レビューメディア「ジグソー」

熱すぎるCPUを静かに冷やしたいなら気にしておきたい存在

#01 水冷ポンプを一体化したAntecの新水冷クーラー

 

 

 

 Computex 2013でその姿を表したAntecの新しい簡易水冷クーラーのH2O 950です。前世代のH2O 920は基本的なレイアウトは他社製品と同じように水冷ヘッドに水流ポンプを内蔵し、ラジエーターにはファンを取り付けるといったレイアウトの製品でした。

 

 だが、Computex 2013で発表されたAntecの新しい水冷クーラーは、その伝統的な形を投げ捨てて、まったく新しいレイアウトに変更してきました。変わったのは、まず水冷ヘッド内臓のポンプがなくなり、その代わりポンプをラジエーターに取り付けられたファンの回転軸に内蔵したことです。これにより、水冷ヘッドの厚みが薄くなっているので、小型化が可能になっています。また、モーターを必要とする可動パーツが1箇所にまとめられているところもイイと思います。水冷ヘッドに内蔵するよりは大きなモーターを使えるはずなので、安定して水圧をかけ続けられるのではないでしょうか。作動時に無理を重ねる部分が減れば、それだけ故障率も減ると思われるので、長期的に使える製品になっているのではと思われます。

 

 それに、ファンなどの見た目はアレですが、パッと見枯れた技術を積み重ねた製品に見えます。意外と奇抜なことはやってなさそうなので、それだけ信頼性も高そうです。

 

 

 

#02 小型化した水冷ヘッドとより分厚くなったラジエーター

 

 

 

 

 

Antec KUHLER H2O 950のスペックはコチラ!

回転数/600~2400rpm

製品サイズ/H159mm×W120mm×D50mm

ファン+ポンプ/120mm×50mm

冷却板サイズ/26mm

チューブ長/300mm

重量/1.3kg

 

 120mm×25mmの一般的なケースファンを冷却用に使用する製品ですが、ラジエーターとポンプのおかげでだいぶ分厚くなっている製品です。箱のサイズもハイエンド系のCPUクーラーでもなかなかないサイズの大きさ。

 

 パッケージに記述されている対応ソケットは、

Intel:775、1150、1155、1156、1366、2011

AMD:AM2、AM2+、AM3、AM3+、FM1、FM2

 

 現行のCPUならほぼすべてに対応できそうです。

 

 

 パッケージから取り出すと、やはりラジエーターの存在感が大きいですね。

 あと何気にコネクタ類が多いので、結構取り回しは注意したほうがいいかもしれません。

 

 

 

 

 

 それにしても……。ポンプ部の突き出しが半端ないですね。今回一番大きな変更点であり、とても目立つ部分です。逆にラジエーターは既存のものと変わらない様子。やっぱりフィンが曲がったらマイナスドライバーを突っ込んで直したりするんですかね? あれ? 石が飛んできたりするわけじゃないからフィンが曲がる機会そのものがないのかな?

 

 まぁ、ラジエーターを見てるとついついクルマやバイクにハマっていた頃を思い出してしまいます。それくらい普通のラジエーターだと思います。

 

 

 

 

 

 こちらは小型化した水冷ヘッド。ポンプを内蔵していないのでスッキリしたデザインになっています。AntecロゴにはLEDが内蔵されていて光るようですけどね。

 

 ただ……。

 

 小型化とはいいますが、やはりでかいですね。横に。

 LGA1150とか、結構小さめのCPUだと思うので、この水冷ヘッドを使うと違和感を覚えます。LGA2011ならピッタリだったりするんですかね?

 

 

 

 そして追加ファン。

 

 H2O 950は、ポンプ内臓のファンと、この普通のケースファンのふたつでラジエーターを挟み、強力に冷却します。

 

 

  

 

 追加ファンは120mm×25mmの一般的なファンだが、ポンプ内蔵ファンは120mm×50mmと通常の倍の厚さ。それでさらに約50mmのラジエーターを挟むため、実測値で約140mmほどの奥行きになる。

 

 これだけ見ると水冷ヘッドが薄くなった代償は、想像以上に大きいような気もします。

 

 

 

 とりあえずのサイズ比較。

 良い比較対象がなかったので、AMD缶でw

  

 

 

 

 ケーブルはかなり多め。

 水冷ヘッドから2本。ポンプ付ファンから2本。さらに追加ファンのケーブルがあります。制御用のコネクタはPMW4ピンではなく、USBです。マザーのUSBコネクタに挿すことで、専用制御ソフトのAntec GRIDが使用できます。ただ、このソフトがやや不安定なのか、再起動を繰り返していると度々H2O 950を見失いますね。

 ファン用のPMWピンコネクタは給電専用のようなので、マザーからではなく電源から取ったほうがよさそうです。

 

 

 

 

 水冷ヘッド固定用のリング。

 AMDとIntel共用になっています。スマートでイイですね。

 

 余談ですが、最近のCPUは低発熱になってきていると嘯いている記事をたまに見かけます。ですが、実際にはIntelもAMDもCPUは爆熱だったりします。これからしばらくは簡易水冷クーラーの出番は多くなるような気もしますので、このように両環境に対応できるシステムはCPUクーラーを選ぶ基準として今まで以上に重要になっていくのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 こちらはマザー固定用のバックプレート。

 こちらもAMDとIntel共用になっています。環境に合わせて裏返すことで、AMDとIntelマザー両方で使えるわけです。が、少々大きめなバックプレートです。mini-ITXマザーや、ケースによっては取り付けられない可能性があります。

 付属するネジの内、AMD用は2種類付属しており、マザー付属のバックプレートをそのまま使えるようになっています。AMD環境なら、マザー付属のバックプレートを使ったほうがいいような気がします。

 

 

 ざっと、全体を見てきましたが、印象としてはやはりでかいクーラーですね。PCケースを選ぶクーラーということになりそうです。特に、幅は120mmとケースファンが基準のサイズですが、高さが159mmと上にも下にも余裕がありません。最近の簡易水冷を視野に入れたMicro ATX以上のケースが必要になると思います。mini-ITXだと、BitfenixのPRODIGYでも持ってこないと入りそうにないですね。

 

 

 

#03 簡易水冷にも冷却水使用のリスクはある

 

 

 さて、外見を舐め回すように眺めていて気がついたことがあります。

 

 水冷ヘッドが濡れている?

 

 

  

 

 水漏れしてるじゃないですか! ヤダー

 

 簡易水冷が出回る前から、水冷というと水漏れのリスクと背中合わせのシステムです。そして、やはり簡易水冷でもそのリスクからは逃れられないようですね。

 

 

 

 よく見るとネジがひとつ腐食してるじゃないですか! ヤダー

 

 とはいえ、水がダダ漏れというほどではなく、水冷ヘッドの周りを少し濡らしている程度でした。まぁ、圧力をかけたらどうなるか分かりませんが。見た感じではそれほどリスキーではないようにも感じました。

 

 間違いなく初期不良で突っ返してもいいレベルだと思うのですが、これはこれで、せっかくなので、この状態で通電させてみました。

 

 

 

  

 

 負荷はかけていませんが、冷却水がポンプによって循環を始めても吹き出すということはありませんでした。ただ、よく見ると滲み出してきてはいますね。最初は腐食したネジのあたりから水漏れしているのかと思っていましたが、どうやらチューブの水冷ヘッド側から漏れているようです。

 

 ラジエーターを振るとチャプチャプ音がしたり、ポンプが回るとチャポッ!って音がしたりと、ちょっとドキドキしましたが、これなら何とかなりそうな気もします。

 

 

 

#04 簡易水冷でもケース内を専有するスペースはかなり大きい

 

 一応、交換できるかどうか問い合わせてみたものの、ハッキリした答えは帰ってこないので、このまま組み込んでテストだけでもしてみます。 

 

 

 

 というわけで、Thermaltake Dokker VM600M1W2Zに組み込みます。

 約140mm付き出したラジエーターが水冷ヘッドを覆ってしまうほどでかいです。ちょっとだけ銀矢でも載せているような気分にさせられます。

 

 

 

 

 

 

 

 高さも159mmと実に高いので、ケースファンをひとつ外しました。

 ちょっと心配もしてましたが、VGA側には少し余裕があったのでグラボの使用には問題なさそうです。

 

 

 

 

 とりあえず通電。

 水冷ヘッド内臓のLEDが光り出します。色は温度で変化するようですが、通電しているだけで起動していない状態だと白から赤まで点滅するように光るようです。

 

今回のテスト環境はこちら!

CPU:Core i7-4770K
M/B:GYGABYTE Z87N-WIFI

MEM:PATRIOT  PV38G213C1K

SSD:SAMUSUNG SSD 830 256GB
VGA:GALAXY GF PGTX660TI-OC/3GD5
Case:Thermaltake Dokker VM600M1W2Z

OS:Windows 8 Pro

 

 

 それではテスト環境が整ったので、計測開始といきたいところですが、その前に制御ソフトをインストールします。

 

 

 

 付属CDからインストール。

 

 

 

 

 インストールしたAntec GRIDのUIは実にシンプル。

 温度とファンの回転数が表示されるだけです。上のボタンは、“Extreme”、“Silent”、“Custom”の3種類で、それぞれ静音と最大パフォーマンス、そして自分での設定と切り替えられます。Extremeは五月蝿いですね。相当ぶん回します。

 

 

 

 下のボタンにある“Graphs”をクリックするとログが表示されるます。回転数と温度がそれぞれ表示でき、取得したログは記録して保存できます。

 

 さて、ひと通り準備が整ったのでテスト開始です。

 

 今回は、熱すぎてデフォルトだとOCCTが完走できないi7-4770Kをどれだけ冷やせるかが課題です。

 

 リテールクーラーとH2O 950でそれぞれCPU:OCCTを回します。

 温度はHW MonitorのTMPIN2を取得。室温は32℃です。

 

 一応動画に収めたのでお暇なら一緒にご覧ください。動画はかなり意味なさ気なものになってしまいましたが……。

 

 

Antec KUHLER H2O 950 & Intel Retail Cooler

    

 

 Intel Retail Cooler
 Idle:TMPIN2:38℃ FANIN0:1030rpm

 MAX:TMPIN2:86℃ FANIN0:2454rpm 

 

 Antec KUHLER H2O 950
 Idle:TMPIN2:32℃ FAN:900rpm

 MAX:TMPIN2:91℃ FAN:1300rpm


 アイドル時は水冷クーラーの力を見れたような気もしますが、負荷をかけるとリテールクーラーに劣る数値になってしまいました。とはいえ、よく見るとファンの回転数が全然上がっていません。これは“Silent”に設定してあるためかもしれません。1300rpmはかなり静かな部類です。この回転数でギリギリOCCTが通せる程度には冷やしてくれているのは好感が持てます。騒音も、聞こえるけど気になるほどではないといったレベルでしょう。

 


 ただ~し、動画だとケースファンの音が五月蝿すぎて、リテールクーラーが全力でぶん回っていても音ではわかりませんね^^

 H2O 950はかなり静かなのですが、これもよくわからない動画になってしまいました。


 しかたがないので、動画の最後にはAntec GRIDで“Extreme”と“Silent”を切り替えた時を収録しました。H2O 950のファンふたつがMAX2400rpmで全力回転している音は相当五月蝿いです。



 

#05 水漏れのリスクを受けてそれでも使うメリットはあるか?

 

  結論からいうと、メリットはあるでしょう。

 

 今回はデフォルトの設定だけでテストしましたが、ファン制御はカスタムできます。冷却力が足りないと思ったら自分で設定をいじってより冷える設定にできます。

  

 それと、H2O 950のファンは、回転数の変動がかなりありました。リテールクーラーは常に全力で回っているところでも、H2O 950は抑え気味で回ります。ちょっと温度が上がると1400rpmくらいまで上がっていましたが、すぐ1300rpm前後に落ち込んでくるので温度に合わせて細かく制御しているという印象でした。かなり静音に寄りながら、それでもCPUを冷やしていく簡易水冷クーラーなのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※最後に

 

 テスト中水が吹き出すようなこともありませんでした。

 見た目は残念な初期不良品のようにも思えましたが、なんかこのまま使い続けられるんじゃないかとも思ったくらいです。まぁ、怖いのでコレ以上は使わないようにしますけどね^^

 

 

24人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (8)

  • タコシーさん

    2013/10/15

    レビューお疲れ様です...

    漏水ですか? ネジ部分ですよね 錆びるし、精神的に良くないです
    私は違う機種を取り付けたままで動作させていますので心配ですね

    ケースも余裕を見ないといけないようですが新し物好きには良い物ですね
  • ふっけんさん

    2013/10/15

    4770Kで91℃は精神衛生上悪いな(^^;
    次はこいつの性能をフルに発揮するために、FX-9590をIYH!しましょう!
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