できるデザインには出来ないはずです.誰もが,素晴らしい/便利と思うはずです.
⑤VGA
グラフィックカードを取り付けます.今回のHD7770は,6ピンのPCIe電源のみで,全長212mmと比較的短めのカードです.
mini-ITXなので,電源との距離が近くなりますが,ファン吸気は問題無さそうです.
⑥起動確認
電源,マウス,キーボード,ディスプレイケーブル,LANケーブルを接続し,起動確認します.
今回は,そのまま移植しましたので,特に問題も起こらず,素直にWindows10が起動しました.
すべてのパーツを組み込んだ状態の画像です.フロントシャドウベイが無いという点以外,普通のATXケースに見えなくもありません.Mini-ITXとは思えないほど,余裕があります.もう1台分のパーツをそのまま組み込めそうです.
冷却ファンを増設
本題に入る前に,これだけの冷却ファン設置可能な状態を見せられて,そのままにしておく訳にはいきませんので,設置してみます.
①トップファン
標準では搭載ゼロで,静音優先のためトップカバー(ModuVent™ファンスロットカバー)で塞がれています.このトップカバーを外すと,メッシュ構造の広大なファン設置エリアが現れます.カバーの外し方は,4カ所のプッシュピンと2カ所のL字フックです.内部から,このフックを外すようにしながら,上方向に引っ張ります.
140mmファン用と120mmファン用の穴位置がありますが,ファンを意識した固定穴ではなく,ラジエーター設置も考慮した可動穴になっています.簡単なデザイン(アイデア)で,様々なラジエーターにも対応した配慮は,素晴らしいです.また,ファンの場合にも,設置位置が微調出来るのは,干渉の面や配線の際に非常に助かります.
まず,140mmファンを2台設置します.140mmファンの場合にも多少前後方向に微調整が可能です.
次に,120mmファンを2台設置します.
140mmでも120mmでも,非常に簡単に設置できます.140mmの場合には,多少調整できますが,120mmの場合には,前後に位置調整も可能です.
②フロントファン
標準で,140mm(1000rpm)ファンが1台,上側に搭載されています.
フロントパネルの外し方は,プッシュピン6カ所(左右各3カ所)で留まっていますので,内側から外すようにして,フロントパネルを引っ張ります.そして,メッシュフィルターを外せば,ファンにアクセス可能となります.
干渉するものがありませんので,140mmでも120mmでも,非常に簡単に2台設置できます.
③ボトムファン
ドライブ搭載用のアタッチメントを取り外すと,代わりに120mmファンが搭載できます.
この底面にあるアタッチメントは,裏面からのアクセスが必要になるため,底面のメッシュフィルターを外し,+ネジを外します.
120mmファンは,このアタッチ面のの代わりに設置できます.ファンもアタッチメントも,前後方向にかなりの移動範囲を持っています.フロントファンを設置しても,干渉しません.
④LEDファン
すべての冷却ファンをLEDファンに交換してみました(CPUクーラーファンはLEDファンではありません).
これだけ見ても,とてもmini-ITXケースには見えません.普通のミドルタワーATXケースそのものです.
CPUクーラー:空冷トップフロー型
ENERMAX製ETD-T60-VDです.高さ115mmで,120mmファン採用のトップフロータイプになり,比較的大型になります.取り付けは,バックプレート式で,簡単です.
バックプレートは正規の方向で取り付けできますが,M/Bとケースの間に,一部入り込む形になります.
ETD-T60-VDは,オフセットレイアウトですので,設置可能/設置不可能な方向があります.基本的に,メモリー側にオフセットさせた取付が一番オススメです.
この場合,リアファンは問題ありませんが,トップファンの後方は,120mmでも140mmでも設置不可です.前方側は,140mmファンの設置も可能です.
静音優先で考えると,M/Bへのエアーフローも考え,このようなトップフロー型がオススメかもしれません.
CPUクーラー:空冷サイドフロー型
CoolerMaster製のHyper612Pです.高さ160mmで,120mmファン採用のサイドフロータイプになり,大型です.ファンは,サンドイッチ構造に可能です.取り付けは,バックプレート式で,簡単です.
いざ,設置しようとしたところ,バックプレートが通常位置では取り付けられませんでした.バックプレートが,CPUカットアウトの上面のに干渉します.しかし,LGA1151なので,90°回転すると,取り付けられました.
Hyper612Pは,標準ではシングルファンですので,まず,シングルファンの状態で確認します.
上面ファンを後方に設置しなければ(前方のみ設置),干渉せずCPUクーラー自体は,取り付け可能です.上面ファンとのクリアランスが,25mm以下ですので,120mm/140mmどちらにおいても,薄型なら大丈夫かもしれませんが,トップファンは1台設置できますので,ギリギリの状態で設置する必要も無いと思います.ただし,24ピン電源ケーブルとギリギリで,背高メモリでは干渉します.これは,PCケースの問題では無く,M/B側も問題です.
次に,ダブルファンで設置してみます.ダブルファンの場合,リアファンと明らかに干渉します.ダブルファンなら,そのままリアへのエアーフローが得られますので,リアファンは設置不要な状況になりますので,問題無いと思います.
高さ160mmと,対応サイズギリギリですが,仕様どおり,設置でき,サイドパネルも問題無く,閉じることが出来ます.
CPUクーラー:簡易水冷120mm型
CORSAIR製CWC-H80です.120mm型ラジエーターで,ラジエータ厚38mm,120mmファンのサンドイッチ構造が基本構成となります.一般的な120mm型ラジエータは,30mm前後ですので,CWC-H80は厚型であることがわかります.水冷ヘッド部は,ポンプ一体型の小型で,取り付けはバックプレート式になります.このCORSAIR方式が一番簡単に交換できます.
120mm型ラジエータは,背面ファンの代わりに設置するのが,一般的です(タワー型ケースに反面ファンは,ほとんど設置されているため).今回,Define Nano Sでは,どの様に設置可能なのか見ていきます.
[背面シングル]
120mmラジエーターで一番オーソドックスな設置位置です.
ホース位置下で設置しましたが,結果的には,全く問題ありません.トップファンを設置したままでも干渉しません.ただし,設置位置を一番下まで下げると,グラフィックボードに接触します.一番上でもトップファンに干渉しませんので,出来るだけ上位置で設置するのが無難です.また,M/Bとの干渉もなく,CPUクーラーの水冷ヘッド部とも干渉しません.
[背面ダブル]
リアダブルファンにしてみます.
ダブルファンでも,全く問題ありません.トップファンを設置したままでも干渉しませんが,設置位置を一番下まで下げると,グラフィックボードに接触するのは一緒です.また,M/Bとの干渉もなく,CPUクーラーの水冷ヘッド部が隠れるくらいせり出しますが,大丈夫でした.
[天面ダブル]
トップメッシュパネルにはフィルターがありませんので,排気方向で設置します.
このような設置はしないと思いますが,上面前方のファン位置に設置してみます.上面は,前方と後方のどちらも可能ですが,基本的に前方に設置すると思います.ホース長に左右されますが,問題無く設置可能です.一番前方にしても,フロントファンとは干渉しません.
[前面シングル上段]
タワーケースではシャドーベイになっているエリアです.まさに,水冷のために用意された感じがあります.上段ファン位置に設置してみます.
ホース長に左右されますが,問題無く設置可能です(今回は,最短になるように,水冷ヘッド部を90°回転させています).一番上にしても,トップファンとは干渉しません.
ラジエーターホース位置は,上/下/奥の3方向設置が可能です.手前位置にも設置は可能ですが,サイドパネルが取り付けできなくなります.
[前面ダブル上段]
今度は,ダブルファンで設置してみます.
ホース手前の設置方向以外の3方向で,問題無く設置可能です.
また,ランジーター自体も上下方向に位置調整できますので,トップファンとの干渉が抑えられます.
ラジエーター前面設置の場合,下位置でも同様に設置可能です.
[底面ダブル]
このような設置はあまりしないと思いますが,ボトムファン位置に設置してみます.
ホース長に左右されますが,ホース位置が前方になる場合のみ,問題無く設置可能です.ホース位置が後方になると,グラフィックボードとホースが干渉して,設置不可です.フロントファンとは干渉しません.
厚型ラジエーターでも,グラフィックボードの干渉は起きません.
以上,120mmダブルファン厚型ラジエーターの設置で,他のパーツとの干渉がなく,これだけのバリエーションがあるのは他にはないと思います.
CPUクーラー:簡易水冷240mm型
CORSAIR製H100iです.240mm型ラジエーターで,120mmファン×2が基本構成となりますが,ファン4台でのサンドイッチ構造も可能です.水冷ヘッド部は,ポンプ一体型の小型で,取り付けはバックプレート式になります.CWC-H80と同じ構成で,兼用可能です.
[天面シングル]
ラジエーターファン排気方向では,基本の設置になると思います.ラジエーターホース位置は,基本的に前方に設置すると思います.H100iは非常に柔軟性があるため,強引に設置すれば,後方も可能ですが,わざわざ苦労し,エアーフローを妨げることをする必要もありませんので,ホース位置は前方とします.
ホース長も問題無く,余裕を持って,設置可能です.一番前方にしても,フロントファンとは干渉しませんし,後方にしてもリアファンとの干渉もありません.
また,M/Bや配線やM/B上パーツに全く干渉せず,240mmラジエーターの簡易水冷を設置できる点に非常に驚きました.CORSAIRのCC600TMや550Dや400Rでも,何らかの干渉や工夫が必要なのに対し,Define Nano Sは全くその心配が要りません.大型のミドルタワーケースにも全く引けを取らないmini-ITX用PCケースです.
[前面シングル]
ラジエーターファン吸気方向での設置にはなりますが,まさにラジエーター設置のために用意されたような場所です.
240mmラジエーターでも,問題無く設置可能です.そのそも,140mmファン×2台設置可能な場所ですので,240mmファンも余裕な状態です.
[前面ダブル]
シングルファンでは,まだまだ余裕がありますので,ダブルファンにしてみます.
ダブルファンでも同様で,他のパーツが一切ありませんので,干渉を気にする必要もなく,楽勝で設置可能です.ケース内にはラジエーターで温まった空気を取り入れることになりますが,ラジエーターの冷却に関しては最適な位置になります.
240mmラジエーターは,ミドルタワーATXケースでも設置に苦労するのに,このDefine Nano Sは全く苦労せず,複数の選択肢を持って設置できてしまいます.
これは,mini-ITX規格のミドルタワーケースを採用したことの最大限のメリットだと思います.まさに,逆転の発想で,Define Nano Sの大きさで,mATX規格を採用すると,極端に自由度が無くなり,パーツの干渉が必ず起きると思われます.特に,トップにラジエーターを設置することは,不可になるのではないかと思います.
静音性確認
今まで水冷ラジエーターの互換性について見てきましたが.Define Nano Sのもう一つの特徴である静音性についても確認しておきます.
静音性を確認する上で,出来るだけオリジナルの状態とします.トップファン無し(=トップカバー有り)で,フロントはオリジナルファン1台のまま,CPUクーラーはETD-T60-VDとします.ETD-T60-VDを選択したのは,サイドパネルがアクリルウインドー仕様ですので,その特長を活かすためです.
オリジナルのフロント/リアファンは,M/B上のファン端子に接続し,M/B上のファンコントロールを使用します.CPUクーラーもM/Bのファンコントロールを有効にして使用します.ファンコンの設定は,L(30%),M(60%),H(90%)としています.
静音性の確認のため,左右2枚のパネルとフロントパネル無しのL設定を基準にし,パネルありとパネルありでトップカバー無しの比較を行いました.
静音性確認は,騒音計アプリで,周囲の音圧を測定します.
https://play.google.com/store/apps/details?id=kr.sira.sound&hl=ja
測定結果です.
静音パネルの効果で,静音化が図られていることが確認できました.トップカバー(ModuVent™ファンスロットカバー)の効果も大きく,出来るだけトップカバーはありの状態で使った方が良さそうです.おもしろいのは,このトップカバーがあると,背面に抜ける音が大きくなるようで,上面は静音化されますが,背面は逆にうるさくなります.
アイドリング時など,低負荷では,ほとんどファンノイズは気になりません.
まとめ
Define Nano Sは,mini-ITX規格のミドルタワーPCケースになります.ほぼ,mATX規格のミドルタワーPCケースと同じ大きさに,あえてmini-ITX規格を採用したのは,逆転の発想だと思います.ミドルタワーPCケース並の大きさで,省スペースのMini-ITXを採用し,フロントベイとフロントシャドウベイを廃止することで,広大なケース内空間を作り出し,組み込みやすさ,パーツ選択の自由度,パーツ干渉の無さを追求し,静音性と水冷対応を強化しているように思えます.
mini-ITX規格のM/Bでも,メモリスロット数と拡張スロット数以外は,mATX規格とほぼ同一のスペックのハイエンドPCは可能であり,光学ドライブレス,SSD化,クラウド/ホームドライブ(NAS)の流れの中で,まさに時代に合ったPCケースではないかと思いました.
Define Nano Sにパーツを組み込んでみると,そのユーザビリティに驚きます.必要な箇所に必ずケーブルホールとケーブルマネージメントタイがあります.そして,必要な空間が,しっかり確保されています.Mini-ITXなのに,パーツの選択や組み込みに苦労しません.
妥協して,Define Nano Sで,mini-ITXのPCを組むのではなく,Define Nano Sだからこそ,mini-ITXでPCを組むという事だと感じました.
デザイン良し,ユーザビリティ良し,拡張性良し,静音性良しで,アピール度maxのPCケースです.このPCケースのデザイナーは,絶対にバリバリの自作erです.そうでなければ,こんなにも考えられたPCケースは,作れません.恐るべし,Fractal Design!
要望(おまけ)
一つだけ,個人的な勝手な要望を上げておきます.
mini-ITXのM/Bには,ファン端子が少ないです.Z97e-ITX/acも,CPUファンとケースファンで,各1端子です.Define Nano Sの付属品位は,2分岐ファンケーブルが同梱されていますが,見せるPCケースにするには不足します.
よって,4ch程度のファンコントローラーを内蔵して貰えると完璧だと思いました.フロントパネルIO部には,デザイン的に難しいかも知れませんが,内部エリアでもいいですし,アタッチメント形式でもいいと思います.そうすると,ファン増設の楽しみが増えると思います.
hidechanさん
2016/04/25
レビューお疲れ様です。
今回使用しているメモリーは、コルセアの何てメモリーで高さはどれくらいでしょうか?
私の場合は、背の低いメモリーがないので、トップにラジエーターを持ってくると
ガッツリっと干渉してしまいました><
harmankardonさん
2016/04/25
CORSAIRのXMS3シリーズのメモリになります.
高さは,30mm程度です.
XMS3は,ヒートシンク付きOCメモリ(当時)ですが,最近のメモリは低発熱ですので,ヒートシンク無しメモリなら,干渉の問題は無いと思います.
今回は,PCケースレビューで,M/Bレビューでは無かったので,あえて背低メモリを選択しました.干渉すると,何も評価できなくて,困りますよね.
hidechanさん
2016/04/25
ご返答ありがとうございます。
やっぱりメモリー35mm制限が私の課題であるゲーミングマシーン作成に
ブレーキがかかります。
40mmメモリーだったら大概のサイドフロークーラーには引っかからないのですが、
G-SKILLのRIPJAWS-Zもひかかってしまったので困りましたw
Mini-ITXケースは難しいな~
harmankardonさん
2016/04/25
mini-ITXは,メモリもPCIeも近いので,大変ですよね.
PCケースの問題と言うより,M/Bの問題なんでしょうけど...