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新発想の一体型水冷クーラー登場! その冷却性能をHaswellで徹底検証








 一般的に,クーラーと呼ばれるものは,冷却効率を上げるために,表面積を増やすしかありません.しかし,一体型簡易水冷方式は,一体型であるが故,PCケース内にすべてを設置しなければならず,設置場所に工夫が必要になります.
 大きいラジエーターの代表である240×120mmというサイズのものは,事前にしっかり検討しないと,設置できないこともあります.こちらのレビューも参考にしてください.



 また,水冷クーラーは,冷えるけど,管理が大変とか水漏れの心配があるなど,なかなか手が出せない事情もあります.
しかし,最近の簡易水冷タイプは,一体型とすることで,さまざまな不安を解消し,扱いやすく進化しています.
 一体型は,ウォーターブロック,ウォーターチューブ,ラジエーターは,切り離せません.そのため,クーラントの補充や交換は出来ませんが,メンテナンスフリーを実現しています.また,マルチプラットホームに対応していますので,安心です.

 今回のレビュー品であるAntec KUHKER H2O 950の最大の特徴は,ウォーターブロック部にポンプを内蔵せず,ラジエーターの冷却ファンのモーターと共有し,ファンと一体型としていることです.この特徴が,冷却性能にどの様に関係するのか,レビューで探りたいと思います.
 ウォーターブロック部にウォーターポンプを内蔵しないことで,ウォーターブロック部はとても薄く,シンプルになっています.そのシンプルなウォーターブロック部にLED表示機能を持たせ,状態監視も出来ます.
 また,ウォーターチューブですが,柔らかく,癖がつかず,取り回しがとても楽です.今回の比較水冷クーラーは,CORSAIR CWCH80にしましたが,このCWCH80よりも取り回しが楽です.後継のH80iやH100iのウォーターチューブと同じものだと思われます.

 KUHLER H2O 950のマルチプラットホーム対応は,LGA2011/1366/1150/1155/1156/775,AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2です.
 それから,Antec GRIDが使えるので,デマンドコントロールやモニタリングに役立ちます.CORSAIR LINKと同様な機能があります(H100iのレビュー参照願います).
 Antec KUHLER H2O 950は,以降,H2O 950と表記します.また,正式名称は,Uの上に”・・”が付いた文字です.




 まずは,構成部品と外観を確認します.CWCH80と比較しながら,LGA1150用を中心に進めます.

 パーツリストです.
①一体型CPUクーラー本体   1
②12cmFAN(PWM)        1
③バックプレート          1
④バックプレート側固定ナット  4
⑤固定ネジ(各種)         4
⑥FAN固定用ネジ(長)      4
⑦FAN固定用ネジ(短)      4
⑧テープ付き絶縁スペーサ   4
⑨ブラケットクリップ        4
⑩CD(Antec )
⑪取付説明書





一体型CPUクーラー本体をもう少し詳しくいてみます.







 H2O 950の最大の特徴であるファン/ポンプ一体型のラジエーター部は,水冷ポンプの分だけ,大きくなっています.よく見ると,ファンの軸と繋がっており,同じモーターで駆動していると思われます.これらが一体型であるため,ファンの交換が出来ません.また,取り付け方向が固定されてします.
 ラジエーター自体は,厚型であるものの,一般的な120mmタイプです.
 ウォーターブロック部は,ポンプがないため,薄く,円形であり,とてもスタイリッシュです.



 同じ120mmタイプのCWCH80と比較してみます.







 ウォーターブロック部は,ポンプを内蔵しているかどうかの差がはっきり出ており,H2O 950はとてもスッキリしていて,デザイン性も向上しています.
 ラジエーター部は,同じサンドイッチ構造で,ラジエーターも厚型であることから,ファン/ラジエーター/ファンの部分だけはほとんど同じです.そこから延びるウォーターチューブが,ファン一体型のポンプに行くのか,ウォーターブロック部のポンプに行くのかの違いです.比べてみると,ウォーターチューブの長さがH2O 950の方が少し長いです.
 ファンはどちらも25mm厚ですが,H2O 950が4ピンのPWMファンであるのに対し,CWCH80は3ピンのファンです.これは,ファンのコントロール方式の差が出ています.
 ウォーターチューブは,前述の通りで,H2O 950の方が扱いやすいです.




 H2O 950の取り付け方法を,簡単に紹介します.付属のマニアル(マルチ言語版)にも詳しく記載されているので,初めてでも手順自体は迷うことはないと思います.
 ここでは,Intel LGA1150用となり,PCケースはCORSAIR 400Rです.PCケースにCPUホールがない場合には,ウォータブロックの取付まで,マザーボードを組み込む前に行う必要があります.この場合,マザーボードとラジエーター部を一緒にPCケースに組むことになりますので,一人作業は無理です.
 この取付作業は,非常に難しいです.二人作業が必要だと思います.バックプレート式固定方法を採用し,かつ最新の機種にしては珍しいくらい難しい取付方法です.マザーボードへ取り付ける前に,一度シミュレーションすることをお勧めします.今回,何とか工夫して,一人で作業しましたが,30分以上かかりました.CWCH80なら,5分で終了します.
 もし,ビデオカード等,拡張スロットに取り付けているものがあれば,すべて取り外してから作業してください.取り付けた状態で作業することは不可能ですし,破損を招きます.

Ⅰ.取付用ブラケットの準備
   リング状ブラケットを,”Intel”の位置に合わせスライドさせます(4カ所).
   その位置で固定させるために,ゴム状のブラ明けとクリップを差し込みます.



Ⅱ.バックプレートの準備
  Intelと書かれた面が外側(マザーボードと反対側)になります.
  固定用ナットを,対応するソケットの位置に差し込みます.LGA1150用は,真ん中です.
  絶縁スペーサの剥離テープを剥がし,内側(AMDの文字側/マザーボード側)に貼ります.



Ⅲ.バックプレートをマザーボードに取り付け
  絶縁スペーサの剥離テープを剥がし,バックプレートのナットとマザーボーの固定穴位置を合わせて差し込み,固定します.
  バックプレートは,絶縁スペーサがあるほうが,マザーボード側で,LGAソケットのナット位置を合わせる必要があります.
  この時,バックプレートは両面テープで固定されますが,ナットは固定されていないため,落下に注意してください.今回は,カプトンテープで押さえてみました.


Ⅳ.ウォーターブロックの準備
  銅製ブロック(サーマルグリス塗布済み)保護の透明プラスチックカバーを取り外し,Ⅰ.で準備したリング状ブラケットを切り込みに合わせて合体させ,時計方向に回転させてロックします.



Ⅴ.ウォーターブロック部の取付
  リング状ブラケットを取り付けたウォーターブロック部をバックプレートのナット位置に合わせてセッティングし,LGA1150用スプリング付きネジで固定していきます.
  ネジを締める順番は,対角です.バックプレートとスプリングネジで,テンションが高くなりますので,1カ所を締めすぎないように注意してください.
  もう一つ注意しなければならないのは,スプリング付きネジとバックプレートにセットしたナット間に余裕がないので,スプリングを押し気味にしないと届きません.また,ナット自体は固定されていませんので,バックプレート側から押さえておかないと落下します.
  つまり,この作業を一人で行うには,手が3本必要(①バックプレート側ナットを押さえる手/②ウォーターブロック部を押さえる手/③スプリング付きネジを締める手)で,一人作業は非常に困難です.


Ⅵ.ラジエーターをPCケースに取付
  増設ファンを排気方向(ラジエーター⇒ファン⇒PCケース外)にし,PCケースの外から,増設ファンとラジエーター部をとも締めしていきます.


Ⅶ.ケーブル接続
  CPUファンケーブル,増設ファンケーブル,USB2.0ヘッダピンケーブルをそれぞれ接続します.
  CPUファンケーブルはマザーボードのCPUファン端子へ,増設ファンケーブルは,一体型ファンの分岐端子へ,USB2.0はマザーボードのUSB2.0ヘッダピンへ接続します.

Ⅷ.M/B設定とS/Wのインストール
  マザーボート側のCPUファンコントロールを無効,またはフル回転の状態にします(マザーボード側でファンコントロールしない設定).
  付属のCDから,Antec GRIDをインストールします.







  再起動させると,Antec GRIDが常駐します(使用方法は後述).




 上でも書きましたが,空冷でも水冷でもバックプレート固定式のリテンションキットの場合,初めてでも10分くらい.慣れれば5分くらいで交換出来てしまいますが,このH2O 950は,非常に難しいです.
 今回,一人作業しましたが,事前にシミュレーションして,取付イメージを把握した状態でも,40分くらいかかりました.PCケースは,CORSAIR 400Rですので,余裕があります.マザーボードは一回り小さいですが,ATX規格のASRock H87 Performanceです.決して難しい組み合わせでは無いです.現に,他のCPUクーラーは,5分程度で交換できます.

 バックプレートをテープ付き絶縁シートで固定する方式もあまり好きではありません.再交換するのに適してはいません.しかし,最大の問題は,バックプレートにセットするナットが固定できないことです.バックプレートと一体になっていれば,バックプレート自体を固定すれば,一緒に固定されますが,別パーツなので,ナットが落下します.この問題は,ナットをバックプレートにテープで仮固定することで落下防止することは出来ます.今回は,カプトンテープを使用しましたが,仮固定後,剥がしてしまうのであれば,セロハンテープでも大丈夫です(糊のこりには注意).

 さらに,水冷ヘッドを固定する際,ネジとナット間に距離があり,加えてバックプレートとスプリングネジのテンションがあるため,ネジを押し込むようにしないと,固定できません.このため,バックプレート側ナットを押さえておく必要があります.
 故に,手が最低3本無いと取り付けられません.二人作業を推奨する取付方法はよく見かけますが,必須なのは初めてです.

 図面上の取付方法としては,問題無いように見えますが,実際に取付を行うと,問題があることがわかります.この部分は,是非とも改善していただきたい点です.

 もう一つ,改善希望があります.
 今回使用したマザーボード特有かも知れませんが,ウォーターブロック部が低く,固定用ブラケットも低い位置で固定されることから,周辺パーツつとの干渉する可能性があります.


 この辺は,マザーボードレイアウトの規格があるのかも知れませんが,結構ギリギリです.CPUソケット周辺は高温になるパーツが多いですので,もう少しマザーボードから離れた位置でブラケットが固定されるか,円形のブラケットを正方形にするなどして,周辺への影響を無くす形状にしてもらいたいと思います.

 あと,細かい点ですが,ラジエーター部固定用ネジをあと2mmくらい長く,かつネジの頭を一回り大きくして欲しいと思いました.ゴムブッシュがあるPCケースの場合,取付が結構厳しいです.

 下の写真は,CORSAIRのネジ(左)との比較です.

 CORSAIRのネジ(左)のほうが長く,ネジの頭が大きいことがわかります.ちなみに,両者で,互換性はありませんでした(残念).




 冷却性能を確認する前に,Antec GRIDについて簡単にレビューしておきます.
 このAntec Gridを使って,設定とモニタリングを行うことになります.マザーボードのファンコントロールでは正常な動作が出来ません.必ずファンコントロール無効か,フル回転を設定し,常時12Vを供給することが必要となります.
 これは,水冷ポンプのモーターと冷却ファンのモーターを共有しているため,低負荷でもある程度の水量を循環させるために,必然的にファン回転数を上げざるを得ないためと思われます.

 Antec GRIDを起動させると,ファン回転数と水温表示画面が現れます.


 そして,上部に,Extream/Silent/Customの切替が可能になります.通常は,Silentを選択しておけば問題無いと思います.Extreamを選択すると,ファンがフル回転状態になり,うるさいです.

 Customを選択すると,ファンの回転数を指定で出来ます.


 30~100%の範囲で設定できますが,この設定は低負荷時の設定となり,高負荷時には自動で回転数が増加していきます.よって,レビュー用に設定するとき以外は,あまり使用する必要は無さそうです.Silentにしておけば,あとは勝手に自動制御してくれます.

 その他として,水温とファン回転数のグラフ化機能,LED色の設定,言語の選択なども出来ます.






 モニタリング温度に応じたLED色の表示も可能ですし,任意のLED色に固定することも出来ます.




 また,Skinの色が4色の中から選べます.






 オリジナル設定では,Idle時(温度が低い時)のLED色は,ブルーが設定されています.



 今回のレビューにおいて,Low/Mid/Highの設定は,Custom画面でそれぞれ30/60/100%に設定しました.

 ここで,水温モニタリングによるLED色の変化を見ておきます.Antec GRIDのデフォルト設定では,赤表示させる水温(65℃)まで上昇させられませんので,設定を変更しています.



 アクリルパネルケースやバラック仕様ならば,このLED表示が役に立ちそうです.




 今回,4種類のCPUクーラーで,冷却性能の比較レビューを行います.120mm一体型水冷,サイドフロー,トップフロー,それぞれのタイプで,高冷却をアピールしているものです.

①Antec HUHLER H2O 950(プレミアムレビュー対象) : 一体型水冷タイプ 120mm厚型ラジエーター デュアルファン


②CORSAIR CWCH80 : 一体型水冷タイプ代表 120mm厚型ラジエーター デュアルファン(オリジナルファン)


③CoolerMaster Hyper612P : サイドフロータイプ代表 120mmデュアルファン(オリジナル+OWLTECHのPWMファンを増設)

 
④ENERMAX ETD-T60-VD : トップフロータイプ代表 120mmシングルファン(オリジナルファン)


⑤Intel純正付属クーラー : トップフロータイプ 比較データ用


 CWCH80が直接のライバルになると思います.ファンとポンプ以外,ほぼ同一の仕様です.
 ファンコントロール方法は,①がAntec GRIDを使用,②が専用の切替スイッチ,③と~⑤がマザーボードのファンコントロールです.それぞれ,Low(30%),Mid(60%),High(100%)としていますが,①のH2O 950のみ固定できませんでした(水冷ポンプと連動して可変制御している).

 各設定にて,3.8GHz定格と4.4GHzのOC状態で,OCCT(CPU)を15分間実行したときのCPU最高温度をHWMonitorにて読み取ります.
 
 使用したPCのスペックはこんな感じです.


 また,使用したPCケースのファンレイアウトはこんなイメージです.


 今回の測定においては,PCケースの扉はすべて閉じた状態にしています.これは実使用状態をイメージしたためです.CPUファン以外のファンコントロールは”静音”モードです(前面の120mm吸気ファンは仕様上固定となります).よって,一般的なベンチマーク結果より,冷却効果は悪く出る可能性がありますが,実使用状態での結果に近いほうが,参考になるかと思います.
 またサーマルグリスは,H2O 950以外,ZALMAN ZM-STG2を使用しています.H2O 950は,オリジナルのまま使用しています.

 それでは,測定結果のまとめです.
 すべて同一条件としたかったのですが,室温/湿度が同じには出来ませんでした.一応,室温とIdle時のCPU温度も載せていますので,±の調整を頭の中で読み取ってください(数値は補正していません).




 数字の比較前に,お断りをしておきます.ファン回転数はLow/Mid/Highとしていますが,H2O 950のみ固定ではありません.Low(30%)でも,~70%まで負荷に応じて変動します.これは,ファンモーターとポンプモーターを共有しているためと思われます.Low/Mid,特にLowの比較はご了承願います.表に,回転数も載せていますので,ご確認下さい.

 まず,空冷です.
 Intel純正ファンの場合,定格動作においても100%フル回転させないと温度上昇してしまい,使い物になりません.基本的に,CPU性能とファンが不釣り合いです.一応,これを基準にお考え下さい.
 トップフロー代表のETD-T60-VDは,72~77℃に収まっており,30%制御でも77℃と優秀です.Intel付属品に対し,20℃以上低下しています.
 サイドフロー代表のHyper612Pは,更に5℃以上低く,67~70℃で,30%制御でも最大70℃という素晴らしい結果です.Intel付属品に対し,25℃以上低下しています.Dual Fanの面目躍如です.

 4.4GHzまでOCさせた場合,ETD-T60-VDが74~81℃,Hyper612Pが74~79℃で,差が縮まります.どちらも冷却効果が高く,常用可能なレベルだと思います.

 次に,水冷の場合です.
 比較用CWCH80は,定格で65~67℃,OCで72~74℃と,ファン回転数にあまり依存せず,よく冷えます.Intel付属品に対し,27℃以上低下しています.シングルファン動作でも,定格で73~77℃,OCでも74~78℃と,Hyper612Pのデュアルファン並の性能です.しかし,CWCH80は,高回転,高静圧タイプのファンなので非常にうるさいです.ファン回転数にあまり依存しないので,常用はLow設定になるのが現実です.

本命のH2O 950は,定格で70~71℃,OCで75~77℃となりました.Intel付属品に対し,22℃以上低下しています.シングルファン動作でも,定格で72~73℃,OCでは78℃という結果で,LowとMidはほぼ同様の結果です.これは回転数の結果からも,同様の動作になっていることがわかります.低負荷時にLowまで下がるかMidでとどまるのかの違いしかないようです.

 ほぼ同一対応の一体型水冷同士で比較すると,冷却性能はCWCH80に軍配が上がりました.3モーター(ポンプ/ファン/ファン)と2モーター(ポンプ+ファン/ファン)の違いが出てしまったようです.冷却するには電力が必要という結果だと思います.

 ハイエンド空冷と比較すると,定格動作ではほぼ互角ですが,4.4GHzのOC動作では,水冷の優位性が出ています.また,水冷はファンの回転数をあまり上げなくても冷却効果が高いので,静音性と冷却を両立させるソリューションに最適です.

H2O 950は,Antec GRIDによって,水温もモニタリング出来ます.ファンコントロールは,この水温を元に行われているようですが,水温が45℃程度までしか上がっていないのに,CPU温度が90℃を越えしてしまっています.おそらく,冷却水量をもっとアップすることが出来れば,更に冷却出来るのではないかと思われます.今回,サーマルグリスはオリジナルのままでしたが,高性能グリスに変えることでもCPU温度の低下が期待できます.




 直接のライバルであるH2O 950とCWCH80の静音性を確認します.
 PCケース内に設置状態,かつ,PCケースのファンを回した状態で,右パネルと開け,ほぼ同じ距離になる様に騒音計をセットしました.騒音計はAndroidタブレットのアプリを使用しています.
上にも書きましたが,H20 950はLowでも負荷に応じてMid以上に回転数が上昇します.今回のノイズ測定は,Idle状態で行っていますので,Lowの状態のままです.実使用上は,LowでもMid以上にノイズレベルが上がります.
 測定結果とともに,測定の様子を写真でご確認ください.サイドパネルに隙間を設け,ラジエーターに近い位置で測定しています.



 Idle状態では,H2O 950の圧勝ですが,実使用状態では,CWCH80のLow設定と変わらない結果です.CWCH80のLow設定が普段使用する際に気にならないレベルとなります.
 一体型水冷のHigh(ExtreamやPerformance)設定は,常用するものでは無いと思っていますので,冷却性能と静音性のバランスはこの辺にあるものと思います.
 今回,測定データはありませんが,空冷クーラーと比較しても,一体型水冷の方が静かです.
 ポンプの動作音や流水音は,ほとんど気になりません.ファンやラジエータの風切り音に紛れてしまいます.ただ,水冷特有の”ゴボゴボ”とかエアーを噛んだ”シュッー”といった音は感じます.





 水冷といっても,最終的にCPUの発熱をPCケー外に排出するのは空冷です.このため,室温を下げれば,その分冷却効果は上がります.
 また,H2O 950の場合,ラジエーターファンの設置は,排気方向しか出来ません.ファン/ポンプ一体型でなければ,ラジエーターファンの吸気方向で取り付け,外気でラジエーターを冷却することも可能です.
H2O 950で,さらに冷却効率を上げるためには,吸気量を増やしてPCケース内部の温度を下げるか,ラジエーターの排気ファンを交換して,排気量を上げるしかありません.
 静音の前提がなければ,PCケースの吸気ファンの回転数を上げてしまえば済みますが,常用するなら好ましくない方法です.そこで,上面ファンの片方を排気から吸気に変更します.


 また,ラジエーターの通過風量をアップさせるために,一体型ではない増設ファンの方を,より能力が高いファンに交換します.今回は,PWM最強ファンのF12-PWMを使用してみました.



 もう一つ,気になっていたサーマルグリスの変更です.オリジナルのものから,ZALMAN ZM-STG2に変更してみました.リテンションキットの取扱が簡単で,交換が簡単にできれば,いろいろな種類を試してみたいのですが,上記の通り,とても苦労するため,他のCPUクーラーと同じサーマルグリスに変更してみました.




 結果です.


 一番効果が大きいのは,サーマルグリスの変更で,3~4℃低下しました.オリジナルのグリスは,塗布量が多いのも気になりました.初めから,サーマルグリスを塗り直して,セッティングした方が良さそうです.

 次に,効果が多きのは,増設ファンを強力なPWMファンに交換する事でした.H2O 950は,片方が固定であるため,増設側のみしか交換できませんが,静圧の確保できるファンに交換する事で,風量が増えるのと,水冷ポンプの回転数も釣られて上昇していることが,冷却に役立っているようです.100%設定で,オリジナルファンでは,2350rpmですが,F12-PWMに交換すると2400rpm以上廻ります.

 他は,あまり改善効果が期待できません.
 そこで,ファン(F12-PWM)交換&PCケースファン最大&サーマルグリス変更後のセットで適用してみました.結果は,一番冷える事になり,オリジナル状態から-5℃という結果が得られました.ただ,F12-PWMの最大回転は非常にうるさいですので,常用はお勧めできません.
 さらに,室温も20℃まで下がった日がありましたので,確認しました.20℃になると,Low(静音)モードでも63℃,High(Extreme)では58℃と60℃を下回り,かなり冷える事がわかりました.

 室温も重要ですが,やはり,冷却水量アップが根本対策のような気がします.水温があまり上がっていないのに,CPU温度が下がらない状態です.ウォーターブロック部にもポンプを設けたデュアルポンプ仕様の120mm厚型タイプなんかは,とても魅力的です.240mmタイプのラジエーターを持つデュアルポンプ仕様に期待が持たれます.

 今回の結果からは,外部要因(室温)以外では,サーマルグリスをオリジナルから高性能な変更して取り付けるのが一番効果的という結論になります.




 限界までOCした状態で,性能に差が出るのか確認しておきます.
空冷のHyper612Pとほぼ同程度の冷却性能であることがわかりましたので,4.8GHzまでOCさせたときのCINEBENCHの結果を見てみます.H20 950は,オリジナルの状態と,ファン(F12-PWM)変更&PCケースファン最大&サーマルグリス変更後の2通りで比較しました.


 CINEBENCHのCPUスコアは,残念ながら優位な差は見られませんでした.CPU温度は,やはりH20 950で冷却効果をアップさせたものが,一番冷えていますが,CPUスコアの僅かなアップ(0.1pts)でした.





 新発想のファン/ポンプ一体型構造は,240mmタイプのデュアルポンプで真価を発揮するのではないかと思います.
 120mmタイプのシングルポンプ仕様では,ウォーターブロック部にポンプを内蔵した従来タイプの方が冷却性能が高い結果となりました.

 空冷タイプとの比較においては,ハイエンドトップフロー以上の冷却性能で,デュアルファンのサイドフロー並の冷却性能であることが確認できました.
 ハイエンド空冷タイプは,ヒートシンクが大きくならざるを得ないため,メモリーや拡張スロット,PCケースとの干渉が問題となり,設置が難しくなります.しかし,同等性能の120mm厚型水冷は,パーツとの干渉はなく,PCケースへの設置自由度も高いことから,ほとんど問題にならないと思います.この点が,最大の魅力ではないでしょうか.

 さらに,冷却効果を上げるには増設側のファンを高静圧タイプに変更するのと,サーマルグリスをより高性能なものにするのがお勧めです.

 今後のさらなる展開に期待できそうな新発想の一体型水冷クーラー,Antec KUHLER H2O 950のレビューでした.




レビュー期限から,しばらく時間が経ちましたので,オマケレビューを追加します.
Antec KUHLER H2O 950の比較対象に,ENERMAX ELC120-TAを加えます.
ただし,比較レビューしたときと気温が違うため,H2O 950とELC120-TAのみであらためて比較します.

ELC120-TAは,同じ120mmタイプですが,薄型に属し,ウォーターヘッドにポンプを内蔵した一般的な構造です.詳細は,別途,ELC120-TAでレビューします.



比較方法は,上記と同じ,Low(30%),Mid(60%),High(100%)で行います.また,冷却ファンとして,ENERMAXのPWM静音ファンのUCTB12Pに変更した場合も,合わせて検証しました.サーマルグリスは,どちらもZALMAN ZM-STG2です.

では,結果です.


残念ながら,ELC120-TAとの比較においても,H2O 950のほうが冷却性能は劣る結果となってしまいました.
この結果からも,ウォーターブロックの冷却効率アップが非常に重要であることがわかります.

デュアルポンプ化など,この後の展開に期待するKUHLER H2O 950です.

コメント (6)

  • タコシーさん

    2013/10/15

    お疲れ様です

    イラスト付きで時間掛かっていますね.....(マネデキナイデス)

    CPUのグリスでかなり違うのですね.....
  • harmankardonさん

    2013/10/15

    タコシーさん,コメントありがとうございます.

    Haswellだったからかもしれませんが,サーマルグリスで結構違いました.
    最初から,高性能なものに変更するのが良さそうです.
  • ねおさん

    2013/10/15

    レビューお疲れ様でした。

    やっぱり、水冷ヘッドの取り付けが面倒ですね。

    なかなか、グリスの変更による効果の確認を、する気になりません・・・
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