今回、TerraMaster社の最新NAS(Network Attached Storage)である F2-221のレビューに選出していただきました。僕自身は10年程前にNASを購入したことがありますが、最新のNASは信じられないくらいに機能、性能が向上していました。
1年ほど前にF2-221の前モデルであるF2-220のプレミアムレビューが行われており、レビュアーの方々が様々なレビューを行っておられましたが、今回のF2-221では、ハードウェアの性能向上とOSであるTOSがVersion 4.0.02に更新(レビュー期間中にさらにVer 4.0.09に更新されました)されていましたので、ハード、ソフトの両面の進化をお伝えできればと思います。
TerraMaster社のNASは、まだ歴史が浅いためかネット上の情報まだまだ少ないと言わざるを得ませんが、ファームウェアも日々更新されています。
TOS用のアプリも他社製NASよりも数は少ないですが、難易度は高めではあるものの仮想化コンテナのDockerを使うことで様々な機能を追加できる可能性が広がっています。
現状でDockerを使用するにはIntel系CPUのほうが適しており、さらにRAMも2GB程度は欲しいということを考慮すると、F2-221はDockerを使えるNASとしては最適な1台と言えるのではないかと思いました。
もちろん、CPU性能を生かしたNAS本来の性能や、メディアサーバとしての性能も十分満足できるものでした。その魅力を可能な限りお伝えできればと思います。
TerraMaster F2-221について
■ 本体
前面パネルは比較的シンプルですっきりしたデザインになっています。LEDはPOWER、LAN、HDD1,HDD2の4個です。LEDの光量は明るすぎるということもなく好印象でした。
HDDスロットの着脱は、HDDトレイのレバーを手前に引いてロックを外すと簡単に取り出せます。取り付ける際は、HDDトレイ下部の濃いグレーの部分を押して差し込み、最後にレバーを閉じて取り付けます。
F2-221の下部には冷却用の穴が多数空いています。ケースもアルミ製で放熱が良いこともありますが、レビュー期間が冬だったのでケースが熱くなることはありませんでした。
背面には80mmのファンが1個取り付けられています。
またポート類は全て背面にまとめられており、上からHDMI、USB(USB 3.0 × 2)、LAN1、LAN2、DCジャックとなっています。
■ 付属品
付属品は、LANケーブル、HDD取り付けねじ(3.5インチ、2.5インチ用の2種類)、ドライバー、ACアダプター、HDDトレイの識別ラベル、クイックインストールガイド、よくある質問(FAQ)資料でした。
ACアダプターは12V/3.33A(40W)出力ですが、HDD+SSDの構成では、HDDのアクセス時でも消費電力が平均して10数W程度であり、十分な余裕がありました。
F2-221の製品仕様によると、F2-221の公称消費電力は26Wとのことであり、F2-221の定格負荷時でもACアダプターの定格出力の65%程度で使用していることになります。
■ 製品仕様
F2-221には旧モデルのF2-220が存在します。外形寸法などはF2-220と変わりませんが、CPU性能やUSB,LAN端子などが強化されています。また対応フォーマットもext4よりもデータ保護機能が強化されているbtrfsに対応しました。外付けドライブではFAT32に対応しました。
それから取扱説明書には記載が無いのですが、レビュー機にはHDMI端子がありました。
■ 用意したSSD,HDD
今回レビュー用に用意したSSD,HDDです。本来の使用方法としては同じHDDを2台用意してRAID1で使用する場合が一般的だと思いますが、今回はレビュー期間中にいろいろ試してみるためにSSD,HDD各1台としました。
レビュー期間中はSSD+HDD構成にして、レビュー終了後にRAIDにしようかと思っていたのですが、LANの速度で制限されるためかSSDとHDDの差が思ったほど出なかったので、最初からHDD2台でRAIDにしたほうが良かったかもしれません。
HDD [Seagate BarraCuda 4TB ← BarraCudaは推奨HDDではないですが、ご容赦ください]
インターフェイス SATA 6GB/s
回転数 5400rpm
キャッシュ 256MB
SSD [Samsung 860EVO 500GB]
シーケンシャルリード:550MB/s ライト:520MB/s
■ SSD,HDDの取り付け
次はSSD及びHDDの取り付けです。HDD、SSDともに付属のネジで取り付けますが、SSDはネジ3本でしか止められませんでしたが使用する上では特に問題は発生しませんでした。
TOSのインストールと初期設定
■ TNASデスクトップアプリケーションのインストール(Windows PC)
HDDの取り付けが済んだので、次はTOSのインストールです。
付属のクイックセットアップマニュアルに書かれているURL(http://start.terramaster.com/)にアクセスします。
すると次のような画面が表示され、ユーザーマニュアルのダウンロード、TNASアプリケーション、TNASモバイルアプリケーションのインストール画面が表示されます。
TNASデスクトップアプリケーションをインストール後実行すると、ネットワーク上のF2-221を探索して表示されます。
この時の注意事項として、F2-221にはLANケーブルを1本のみ接続するようにマニュアルに記載されていました。
■ TOSのインストール(F2-221)
TNASデスクトップアプリケーション上に表示されたTNASを選択してログインをクリックすると、ブラウザが開きTOSのインストール画面が表示されます。
TOSのインストールでは、まず最初にハードディスクの検査を行い、次にHDDのフォーマット(この時にRAIDやSingleDiskの選択、btrfs/ext4を選択します)、TOSのダウンロード、インストールと続きます。
TOSのインストールが完了するとTOSのデスクトップ画面が表示されます。
■ ユーザー、共用フォルダなどの初期設定
TOSのデスクトップ画面が表示されたら、次はコントロールパネルでユーザーや共用フォルダなどの初期設定を行います。
ユーザーの追加は、ユーザー名、パスワード、SSHアクセスの可否の設定と、ディスク容量の割り当て設定ができます。
ただしテスト環境の問題なのか、ユーザー毎のディスク容量の割り当て画面で容量の設定ができませんでした(制限なししか選択できませんでした)。テスト環境の問題かもしれませんが、引き続き原因を探ってゆきたいと思っています。
ひとまず3人ほどユーザーを追加しました。
詳細な説明は省略しますが、当然ながらユーザーグループも作成できます。
共用フォルダの作成もコントロールパネルから行います。
注意が必要なのが、フォルダのAESハードウェア暗号化の設定は、このフォルダ作成画面でのみ設定可能であることです。作成後に暗号化の設定を変更することはできないようです。
USBポートにUSBメモリやHDDを接続した場合でも、問題なく読み書きできます。まぁ当たり前の機能ですね。
ただUSBポートに接続されたドライブはbtrfsフォーマットには対応していないとのことです。
性能とメモリー容量について
■ 転送速度
転送速度の測定は、LAN1ポートのみ接続、SSD,HDDは各々Single Driveでフォーマットしています。
LAN1のみ使用した場合は、1000Base-Tの理論速度である約120MB/s に制限されてしまいます。
その制限のためか、SSDを使用した場合でも本来の性能は発揮できておらず、HDDの使用で十分な印象です。
F2-221の仕様では、Read 215MB/s、Write 212MB/sと書かれていますが、これはLAN1,LAN2を同時に接続して、リンクアグリゲーションなどの設定をした場合の総合的(複数のPCからの同時アクセスなど)な性能を示しているものだと思います。
F2-221のリンクアグリゲーションの設定画面です(↓)。
リンクアグリゲーションを使用するには、スイッチングハブもリンクアグリゲーションに対応したものが必要になります。
例えばNETGEARのGS108T-200JPSなどのようなL2SWなどと言われるハブですが、自宅で使用しているハブは普通のGbEの5ポートハブなので、リンクアグリゲーションでの測定はできませんでした。
いまさらながらですが、CrystalDiskMarkのバージョンがだいぶ古いですね..。
SSD Single Drive / 1000Base-T Single 使用の場合
HDD Single Drive / 1000Base-T Single 使用の場合
おまけで、USB3.0ポートにWifi子機を接続した場合の速度も載せておきます。
TOSのヘルプでは、『サポートするWifi子機が限られています。詳細はTerraMaster公式Webで..』と記載されていますが、現在のところ公式WebサイトにはサポートされているWifi子機の情報は掲載されていないようです。
TOSのフォルダを探検してドライバファイルを確認すると、少し古めのRealtek系のドライバファイルがありました。MediaTek系のドライバファイルは1個ありましたがこちらは未確認です。
今回使用したWifi子機は600Mbps(433Mbps + 150Mbps)のものですが、150Mbps接続になっているような通信速度でした。
TOSの起動時のdmesgを確認すると、本来のドライバが見つからないとのメッセージが表示されていたので仕方ないのかもしれません。
またこの測定は、TerraMaster社のサポート外のレビューですのであくまで一例で、Realtek系のチップならばどれでも使用できるというわけではないことをご理解ください。
HDD Single Drive / wifi(802.11ac/abgn 600Mbpsモデル) 使用の場合
■ 騒音
F2-220のレビューを見ていると、FANは低騒音で定評がありました。
F2-221も外観などはF2-220とほとんど同じなのでFANの騒音も低いのだろうか?と思い、周波数分布を測定してみました。
TOSのコントロールパネルで、FAN回転数を自動 / 低速 / 中速 / 高速 に切り替えられるので、低中高速それぞれについて測定してみました。HDDはシークしていない時に測定しました。
低速&中速はHDDの回転音のほうが支配的で、FANの音は聴感上もデータ上もよくわかりませんでした。高速に設定するとさすがにFANの音が聞こえますが、それでも静かなほうではないかとおもいます。
FAN低速
FAN中速(低速とほとんど変化がありません)
FAN高速(3kHz以下のレベルが全体的に増加しています)
メディアサーバ機能(DLNA)
本機のセールスポイントである、4K⇒2Kのハードウェアリアルタイムトランスコードによるメディアサーバ機能を試してみました。
親戚からPanasonicの4Kビデオカメラで撮影した動画データを借りて、DLNAメディアサーバからの動画再生時のCPU負荷を確認してみました。
4K動画(AVCHD)のH/Wリアルタイムトランスコード再生(Fire TV Stick(2017) + VLC media player)
CPUの負荷は、20~60%の間で変動していますが、見た目の平均は40%位かと思います。
動画を何種類か再生してみましたが、H.264フォーマットの動画ならCPU負荷は高くても平均60%程度でした。
4KムービーのDLNA再生時のCPU負荷
ffmpegで4K ⇒ 2Kに変換した動画の再生(おそらくリアルタイムトランスコードなし)
2K動画をだた送り出すだけの場合は、CPU負荷はかなり低いです。平均20%程度の負荷でしょうか?
2KムービーのDLNA再生時のCPU負荷
ちなみに、DLNAクライアントとして2011年頃に発売されたの古いDIGAで再生できないかと思って試してみたのですが、こちらは再生できるフォーマットの制限が厳しすぎてF2-221からの再生はできませんでした。静止画の写真すら表示できないので意図的に対応フォーマットを制限していた時代のモデルですね。
外部からのリモートログイン
TOSには、TNAS Onlineという外部からのリモートログイン機能があります。
TOSのリモートアクセスは、コントロールパネルでリモートアクセスを有効にするとTNAS.online/TNAS-{TNAS ID}でログインすることができます。
アクセスはとても簡単で、TNAS.onlineのURLでログインするとTOSデスクトップが表示されます。
TOSコントロールパネルの TNAS.online 設定画面
スマホのブラウザでもTOSデスクトップにアクセスできます。ファイルマネージャーからファイルのアップロードやダウンロードができます。
TNASモバイルアプリケーション上でもTNAS.online/TNAS-{TNAS ID}を追加すればファイルアクセスができます。設定変更が不要な場合はモバイルアプリケーションのほうがファイル操作が簡単なのでこちらがおすすめです。
動画や音楽ファイルもモバイルアプリケーションから再生できます(音楽は別アプリが立ち上がります)
TOSヘルプには、リモートアクセス時のセキュリティ上の注意点として次の3点を挙げています。リモートログインは確かに便利ですが、セキュリティにも気を付けて利用したいと思います。
1.ログインパスワードとポートを正しく設定する(Telnet,SSH,SNMPの無効化など)
2.ファイアウォールをオンにする
3.アカウント保護の設定(ログイン失敗時のアカウントロック制御)
セキュリティ対策をF2-221だけに頼るのではなく、VPNサーバ機能のある無線LANルータと組み合わせて使用するのも有効なセキュリティ対策だと思います。
VPN接続の手間はありますが、可能であればこちらのほうがセキュリティ対策としてはより有効かと思います。
TNASモバイルアプリからのバックアップ
TNASモバイルアプリをスマホにインストールして、F2-221を登録すると、F2-221のファイルにアクセスすることができます。動画や音楽、写真もTNASモバイルアプリを使って再生することができます。
またスマホ上の写真やデータをF2-221にバックアップすることも可能で、これがとても便利でした。
操作は簡単で、TNASモバイルアプリの設定画面からデータのバックアップを選択し、バックアップ対象のフォルダを選択、あとはWifi接続時のみとかバッテリー残量によりバックアップを停止するかなどのオプションを選択するのみです。
TOS アプリケーションの使用例
TOSには35種類のアプリケーションを追加できます。
一覧は別にまとめていますが、ビジネス用途のものも結構含まれているので、その中でも個人向けと思われるアプリケーションをいくつか試してみたので紹介します。マルチメディアサーバは紹介済みですので、それ以外のアプリケーションについて紹介します)
アンチウイルスソフトということなので入れています。メモリ使用量が多め(フリーエリアの35%程度)なのでもう少し使用メモリ量が節約できればと思いますが、セキュリティのためには必要ですね。ファイルスキャンのスケジュールも設定できます。
DropBoxアプリをインストールして、初期設定としてユーザー認証と保存フォルダの指定をすればあとは自動で同期してくれます。
btrfsフォーマットでのみ使用できるバックアップ機能です。
1回あたりのバックアップで最大で100MBほどしかHDD容量を消費しないとのことで、Snapshotのバックアップ履歴はデフォルトで1024個に設定されています。
こちらもスケジュールバックアップが可能ですが、なぜかTOSインストール時に自動で作成されるMusic,Photo,Videoのフォルダはバックアップ対象にすることができません。
⇒ TerraMaster社の方からご回答いただきました。
Music,Photo,Videoこの3つのフォルダはマルチメディアアプリのインストールにより作成されたフォルダなので、マルチメディアアプリにしか使えられません。なので、Snapshotの対象ではありません。
家族や旅行の写真など、バックアップ機能があるとありがたいものについては、自動で作成されるフォルダを使用せずに、自分でフォルダを作成してマルチメディアアプリに追加したほうが良いようです。
コントロールパネルから追加した共有フォルダは自動でsnapshotのバックアップ対象に追加されるのですが、Snapshotの設定画面上でバックアップ対象フォルダを追加することができないので、Music,Photo,Video系のファイルもバックアップ対象にしたいならば、Musics,Photos,Videos などのフォルダを追加してそちらにファイルを保存&DLNA対象にしたほうが良いようです。
プログラムのビルドに挑戦 ⇒ Dockerを使用しました
TOSは、LinuxベースのOSで、アプリケーションにGCC Build toolがあったりするので頑張ればTOSには含まれていないプログラムもビルドできるかなと思い、試してみました。
結果から言いますと、ソースからのビルドはかなりハードルが高くレビュー期間中に実現するのは断念しました。
断念した理由として、TOSの制限がかなり厳しいのと、TOSのファームウェア更新頻度が比較的早いということがあります。
実際、1か月足らずのレビュー期間中に2回もファームウェアの更新がありました。TOSの制限の厳しい中苦労してビルドできる環境を整えてもすぐにファームウェアの更新があって環境の再構築ループになりかねないなと思いました。またインストールできるDockerアプリケーションが意外と便利で、ソースからビルドする必要性が半減したからです。
現状のTOSでは、自力ビルドよりもDockerを使用した仮想コンテナ内で必要なプログラムをビルドしたほうが良いのではないかと考えています。TOSのバージョンアップ時にもコンテナのイメージファイルは影響を受けないので活用できればとても便利なのではないかと思いました。Docker自体にもある程度使いこなしのテクニックが要求されるのでメリットばかりとは言えませんが、しばらくはDockerで遊んでみたいと思っています。
ご参考までにTOSの制限で困ったことを挙げておきます。
・suやsudoが使えない
adminでログインしてもroot権限はなく、さらにsu,sudoが使えないのでLinuxのシステム関連のフォルダへの書き込みができませんでした。一応ヘルプにも対応方法のヒント的なものが書かれているのですが、それがrootでログインするというものでした。常にroot権限というのは結構危険な感じですが、TOSアプリ以外の方法でソフトウェアのインストールを行う場合、現状これ以外の対応方法はなさそうです。
⇒ こちらもTerraMaster社の方からご回答いただきました。
TOSシステムはsuとsudoをサポートしません。Linuxのシステム関連のフォルダへ書き込むとき、rootユーザ―を使う必要があります。
・aptやapt-getが使えない
ちょっとしたプログラムやライブラリをインストールする際に、aptやapt-getが使えないというのがかなり痛かったです。いちいちソースファイルを入手してビルド..というのを繰り返すのかと思ってこのあたりでプログラムの自力ビルドはあきらめムードになってしまいました。
⇒ こちらもTerraMaster社の方からご回答いただきました。
aptとapt-getはubantuの特有コマンドです。
素人感まるだしのレビューで申し訳なかったです。
TOSはLinux系ではあるものの、ubuntuではありませんということですね。
Dockerについて
Dockerの利点は..
・TOSシステムに対する悪影響が少ない
仮想コンテナという部分的なものではありますが、一応仮想環境で動作するため、Docker内の変更はTOSシステム自体にへ影響を及ぼしません。従って何らかのプログラムのインストールを失敗したりしてゴミファイルがシステムに書き込まれてしまうということもありません。
Dockerプロセスが固まってしまう可能性も0ではないので、その場合はTOSシステムのレスポンスが低下する恐れはあります。
・変更前の状態に戻すことができる
Dockerコンテナに対して行った変更は、commitというコマンドで変更内容を保存しなければ確定しません。いわゆる『上書き保存』か『名前を付けて保存』のようなイメージですが、とにかく失敗したなと思ったら保存しないで終了すれば最初の状態から再開できます。
・Docker Hubから、ほかの方が登録したイメージファイルをDLして使用できる
Dockerには、Docker Hubという、Docker imageが多数登録されているサイトがあります。通常はDockerにID登録しないと使えないようなのですが、TOSのDockerアプリケーションからはID登録なしでDocker Imageを使用することができるようです。
・F2-221とDockerの相性が良い
現在Docker Hubに登録されているイメージの対象CPUはほとんどがIntel系です。Intel系が約140万件の登録数に対し、ARM系は2万件未満の登録数なのでDockerを使用するという前提で考えた場合は同価格帯ではARM系が多い他社製NASよりもF2-221の優位性が際立つと思います。
さらにDockerコンテナは起動時に1GB程度のメモリを割り当てる人が多いようです(動作状態のモニターではそれほど使用していないようですが..)。
F2-221は最大8GBまでRAMを増設できるようなので、さらにDockerに対する相性は良いと言えます。
■ Dockerアプリケーションの概要
Dockerアプリでは、まずDocker Hubに登録されているコンテナのイメージを検索してダウンロードします。
簡単に動作するかどうかは試してみないとわかりませんが、Minecraftサーバや
Ruby on Railsサーバも検索するとHitします。
コンテナをダウンロードするとDL済みイメージ一覧に表示されます。下の画面イメージでは、ubuntuのイメージと、ubuntuにapt-get update を実行し、ffmpeg 及び Ruby をインストールした後に ubuntu1 というイメージ名で commit した ubuntu1、それからbash付きのIntel QSV対応のffmpegコンテナであるcity.n/ffmpeg-qsvのイメージがダウンロード済みになっています。イメージのエクスポート/インポートもこの画面で可能です。
実行中または停止中のコンテナは、コンテナーのページに表示されます。この画面で起動/停止の操作ができます。下の画面では、ubuntu1とcity.n/ffmpeg-qsvがともに停止中になっています。
ubuntu1の実行サンプルです。この画面ではapt-get updateを実行しています。
フォルダのマウントの設定とたポートの割り当てなどは考慮が必要ですが、TOSではapt-getが使えないのでubuntuコンテナのほうがインストールは楽です。
ffmpegも動作しました(諸事情により下の画面はQSVエンコードではありません)。
TOS上ではスタティックリンク版をDLしてインストールしましたが、TOSバージョンアップ毎に再インストールが必要になるのに対し、DockerはTOSがバージョンアップしても変の変更もなしに起動できるので楽でよかったです。
DockerアプリからDockerイメージのエクスポートを試してみました。
Publicにtarファイルが作成されるのですが、なぜかパーミッションが600で、root以外アクセスできないという設定になっていました。
さすがにroot以外でもリード位は許可してもよかったのではないかと思います。600だとエクスポートファイルのコピーすらできません....。
rootでログインしてchmodすれば良いとはいえ、次期バージョンアップではパーミッションの見直しをしていただけるとありがたいです。
HDMI端子について確認しました
■ HDMI端子の動作確認
取扱説明書に記載のなかったHDMI端子ですが、一応モニターを接続して起動してみました。
結果としては、TOSの起動画面(スプラッシュ画面)表示後、一瞬ブートセレクタが表示されその後はLinuxの起動メッセージでした。
起動完了後はキーボードを接続していればログインも可能でした。
TOSのバージョンアップと今後に期待すること
■ TOSのバージョンアップ
レビュー期間中の12/18(Ver 4.0.02)と1/4(Ver 4.0.09)にTOSがバージョンアップされました。F2-221運用中のTOSバージョンアップは保存しているデータは残りますが、TOSの設定やTOSアプリケーションは初期化されてしまいます。
12/18のVer 4.0.02更新時はまだレビュー期間に余裕があったので新しいバージョンでレビューをやり直すことができましたが、さすがにレビュー締め切り2日前の1/4(Ver 4.0.09)更新ではレビューのやり直しはできませんでした。
そこで、簡単ですがVer4.0.09で変更になった情報と、簡単に操作を確認した結果をここで紹介したいと思います。
TOSデスクトップ上に表示された更新情報は次の通りです。
1.TOS Kernelパフォーマンスの改善
2.管理者用インターフェースの改善
3.TNAS Onlineリモートアクセスプラットフォームの機能効率の最適化
『機能効率の最適化』というのがあまりピンときませんがパフォーマンスの改善的な意味合いでしょうか?
実際にVer 4.0.09を使ってパフォーマンス改善については体感ですぐにわかるものではありませんでしたが、大きな違い感じたのはTOSヘルプの記載内容の充実です。
TNASデスクトップアプリケーションのインストール時にダウンロードするよう促される取扱説明書は、主にセットアップ関係の情報が記載されています。取扱説明書にはTOSの各種設定の説明はないので、TOSのマニュアルというのは実質的にTOSヘルプということになります。
今回のVer 4.0.09ではTOSヘルプの記載内容がより詳しくなったように感じました。
■ 今後のTOSバージョンアップで対応してほしい項目
・コントロールパネルで項目がグレーアウトして設定できない場合の対処方法
現在のところはコントロールパネルで項目がグレーアウトして設定できない場合に、なぜ設定できないのか、どうすれば設定できるようになるのかの情報が少ないと感じました。
例えば、ユーザー毎のディスク容量の割り当てが選択項目すら出てこないのはなぜなのか、ヒントになるような情報があれば助かるのにと思いました。
・TOSの各アプリケーションの詳細な使用方法が知りたい
TOSのアプリケーションも、代表的な数種類は使用方法がTOSヘルプに記載されていますが、大半のものは説明がありません。このあたりは機能改善にドキュメントが追い付いていないだけなんだろうとは思いますが、最悪英語でもよいのでなにか情報があればと思いました。
■ レビューを終えての感想
年末年始をF2-221のレビューに費やしたので、長めのレビューになってしまいました。それでもまだ調べ切れていないこと、確認できていないことがたくさんあると感じています。
1か月にも満たないレビュー期間中に2回もファームウェアのバージョンアップがあったことにも驚きましたが、それはTerraMaster社のF2-221に対する意気込みと捉えたいと思います。
F2-221を初心者も含めたユーザー全員が使いこなしてゆけるようになるには、メーカーの公式情報とネット上でのユーザーの情報発信の両方を充実させてゆくことが必要かなと感じました。
もちろん、単純なNASやメディアサーバとしての使用方法ならば現在でも十分すぎるほどの性能を持っていると思います。ただF2-221には今後も増えてゆくであろうTOSアプリや、すでに十分すぎるほどのコンテナが登録されているDockerも使用することができるため、ついいろんなことを試してみたくなる魅力を持っています。
僕も今回のレビューを通してF2-221の魅力にやられました。まだこなれていない部分もあるTOSですが、今後の機能向上と可能性に賭けてみるのも良いかなと思いました。
■ レビュー後2か月経過した感想 (2019/03/07)
レビュー後2か月ほど経過しましたが、F2-221は安定して動作しています。
一度間違ってコンセントを抜いてしまったことがあったのですが、その後も問題なく起動してほっとしたこともありました。
2か月も経過すると、TOSアプリケーションのアップデートもちらほらと行われ、TOSデスクトップにも更新件数がわかるような表示が現れます。
TOSデスクトップのアプリケーションアイコンの右上に赤い④の表示が出ていますが、これが『TOSアプリで4件の更新がありますよ』という通知になります。
TOSアプリケーションを開くと、アップデートのあるアプリには更新(1)のような表示があり、一目でわかります。
そしてこの更新(1)をクリックすると更新版がインストールされます。
ただし少し残念なのは、更新によって何が変わったのかの情報(リリースノートのようなもの)がないので、若干不安があるということです。この辺りはTerraMasterのWebへのリンクでも構わないので何かしら情報が得られるような更新があれば良いなと思いました。
レビューに使用した機器
■ PC
dell New XPS13
Intel Core i7-8550U
8GB LPDDR3 1866MHz
256GB PCIe NVMe SSD
13インチ 4K UHD(3840x2160)
dellのプレミアムノートPCです。流石にこのPCを使い慣れるとAtomのEZBook Airのもっさり感が気になってしまいます...。
Jumper EZBook Air
Atom x5-Z8300
4GB LPDDR3
128GB eMMC
10.8インチ FullHD
EZBook Airは1kg未満なのがポイントです。ACアダプターもXPS13よりも小さいので、外出先で荷物が多いときはEZBook Airを持ってゆくこともありますが、レスポンスはやはり数段落ちます。Google Documentでの編集でも感じます。
他に、Panasonic CF-S10、hp nx6320(共にSSD換装済み)も使用しています。
■ DLNAクライアント
Fire TV Stick(2017)
Panasonic DMR-BZT710
BDレコーダーです。DLNAクライアントとして使えるかと思いましたが、制限が厳しすぎて実用は難しかったです
■ 無線LANルーター
TP-link Archer C9(V5)
電波の飛びとVPNサーバ機能が気に入って使っています。
■ 無線LAN子機
ANEWKODI 802.11ac 対応600Mbps対応 wifi子機
USBポートに接続してwifi通信の確認に使用しました。
TOSアプリケーション一覧
TOSアプリケーションにどんなものがあるのか、購入前には確認できないようなのでご参考までに画面キャプチャーを貼り付けておきます。
プレカリアート真面目明さん
2019/01/08
凄いレビューですね。
Dockerって仮想PCとは違うんでしたっけ。
HDMI付いててリモートしないで済むっていうのも凄い。
そしてそれを余すところなくレビューできているのはガチ・レビュワーの証拠。
スナップショットにハイパーバイザー、HDMIっていうのはもはや高機能NASどころか、超高性能仮想PC基盤って感じですよね。
っていうかこれ、世界中のみんなが知りたいことなんじゃないでしょうか。
このレビュー、いろんなサイトにつながって欲しい!
aPieceOfSomethingさん
2019/01/08
コメントありがとうございます。
プレカリアート真面目明さんにエクストリーム!と言っていただいてとても嬉しいです!
まだまだレビューの熱気というか熱い想いが足りてないなと思っていますが、これからも頑張りたいと思います。
Dockerはハードウェアの仮想化まではしないので、仮想化の程度でいうとVMwareなどよりも部分的なもののようですが、その分負荷が軽いというメリットがあるとのことです。
まぁ私も正確に理解しているわけではないので、Dockerを解説しているサイトを見たほうが誤解が少ないかもしれません。
年末にちばとどさんがQNAPの中古NASのとても詳しいレビューをされていますが、その中でもDockerの話題出ていますね。CPUがAtom D525?とかで対応していなかったようですが..。
Tom Tomさん
2019/01/16
TerraMasterのTOMと申します。
ごレビューで言及したいくつかの問題について、説明させていただきます。
1、「なぜかTOSインストール時に自動で作成されるMusic,Photo,Videoのフォルダはバックアップ対象にすることができません。」
>>Music,Photo,Videoこの3つのフォルダはマルチメディアアプリのインストールにより作成されたフォルダなので、マルチメディアアプリにしか使えられません。なので、Snapshotの対象できはありません。
2、現在、Docker中のアプリはAdminユーザーでしか使えません。これについて、こちらも後程で普通のユーザーに使えられるように改善します。
3、aptとapt-getはubantuの特有コマンドです。
4、TOSシステムはsuとsudoをサポートしません。Linuxのシステム関連のフォルダへ書き込むとき、rootユーザ―を使う必要があります。
aPieceOfSomethingさん
2019/01/16
TerraMasterの方からコメントいただけてとても光栄です!
コメントいただいた内容で、少し疑問に思っていたことが納得できました。
F2-221はとても可能性のあるNASだと感じていますので、また使い勝手などフィードバックさせていただければと思います。
aPieceOfSomethingさん
2019/03/08
とても安定して動いていますが、アプリの更新で何が変わったのかがわかりにくいのが少し残念なポイントでした。
今後のバージョンアップに期待しています。