オフィスワーカーにとって「座って作業する」ことは、働いているの時間のほとんどを占める行為。この時使う道具=椅子は疲労軽減、ひいては作業性アップに重要だ。またプライベートにおいても、PCによって得られるもの(ゲームやお絵かき、ネットサーフィン等々)を趣味としている場合、椅子によって肩や腕の疲労度や腰への負担が違ってくる。
自分は肩こりはあまり感じない体質?なので、実は最近まであまり椅子にはこだわっていなかったのだが、昨年暮れに高性能オフィスチェアを入手し、使い始めたところすこぶる手首と二の腕、腰のあたりの疲労が少ない。やはりPC作業のようにほとんど同じ姿勢を長時間強いられるような場合には「姿勢」というのは重要だと実感した。
長時間同じ姿勢を強いられるものと言えば、車の運転もその一つ。これも正しいドライビングポジションを取ることができれば、疲労軽減のみならずブレーキ操作時に出すことができる踏力の最大化はできるし、無理なく素早いステアリング操作を行うこともできる。街ゆくドライバーを見ていると、腕が完全に伸びきっているとか、席が後ろ過ぎて「ブレーキ、底まで踏めんやろ」というきちんとポジション取れていない人も多く、きちんとした体制で運転したほうが体が楽なだけではなく、危険回避力高いンだけどなーと思うこともしばしば。これには「シートの出来」も結構重要で、一部の廉価車やユーティリティ過剰重視の車の中には「正しいポジションをとろうにも、それをすると苦痛」というようなシートしか備わっていないものもある。一方きちんとしたシートを装着している車は、自然と楽な体勢がとれ、かつ、操作が確実に最低限の力で行えるようになっている。
そんな車のシートのノウハウをPCチェアに持ち込んだのがAKRacingのゲーミングチェア。もともとプロ向けレーシングシートを製造する会社だったらしいが、およそ10年ほど前からレーシングチェアスタイルのオフィス/パソコンチェアを販売しているらしい。
考えてみればオフィス/パソコンチェアとレーシングシートでは共通点も少なくない。長時間同一の姿勢を強いられる腰や首の疲労度を下げながら、四肢は自由に動かせることが重要で、首の動きも妨げないようにしなければならない。足の動きにかかる力の入れ具合の差(ブレーキを踏む踏力とフットスイッチのオンオフ程度では力のかかり方が違う)や腕の可動範囲の差(ステアリングを右に左に素早く切る動作が行われるドライビングとキーボードやマウスなどの操作がメインで二の腕くらいまで比較的固定で済むPC作業)はあれど、「体幹をきちんと支え、疲労を蓄積させないようにしながら、四肢と首の動作を妨げない」というそれ用の椅子に対する要求事項の根幹部分は同じ。
先日入手した高性能オフィスチェアも使っていると一部不満も出てくる。今回AKRacingのゲーミング・オフィスチェアの最上位機種、Pro-XとどちらがPC作業に適しているのかを評価して見た。
AKRacingのゲーミングチェアは組み立て式。シートバックが90cmほどある椅子としてはコンパクトなサイズの箱で届く。内容物としては、
・五本足ベース
・背もたれ部
・座部
・キャスター
・ヘッドレスト
・ランバーサポート
・シリンダー
・シリンダーカバー
・シリンダーベース
・サイドカバー
・金具類
・組み立て説明書(カラー)
といった感じ。
一般的な家庭では必ずしもそろっているわけではない六角レンチ(2サイズ)と軍手ほどには厚くはないが布製手袋も同梱されており、特に用意するものなく組み立てられるのはユーザーフレンドリーだ。
なおそれぞれの部品は見た目よりは重くはないが、特に背もたれ部と座部はソコソコの重量があるため、組み立て時には段ボールなどで床を養生したほうがよいだろう(椅子が入ってきた段ボールをたためばちょうど良い感じ)。
カラーの組み立て説明書は詳しく、ほぼ迷わない。ただ背もたれ部と座部の接合はかなり力がいる。左右2か所ずつ、計4か所をボルトで固定するのだが、順序的には(座った状態での)右上⇒左下⇒右下⇒左上の順序で締めていくのが楽かもしれない。というのはこのチェア、組み上がると背もたれ部と座部の隙間がほぼない。
これが高級感にもつながっているのではあるが、組み立て時には座部に背もたれ部を押しつけながらボルトを締める格好になる。この時座部からのびる接合金具は左側はフリーでボルトが締めやすいように角度が調整できるのだが、リクライニングレバーがあらかじめ取り付けてある右側は、そのばねの力もあり動かすのは危険。そのため自由度の少ない右側の、それでも比較的取り付けやすい(支点から遠い)上側のボルトを入れたのち、対角線上の左下のボルトを入れて椅子のだいたいの形を作った後、右下のボルトを背もたれ部を押さえさけながら挿入し、一番自由度の高い左上を最後に挿入、すべてのボルトがきちんと噛んだ状態で増し締めする、という順序が一人で組み上げる場合はやりやすいと思う。
実はもう少しリクライニングを後ろに倒した方が、背もたれ部と座部とのクリアランスに余裕ができるので接合しやすいが、このやり方をとろうとするとリクライニングレバーを倒した途端すごい勢いで前に倒れようとする金具を力で後ろ側に持っていかねばならず、相当の力を要するし危険なので万人には勧められる組み立て方法ではない(←経験者は語る)。
ここをクリアすればあとは大して力を入れるところもなく組み上がる。強いて言えば五本足ベースにキャスターを差し込む部分が少し力を要するぐらい。
組み立てていて「ハテ?」と感じたのが、サイドカバー。明らかに付属の説明書写真と形状が異なる。
どうも2016年7月に製品改良がおこなわれたらしい(サイドカバーのデザイン変更について)。右側の背もたれ角度調整機構と対をなす左側の背もたれとの接合部分のカバーは、ボルト(1か所)の位置とカバーすべき範囲の関係から取付方法が1つか考えられないので迷わないが、背もたれ部の固定ボルトの目隠しとなるパーツは左右が不明で、前述のHPの記述に気が付かなければ逆に取りつけてしまう可能性もある。ボルトとその金具部分の単なる目隠しなので、逆に取りつけても機能的問題はないのだが、ここはコピーのペラ一枚でも案内があると親切だと感じた(なお輸入元テックウインドのサイトでの製品HPには、2016年8月現在新パーツにアップデートされた組み立てマニュアル(v1.1)が掲載されている)。
またこのほかにもいくつか本品には発売後の改良が入っているようだ。一部ネットの情報では、シリンダーが長く(高く)日本人の体格に合わない(足がつかない)と記述されているものもあるが、現在はショートタイプシリンダーとなっていて、十分低い位置まで降ろすことができる。また、このシリンダー交換改良当初はカバーとなるプラ製のシリンダーカバー(ジャバラ)が従前のままで長すぎて、一番下まで座面を降ろした時につかえてひずみが出たとの情報もあるが、今回のものはそんなことはなく、ショートタイプシリンダーに合うものとなっている(レビューを書いているうちに正式リリース(ガスシリンダー・ガスシリンダーカバーの仕様変更について)された)。
ヘッドレストとランバーサポートは、レーシングシートっぽく肩ベルトを通す穴を模してある背もたれ部の穴を使って固定する。
ただヘッドレストは現実問題として2段階(前述の穴に固定する方法とかぶせて止める方法)しか高さ調節ができない点は座る人の体格を制限する可能性がある。またランバーサポートは平ゴムで止めているだけのため、上下動は無段階に可能だが、逆に何の固定機構も持たないので、途中の位置で固定しづらいのが問題か。
ではこの椅子の各種の機構を評価していこう。⇒AKRacing の徹底レビュー
まとめると、
○表皮のPUレザーは肌触りがよく、普及車クラスのシートを凌ぐ
○横方向の体の保持に優れており、矯正的意味合いも含め理想の体位を保たせる
○もも裏(ひざ裏)のあたりの盛り上がりは自然な後傾姿勢を取らせ疲れない
○ランバーサポートは上下に自由に動かせるので最適な位置に配置可能
○ひじ掛けの回転方向の調整は腕全体を休ませることができる
○リクライニング時の角度調整は刻みが細かい
○フルフラット時には「寝る」ことも可能で安定性も高い
○擦れることが多い五本足ベースのプラカバーは気遣いが素晴らしい
○キャスターの滑りもよく、重量の割には取り回しが良い
●PUレザーはやはり熱を持つため、夏は空調が効いた部屋での使用が前提
●ヘッドレストは「枕」であって、調整幅はない(高さが二択のみ)
●ランバーサポートは平ゴムで通しているだけで、最適な高さでの固定ができない
●アームレストはリクライニングとは連動しないので、倒した時にはフィッティングが悪い
という感じだ。改良前のものを知らないので想像になるが、ショートタイプシリンダーで170cmの身長のcybercatはべったりと足を床につくことができるので、多くの日本人の体形に合うように調整されたゲーミング・オフィスチェアだと感じた。全面PUレザーの表皮は高級感あふれ、掃除も簡便、冷房がない部屋で夏使うのだけは厳しいが、肌触り良く空調さえ効いていればすこぶるすわり心地が良かった。
ではこのフルフラット可能ですわり心地が良いゲーミング・オフィスチェアは、どのように机の(PCの)前での作業を変えるのだろうか⇒AKRacing を使うことで変わったことや解決したこと
まとめると
*下半身をきちんと保持するので楽な姿勢でPC作業を行うことができる
*(机の高さが合えば)アームレストの開き調整が秀逸で疲労軽減になる
*机の前で休憩をとるときはフルフラット可能で疲労解消に役立つ
*ランバーサポートは自由に動かせる(場合によっては取り外せる)ため邪魔にならない
と「オン」と「オフ」ともに使えるゲーミング・オフィスチェアだった。
今回AKRacing製ゲーミング・オフィスチェアの最高峰、「Pro-X」を使用して見た。
このチェアの特徴として、
○PUレザーの良質な肌触り
○自然な後傾姿勢が決まるチェアの構造と体位サポート(特に横方向)
○アームレストの垂直方向以外の広い調整幅でのアームサポート
○フルリクライニングまで段階が細かい背もたれ部調整機構
という「オン」と「オフ」両方使えるチェアだった。
ただ
●メッシュ生地の椅子に比べると熱を溜めやすいため、空調の効いた部屋で使うべき
●アームレストの高さ方向の調整がやや足りないので使う机を選ぶ
●アームレストは座面固定のためリクライニングに追従せず、かなり倒したときは使いづらい
●ヘッドレストは位置がほぼ二択のため合えば合うが体格によっては合わないかも
●ランバーサポートは無段階に上下動可能だが固定機構を持たないので定位置に置けない
という気になる点もあった。1番目はPUレザーの肌触りの良さとのバーターなので購入時に意識しておけばよいことだが、特にアームレストの方は「工夫」の余地がないので、改良を望みたい。
今回、AKRacingのゲーミング・オフィスチェアシリーズの最上位機種、Pro-Xをレビューさせていただいた。通常使っているメッシュのオフィスチェアに比べるとすわり心地(肌触り)とホールド感が良く、リクライニングの段階も細やかで、いい意味で余分な力を抜いて座ることができる高機能なゲーミング・オフィスチェアだった。
一部もう少し改良が望まれる部分もあるが、発売後も細かに改良を繰り返しているAKRacingであれば、ゆくゆく対応が進むのではないかと期待している。
場合によってはある時期の人生の半分程度の時間を座ることになる「椅子」。ぜひとも自分に合った疲れない椅子を見つけて、仕事に遊びに使い倒してほしい。
末筆とはなりましたが、今回このような機会を与えてくださった テックウインド株式会社様 、ZIGSOW事務局様に御礼申し上げます。またレビューアップまでの応援など常に支えとなってくれたおものだちの皆様はじめジグソニアンのみなさまに感謝いたします。
ありがとうございました。
【仕様】
椅子の高さ:130.5~138.5cm
座面幅:39cm
座面奥行き:55cm
座面高さの調節幅:35.5-43.5cm
アームレスト高さ:28-36cm
背もたれ高さ:95cm
最大幅:65cm
荷重制限:150Kg
正味重量:22Kg
AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェア (グレイ)紹介ページ
新たに改良されたショートタイプシリンダーで幅広い体格・年齢層にフィット。特にもも裏や腰回りのフィッティングがよく、そのすわり心地は普及車のシートを凌駕する。
このAKRacingのゲーミング・オフィスチェア、「Pro-X」で一番感心させられるのはその表皮だ。細かいシボ入りでとても肌触りが良く、クッションも厚すぎず、硬すぎずの絶妙な硬さ。チョイ座りではもう少しクッションが柔らかな方が初期の快適性は高いのだが、沈み込み過ぎるシートは長い間座っていると実は疲れる。これは車のシートに置き換えてみると良く判る。短距離での移動が多い軽自動車は意外にやわらかなシートだし、第一印象の座り心地を良くしようと?普及車のシートも結構柔らかいものが多い。ただ中級車以上の車のシート、特にロングツアラータイプの車のシートは初期の印象はちょっと硬め?という感じのことも多いが、いたずらにやわらかすぎることなく長時間座ると実は疲労が少ない。このAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアもその方向性。沈み込みすぎない硬さはちょうど良い。そして、横方向の体勢保持機構がイイ感じだ。車のシートのように背もたれ部はサイドが張り出しており、バケットシート...と言うほどではないがきちんと体幹を保持する。そして車のシートっぽい構造としては、ももの裏というか膝裏というかシート座面の前端が中央よりむしろ高くなっていることが挙げられる。この構造は腰のあたりの落ち着きを増し、深く腰掛けることができる。このようにAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアは「しっかりと腰をつけて深く座るとすこぶる調子が良い」シート構造となっている。
さてこの座り心地の良いシート素材=PUレザーだが、触った感じはすこぶる良いのだが、ちょうど夏だったこともあり座っていると少し暑く感じた。そこで現在使っているメッシュの椅子と比べてどれほど熱を溜めこむかの比較テストをした。日が当たらない部屋に空調なしでAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアと対照となるErgohuman Pro ottoman
を並べて2時間ほど放置した。その後「人が座ると隠れるだろう」というところにアタリを付けて、A4の型紙を置き、その頂点と中央の5ポイントに印をつける。
そしてその位置を非接触型赤外線温度計
で計測する。その後その上に30分間座る。この時は体温が伝わりやすいよう短パン着用(お見苦しいのであえて絵は乗っけないw)。30分間の発熱の差ができるだけ少なくなるよう、座っている間は静かにイヤホンで音楽を聴きつつじっとしていた。30分経過後立ち上がってその直後にその5ポイントの温度を再測定した..という手順。
このときの室温は31.2℃で
日差しがないとはいえ、空調も扇風機もない状態だと動くと汗ばむ感じ。じっと座っているだけなら耐えられるが、結構不快指数は高い。この時AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアのPUレザーは、太ももが座面にくっつくような(貼りつくような)感じになった。
というのもスタート時点ですでに室温より座面が暖かい。色的な問題なのか、クッション部も含んだ素材的なものに起因するのか、やや蓄熱している?(二つの温度計をキャリブレーションしていないのと測定原理が異なるので、温度計間の差かもしれないが)これが30分後はいずれのポイントも上昇。特に短パンを挟んでいたお尻側(背もたれ側)より直接太ももが座面に触れていた前方の方が温度上昇幅が大きいので、確実に体温が座面に伝わっている、ということ。
一方対照のメッシュ座面のErgohuman Pro ottomanは最初から座面温度が低い。これは座面がメッシュのみで蓄熱しそうなクッション部がないことに起因するのかもしれない。はたして同様に30分座った後の温度変化は...
絶対的な温度自体も低いが、変化も少ないし、中央部は全く上昇がなかった。これは計測誤差なのか、室温自体の変化なのか、あるいは座ったことによって汗などが出るため気化熱が発し座面温度ともども下げたのかはわからないが、少なくとも「ほとんど上昇していない」とは言える。いずれにせよ、熱を溜めこみやすいかどうかという点ではPUレザー製のAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアのPUレザーはメッシュ素材の椅子よりは蓄熱してしまうというのがわかった。したがってこの椅子は適切に空調が効いている部屋での使用、というのが望まれるだろう。
付属部品であるランバーサポートとヘッドレストは、レーシングシートを模したスタイルから背もたれ部に肩シートベルトを通すような穴が開いているのを使って椅子に取り付ける(組み立ての項で示したようにヘッドレストはもう一つ「被せる」固定方法がある)。
ランバーサポートに関しては平ゴムバンドを通して背もたれにくくりつけているだけで、上下に自由に動かせるため、座布団風にも背当て風にも使うことができる。ただ逆に固定もされていないので、席から立つとずり落ちてしまい、定位置に保つことは難しい。これは、平ゴムの内側の一部にくだんの穴と噛み合うようにギザギサのプラ部品をつけるとか、ゴムを挟んで動かないようにするクリップ状の部品をつけるとかするだけで改善できるように思うので、ゼヒ改良してもらいたい部分だ。
一方このAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアに関してはアームレストの調整幅が広くさまざまな体型、好みのポジションに合致させることができる。低価格帯の椅子では固定、あるいは上下動だけのアームレストだが、これに加えて前後と開き閉じ(V字⇔八の字)の調整もできる(左右はボルト調整)。
そのため、キーボードの幅や左手デバイスの有無などの違いによる上腕の開き具合の差があっても、多くの場合腕全体を休ませることが可能なつくりだ。ただ残念な点が2点。1点目は上下方向の高さの調整幅(むしろ高さそのものかもしれない)。現在使用しているPCデスクは天板面まで床から72cmある。この場合、このAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアではアームレストがツライチにはならない。若干高さ方向の長さが足りないのだ。
会社で使っている机(天板面高さ70cm)ならギリ大丈夫だったかもしれないが、現状では若干ながら段差ができてしまう。このアームレストは座面のベースとなっているフレームにボルトで留めてある機構。今回日本人の体形に合わせてシリンダーがショートタイプに部品改良されたが、このことにより座面が下がる⇒アームレストの取付位置が下がる⇒アームレストの最大伸長高が下がるとなってしまったのだと思う。アームレストの高さ調整幅はAKRacingのゲーミング・オフィスチェア共通なので、ショートシリンダーへの部材変更後は最も座面の裏(下)の地上高が低いPro-Xがワリを喰った形だろうか。またこのチェアのアームレストの取り付けとリクライニングの機構からは「椅子をリクライニングさせてもアームレストの角度は変わらない(水平固定)」ため、若干リクライニングさせて前を上げて机との段差を解消するという使い方もできない。
このリクライニングとアームレストが連動しない、というのがもう一つの欠点だ。リクライニングの段階が細かく(12段階)、背もたれを垂直から水平まで様々な角度で調整できるが、どんなリクライニングの角度でもアームレストは水平のままで位置も動かない。深めに倒したときはアームレストが遠くもなるので、それでもあえて使おうとすると意識して手を伸ばした状態にしなければならず、むしろ疲れる感じになる。
ただし、フルフラットまでリクライニングして「寝る」のであれば、このいつも水平で定位置(=太ももの横あたり)にあるアームレストとその支柱は「落下防止柵」にもなるのだが。
一方そのフルフラットまで倒れるリクライニング機構の使い勝手は快適だ。完全にフルフラットになるが、バランス良く設計されており不安定感は一切ない。
リクライニングを深く倒した状態でランバーサポートを適切な位置に挟んでやると、まるでいっぱいに背伸びしたがごとく背筋が伸びる。またショルダー部が前方に出たバケット状の形状は寝た時の安定感もよく、まるで良くできた車のシートで車中泊をしているようだ(飛行機の上級シートもそうなのかな?←乗ったことないので知らんけどw)。このフルリクライニングというのは思った以上に快適で、そのまま寝てしまいそうになったぐらいだ。
あと細かなことだが、AKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアを使って感心したことが2点。それはあまり語られることのない?足回り系に関すること。
ひとつは「気遣い」。実はこの椅子を支える5本足のベースだが、そのヒトデのような形の先(キャスターが付く側)の上面にプラカバーがしてある。
ここは人によっては足を乗っけたりするし、位置的にもどうしても擦れやすい部分。会社や学校にある何年も経過した椅子を見てもらえればそこだけ塗装が剥げた椅子というのも多いはず。そこにカバーがついているので、ある程度時間がたってもみすぼらしい感じにならないのではないだろうか。今回はカラーが「グレイ」で金属素材がそのままという感じだったので傷が目立たないと思われるが、他のカラー、特にレッドやブルーはそのカラーで足も塗られているので、このカバーがないと使用しているうちに足の先の部分だけハゲてくたびれた感じになってしまうかもしれない。それが防止できそうなこのカバーは永く使う上で満足感を持続させる工夫だと感じた。
そしてもう一つはキャスター。他のシリーズとの比較表でわざわざ「ポリウレタン製双輪キャスター」と他とは違っていることを明確にしているこのキャスターは、すべりが良く、方向転換も非常にやりやすい。全体としては22kgと決して「軽く」はないAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェア だが、するするとどちらの方向にも抵抗なく動く。これは総重量的には4割増し程度のErgohuman Pro ottomanを動かす時の倍ほどに感じる「重さ」とまるで違う取扱いのしやすさだった。
後傾体勢がしっくりとくるPCを使用した作業や腕ごと動かすことが多いレーシングゲームや運転シミュレーター系ゲーム、アクション系ゲームにはぴったり
基本的にもも裏...というかひざ裏のあたりが盛り上がっているAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアは典型的な「後傾体勢用の椅子」であり、PC作業に向いている。アームレストも上下だけでなく、前後や開き/閉じまで調整できるので、比較的思い通りのポジションを取ることができるため、自分の用途では長時間のPC作業(たとえばここでのレビューとか)が圧倒的に楽になった。特に腰をはじめとする下半身が固定されるのが疲労軽減にはやはり大きい。ちょうど出来の良い乗用車のシートに座った感じで、過度にふわふわせず、かと言ってクッションが薄すぎてお尻が痛くなることもなく、疲労が少ない形に下半身を保ってくれる。PCに向かっての長時間のタイピングやマウス操作をするオフィスチェアとして、あるいは上腕部を大きく動かすこともある運転シミュレーターなどのゲームチェアには最適だ。特にそのドライビングシートライクな座り心地はレーシングゲームには「らしさ」による気分の高揚も含め最適と思う。
このAKRacing Pro-X ゲーミング・オフィスチェアはPC作業やゲームプレイなど「闘う」ときにも有用なアイテムだが、一方でリラックス時も素晴らしく役に立つ。座るときにはちょっと飛び出すぎ?という感じのヘッドレストは180°リクライニングの背もたれ部を倒して寝ると快適な枕になる。オットマンが内蔵されないため、足が下がってしまうのは仕方ない点だが、柔らかめのランバーサポート(というか腰クッション)と合わせて十分腰を伸ばし、リラックスすることができる。
またこの飛び出し気味の枕のようなヘッドレストには別の効能もあった。リクライニングを倒してリラックスして音楽を鑑賞したり、映画を観賞するときに使う「大型のヘッドホンでも邪魔にならない」。特にサラウンドヘッドホンは大きなものが多いが、ご覧のように完全に「浮いて」おり多少首を動かしたくらいではヘッドホンに当たってずれたりしない。ゲームや音楽、映画の世界に没入しているときに、ヘッドホンがずれて音や音楽が途切れ、現実に引き戻される...というようなことは少ないに違いない。
この「オン」でも「オフ」でも使えるという点は、狭い部屋でさまざまな目的に合致した椅子を複数種用意することがなかなか難しい日本の住環境ではかなり有用だ。
横方向のタイト感とモモのあたりの盛り上がりは心地よく体をサポートする
腰全体のホールド感は明らかに優れており、ドライビングシートという感じ。「定位置に体を置く」という点ではとても優れている。ただし「ランバーサポート」の部分はクッションを背もたれにゴムでくくっただけで、位置の固定はできない。
肌触りが良く、手入れも簡単。ただし空調は必須か?
良くできた車のシートのごとく、さらさらと肌触り良く、多少の汚れは雑巾で拭き取れる簡単ケア。ただ熱をため込みやすいので、夏は熱く、冬は(おそらく)ひんやりしすぎという面があるため、空調の効いた部屋での使用が前提か。
180°リクライニングは衝撃的。腰が伸びて、う~~ん快適!
本当にフルフラットになり、寝られる。この時はこの椅子の特徴である肩の方まで覆うバケット状の形状が活き、包み込まれているような極上の寝心地。安定性も高く、不安感は一切ない。
惜しい。高さがあと3cm欲しい...
改良されたシリンダー長との兼ね合いか、高さがやや足りない。前後、開き方向の調整幅は大きく、左右もボルト調整できるため、ほとんどの体型の人でベストな位置にアームレストを持ってくることができるが、天板とツライチまで上げようとすると机だけは選ぶ。
固定位置が限られているのが....ただ背もたれ面からの「浮き具合」は別の効能が。
ヘッドレストとして考えた場合、ほぼ2カ所しか固定位置がないため、体格を選ぶ。また若干厚みがあるので、背もたれにぺたんと背中をつけた上で、ヘッドレストに頭を乗せようとすると、前に顔が出るような格好になる。ただリラックス時はその飛び出た枕状の形が功を奏し、ヘッドホンなどをつけたままくつろいでもヘッドホンがずれるというようなことが少ない。
実重量の割には驚くほど「カルイ」。
実重量としては22kgと決して「軽い」椅子ではないのだが、車輪の回転も車軸の方向転換の動きも非常に滑らか、かつ静かで自由に動かすことができる。
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