【もくじ】
1.イントロ
2.製品・インストール
3.テスト環境
4.エクスペリエンス インデックス
5.3DMark
6.ファイナルファンタジーXIV
7.DiRT3
8.Super Street Fighter IV
9.リネージュ2
10.OCCT
11.消費電力
12.温度・ファン
13.フレームレートターゲット機能
14.テストサマリー
15.ShadowPlay ※5/7追加
1.イントロ
GeFroce GTX 750 Tiは、NVIDIAの第4世代アーキテクチャ「Maxwell」を採用したGPU。
シェーダプロセッサ640基、GPUクロック1020MHz、ブースト1085MHz(GPU Boost 2.0 対応)
メモリはインターフェース128Bit、GDDR5、2GB。クロック5400MHz(1350MHz)
Maxwellは、前世代のKeplerよりも電力効率を重視したアーキテクチャとされている。
リファレンスTDP(熱設計消費電力)は60Wで、補助電源コネクタ不要。
2014年2月リリース直後の各メーカー製品の販売価格は、15,980~20,980円。
ポジション的には、GTX650と660の間、エントリー・ミドルに位置づけられている。
NVIDIAの資料によると、MINI-ITXゲーミングPC向きの製品としてもアピールしている。
ELSA GeForce GTX 750 Ti 2GB S.A.C(GD750-2GERT)(以下 本製品)は、GTX 750 Tiを採用し、145mmの基盤にオリジナルのSilent Air Coolingファンを搭載した製品。
GPUクロック1040MHz、メモリクロック5400Mhz、補助電源コネクタなし、3系統出力(DVI-I、DVI-D、Mini-HDMI)と、概ねリファレンスに準拠している。
今回、ジグソープレミアムレビューにて試用する機会を得たので、本製品の性能と省電力性を中心に確かめたい。
個人的には「Core i7 と 本製品 が ACアダプタ電源で稼働するか」が最も気になっていた。
本レビューが、同じような疑問を持つ方にとって、検討の参考になれば幸いだ。
また、コメントで要望を頂ければ、できる範囲で追加の確認にも対応したい。
2.製品・インストール
本製品のパッケージと付属品。
本製品の画像
さっそくテスト環境にインストールする。
Mini-ITXマザーは規格上170×170mmだが、本製品はそれよりさらに短い145mmだ。
このPCには、最低限のパーツしか詰め込まないようにしている。
その点、本製品はマッチし、ご覧のように、きれいに収まった。
続いて、TechPowerUp GPU-Z によるカード情報。
※4/28追加(メーカー保証外行為)
PCからカードを取り出し、さらにGPUクーラーも取り外してみた。
GPUチップの刻印は「NVIDIA GM107-400-A2」
メモリチップの刻印は「Samsung K4G41325FC-HC03」
メモリスピードは0.33ns=6Gbps。512MBの4枚搭載で2GB。
余談だがPS4にも搭載されているらしい。
この後、グリスを塗り直して元に戻した。
製造時のグリス塗布に、特に問題はなかったと思われる。
それを確認して、塗り直したのは個人的な趣味の領域だ。
3.テスト環境
テスト環境は以下の通り。
【CPU】 Intel Core i7-3770T(4C8T クロック2.5GHz ターボブースト3.7GHz)
【マザー】 ASRock Z77E-ITX
【メモリ】 Corsair CMT8GX3M2B2133C9
【ドライブ】Samsung SSD840PRO MZ-7PD256B/IT
【電源】※Abee AC150-AP04AA
【クーラー】PROLIMA TECH Samuel 17
【クーラーファン】Noctua NF-F12 PWM
【ケース】Abee T80 Mini-ITXケース
【ケースファン】SilverStone Air Penetrator SST-AP121
【OS】Windows 8.1 Pro Update 1 64bit
【GeForceドライバ】GeForce 337.50 Driver
【HD4000ドライバ】15.33.14.64.3412(10.18.10.3412)
Vsync(垂直同期)はドライバ設定、各アプリケーション設定ともオフ。
※Abee AC150-AP04AAは、出力150WのACアダプタ電源。
DC出力は、+12V 10A、+5V 10A、+3.3V 10A、-12V 0.15A、+5Vsb 2.2A。
電源変換効率80PLUS GOLD相当の88%を謳っている。
DC基盤にATX/SFX変換ブラケットを付けてPCケースにマウントできる。
NVIDIAは、GeFroce GTX 750 Tiを300W電源で動作可能だとしている。
ところが、テスト環境の電源は、その半分の150Wの容量しかない。
ただし、CPUは省電力モデルの3770Tで、TDP的にはCPU45W+GPU60W=105Wと、+12VのVAの約88%である。
しかし、TDP(熱設計電力)は冷却装置の設計指標であり、最大消費電力そのものではない。
果たして動作が可能か不可か、試してみなければ分からない、というのが本当のところだろう。
次から代表的なベンチマークソフトで、動作可能か確認するとともに性能を確認する。
グラフィック性能は、3770T内蔵グラフィックスHD4000と比較しながら進める。
4.エクスペリエンス インデックス
エクスペリエンス インデックスのスコアを計測。
グラフィックス「5.9」から「7.9」に「2.0」ポイント上昇
ゲーム用グラフィックス「5.4」から「7.9」に「2.5」ポイント上昇
合計「5.4」から「7.9」に「2.5」ポイント上昇
5.3DMark
Futuremarkのベンチマークソフト 3DMarkのスコアを計測。
Fire Strike「659」から「3810」に「5.8」倍上昇
Cloud Gate「6151」から「15484」に「2.5」倍上昇
Ice Storm「57626」から「101247」に「1.8」倍上昇
6.ファイナルファンタジーXIV
スクウェア・エニックスのMMORPG ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編のスコアを計測。
標準品質には、(デスクトップPC)と(ノートPC)の2種があるが、(デスクトップPC)を選択。
1280×720 標準品質「4525(37.2FPS)」から「19490(189.2FPS)」に「4.3」倍上昇
1280×768 最高品質「1877(15.2FPS)」から「11347(101.7FPS)」に「6.0」倍上昇
1920×1080 標準品質「2591(21.4FPS)」から「12009(105.5FPS)」に「4.6」倍上昇
1920×1080 最高品質「1074(8.9FPS)」から「6018(49.0FPS)」に「5.6」倍上昇
スクウェア・エニックスによると、「非常に快適」とされているスコア7000を超えると、平均フレームレートが60fpsを超える、とのこと。
1920×1080 最高品質では越えられなかったが、その他の設定では7000を超えた。
7.DiRT3
Codemastersのカーレースゲーム DiRT3のベンチマークスコアを計測。
1920×1080 LOW設定のAVERAGE FPSが「39.0」から「191.7」に「4.9」倍上昇
1920×1080 ULTRA設定のAVERAGE FPSが「12.8」から「70.5」に「5.5」倍上昇
8.Super Street Fighter IV
Capcomの対戦ゲーム Super Street Fighter IV Arcade Editionのベンチマークスコアを計測。
1920×1080 デフォルト設定の平均FPSが「54.2」から「282.6」に「5.2」倍上昇
9.リネージュ2
NCSOFTのMMORPG リネージュ2の実際のゲームプレイ中のFPSを計測。
使用ツールは「EVGA Precision 4.2.1」
ゲーム内のグラフィック設定は、HD4000利用時、画像のユーザー設定を使用していた。
1920×1080 32Bit、各種High、Very Wide、アンチエイリアスなし、HDRレンダリングA、影効果なし、改良型シェーダー効果なし
ここまでのベンチマークで、GPU性能は大幅に上がっていることは明らかだが、リネージュ2のFPSはあまり上がらなかった。
HD4000でも30台のFPSが出ていたが、本製品でも平均すると40FPS程度だった。
最低FPSは依然20台に落ち込み、最高FPSも頭打ちして100を大幅に超えることがない。
ただし、この結果はGPUではなく、リネージュ2のソフトウェアに起因しているかもしれない。
たとえば、十分なGPU性能を持っていても、描画対象のデータ(例えばキャラクターの名前や座標等のデータ)受信処理がボトルネックになって、FPSが落ち込むのかもしれない。
そう推測するのは、街中等のキャラクターの多い場所ほど、FPSが低い傾向があるからだ。
しかし、その辺は確かめる術が無いので、試みに、グラフィック設定を「High」に変更した。
「High」設定では、アンチエイリアスが4倍、影効果、改良型シェーダー効果等がオンとなる。
グラフィック設定を「High」に設定したことで、HD4000では10FPSを割り込んだが、本製品ではFPSに差が余り生じなかった。
描画負荷の高いグラフィック設定にすることで、性能向上が確認できた、と言えるだろう。
※4/21追加
EVGA Precisionで、ゲーム中のFPSをログに取り、いくつかのシーン別にグラフ化した。
HD4000では36.1だったソロカルティア中のFPSが、GTX750Tiでは59.9になった点は、相応の性能アップが確認できたと言える。
しかし、そのハードと設定で、イスティナ討伐やギラン街中のFPSが20台に止まった点は、やはり、このゲームのアーキテクチャに対して首を捻らざるを得ない。
私の中では、リネージュ2は本製品のグラフィック性能を十分には活かせないと結論付けた。
10.OCCT
GPUベンチマークを一通り終えて、次はOCCTの 「POWER SUPPLY」テストで負荷を掛け、安定稼働するか確認する。
OCCTは各種ベンチマークよりも高い負荷を掛けることができ、オーバークロックや電源の安定性確認に利用されている。
1時間の「POWER SUPPLY」テストを無事完走した。
テスト完了後にAIDA64で確認した、CPU、マザーボードのセンサー読み取り値(CPU最大温度69度、マザーボード最大温度48度)
この間ワットチェッカーでは、最大消費電力148W以内で推移した。
またCPU、GPUに電力を供給する+12Vの出力は、11.510V~12.197Vで推移した。
GPU負荷の高い時間帯に+12Vが低くなっており、電源の安定性のテストとしては、あまり良い結果ではないと思う。
ともあれ、冒頭の「Core i7 と 本製品 が ACアダプタ電源で稼働するか」について、OCCTを含む全てのベンチマークで安定動作が可能なことを確認できた。
※私個人は常用するが、稼働を保証する趣旨ではないことをお断りする。
11.消費電力
アイドル時と各ベンチマーク実行時の最大消費電力を測定。
ツールはサンワサプライのワットチェッカーの目視確認。
アイドル時:28.5W(HD4000)、41.5W(本製品)
エクスペリエンス インデックス 実行時:59.9W、105W
3DMark 実行時:65.6W、126W
ファイナルファンタジーXIV 実行時:54.7W、130W
DiRT3 実行時:52.6W、136W
Super Street Fighter IV 実行時:66.8W、120W
リネージュ2 実行時:67.6W、100W
OCCT POWER SUPPLY 実行時:77.9W、148W
12.温度・ファン
アイドル時と各ベンチマーク実行時の最大GPU温度と最大ファン回転数を測定。
使用ツールは「TechPowerUp GPU-Z Version 0.7.8」
測定時の室温は22度
アイドル時:30度、10%、1050rpm
エクスペリエンス インデックス 実行時:50度、10%、1050rpm
3DMark 実行時:75度、40%、1345rpm
ファイナルファンタジーXIV 実行時:74度、39%、1325rpm
DiRT3 実行時:74度、39%、1316rpm
Super Street Fighter IV 実行時:49度、10%、1048rpm
リネージュ2 実行時:67度、32%、1117rpm
OCCT POWER SUPPLY 実行時:78度、46%、1522rpm
温度は、アイドル時:30~36度、ロード時75~78度。(室温22度)
ファン回転数は、アイドル時:10%、約1000rpm、ロード時:46%、約1500rpmとなった。
※4/21追加
ELSAオリジナル S.A.C(Silent Air Cooling)ファンの制御設定をグラフ化する。
温度とファン回転速度(%)、ファン回転速度(%)とファン回転数(rpm)
どちらも測定値が振れるので、散布図で示し、グラフ中におおよその平均値を示した。
ファンの音量については、計測ツールを持っていないため、あくまで主観だが、非常に静かだ。
常識的に、1000rpmの12cmファンより大きな音が発生しているだろうとは思うが、個人的に、はっきりと分かる程の音が増えた気がしなかった。
13.フレームレートターゲット機能
本製品では、ELSA製のNVIDIA GPU管理ソフトウェア ELSA GPU Optimizerを利用できる。
ELSA GPU Optimizerにより、
・GPUクロック
・メモリクロック
・パワーターゲット
・フレームレートターゲット
・ファン回転数
を設定できる。
クロック(性能)と消費電力、GPU温度とファン回転数(静粛性)はトレードオフの関係にあるので、どうバランスを取るか悩ましいところだ。
これに対して、フレームレートターゲット機能は、設定したフレームレートを維持しつつ、クロックと電圧を自動調整することで消費電力を抑制できる、と謳われている。
リフレッシュレートを超えるフレームは、いずれにせよ表示できないから、特にデメリットなく省電力化できるということになる。
もちろんGPU負荷が高くて、設定フレームレートに届かない場合には、機能が動作しないが。
ファイナルファンタジーXIVで、この機能の効果を確認する。
グラフィック設定「1280×720 標準品質(デスクトップPC)ウィンドウモード」、フレームレートターゲットを60FPSに設定し、消費電力とスコアを測定。
フレームレートターゲットなし:130W スコア「19490(189.2FPS)」
フレームレートターゲットあり:100W スコア「7456(58.6FPS)」
約30Wの消費電力抑制効果があった。
この間、GPUファンもアイドル時の状態を維持した。
60FPSを上限に負荷をセーブするということで、実際に効果もあり、良い機能だと思う。
特に、ライトなゲームをプレイする際に、省電力効果が期待できる。
14.テストサマリー
今回のテストサマリーを以下にまとめる。
平均すると、
GPU性能は約5倍向上した。
最大消費電力は約60W上がったが、150W電源で賄える範囲だった。
本レビューを通して、テスト結果には大変満足している。
ACアダプタ稼働を条件に、最大限GPU性能を強化したかったからだ。
本製品は、補助電源不要クラスGPUのベストバイとしてオススメできる。
15.ShadowPlay ※5/7追加
要項に「レビューには必ず動画を用いてください」との記載があったので、動画を用意した。
本製品の機能の一つでもある、ShadowPlayを使って、ゲームプレイ動画をキャプチャした。
ShadowPlayは、NVIDIA製ユーティリティ GeForce Experience の機能の一つだ。(β版)
ゲームプレイをGPUのハードウェアエンコーダーで常にキャプチャしていて、ユーザーの操作で動画ファイルに保存できる。
保存時間=シャドウ時間は、1~20分間で設定でき、ユーザーが「シャドウ記録の開始」をした時点から、直近の設定時間分の動画がファイルに保存される。
シャドウ時間分の動画が一時ファイルで保管されていて、ユーザーが操作をしなければ随時上書きされているのだと思われる。
手動録画機能もあり、そちらを利用すれば、任意の時間のキャプチャも可能だ。
出力する動画ファイルは、H.264コーデックのmp4形式で、高画質だが容量が大きい点(クオリティ高で、3分で1GB程)に注意が必要だ。
ビットレートは、10~50Mbpsで設定でき、プリセットは、低=15Mbps、中=22Mbps、高=50Mbpsとなっている。
シャドウ時間や動画品質の他、動作モード(シャドウ、手動、あるいは併用)、動作状態を示すインジケータ、操作用のキーボードショートカット等を設定可能だ。
操作用のショートカットは、ゲームプレイで利用するものとは別に設定する必要がある。
ShadowPlayの動作は非常に軽快で、とてもフルHDの常時録画をしているとは思えない。
動画ファイルへのエクスポート処理も非常に高速で、数秒で数GBのファイルを出力する。
フルHDの動画ファイルが、このように簡単に扱えるようになっていること、ハードウェア(CPU、GPU、ストレージ)、ソフトウェアの進化には目を見張るばかりだ。
今回は、DiRT2のリプレイを約3分の動画に保存した。拙いプレイだが、そこはご容赦を。
そのファイルをYouTubeにアップロードしたところ、アップロード後にYouTube側で他の解像度も含めてトランスコード処理をするようで、その処理の完了に数時間を要した。
YouTube側でもフルHDで再生可能だが、画質やビットレートは独自に最適化しているのだろう、同じ1080pでも元ファイルの方が高品質だ。(当然、元動画は容量的に公開に適さない)
それでも1080pなら、OSD表示している、GPU温度、ファン回転数、FPSが読めるかな。
本製品の良かった、気に入った、オススメしたい機能や特長
「ゲームを快適にプレイする」のに必要な性能を持つPCを、できるだけ「コンパクトに」「静音に」そして「省電力に」構成したいと思っている。
その観点で、ケース、マザー、CPU、電源、冷却パーツ等を吟味して選択している。
本製品について、まず、ACアダプタ電源で、すべてのテストを完走した点が良かった。
本製品の省電力性は素晴らしいと言えるし、設定を詰めれば更なる省電力化も可能だ。
次に、私が主にプレイするゲームが、フルHD・高品質・60FPSで動作する性能が良かった。
これは、CPU内蔵グラフィックでは実現できなかったことだ。
今回は試していない最新タイトルでも、設定を調整すれば充分プレイできそうだ。
競合製品としては、Radeon 7750やGeForce 650といった補助電源が不要なGPUや、Iris ProやKaveriといったCPU内蔵グラフィックが挙げられる。
テスト環境の都合上、比較は行えないが、本製品はこれらの競合に大きな性能差をつけている。
あるいは、格上のミドルクラスGPUとの比較も視野に入るが、同じく環境の都合上割愛する。
まとめとして、本製品は、補助電源不要クラスのGPUで、現時点で最高の性能と省電力性を持っている。
一方で、実装はコンパクトで、静粛性にも優れている。
「コンパクトで静かなゲーミングPC」を実現するGPUのベストバイとしてオススメする。
kuro_rさん
2014/04/22
設定をクオリティ重視の設定にして比較してみるといいかもしれません。
iikumaさん
2014/04/26
コメントありがとうございます。
リネのFPSについては、もう少し検証を進めて、結果を追記しました。
CLWさん
2014/07/18