Palit GeForce GTX960 SuperJetstream はnVidiaのMaxwell世代ミドルレンジGPUコア、GM206を装備しPalit Microsystemsの独自コンポーネントをまとった、ミドルレンジ帯を狙うビデオカードだ。
nVidiaによれば、公式にリファレンスモデルは存在しないとの事で、各社独自にOC(オーバークロック)を施した状態で製品化がなされている。
本製品も例に漏れず、ハード、ソフトの両面から磨き上げられたものとなっている。
本レビューでは、カタログスペックや、ベンチマークなど、数字上の問題よりも実使用に際しての事柄を主体に書き進めていきたいと思う。
しばらくの間、お付き合いいただければ幸いだ。
ゲームにはもちろん、仕事にもよし
■ミドルレンジでSuperJetstreamは初?
まず、製品概要について触れておこう。
ワットパフォーマンス(1Wあたりの性能)にフォーカスしたMaxwellの第二世代となるGM206コアに、Palit独自開発のTurbo Fan Bladeを2連実装したSuper JetStreamクーラー、GPU温度が60℃未満でファンが停止する0-db テクノロジ、などギミックが満載で、およそミドルレンジビデオカードとは思えない豪華さだ。
2スロットを占有するブラケット部よりも更にクーラーの厚みがあり、実質的にはケース内部に3スロット分の幅を占有する。多数の拡張カードを搭載している向きには注意が必要だ。
自前で調べてみた限りでは、ミドルレンジクラスのビデオカードに「Super JetStream」を冠するモデルは直近では存在しておらず、本製品が高度にチューニングされたミドルクラスである事がわかる。
サイズ比較、比較対象はMSI R9 270X Twin Frozr 4S 4G OC
背面比較、基板サイズ+補助プレートで同等サイズになっている。
にもかかわらず、ビデオカード本体は驚くほど小さく、GPUクーラーを安定して固定する為の補強プレートで基盤サイズを補っている。
補強プレートを除けば、基板からクーラーが大きくはみ出しているのがわかり、用意されている補助電源コネクタが6ピン x 1である事から物理的なサイズのみならず、消費電力の面でもコンパクトなのがうかがえる。
公称TDPは120Wとの事なので、ミドルレンジクラスにはオーバースペックと言えるほどのクーリング性能を持っていると言えるだろう。
ちなみにサイズ比較に用いたMSI R9 270X Twin Frozr 4S 4G OCは補助電源コネクタ6ピン x 2である。
また、現在nVidiaではGTX960とその他一部の製品を対象にMETALGEAR SOLID V GROUND ZEROESの交換クーポンを同梱して販売するプロモーションを行っており、本製品にも交換クーポンが添付されていた。
購入してすぐに本機の性能を実感する事が出来るのはありがたい所だろう。
■同梱物は必要最低限
同梱物は極めてシンプルで、
・ソフトウェアインストールマニュアル
・ドライバおよびユーティリティDVD
・4ピンペリフェラル→補助電源用6ピン変換ケーブル
・DVI→アナログRGB15ピン変換コネクタ
・MGSV交換用シリアルコード
・JetStreamロゴシール?
のみであった。
化粧箱の豪華さと比較すると、拍子抜けする程にシンプルな構成ではあるが必要十分であるとも言える。
全くの初心者でも無い限り、戸惑う事は無いだろう。
マニュアルは英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語等11カ国語で表記されているが、各国語で表記されているのはクイックインストールに限った説明のみで、万一クイックインストールが出来なかった場合を考えると、説明不足感は否めない。
目立った日本語翻訳の誤りは見受けられなかったが、もう一歩詳細なマニュアルとして機能して欲しい所だ。
また、Palit独自の動作モニタ兼オーバークロックツールであるThunderMasterに至っては表記は英語のみであった。
初心者にとっては必要の無いものという割り切りとも受け取れるが、このあたりも気になるポイントではある。
ただ、表記の内容自体はOCも視野に入れたPC自作中級者以上であれば、特有の英単語から内容を類推する事が出来るので、マニュアルとしての役割は一応果たしているとも取れる。
これは本製品に限った話では無いが、自作PCのパーツは国産パーツがほぼ無いのが実情。
こういった言語の壁が少しでも少なくなれば初心者にも手が出しやすい状況が作れるのでは無いかと思われる。
このあたりは一足飛びには行かないだろうが、各社とも是非検討していただきたい所だ。
唯一、JetStreamロゴのシールのみ何に用いるものかわからず、というのもこのシール(?)鏡面反転された状態なのだ。
よく見ると粘着面を覆う薄い透明シートがあるのがわかったので、サイドパネルが透明アクリルのケース等で内側から貼るものなのかもしれない。
あるいはアイロンプリントの様なものだろうか…
同梱されているマニュアルにもそれらしい記述は無く、特別な指示も無い為本当に何に使用するものなのかわからない。
重箱の隅を突く様な事柄ではあるが、何か一言でも記載が欲しかった所ではある。
■既存環境のリプレースには注意が必要
筆者のテスト環境ではCPUクーラーにサイズの阿修羅 SCASR-1000を使用している。
本機の概要でも触れたが、基盤サイズが小さく、GPUクーラーとのサイズギャップを埋める為に補助プレートを用いている為、本来の基板末端に装備されている補助電源6ピンコネクタの位置が丁度CPUクーラーのフィンと同程度の位置になる。
新規にPCを組む向きにはさほど気にならないと思うが、既にある環境に対しビデオカードのリプレースという形で導入する場合、ケース内部の作業スペースによっては少々難儀するかもしれない。
CPUクーラーのフィンは薄い金属板の集合であるため、ちょっとした事ですぐに切り傷が出来てしまう。
けがの無いよう注意して作業して欲しい。
■動かしてみてわかった事、あれこれ
ここからは実際にビデオカードをインストールして、実働させてみた結果を元に書いていきたい。
冒頭でも触れたが、本レビューではスペックやベンチマークの様な数字での言及は控え、筆者の感じた事を主に書いていきたいと思う。
なぜなら、多くの人が本製品を使うにあたり、必ずしもクリーンな環境で使うとは限らないからだ。
その事を読者の方々にも理解した上で読み進めていただければ幸いに思う。
さて、実働におけるテストに当たって、使用した機材を以下に列挙しておきたい。
・CPU / AMD A-10 7850k
・マザーボード / MSI A88X-G45 GAMING
・メモリ / Team DDR3 1866MHz 8GBx2 + 4GBx2
・ビデオカード / Palit GeForce GTX 960 Super JetStream (本製品)
・HDD / CFD 128GB CSSD-S6T128NHG6Q x 2 (RAID0運用)
・光学ドライブ / Pioneer BDR-209XJBK WS
・電源ユニット / hec COUGAR GX-S 600W
・OS / Windows8.1 Pro Update1 64bit
本機を使用するにあたり、これまで使用していたR9 270X(本体サイズ比較に使用したビデオカード)を使用していたが、前ドライバを削除した後に同梱されていたDVDよりドライバの適用を行ったが正常にインストールが出来なかった。
そこでnVidiaのHPより最新ドライバをダウンロードし、適応した所正常にインストールが完了出来た。
テスト時に使用した最新ドライバは、こちら。 ドライババージョンはGeForce Game Ready Driver 347.52 WHQLドライバである。
この問題が筆者の環境に依存した問題なのか、元々の問題なのかは判然としないが気になったポイントではある。
本製品を載せ替え、ドライバを適応した直後、再起動後に数回ではあるが電源の投入が出来なくなる現象に見舞われた。
これも筆者のテスト環境に依存した問題であるのか、個体差による問題なのか判然としない。
同様に載せ替え直後、ウィンドウのドラッグや、動画の再生開始時にひっかかりやもたつきが認められた。
これらいくつかの問題は、テストを続けるうちに頻度は少なくなり、2015/02/20現在では全く症状として表れてはいない。
筆者の考える範囲で原因を調べてみたが、同様の症状に見舞われているケースは発見できず、原因の特定は出来なかった為、あくまでも筆者のテスト環境で起こった偶発的なものであると考えられる。
だが、少なくともこういった事が起こりうるという事は確かだ。
レアケースではあると思われるが、心に留めておけば慌てずに対処出来ると思われるので、導入を考えている方は気にしておくと良いだろう。
■0-dbテクノロジの効果は絶大
安定動作が確認出来たところで、実際の使用状況について述べていく。
まず、直ぐに気がついた事だが、動作音が極めて小さいという事だ。
本製品はGPU温度が60℃以下になった時、GPUクーラーのファンが停止する0-dbテクノロジが搭載されているが、ファン回転時もその動作音は極めて静かであり、ケースに収めて机下に収納するなどすれば、動作音はほぼ気にならないレベルであると言える。
筆者の使用環境では、机上に設置して使用しているが、ケース本体までの距離が50cm程度とかなり近いにもかかわらず、動作時にも小さく聞こえてくる程度の騒音でしか無い。
この時のファン回転数は700回転前後であり、これは本製品に搭載されたファンの回転数性能の30%程度となっている。
静音性のみならず、冷却性能にも多くのマージンを残していると思われる。
オーバークロックツールであるThunderMasterを使用したチューニングを施してもこれだけの余裕を残していれば幅広く設定を追い込んでいく事が出来るだろう。
実に遊び甲斐のあるビデオカードだ。
テスト環境は3200x1200のデスクトップ(1600x1200のモニタを2台使用)。
筆者が業務上主に使うのはAdobe Photoshop CC(2014)やAdobe After Effects CC(2014)、CELSYS CLIP STUDIO PAINT PRO、等であるが、これらのアプリケーションは多機能である反面、各機能や状態を表示するパレットが複数開く為、マルチモニタで使う事が常態化している。
マルチモニタでの動作も全く不安無く、きびきびと動作する。
OpenCLに対応しビデオメモリも2GB搭載である為PhotoShopが持つ固有機能も存分に使用する事が出来る(PhotoShopではOpenCLに起因する機能を使用する場合、ビデオメモリ1GB以上でありOpenCLに対応している事が求められる)。
After Effects CC(2014)はOpenCLでの高速化以外に、nVidiaのGPUプログラミング言語CUDAによる一部機能のアクセラレーションにも対応しているため、更なる効率化が望めるだろう。
なお、仕事に使用している状態では、GPU温度は50℃を超える事が無く、ファンは停止したままであった。
騒音が少ないのは考える作業中にも集中力を乱される事が無く、作業に没頭する事が出来る。
オフィスなどで使用しても周囲にノイズが漏れる事が無い為、ゲーミングユースのみならず様々な場面で使う事が出来るだろう。
本製品の個体にのみ出るのか、あるいはGeForce960の特性なのかは判然としないが、テスト以前に使用していたR9 270Xとは発色に若干の違いがあり、モニタの設定を全く変更していない状態でもわずかに明るく、コントラストが強い印象だ。
ドライバにて発色のコントロールが出来る為、使用するユーザーに合わせて変更は可能なので問題と言うほどのものでは無いが、違いがわかるレベルであったため明記しておく。
PhotoShopの環境設定ウィンドウ。正常に認識し、固有機能を選択出来ている事がわかる。
■ゲームにおける動作は快適そのもの、次世代のグラフィックスを堪能できる
本製品の主戦場であるゲーミングユースについても触れておきたい。
どちらのゲームもフルHD環境でテストを行っている。
筆者はヘビーなPCゲーマーではない為、重量級PCゲームは持ち合わせていないので、手元で動作を確認出来るモンスターハンターフロンティアG、同梱されていたMETALGEAR SOLID V GROUND ZEROSについて述べようと思う。
先頃大型アップデートが実装され、グラフィックスの品質が高まったモンスターハンターフロンティアGであるが、最新世代のビデオカードにとってはもはやこのクラスは軽負荷になるようだ。
多くのユーザーが集まる広場であっても、描画がもたつく事も無く、クエスト中もカクツキなどは全く認められなかった。
なめらかな動作で、狩猟生活を楽しむ事が出来るだろう。
METALGEAR SOLID V GROUND ZEROSは一昨年コンシューマ版が発売され、昨年末にPC版がリリースされた事で話題になったMETALGEARシリーズの最新作だ。
インストールした状態の描画品質はいずれの項目も高く設定されており、被写界深度による輪郭のぼけや、ライティングによる反射、水面に対する映り込み等大変リアルに表現されている。
それでも動作時にコマ落ちによるカクツキ等は全く認められず、極めて快適にプレイすることが出来た。
レビューの為にプレイし始めたものの、素晴らしい出来についつい時間を忘れてプレイしてしまった程だ。
ゲームテスト中、低負荷時のGPU温度は37℃と極めて低く抑えられていた。
こちらは高負荷時のGPU温度、70℃を超える事は一度も無く、ファンの回転も30%程度と静粛であった。
駆け足ではあるが、ここまで本製品のインストールから実働までを見てきた。
直接的な置き換え対象としてはGTX760が対象となるだろうが、こちらは補助電源6ピンx2を要求する。
本製品の補助電源コネクタは6ピンx1である事からもわかる通り、より低消費電力で同等クラス以上の能力を持ち得ていると言えるだろう。
仕事をする上でも、ゲームをする上でもそのパフォーマンスは不満のないもので、何よりも独自に開発されたSuper JetStreamクーラーは高冷却と優れた静粛性を兼ね備えた素晴らしいものであった。
いくつかの問題や気になる点はあったものの、トータルで見た場合のパフォーマンスは十分に満足のいくもので、多くのユーザーにとって不満は出てこないと思われる。
定格で動作させ、仕事にゲームにと幅広く使うもよし、強力な冷却性能を生かしオーバークロックチューニングを楽しむのも良しという、懐の深い製品に仕上がっている。
実売価格帯は3万円弱からと、アッパーミドルクラスのビデオカードとしてはやや高い部類に入るが、その点をマイナスに感じさせない完成度は、ちょっと背伸びをしたい自作PC初~中級者にも、遊び尽くしたい上級者にもお勧めだ。
是非とも手にとっていただき、その実力を堪能してもらいたい。
性能、静音、省電力、3つのSで新たな風を送り込め
・小さな基板サイズに最新世代のテクノロジーを凝縮し高い性能を実現。
・独自設計のSuper JetStreamクーラーの極めて高い静音性と冷却性能。
・前世代と比較して6ピンx1に納められた電力枠
全体に高いレベルでまとまっている本製品であるが、以上3点が飛び抜けている言えるだろう。
性能、静音、省電力の頭文字の「S」は本製品の冠にもなっているSuper JetStreamの頭文字でもある。
また「風」の一文字は本製品のロゴマークにもなっている。
これらの意味を込めて、愚直にではあるが、好印象な部分を伝えたいと考えてキャッチコピーとさせていただいた。
黒と赤のツートンカラーで、精悍なイメージを演出
基板補助プレートとGPUクーラーは黒、そこに赤の金属版でツートンカラーを構成しており、独自開発のファンも相まって非常に精悍なイメージを受ける。
大きさによる所有感も相当なものがあるだろう。
2スロット厚に収まっていれば尚良かった
高冷却とのトレードオフではあるが、ケース内部を実質3スロット分占有する厚さは惜しいポイントだ。
2スロットに収まっていたら、精悍なイメージにも更に磨きがかかったのでは無いかと感じる。
もう一声値段が下がれば更に魅力が増す
ミドルクラスとしては高価な部類ではないかと思われる。
競合相手になるであろうR9 380が2万円台中盤、前世代であるGTX760も同等の値段である事を考えるともう一声欲しかった、というのが正直な気持ちである。
時間が経過しもう一段こなれてくれば更に魅力が高まるだろう。
気になる事もあるが、それを覆い隠す快適さ
本文でも触れているが、多少の気になるところはあれど、魅力の部分がそれを大きく上回る。
消費電力も低く安心して使え、実働にもおかしな所は無い。
些末な事が気にならなければ、満点をつけても良いぐらいの使い勝手の良さがある。
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