1、はじめに
今回レビューするDiskstation DS213jは台湾のSynology社によるNASサーバーです。
日本での知名度はまだ高いとは言えないメーカーですが、海外ではQNAPなどと並ぶメーカーのようです
レビューに入る前にDS213jに関する情報です。メーカーの公式サイトから以下に引用します
Synology® DiskStation DS213j は、中小企業およびホーム ユーザー向けの手頃な価格の 2 ベイ NAS サーバーです。ホーム環境で省エネ、低ノイズ、安定性を実現し、ファイル ストレージおよびデータ保護付きの共有を提供するソリューションとして、特別に設計されています。DiskStation Manager (DSM) オペレーティングシステム上で稼働し、簡単に操作できる優れた機能が満載されています。
浮動小数点ユニットが CPU 優先マルチメディア処理を有効にします
マルチタスキング用の 512MB RAM
100MB/秒以上の読み取り、70MB/秒の書き込み
WOL(ウェイク・オン・ラン)- Ready
クールで静かなシャーシ
DLNA® 準拠メディア サーバー
Synology DiskStation Manager (DSM) 上で起動
以上メーカー公式サイトからの転記です
2、準備編
・パッケージ内容
パッケージ全内容です
分厚いマニュアルの類いはなく、紙類は起動するまでの手順を書いたQuick Installation Guideだけです
前面は電源ボタンと動作状況のランプのみです
背面のインターフェイスは電源端子と1000BASE対応LANが1基の他、USB2.0を2基。ケンジントンロックも備えられています
iPad 4thとの比較です
付属品一覧です
LANケーブルやHDDの固定ねじが入っているのはありがたい事です
・組み立て
DS213jはケースのみで内蔵するHDDは別売りなので新たに調達しました
今回テストに使用したのはDS213jでの互換性が確認されているToshiba製のDT01ABA200V(SATA600 5700回転)です
本体を正面向かって左側を前にスライドすると、接続端子が表れます
左右2箇所ずつの2台分、計8つのネジでHDDを固定します。マイナーチェンジがあったのかQuick Installation Guideの絵とはネジ止めの位置や形が若干異なります
HDDの固定後はカバーを元に戻してネジで2カ所止めれば下準備は完了です
ネジは2種類とも予備分まで入っています
以上がハードウェアの組み立てです。Quick Installation Guideには日本語がありませんが、絵ベースでの説明なので問題ないと思います
ここまでの所要時間は10分ほどです
・インストール
Quick Installation Guideに従って、電源ケーブルとLANケーブルを接続して電源を入れます
同様にWebブラウザで「http://find.synology.com」にアクセスします
接続を選択します
表示を確認して「>」を選択します
ネット経由で最新のDSMを導入できます
管理者アカウントの設定です
「インストール後…作成する」にチェックを入れておくとインストールと同時にSHRという形式(詳しくは後述)でRAIDが構成されます
インストール終了後、設定したパスワードを使ってログインするとDSMのクライアントが起動します
クイックスタートウィザードでは六項目について解説・ガイドがあります
以上DSMのインストールは20分弱で終了します
・各種設定
各種設定はここから行います。Mac風なデザインと項目分けです
使用する前にアカウント管理画面から、ホームフォルダを作成します(本画像は後撮りのため空き容量が減っています)
この後、macではファインダーのネットワークタブからDiskstationを選択し、更に「Home」を選択する事でマウントする事が出来ます。Winではドライブレターの割当を行うといいでしょう
共有フォルダの作成からでも出来ますが、Linuxとして運用するにはこちらがベターです
3、計測編
使用の準備ができたので転送速度の計測に移ります
今回のテスト環境はまずMacbook Pro 2012 mid、RAMを16G
B、システムドライブをSSDに換装済みの物です
LANは1000BASE対応です
次に、DELLのWin7デスクトップ、StudioDesktop(Studio 540)、メモリを8GB
に増設し1000BASE対応のLANボードを増設しています
この他、iPhone4s、iPad 4th(ともにiOS7にアップグレード済み)からもアクセスを行います
LANのルータにはBuffaloから1000BASE対応の4ポート実装ルータ、BHR-4GRVを使用しています
まずはガイドに従って設定されたSHRボリューム(synology Hybrid Raid)での計測です
今回は同一容量のHDDを2枚使用しているので、RAID1ミラーリングと同等の設定になります
ミラーリングは同一のデータを両方のハードディスクに書き込む事で冗長性を高める設定なので、この2TB2枚の場合保存領域は2TB(1829GB)となります
macからの計測です
読み込みはメーカー公称の100MB/sに近い数値が出ています
書き込みが若干遅いのが気になって、実際に近い状態での計測として大容量データの書き込みも試してみました
4.69GB動画ファイル→110秒 約42.6MB/s
43.68GBの画像フォルダ(1ファイル平均50MB前後)→1002秒 約43MB/s
Win7からの計測でもほぼ同様の結果が出ていましたが、画像ファイルをなくしてしまったのでベンチマークの詳細は省略します
また、大容量データの転送については
4.69GB動画ファイル→114秒 約42MB/s
43.68GBの画像フォルダ(1ファイル平均50MB前後)→1247秒 約35.7MB/s
次にRAID0ストライピングでの計測です
ストライピングは2台以上のハードディスクに平行して書き込む事で速度向上を計るもので、今回の場合、容量は2台の合計4TBです
RAIDの再構築
構築の前にまずは現在の環境を削除します
「ストレージマネージャ」より既存のボリュームを削除します
削除完了後、「作成」を押すとRAIDに使用するHDDを選択できます
不良セクタ等をチェックする「ディスクチェック」が選択できます
表示を確認して「適用」を選択します
あとは数分待てばストライピングされたボリュームが作成されます
それではストライピングでの計測です
Macからの計測です
メーカー公称の70MB/sOver,R100MB/sOver通りの数値が出ています
先と同様にファイルの転送も試してみました
4.69GB動画ファイル→67秒 約70MB/s
43.68GBの画像フォルダ(1ファイル平均50MB前後)948秒 約46MB/s
次にWin7からの計測です
Macよりも遅いのは、転送元がHDDだからでしょうか
大容量データの転送は以下の通りです
4.69GB動画ファイル→59秒 約79.5MB/s
43.68GBの画像フォルダ(1ファイル平均50MB前後)→794秒 約55MB/s
・他製品等との比較
1.mac標準のRAIDとの比較
比較対象はUSB3.0の外付けHDD、LacieMinimims(2TB)です
ベンチマークで、読み込み書き込みともに100MB/sを安定して超える本HDDですが、内蔵されているのはWestern Degital社の5400回転、SATA600対応のHDDと今回DS213jで運用しているものと同じような性能を持つHDDです
RAID1ミラーリング構成です
RAID0ストライピング構成です
上のように特にストライピングではSSDと見まごうほどの数値で驚かされます
しかし、実測では当然ここまで出ず、上の方で使用した50MBほどの画像を集めたフォルダでは
50MB/sほどの数値でした
同じく利用した4.69GBの動画ファイルなどの大容量ファイル転送では、400MB/sを超えましたが、この種のファイルを扱わない人にとってはDS213jは作業用ドライブとしても十分活躍できそうです
2.ルータ搭載のNAS機能との比較
今回のレビューでも使用したBuffalo製のブロードバンドルータ、BHR-4GVはUSB機器を接続してNASとして運用できる機能があります
こちらにも上で比較したLacieMinimums(2TB)を接続して運用しています。
しかし、USB2.0までの対応ベンチマークでも読み込み10MB/s、書き込み7MB/sほどしか出ず、作業用のフォルダには使えず、一時的な共有などでしか使っていませんでした
4、実用編
・iTunesサーバーとして
パッケージセンターから「iTunes Server」をインストールすると、DS213jに入っている音楽ファイルがどのフォルダにあってもiTunesから共有ライブラリとして読み込めます
現在iTunesを運用しているmacが故障中でスクリーンショットがありません。すみません
・複数端末からの同時アクセス
5.2Mbps動画の同時再生2台→問題なし
3台→ロードは遅いが再生は問題なし
4台→動画のコマ落ち発生、CPU稼働率100%
・モバイル端末からのアクセス
DS213jにはDLNAサーバとしての機能もあり、iOS端末やandroid端末からのアクセスには専用のアプリが用意されています
iPad上のappstoreで「synology」と検索した結果です。画面下にあと「DS Download」と「DS Cam」があります
対応するアプリをDS213jにも「パッケージセンター」からインストールすれば、クライアントにDS213jのIPアドレスを入力してすぐに使用する事が出来ます
(各種クライアントを使用する際には、本体側のコントロールパネルからQuickConnectを有効にする必要があります。)
Q左上からビデオ再生、各種ファイル再生(pdf等含まれます)、写真閲覧、音楽鑑賞、ユーティリティ、そしてプライベートクラウドの管理となります
それぞれ音楽やビデオ、管理ソフトなど機能が分けられていますが、できればいくつかをまとめられれば容量面でも助かるのですが・・・
また、DS Videoは対応する動画フォーマットが多くないので(.mp4は再生できましたが、.aviは不可でした)、サードパーティのクライアントを使うのも良いかもしれません。汎用DLNAクライアント、「mconect」からのアクセスは確認できました
・バックアップ
DS213jは2台のディスクを使うので、RAID0、RAID1、BODが実装されています
このうち、RAID1ミラーリングは冗長性がなく、片方が壊れると復旧が難しくなるため、バックアップをとることが推奨されています
DS213jでは背面にUSB2.0端子が2つあるのでそこに外付けHDDを接続すると良いでしょう
また、USB端子にプリンタをつなげる事でプリンタサーバーとして使う事も可能のようです(まだ試してはいません)
・Linuxとしてのカスタマイズ性
DS213jにインストールされるDSMはLinuxベースのため、TelnetやSSHからのアクセスが可能です
下準備はコントロールパネルの「ターミナル」からそれぞれの接続を有効にするだけです
準備編でホームフォルダを有効にしていると以下のようにならず、ホームディレクトリが作成されるので、SSHでの運用を考えている方はホームフォルダの有効化をおすすめします
初期状態で用意されているコマンド類は多くないので、込み入った操作を行う人は手動あるいはパッケージセンターからの拡張が必要になりそうです
パッケージセンターにはpythonやphp等のアプリも用意されています
5.まとめ
今回DS213jを扱ってみて思ったのは操作や環境構築の簡便と予想以上の快適ささでした。ウィザード形式で設定を行えるので、NASの入門として初心者にもおすすめできる一品です。
あるいはLinuxサーバを安価に構築したいという人にもおすすめします。一般のPCやタワーサーバを使用するよりも低消費電力、低騒音のサーバを25000円+HDD代で構築出来るコストパフォーマンスは大きな魅力です
動画でも安定して転送できる余裕のあるNASを簡単に構築できるNASサーバ、それがDS213jです
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