レビューメディア「ジグソー」

総じて完成度は高い 価格以上の価値あり 「Kone Pure COLOR EDITION Core Performance Gaming Mouse」

 

 

ドイツのゲーマー向け周辺機器ブランドである“ROCCAT STUDIOS”。
欧州では実績のあるブランドだが、日本において製品の取扱いが開始されたのは2009年であり、日本のPC市場においては、新しいブランドといえるだろう。
しかし、最近では店頭で製品デモが行われている場面を見かけることも多く、徐々に知名度が増しつつある印象のあるブランドである。

 

今回のレビュー品である“ROCCAT Kone Pure Inferno Orange”は、“ROCCAT Kone Pure”シリーズのカラーバリエーションモデル3種のうちの1つである。

 

 

 

“ROCCAT Kone Pure Inferno Orange”は、左右非対称の形状をしたレーザーマウスである。


サイズは実測で79(W)×118(D)×38(H)mm。重量はケーブル込みで約120g。ケーブルを除けば約90g。
ゲーミングマウスとしては小振りで軽量な部類に入るだろう。

 

SteelSeriesのXAIとの比較

 

 

 

カラーはオレンジとブラックのツートンカラー。グリップ部分に配色されているオレンジの発色が鮮やかで美しい。
Infernoというだけに、地獄の大火を連想させるカラーリングだ。このネーミングがいかにもゲーミングデバイスらしくて面白い。

 

ボタン構成は、左右メインボタン、スクロールホイール、サイドボタン×2、DPI変更ボタン×2の計7個だ。

 

 

 

表面加工は、全体的にラバーコーティングされている。
ラバーコーティングというとグリップ感がありそうに思えるのだが、意外にもサラッとした肌触りがある。
オレンジ色のグリップ部分もラバーコーティングされており、薬指と小指が触れる部分に滑りやすさを感じる。
ただ、軽量なマウスであるので、持ち上げる時に支障になる程までのことはないだろう。

 

底面を見てみると、前方と後方の2箇所に弓形のソールが貼られている。
ソールの滑りはまずまずといったところ。

 

 

 

センサーは底面中央からやや上寄りの位置に配されている。
搭載されているセンサー“Pro-Aim R3 laser sensor”は、8200dpiまで対応する高性能センサーである。

 

ケーブルは布巻きタイプで、ケーブル長は約1.8m。太さは約3mm。

 

 


結束を解いてから数日経っても多少の癖が残っているが、そのうちに自然に馴染んできそうな程度の硬さだ。
ケーブルアンカーがなくても操作上の支障は感じられない。

 

 

■ 癖のない持ちやすい形状が好印象
実際に持ってみた印象だが、やや小振りなサイズということもあり、手にすっぽりと収まってしまう。
左右非対称の形状だが、一般的なマウスでも採用されている、左右の側面を内側に絞った形状をしており、最初に持った時でも違和感を感じなかった。


親指が位置する左側面は、親指の腹に沿うようにカーブしており、非常に指の収まりが良い。

 

 


薬指と小指が位置する右側面は、こちらも指の腹が掛かりやすいように自然な角度でカーブが入っている。

 

 


かぶせ持ちでもつかみ持ちでも指先にフィット感があり、癖のない持ちやすい形状といえる。

 

 

 

 

 

本体を横から見た時、最も盛り上がっている部分がほぼ中央に位置している。
かぶせ持ちすると、重心が手の平の中心から手首側付近に来る感じがあり、手首がマウスパッドにベッタリとついてしまう。
最も盛り上がっている部分を後方にずらせば、手首が多少浮く格好になるので、その方が操作性が良いように思われる。

 

本体表面には、先にも触れたとおり、全面的にラバーコーティングが施されている。
ラバーコーティングは、最近のゲーミングマウスにおいては普通に採用されている仕様である。
しかし、Kone Pure Inferno Orangeの場合、独特といえるのがその肌触りだ。


ラバーコーティングというと、グリップ力を高めるための仕様である訳だが、Kone Pure Inferno Orangeの表面はさらさらとした肌触りをしている。
薬指や小指は滑るくらいの感触で、ゲーミングマウスとしてはいかがなものかと最初は思ったのだが、手に汗をかいてくると適度なグリップ力を発揮してくれる。
サラッとした肌触りと適度なグリップ力を併せ持った表面加工なのだ。


ラバーコーティングは、グリップ力を高める利点があるものの、経年劣化で剥がれ落ちやすく、外観や肌触りが悪くなるという欠点もある。
Kone Pure Inferno Orangeの場合、表面加工の耐久性はどうだろうか。

使用しつつ様子を見ていこうと思う。

 

 

■ 適度なクリック感があるボタン サイドボタンの位置・形状が秀逸
では、ボタン類を確認していこう。
左右のメインボタンは上面のカバーと一体化したタイプ。
チキチキとしっかりとしたクリック感があり、押し返しの感覚も良い。
ストロークは浅めでクリック感は軽いので高速タップしやすい。

 

スクロールホイールは横幅が約9mmある幅広なタイプで、外観からして頑丈そうな印象がある。

 

 


素材にはチタンが採用されているようで、実際に十分な強度があるという。
ホイールはラバーで覆われており、4mm毎に4mm幅の帯状の溝が彫られているため、回転時には指掛りが良い。


ホイール回転時にはしっかりとしたノッチ感がある。刻みの間隔は狭めで、1回転24刻み。
回転時はゴリゴリとした感触があり、確実に刻んでくれる印象がある。
ただ、刻み間隔が短いだけに、連続回転させる時には負荷が気になる。
もう少し負荷を軽めに調整すると操作性が向上するように感じた。

 

センタークリックには左右メインボタンよりも硬めのクリック感がある。
ホイールをを高速回転しても誤爆しない程度の適度な硬さである。
幅広なホイールであることもあり、しっかりと押し込むことができる。

 

サイドボタンは、左右メインボタンと同様にカチッカチッと軽めのクリック感で押しやすい。

 

 

ボタンの配置、形状が秀逸で、2つのボタンは無理なく親指で押せる位置に配置されており、手前のボタンは親指を下から刷り上げるように軽く押してもしっかりと入力される。

 

 

ボタンがマウス表面よりも出っ張っているので、擦り上げるようにしてもクリックできる

 

 

DPI変更ボタンは、+ボタンと-ボタンが一体化したタイプ。
ボタンを押し込んだ時に本体内部に振動が伝わる感触があり、あまり良い出来ではない。
使用頻繁が低いボタンだけに割り切るべきといったところだろうか。

 

 

■ 多彩な設定が可能なソフトウェア
Kone Pure Inferno OrangeをPCに繋げば、マウスとしては使用可能になるが、専用ドライバをインストールすれば細かく設定をカスタマイズすることができるようになる。
ドライバはROCCATの公式サイトからダウンロードする。

 

 

【MAIN CONTROL】
センシティビティ、ホイールのスクロール速度、チルト速度、DPI、ダブルクリックの速度の5項目が設定可能。
DPI設定は5段階で切り替えることができる。

 

 

 

 

【BOTTON ASSIGNMENT】
マウスの各ボタンに機能の割り当てを行うことが出来る。
下の画像をご覧いただくと、マウスのキー割り当てが左右で2つ表示されている。

 

 


左が標準的なキー割り当て、右が“EASY-SHIFT[+]”使用時の割り当てである。
このEASY-SHIFT[+]という機能、簡単に説明すると1つのキーに2つの機能を割り当てることができる便利な機能である。
この機能はサイドボタンに割り当てることができ、EASY-SHIFT[+]キーを押している時と押していない時で、1つのキーに別の機能を割り当てることができるのだ。

 

また、マクロ機能も備わっている。
いくつかのゲーム用のマクロやキー設定が既に登録されているが、古いタイトルばかりなので使用する機会は少ないだろう。

 

 

 

マクロ設定がないタイトルであれば、マクロエディター機能を使ってマクロ作成し、キーバインドすればいい。
マクロの記録方法だが、記録開始ボタンを押してからキーを登録したい順番で押していくだけという簡単な仕様になっている。
0.001秒刻みでディレイ調整が可能で、記録後の修正作業もしやすい。

 

加えて、面白い機能としてタイマー機能がある。
任意の時間で設定可能で、設定時間に近くなると音声でカウントしてくれるのだ。
MMOにおいては、定期的に放たれる攻撃を回避する際にカウントダウンタイマーを使うことがある。
限定的な使い方ではあるが、独創的な機能だといえるだろう。

 

次の動画は、15秒間でタイマーを作成し、カウントしてみたものだ。

 

 

 

【ADVANCED CONTROL】
MAIN CONTROL画面よりも詳細な設定変更を行う画面。
XY軸方向のセンシティビティ、センサー調整、ポーリングレート、音声設定、ポインター速度、設定リセット機能の6項目が設定可能。

 

センサーの設定項目では、トラッキングとリフトオフディスタンスを最適化できる。
ここまで詳細な設定が可能なマウスとなると、流石はハイエンドのゲーミングマウスだなという感じがする。

 

 

 

 

“TRACKING CNTROL UNIT”は、マウスパッドの表面を読み取り、トラキングを最適化する機能だ。

 

 

マウスパッドの表面をキャリブレーションする

 

 

 

【COLOR CONTROL】
マウスの下部にあるロゴマークが光る色を変更する画面。
 

 

 

何でも1600万色もの設定が可能らしい。

マウス本来の機能とは関係ないが、ゲーミングマウスらしさを感じさせる機能ではある。

 

 

 

これらの設定は、本体内のメモリに最大5つののプロファイルとして保存できるようになっている。
任意のプログラムが起動した時に自動的にプロファイルが切り替わるように設定することもできる。

 

 

 

 

■ ゲームでの使用感はどうか
ここからは、いくつかのタイトルをプレーした際の使用感を述べていくことにしよう。

 

タイトル名:EverQuest II
ジャンル:MMORPG

 

ホットバーに登録されている複数のスキルを連続して発動するようにマクロ設定を行ってみた。
EverQuest IIにも標準でマクロ機能は備わっている。
しかし、スキルごとに発動に要する時間(キャストタイム)が異なるため、ディレイの設定ができない標準マクロでは、2つのスキルでマクロを組むのが精一杯なのだ。

 

今回は、4つのスキルを連続で発動するようにマクロ設定を行った。
ちなみに、第2ホットバーに登録してあるスキルなので、ALTキーを押しつつ数字キーを押さなければスキルは発動しない。

 

具体的には、「ALT+2 → ALT+3 → ALT+4 → ALT+5」という動作を1つのボタンで実行することになる。

 

ポイントはディレイの設定。スキル間に1秒間のディレイを挟むことで、連続してスキルを発動することができるようになった。

 

 



 

タイトル名:FINAL FANTASY XIV
ジャンル:MMORPG


FINAL FANTASY XIVといえば、綺麗な画質が非常に印象的なタイトルだ。
現在はβテスト中だが、印象的なシーンや景色に出会う度にスクリーンショットを撮りまくっていた。
美しい画像を残すには、画面中に表示されているHUDを消してから撮影し、撮影後にHUDを再表示するという手順が必要になる。
これを戦闘中に行おうとすると、意外に煩雑な作業であったりするのだ。

 

そこで、スクリーンショット撮影用のマクロを作成してみた。

具体的には、「Scroll Lock → Print Screen → Scroll Lock」という動作になる。

 

 


スクリーンショット撮影からHUD再表示までが一瞬に終わる。
これならば戦闘中でもサクッと撮影可能だ。

 

 

 

 

タイトル名:Far Cry 3
ジャンル:FPA(ファースト・パーソン・アドベンチャー)


オープンワールドFPSの名作 Far Cry 3。
FPSのように武器を使い分けながら敵の拠点を制圧していくのだが、主人公1人で真正面から仕掛けるようでは多勢に無勢というもの。
ステルスプレーに徹して、少しずつ敵戦力を削ぎ落としていく戦闘スタイルが基本となる。

 

ステルスプレー時に多用する武器がスナイパーライフルだ。
スナイパーライフルといえば、敵の頭部を狙撃して一撃必殺狙い。
スコープを覗きつつのピンポイント狙撃になるので、アサルトライフルよりも正確なエイミングが必要となる。

 

そんな時に役立つのがDPI変更機能だ。
アサルトライフル使用時には1400dpiだが、スナイパーライフル使用時に600dpiに落としてみたところ、格段にエイミングしやすくなった。

 

 

 

 

 

タイトル名:Assassin's Creed Brotherhood
ジャンル:アクション


このタイトルには、周囲を取り囲む大勢の敵を連続して一撃で葬り去るキルストリークという技がある。
キルストリークを狙うには、敵の攻撃に合わせつつ、タイミング良く攻撃していかなければならない。

そこで、キルストリークを狙いやすいように入力作業を一部省力化できないかと思い、マクロを組んでみた。

 

具体的には、「左クリック(攻撃) → 右クリック(防御)」という動作を1ボタンで200回連続して実行する。

 

マクロを実行すれば自動的に攻撃してくれるので、敵の動きを見る余裕が生まれ、カウンター攻撃をしやすくなった。

 

 

 

 



■ 総じて完成度は高い 価格以上の価値あり
ROCCATのゲーミングマウスを使用するのは今回が初めてであったが、これまでメインで使用してきたSteelSeriesの製品に引けを取らないレベルの性能があるというのが正直な感想である。
本体の大きさは小振りであることから日本人の手に向いたサイズであり、軽量で操作感は軽快だ。

 

ボタンの使用感は上々で、ゲーミングマウスとして基本的な設定は押さえつつ、細かなマクロ設定も可能であり、完成度は非常に高い。
実売価格は8,000円弱のようだが、ハイエンドのゲーミングマウスとしては相場価格であり、価格相応の機能を備えているマウスといえる。

 

ただ、惜しむべきはその知名度だろう。
機能性からしてもっと人気が出てもいいのでは、というのが個人的な感想なのだが、そこに至っていないのは、公式サイトが日本語対応していないなど、商品の宣伝方法にも少なからず原因があるように感じている。

 

日本のゲーミングデバイス市場を盛り上げていくことができる存在感を持ち得るブランドだと思うので、今後の活躍にも注目していきたい。

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