レビューメディア「ジグソー」

ゲーム機MOD作るのに最適。十分使える小型PC作るならこれ。

一年半くらい前、私はメインPCを一時的にAMD-APU A10-7870Kに変更したことがある。

それから半年弱経って、AMD-RYZEN7が発表されたのでさっくり乗り換えたけども、別段APUの速度自体に不満を感じていた訳では無かった。

 

ただ、既にA10-7870Kの性能は「必要十分」とは言えない。
コンシューマでPCを使う人のうち、どの程度PCゲームを嗜むかどうかは不明だけども、7870Kが搭載するGPUの性能は既にローエンドのビデオカードにすら届かない。

 

ブラウジングや事務処理、映像再生程度なら困る事がないものの、ゲームとなると制限だらけだ。

ミドルクラスのビデオカードを搭載することで、ゲームは動作出来る。

しかし、ビデオカードの搭載を前提とするならAPUを積極的に選ぶ理由がない。

販売当時でも、同価格帯の他社製CPUのほうが性能面でGPU以外は全て優位だったからだ。

 

そういうわけで、AMDはようやっとAPUに新型コアを搭載した。
今回レビューすることになったRyzen3-2200Gは、その新型APUでは下位のモデルにあたる。
ただ、下位モデルといってもその内容たるや、旧型APUの最上位モデルより圧倒的に進化している。

 

ただ、スペック表だけを眺めてみると、数値上ではそこまでの性能向上があるようには見えない。
といっても、CPU/GPU共に世代が大きく違う上、集積率は4倍以上も増しているので、スペック上の数値は似たようなものでも、性能についての差異はかなり大きい。

実際、使ってみた限りで言うと「十分これだけで使えるPCが組める」製品だ。

その理由は次項以降で述べる。

更新: 2018/05/20
お姿拝見

神の御姿なんだから、そりゃ神々しいに決まっておられる

まず、製品写真は掲載しておかないとイカンので、性能云々語る前に写真掲載から。

 

 

まあ、AMD神の御姿なんだから、褒め称える以外に無い訳だ。
といっても、CPUとか見た目だいたい一緒ですけどね。

ただ、右上にしっかり「RADEON VEGA GRAPHICS」のロゴが入り、最新GPU搭載モデルという点がきちんと提示されているあたり、かなりの自信が伺える。

コア本体。
製造は、RyzenX-1X00シリーズ同様に中国となっている。
なお、Ryzenシリーズに限らず最近のAMD製品はコアとヒートスプレッダーの接合をソルダリングで行っていたが、このRyzen-Gシリーズのみはグリスによる接合が採用されている。

APUは普及帯製品ということで、コストダウンと歩留まりの向上が必須だから、販売価格帯を考えると仕方ない側面はある。

付属するクーラーは、Wraith Stealthと呼ばれる純正クーラーでは最小のモデルとなる。
このクーラー自体の性能はごく普通だが、一般的な利用においてはこれで殆ど問題なく冷却可能。

 

 

クーラーの背は他社純正クーラーより若干高めだが、そのぶんファンは大きくしっかりしたものが装着されており、ブレもなくそこそこ静かに動作する。

ただ、高負荷状態だとファンの回転数が大きく上がる傾向があるので、ゲームなどで長時間使う人などはもう少し大きいクーラーへの変更を考えた方がいいかもしれない。

更新: 2018/05/20
基本性能

下位コアとか嘘だろオイ?

旧世代APUが持つ最大の弱点は、CPUとしての基本性能で他社製品に比べて劣っている点にあった。
元になったFXシリーズ自体が既に性能面で劣っていた上、そのFXのコアが半分しか搭載されていないAシリーズは、どうしてもCPU自体の性能面で不利だったのだ。

 

しかし、それも過去の話。
その性能差は見事に取り返されている。

まずは、定番たるFireStrikeの結果だが、旧世代APUと比べてGPUの性能向上は60%近い。
元々、APUの搭載するGPU性能は同世代のnVIDIA社製ローエンドGPUに匹敵か、それを上回るスコアを叩き出すが、今回もだいたい同世代ローエンドGPUに近い数値となっている。

なお、CPU内蔵型のGPUとしてはこれは破格の性能で、他社製品の最上位CPU内蔵型のGPU(現在はデスクトップ用としては採用されていないので、二世代前になるが)が1800前後のスコアなので、それを60%強上回っているという時点で、相当に強力と言っていい。


これまた定番となるCINEBENCHI。
CPUの性能向上はGPUより若干上で、およそ66%の向上となる。
これ、互いの整数演算コアの数は同等なので、クロック数で劣るRYZEN3-2200Gがそれを6割以上も上回るということは、アーキテクチャ刷新の効果がどれほど凄いかよく判る。

反対に、面白い結果となったのはOpenGLの処理で、こちらは殆ど数値に変化が無い。


既に形式が古く、現行CPUの計測には不向きとなっているCrystal Markの結果は参考値として掲載するが、やはり性能向上の効果がはっきりと出ているのが判る。

特にメモリ回りの速度差が顕著だが、これはDDR3からDDR4への更新で動作クロック自体が大きく向上した点も影響している。



このように、ベンチマークを見る限りにおいて、旧世代の上位APUから6割もの性能向上を見せている訳だが、これが「下位」だというのだから驚かされる。
実際、上位となるRYZEN5はこのスコアから更に60%近く上回るため、上位同士の性能差を云々した場合は、ほぼ倍の性能となっていると言っていい。

 

ただ、性能向上したといっても、二年近くも発売時期に差がある製品。
日々処理量が増している最近のゲームにおいて、ちゃんと使える製品になっているのだろうか?

 

次項では、実際にプレイして「遊べたのか」どうかを検証してみる。

更新: 2018/05/21
ゲーム性能

フルHDで、割と最近のゲームがちゃんと遊べる

今回、テストのために選定したゲームタイトルは、ベセスダソフトウェアの新作である
『Wolfenstein II: The New Colossus』だ。

何故にこのタイトルかというと、

 

・割と最近の発売である → 2017年11月リリース
・処理が遅いと「ゲームにならない」内容である → 処理落ちが起きると、その時点で死ぬ
・ミドルクラスのビデオカード推奨である → RX470-4G以上が推奨。

 

要するに、推奨スペックが「ゲーム出来るPC」の水準の新作ゲームが遊べるなら、RYZEN3-2200Gだけで十分ゲーム用PCが構築出来、ビデオカードの購入が不要って判断が出来る。

 

で、結論から言うと「フルHD環境なら遊べる」

正直、『設定弄らず始めたら、処理落ちしまくるだろうなー・・・・』と考えつつテストプレイしてみたのだが、何ら設定を弄ることなしに遊べてしまった。

一応、ミッション1を全てクリアするまでやってみたのだが、処理落ちするような事は一度も無し。
流石に視点移動などはビデオカード搭載時のようにスムーズではないが、常時45FPS前後を維持する事が出来たので、「十分に遊べる」レベルの性能がある。

この手のFPSにおいて、処理落ちがあると「エイム(照準)がブレる」ために命中精度がごりっと下がる傾向があるのだが、そうした感じは一度としてなかった。

ちゃんと狙った位置に射撃出来ているし、敵が一度に大量出現した場合は処理落ちが起きたものの、それでもゲームとして成立しないほどひどくない。

PS4などでも発売されているタイトルなので、PCゲームとしてそこまで重いゲームとは言えないが、それでも推奨環境がミドルクラスGPUとなっているタイトルなのに、ビデオカード非搭載でも十分に遊べる。

これは完全に意表を突かれたというか、素直に驚かされた。
一応、これ以外のタイトル(Sniper Elite 4)もインストールして遊んでみたが、こちらもゲームする上で何ら支障なく遊べた。

割と最近のタイトルでも、フルHD環境ならそれなりに遊べるレベルの性能を内蔵GPUだけで達成しており、用途によってはかなりお得かつ広範囲に使えるPCが組めるだろう。

更新: 2018/05/21
「microATX」もしくは「Mini-ITX」を使用して小型省電力PCを組む (AMD Ryzen™ 3 2200G) PREMIUM REVIEW

ゲーム機MOD作るのに最適過ぎる。

・・・・ええ、今回もやっちまいました。

なんかもう、レビューするたびにゲーム機MOD改造PC作ってる気がしますが、今回は実のところA8-7600を使って作っていたものが、完成直後くらいに今回のレビュアー募集があったので、狙ってやった訳ではなかったり。

 

そういうわけで、今回は「Int〇l入ってない」プレステ改造PCです。
PSXは以前作ったPS2より筐体が大きいのですが、これは元々『ビデオカード内蔵のゲーム機MOD』を作るという目的でやっていたため。

こちらが、元々の構成(A8-7600+RX550)ですが、ビデオカードまできっちり入れた結果、実は電源回りの出力不足に陥り、ベンチマークこそ回るのですが長時間の動作で不安定化する傾向が・・・

 

んで、こちらが今回RYZEN3-2200Gを使って作った方の中身です。
ビデオカードを撤去したことで、電力供給と筐体内にかなり余裕が出来たことで、冷却性能と安定性は一気に改善。

PCとして、長時間使用でも一切問題が無くなっただけでなく、性能も大幅に向上しました。
筐体の構築については、単純にぶった切って納めただけに見えますが、ビデオカードやストレージのマウンタを構築、マザーボードや電源もネジ止め式としたことにより、接着固定だったPS2と異なり、一般的なPCケース同様、パーツ交換が可能となっています。

なお、このクラスでもPCとしてはかなり小さい部類で、一般的なスリムタワーPCと比べて60%前後の体積に小型化しています。

そして、ここまで縮小してもなお「CPUの動作温度は、最大71℃」と、実用限度内。
二時間以上のゲームプレイにも十分耐えています。
コストダウンによるコア回りのグリス化による影響が懸念されたものの、実用限度内で収まったことを考えると、割と無茶な小型化をしても冷却性能は十分に確保出来ると判断して良さそうです。

更新: 2018/05/21
総評

この性能でこの価格帯とか、お買い得感ハンパない

いや、正直もう褒めるしかないです。
お値段と性能のバランスがかなり良いし、APU最大の問題だったCPUの性能不足は完全に解消され、なおかつGPUの性能は大幅に向上。

最近のゲームタイトルでも、フルHDならビデオカード非搭載で十分遊べるという、文字通り「真にユーザーが求めていたAPU」を実現出来た製品だと思います。

CPU・GPU性能が、共に必要十分以上であり、特に「ちゃんとゲームが遊べる」性能の小型PCを、かなり安価に制作出来るので、今まで「コスパ」や「性能」で小型PCの制作に踏み切れなかった層に、一気に門戸を開いたと言えます。

もう、最終的には「実際に使ってみて」としか言えないんだけども、「え、こんな使えるの?」って小型PCが、拍子抜けなほど簡単に安価に組めますよ。

29人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • jakeさん

    2018/05/21

    半年前のタイトルが、APUですんなり動くんですねー。
    驚きました。
    非力かもと思って、比較的古いゲームタイトルを選んでたしまっただけになおさら。

    それ以上にPSXに収まって実用的に動くことに驚きました。
    しかもちゃんとスロットインも稼働してる!
  • Vossさん

    2018/05/21

    to:jakeさん
    後で気付いたんですが、タイトルがDirect X12に対応している点も大きかったようです。
    AMDのGPUはDX12での動作に優位性があるので、内蔵GPUでもDX12動作はミドルクラス下位くらいの性能は出ちゃうのかも。

    PSX、後日ケースとして(おぃ)何か書こうと思いますが、スロットインDVDのほか、メモリスティック部分はSDカードリーダーとして機能するよう作ってあります。

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