レビューメディア「ジグソー」

時代はダウンサイジング!大きさが性能を表す時代は終わった。プレミアムコンパクトキューブスタイル

以前、「大きさ」は富と栄光の象徴だった。アメリカンサイズ、大は小を兼ねる、「大きいことはいいことだ!!」...それはPC界においてもまた。
強力な1000Wオーバーの電源、ハイスピードなCPUとそれを冷却する大がかりな装置、物量をつぎ込んだビデオカード、それを収める巨大なケース....

その風潮が変わり始めたのは昨年くらいからであろうか。震災後逼迫する電力、それを安定化させるためのUPSも大容量は高額、また大型ビデオカードや最高性能CPUは発熱源でもあり、冷却する空調に負荷を与える。PCが大きいことはいいことなのだろうか?

最近の欧州の高級車はモデルチェンジで大きく豪華になるのではなく、上手く過給器を使って2L以下の少気筒のエンジンを積み、ダウンサイジングして環境性能を訴えながらも品質は落とさず所有欲を満たす。PCに関してもパーツの基本性能が上がった事により、性能を犠牲にせずに環境(発熱・電力・スペース)に優しいPCにモデルチェンジできないか、それが今回の課題だ。

対照(対象)となるのはcybercat現メイン機。このPCは2010年6月の構築のため、現在満2年を経過したところだ。構築時からはメモリが2GB×2⇒4GB×2になり、カートリッジ式のSATAリムーバブルHDDを追加したが、基本構成は構築時のママだ。

その現在の構成は以下の通り。
CPU:AMD PhenomⅡX6 1090T BlackEdition
CPUファン:Thermaltake Contac29 CLP0568
M/B:ASRock 890FX Deluxe3
メモリ:CFD W3U1600F-4G
VGA:玄人志向 RH5850-E1GHW/HD/DP/SP
システムドライブ:WD Caviar Black WD1002FAEX
データドライブ:WD Caviar Green 2TB WD20EARS
光学ドライブ:パイオニア BDR-S05J-BK
電源:AcBeL R9-1100W Gold
ケース:Abee AS Enclosure M0(EM0-BK)
等といった構成(他にバックアップ用HDDサウンドカードカードリーダー)。
前面フル5インチベイ、ATX+αのミドルタワーケースのため拡張性は高いが、474×201×540mm(高さ×幅×奥行き)という巨艦。シャーシまでアルミのフルアルミケースとは言うものの、ケース単品で7.4kg、上記装備重量では17.2kgに及ぶ重量。
これでもフルアルミなのでまだマシといえるが....
これでもフルアルミなのでまだマシといえるが....
ただ性能を落とさずダウンサイジングする...というのは困難だった。Micro-ATXならあるいは....しかしそれでは大きなサイズ低減ではないし、Mini-ITXでは基板裏まで使った配置の板でも大きな積載力は望めない。中途半端なダウンサイジングではやらない方がましだし、Mini-ITX

はサイズ的制約(規格上170mm四方)があり、積載するCPUや拡張ボードに何かと制約が多い。充分な拡張性を備えたM/Bはほとんどない。拡張性や性能を担保したままの小型化は難しかった。

一方、「小型化」という点だけに着目すれば、もう少し選択肢が広がる。ベアボーンの存在だ。ベアボーンというと昔は、Micro-ATX程度の大きさでデザイン的に何の変哲もないホワイトケース、独自仕様で拡張しにくいM/Bと最低限の電源でコストを削り、CPUとメモリ、HDDを加えればPCができあがる、拡張性が制限されたお手軽半完成品、といったもので業務用という感じだった。しかし最近はコンパクトタイプを中心にベアボーンならではの提案が多く、ディスプレイのVESAマウントに背負わせる極小PCやタッチパネル液晶と合体させたファンレスPC、自分でCPUが選べるノート型のベアボーンなどおもしろい機種も多い。

ただそれらをメインPCにできるか、というと疑問符がついていた。それは拡張性の問題と並んで、「所有欲をくすぐる」ベアボーンはほとんどなかったからだ。元の生い立ちからか、コスト要求が大きい分野だからか、ベアボーンというと、外装はチープでプラスチッキー、ボタンなどの質感もなく、常に隣に置くメインPCとしては必ずしも満足できるものではなかった。

そんな状況を打開すべく?プレミアムなベアボーンが現れた。それが今回Shuttleより発売されたキューブ型ベアボーン「SZ77R5」。

名称が示すとおり、最新のR5シャーシをベースに、Intel Z77チップセットを使うことで最新の第3世代Core iシリーズ(Ivy Bridge)対応、メモリはDDR3 1600まで拡充、PCI-Express 3.0やUSB3.0もネイティブ対応した高性能ベアボーンだ。

特にR5シャーシのアピアランス、これは高級感溢れる所有欲をくすぐるモノだ。シャーシはアルミで軽量、
ベアボーン単体の重さは3.7kgに過ぎない
ベアボーン単体の重さは3.7kgに過ぎない
外観はヘアライン仕上げで光学ドライブベゼルやオープン3.5インチベイカバー、フロントUSBなどの目隠しカバーも統一感がとれている。
カバー時には光学ドライブベイ、オープン3.5インチベイ、フロント端子類も隠され統一感が↑
カバー時には光学ドライブベイ、オープン3.5インチベイ、フロント端子類も隠され統一感が↑
ヘアライン仕上げのアピアランス
ヘアライン仕上げのアピアランス
その拡張性は規格に縛られないベアボーンならではの高機能。キューブ型のコンパクトなボディに、光学ドライブ用オープン5インチベイ1つ、オープン3.5インチベイ1つ、3.5インチはシャドウベイも一つ。メモリスロットはDDR3タイプが4本で順次大容量化でも既存メモリが無駄にならない設計。さらにMini-ITXでは大きく制限されている拡張スロットがPCI-E ×16 スロットとPCI-E ×4 スロットが一つずつに加えて、mSATA兼用のロングタイプのmini-PCIE ソケットにショートタイプのMini-PCIE ソケットと無線LANモジュールの追加や、1スロット型のビデオカードを選択した場合、PCI-E ×4を用いてRAID等の構成も可能となる。

この規格品ではなかなか得られない拡張性の高いコンパクトPCが、ベアボーンのかたちで供給され、好みのパーツを使ってカスタマイズできるところが本製品の魅力である。
では早速パーツを組み込んでいこう。いくつかのパーツを比較検証したが、その比較に関しては冗長になるので、各パーツのレビューに譲り、本稿では前述した現メイン機との比較に使った部材で紹介する。

使用パーツは以下の通り。
CPU:インテル® Core™ i7-3770T(4コア、8スレッド、2.5 GHz(TB時最大3.7GHz)、L3=8MB)

CPUクーラー:SZ77R5付属純正「I.C.E」CPUクーラー(「I.C.E」=Integrated Cooling Engine)
M/B:SZ77R5付属
メモリ:ADATA DDR3-1600 (4GB×2) 240pin Unbuffered DIMM AX3U1600GC4G9-2G

VGA:CPU内蔵HD4000/MSI R6950 Twin Frozr II OC

システムドライブ:WesternDigital ScorpioBlue 5400rpm 750GB WD7500BPVT

ISRT用SSD:ADATA SSD S511 60GB AS511S3-60GM-C

データドライブ:Seagate Barracuda 7200rpm 2TB ST2000DM001

光学ドライブ:パイオニアBDR-206BK

電源:SZ77R5付属PC63I0005(80 PLUS BRONZE、500W)
ケース:R5シャーシ(SZ77R5)

では早速組み立ててみよう。
ベアボーンキットの内容物は至ってシンプルで、本体と日本語含む8カ国語のクイックガイド、SATA ケーブル2本、ドライバDVD、グリス、電源ケーブル、ソケットカバーくらいしかない。
シンプルな付属品
シンプルな付属品
表裏に異なる言語で説明が書かれるクイックガイド4葉
表裏に異なる言語で説明が書かれるクイックガイド4葉
ただ今回はオプション品の3.5インチ変換マウンター「PHD3」も同梱されている。
3.5インチ変換マウンター「PHD3」と取付ねじ(他に説明書あり)
3.5インチ変換マウンター「PHD3」と取付ねじ(他に説明書あり)
ベアボーンの形式なので、組み立ては難しいところはない。ただ独自規格のコンパクトPCのため、パーツ組み込みの順序にはパズル的思考を要する部分もある。

まずケース後ろの3本の手回しねじを取るとコの字形のケースカバーがとれる。つぎに一体型ベイマウント(ドライブホルダー)を2本の+(プラス)ねじを外して取り去る。最後にバックパネルの手回しねじ4本をとってCPUクーラーのフィン冷却とケース全体の排気を兼ねるケースファンを取り、さらにその下にあるCPUクーラーをCPUまわりのプッシュピンを外して取る。
この7つの手回しねじを外す
この7つの手回しねじを外す
ドライブフォルダとケースファンを取ったあとに現れる放熱フィン一体型CPUクーラーI.C.E.
ドライブフォルダとケースファンを取ったあとに現れる放熱フィン一体型CPUクーラーI.C.E.
これで分解は終わりだ(拡張ボードを積まない場合)。

ここで独自設計のM/Bをみていこう。小型ベアボーンではあるが高い拡張性を確保するため、M/BのサイズはMini-ITXよりも二回り大きい(長い)。その大きさはすべて積載力のアップとCPUまわりの余裕ある配置に使われている。
ロクナナ!Mini-ITX M/Bとの比較
ロクナナ!Mini-ITX M/Bとの比較
前述の通りメモリスロットは4つ、PCI-Eスロットは最新のPCI-Express 3.0対応の×16がひとつ、×4がひとつ、さらにmini-PCIEソケットがふたつ(一方はmSATA兼用)と、少し搭載するカードは選ぶが上手く満載すればmicro-ATXに引けを取らない拡張性を実現している。
コンパクトPCながら独自規格を活かして拡張性てんこ盛りのM/B
コンパクトPCながら独自規格を活かして拡張性てんこ盛りのM/B
余談だが、この質感の高いキューブ型のR5シャーシ、実はMini-ITX規格へも準拠している。本品のM/BとMini-ITX規格のそれを比較すると大きさは全く異なるが、ケースにはMini-ITX用のマザーボード スペーサーを取り付けるためのホールがあり、マザーボード スペーサーを移動させるだけで対応できる(バックパネルの位置も合致)。
オリジナルは底面いっぱいのM/Bだが
オリジナルは底面いっぱいのM/Bだが
スペーサーを付け替えてMini-ITX M/Bを積むことも可能
スペーサーを付け替えてMini-ITX M/Bを積むことも可能
今までのベアボーンはCPUソケットなどの変更時にはケースや電源と一蓮托生で、主要パーツを流用するのが難しかったが、これでこのスタイリッシュなケースを使い続ける、という選択肢も出てくる。ただし、この場合はCPUソケットの位置が異なるためオリジナルCPUクーラー「I.C.E.」は使用できないので、別途調達が必要だ。
□の位置にある△印を合わせる
□の位置にある△印を合わせる
組み込みはCPUをソケットカバーを上げてカドの△印を合わせて置き、レバーを下げる。そしてグリスを塗ってCPUクーラー「I.C.E.」をピンでとめる。CPUクーラーフィン部冷却とケース冷却を兼ねるファンを戻すが、外したCPUファン電源ソケットを忘れずに繋ぐ。
分解時外した電源を忘れずに!
分解時外した電源を忘れずに!
このあたりまでにメモリを装着しておくが、デュアルチャンネル動作に対応した4つのスロットは紛らわしいことに、DIMMスロット2番と4番が優先される組み合わせとなる(黄色)。

CPUの取り付けなどで電源ラインを外した場合は次にM/Bへ電源線をつなぐ。本品の電源は独自規格品だが、この手のものとしては珍しく80PLUS BRONZE認証の高効率電源だ。また容量も500Wとキューブベアボーンどころか小型PCとしても十分なもので、本品の備える高い拡張性を妨げない。
専用電源PC63I0005は高い拡張性を持つ
専用電源PC63I0005は高い拡張性を持つ
電源コネクターの種類もPCIEとして6Pと6+2Pの二口が備わるもの、SATAが二口が2本、汎用ペリフェラル4Pを二口持つものが2本、さらにFDD型一本とすべてのスロットやベイを埋めても十分対応できそうな充実度だ。一方M/B用電源コネクタはCPU用は4Pしか使っていないにもかかわらず4+4Pの拡張性があるものを採用するが、主電源は24P(20+4P)ではなく20Pを採用するのは少し片手落ちかもしれない。Mini-ITXで24P給電が必要なM/Bは多くないかもしれないが...

つぎにCPU(と「I.C.E.」)取り付けのためにはずしたベイマウントに各種ドライブを積み込む。このベイマウントは5インチベイひとつと3.5インチベイふたつを備えるもので、ケースとの位置関係から5インチベイが光学ドライブ、下側の3.5インチが外へのアクセス方法がないためシャドウベイとして、中央の3.5インチベイはシャドウベイとしてドライブを積むのはもちろん、ケースの目隠しを開ければオープン3.5インチベイとしてカードリーダーやFDD(←死語)を積むこともできる。
5インチの光学ドライブ用ベイの下の3.5インチベイはふたを開けるとオープン型
5インチの光学ドライブ用ベイの下の3.5インチベイはふたを開けるとオープン型
今回はオプション品のキューブ型ベアボーン用3.5インチ変換マウンター「PHD3」をごご提供いただいたので、5インチ×1、3.5インチ×2のこのドライブスペースに、BDドライブ、3.5インチデータ用HDD、2.5インチシステム用HDD、ISRTキャッシュ用SSDのすべて異なるドライブを積んでみよう。まず、PHD3にSSDを背負わせることにした。裏返しにしたSSDにPHD3を載せ、下からねじで留める。
4個所下からねじ止め
4個所下からねじ止め
次にシステムドライブに使う比較的小容量(750GB)の2.5インチHDDをPHD3の下側にぶら下げるようにつけ、横からネジ止めする。
切り欠きがある方が端子側
切り欠きがある方が端子側
2.5インチドライブ2台で3.5インチドライブスペース一つでOK
2.5インチドライブ2台で3.5インチドライブスペース一つでOK
これをベイマウントにネジ止めしたら、その上に3.5インチHDDを通常通り側面から固定する。最後に光学ドライブを載せて固定する。ここはフレーム側にも穴が開いているので、外からも微調整できるが、ドライブホルダーに全ドライブを固定してからフレームに装着する方が簡便だ。
フレームにつけてからも微調整は可能。
フレームにつけてからも微調整は可能。
ただし、フレームとベイマウントのクリアランスが特にフレームが電源側に向かって絞られているので狭く、装着には力が必要だ。
ぎっしりと積まれたベイマウント
ぎっしりと積まれたベイマウント
このベイマウントをフレームにつけるが、ここが結構力が要る。

まず横のクリアランスが狭い。もともと余裕があるわけではないが光学ドライブ固定ねじが若干飛び出ているので、さらにキツい。そして前後方向の可動域が狭い(後ろが狭まるのが早い)ので後ろから鈍角ですべり込ませるのも×。最後にフレーム下にベイマウントの先端を差し込むがそこが狭くて硬い。何とか固定したあとは配線だ。4つのドライブの配線が必要なのでSATA3.0および2.0の全ポートを利用した(M/B側のSATA端子にはケーブルを繋いでおいた方がやりやすいが、見づらい位置あるのでどちらのケーブルがどちらのポートに差し込まれているかをケーブルにメモっておいた方が無難)。速度が欲しいシステムドライブとそのキャッシュであるSSDを高速SATA3.0ポートに使い、少しもったいないが7200回転のSATA6.0対応HHDと光学ドライブをSATA3.0ポートに繋いだ。

その接続に関してはSATAケーブルの追加が必要だ(標準添付は2本)。とりあえず手持ちの50cm長のものを回したが長すぎてごちゃごちゃし、エアフローが厳しい感じだった。各種ベンチマークはこの状態で取ったが、後日後述の電源ケーブル問題を解決するためケーブルを購入した際に、SATA3.0の30cmのものに交換した。

SATA電源ケーブルの接続はさらに難易度が高い。特に、PHD3に背負わせた2つのドライブが超難関だ。これだけコンパクトな造りのため、ドライブの上下にはほとんどスキマがなく、ドライブ自体の位置が奥まっているので、L字でも届きづらいが、添付のものは電源ケーブルの途中にSATA電源コネクターがかしめてあるような造り(T字)のため、上下に走るラインを90°以上曲げる必要がある。
コネクタ上下の電源ラインの「曲げ」が...!
コネクタ上下の電源ラインの「曲げ」が...!
何とか押し込んだが、かなりドライブ側にもテンションがかかっている感じだ。直角曲げ×2で360°ターンというのが心臓に悪く後日ストレートタイプの二股SATAケーブルを追加購入し、この問題を解決した。

テンション皆無!
テンション皆無!
結果この2品の追加投入でケースファン前はかなり片付いた。
使用前:長いSATAケーブルがうねってる(画面に映っていないモノも含めて押し込んで閉める)
使用前:長いSATAケーブルがうねってる(画面に映っていないモノも含めて押し込んで閉める)
使用後:二股の分岐電源ケーブルを追加したのにファンまわりに空間が!
使用後:二股の分岐電源ケーブルを追加したのにファンまわりに空間が!


凝縮したコンパクトケースならではということなのだろうが、ベイマウントを取り付ける際に留意する点として配線済みのUSB3.0のヘッダピン⇒フロントパネルの引き出し配線がある。これは両端ともロックのないヘッダピン仕様だが、その配線に使われているケーブルが「極めて」硬く、さらにかなり長めに作られている。また両ヘッダピンの位置関係上90°ひねる形になるからか、取れやすい。特にベイマウントを取り付ける際には底面でこする形になるため外れやすいので要チェックだ。
USB3.0の内部配線が長くて「極めて」硬いのでヘッダから外れるのに注意
USB3.0の内部配線が長くて「極めて」硬いのでヘッダから外れるのに注意
ドライブベイ、さらにビデオカードをつけると逃げ場がない
ドライブベイ、さらにビデオカードをつけると逃げ場がない
ベイマウントを取り付け配線をした後は、カバーをかぶせて後ろのスクリューねじを止めれば完成だ。

CPU内臓グラフィックスを利用する際にはこれで完成だが、組立関係として後の性能比較の際に使ったビデオボードの組み込みに関する留意点もここで述べておこう。

このケースはPCI-Express 3.0対応の×16スロットを持ち、2スロット分の開口部を持ち補助電源用の6(6+2)Pのコネクタも持つため、2スロット占有型のビデオカード搭載が最初から考えられている。ほぼ同じ容積を持つコンパクトタイプのケースLian LiのPC-Q11R

と比べても、独自規格の当ベアボーンは有利で、奥行き側に長辺があるため長いビデオカードにも対応できる。
ほぼ同じ体積ながらケースの長辺とビデオカードの長辺が合致のため積載力が↑
ほぼ同じ体積ながらケースの長辺とビデオカードの長辺が合致のため積載力が↑
そのため、現メインPCのビデオカード、260mm長の玄人志向 RH5850-E1GHW/HD/DP/SP

も後端の電源プラグに繋ぐだけの幅を残して収まる....が...意外な伏兵!?ベイマウントが収まらない。
入ったけど蓋が閉まりませんがな∑( ̄o ̄;)!
入ったけど蓋が閉まりませんがな∑( ̄o ̄;)!
もともとレビューにも書いたとおり、このRH5850-E1GHW/HD/DP/SPはPCI-Eスロットの逆方向にヒートパイプがかなり張り出すタイプ。幅は135mmもある。実際はそこまで出っ張っているのは一部なのだが、たまたまその部分がベイマウントの下端に当たって入らない。可能であれば、ビデオカードを揃えて、現メイン機との力比べをしたかったが、「2年の間の進化」ということでグラフィックの方も世代を進め、Radeon HD 6950搭載のMSI R6950 Twin Frozr II OC

に換装した。このカードは長さ255mm、幅110mmと玄人志向のRH5850-E1GHW/HD/DP/SPより一回り小さい。ので余裕で入った....が、今度は補助電源ケーブルの配線で若干問題が。玄人志向のカードはカード後端(PCIカードスロットの逆)に補助電源ソケットがあるが、本品は側面にある。このベアボーンではカードスロットの逆側に電源ユニットがあり、ベイマウントの下側をくぐって配線される。
ベイマウント脇の電源線の処理がポイント
ベイマウント脇の電源線の処理がポイント
ドライブベイが来る位置より下に電源ラインを通し、挟まないように。
ドライブベイが来る位置より下に電源ラインを通し、挟まないように。
それがまたビデオカードの横から差し込まれるので配線はかなりタイト。ベイマウントとビデオカード基板の間をナナメに通すとカードが浮くので回り込みたいし、ベイマウントとフロントパネル側の隙間に挟まるとベイマウントが固定できない。側面給電のボードの場合、事実上今回のR6950のサイズがほぼリミットと言えるだろう。
組み上がった後、Windows 7 Professional 64bit

を導入し、設定を行う。まず、付属するドライバディスクで
様々なドライバが一括インストールされる
様々なドライバが一括インストールされる
オンボードデバイスを有効化する。つづいて今回BIOSを更新した。2012/7/18にBIOSが「SZ77R000.110」に更新されていた。内容的には(以下Shuttle Global Siteより)
 1.Update CPU microcode.
 2.Fix Smart FAN function fail.
 3.Add COM PORT address item.
 4.Fix system will freeze when boot into bios setup screen then save bios.
 5.Fix system boot too slow when install some CPU model.
 6.Fix some external VGA no display with I7-3770K.
 7.Fix "Turbo mode" item can not disabled.
ということで、5などが気になったので更新した。
更新は大変簡単で、ダウンロードされるzipファイルを解凍⇒実行するとWindows上から更新ができる。
装備されるポートやサウンド、LANなどの作動を確認してセットアップは終了だ。
前面端子。ドライバインストール後、USB3.0やオーディオが活きる
前面端子。ドライバインストール後、USB3.0やオーディオが活きる
ちなみに前面USB2.0端子の内の一つ(右側)は、電源をオフにしても充電が可能な、モバイルへの急速充電を見据えた「USB2.0モバイルチャージャー」。
背面端子。CPU内蔵グラフィック時にはDVI-IとHDMI同時使用可
背面端子。CPU内蔵グラフィック時にはDVI-IとHDMI同時使用可


次にISRT(Intel Smart Response Technology)を設定した。これはZ68・Z77・H77チップセット等でサポートされたSSDをHDDのキャッシュとして使う技術で、本来OSインストール時点からRAIDで導入する必要がある。ただし今回ISRTの効果を再インストールなく検証したく、レジストリエディタから編集する反則技に。事前にIntelのサイトから最新の「インテル® ラピッド・ストレージ・テクノロジー」をダウンロードしてインストールしておく。次に以下の手順でRAIDに移行。
・regeditで「HKEY_LOCAL_MACHINE\System\CurrentControlSet\Services\iaStorV\Start」のキーを「3」⇒「0」に変更する
・再起動して「F2」でBIOSへ入る
・「Advanced」タブの「SATA mode」を「AHCI」から「RAID」に変更
・Windowsを起動
このキーを変更する
このキーを変更する
起動後メニューから「インテル ラピッド・ストレージ・テクノロジー」
ISRTを構築するのはIRSTを選ぶ...ヤヤコシイ...
ISRTを構築するのはIRSTを選ぶ...ヤヤコシイ...
を選ぶと次のステップで構築できる。
最初は当然構築されていない
最初は当然構築されていない
内部システムディスク=HDDと内部ディスク=SSD
内部システムディスク=HDDと内部ディスク=SSD
「高速」を押すとモードや割り当て容量を選択する画面になり
60GBのSSDなので「全ディスク」を割り当て、安全性を重視して「拡張モード」で!
60GBのSSDなので「全ディスク」を割り当て、安全性を重視して「拡張モード」で!
SSDをキャッシュデバイスとして使用するよう設定...となった!
SSDをキャッシュデバイスとして使用するよう設定...となった!
Array_0000にキャッシュボリュームが!
Array_0000にキャッシュボリュームが!
これで構築は終了。効果のほどは....今までよく使っている、起動と終了の時間の比較として
・立ち上がるまで:電源スイッチを押して「ようこそ」画面が表示されるまで
・使えるまで:さらに引き続きログイン後、WordPadを立ち上げ、1文字入力確定するまで(累積)
・終了:シャットダウンボタンをクリック後、電源ランプが消えるまで
のセットをISRT導入前後で比較した。
全て1割短縮の効果
全て1割短縮の効果
思ったほど激速ではないが、起動はRAID導入のpost表示があることを思えば、それでも高速だし、終了は使い込んでいないPCのため、もともと高速。それでも全ての項目にわたって約1割の短縮ができたことは確実な効果だ。

なのぴこはこんな感じ。
【使用前】
2.5インチの5400回転、SATA3.0Gbpsなのでこの程度..
2.5インチの5400回転、SATA3.0Gbpsなのでこの程度..
【使用後】
このReadの速度わっっ!!
このReadの速度わっっ!!
本来であれば回転速度も転送速度も高速なSeagate Barracuda 7200rpm 2TB ST2000DM001をシステムドライブに使うべきだろうが、ISRTで強化された750GBのHDDをSSDキャッシュで高速に使用する、ということで、限られたスペースに750GBの高速起動ドライブと大容量(2TB)のデータドライブを持つコンパクトPCになった。
次に各種ベンチを回してみた。
対照は現メインPC。AMD PhenomⅡX6 1090T BEにRadeon HD 5850搭載のRH5850-E1GHW/HD/DP/SPで武装する大型機。コレに挑むは今回構築のコンパクトキューブPC。
ただ、物量を投入すれば好スコアは当たり前。あえて高性能化されたというIvy Bridge=Core™ i7-3770Tのグラフィック機能、「Intel HD Graphics 4000」の力も検証すべく、ビデオカードレスの状態と、MSI R6950 Twin Frozr II OCを加えた「プレミアムキューブスタイル」で検証した。

検証メニューは以下の通り。

ベーシックなベンチマークとしてWindows エクスペリエンス インデックスを実行した。

さらに今までPCの検証に使ってきたメニュー、すなわち、
 ・起動
 ・CINE BENCH 11.5 Open GL
 ・CINE BENCH 11.5 CPU
  (負荷は高いが消費電力のブレが少ないテストのため目視で瞬間消費電力を記録)
 ・スクリーンショット取得
 ・FF14ベンチLOW
 ・スクリーンショット取得
 ・FF14ベンチHIGH
 ・スクリーンショット取得
 ・3DMark06 Advanced Edition 1.2.0 (負荷の高いHDR2 - Deep Freezeのシーンで目視で瞬間最大消費電力を記録)
 ・Webアップロード&スクリーンショット取得
 ・シャットダウン
-所用時間約30分-
のセットを回し、その間の消費電力をCUSTOM エコキーパー EC-03

で計測した。

もう一つ今回、Intel HD Graphics 4000がIntelの内蔵グラフィックとしては初めて(HD 2500とともに)DirectX 11に対応したことから3DMark11

を別途実行した。

結果は以下の通り。
ISRTのクセか、Windows エクスペリエンス インデックスの「プライマリハードディスク」はイマイチ..
ISRTのクセか、Windows エクスペリエンス インデックスの「プライマリハードディスク」はイマイチ..
ivy、はえ~~ww
ivy、はえ~~ww
ISRTの影響か、同じWDの7200回転3.5インチHDDを積む現メイン機に対して、Windows エクスペリエンス インデックスの「プライマリハードディスク」は芳しくないが、プロセッサ系の指標はすべて上回っている。TDP125WというAMD PhenomⅡX6 1090T BEに対してTDP45Wの省電力型CPUとは思えないスコアだ。グラフィックスも内蔵こそ現メイン機に見劣りするが、一世代新しいRadeon HD 6950を積んだビデオボードを組み込むと、いずれの指標でも大きく上回った。特にDirectX 11世代では最低2割以上のスコア上昇を見たばかりか、演算性能は極めて高い伸びを見せた。

それでいて、トータルの消費電力は半分。

ちなみにビデオカード積載時の「SZ77R5」の重量は6.3kgで現メイン機の1/3、
6.3kg....現メイン機の1/3強!
6.3kg....現メイン機の1/3強!
体積としては1/4で圧迫感から解放された。
現メイン機。こうしてみると壁のようだ...w
現メイン機。こうしてみると壁のようだ...w
SZ77R5。スピーカーより背が低くて見失いそう!
SZ77R5。スピーカーより背が低くて見失いそう!
今回統一規格に縛られないベアボーンという形式をつかって、高性能かつコンパクト、高い拡張性と所有欲をくすぐるクオリティを備えた「プレミアムキューブスタイル」コンパクトベアボーン、「Shuttle SZ77R5」を使用する機会を得た。

2年前とはいえ、2大CPUメーカーの一方の当時のハイエンドCPUを積むミドルタワーPCを完全に喰う高い性能を、体積1/4、重量1/3、消費電力1/2で実現するキューブPCを構築できるベアボーンだった。

手回しねじ7本とプラスねじ2本で基本的な組み込みのための分解が終了するイージーアクセス、一括販売のベアボーンでは手が抜かれることが多い電源や外観の高い品質、そして独自規格を最大限に活かした高い積載性。ベアボーンという「お手軽半完成品」とも見られがちなジャンルに、すばらしく高次元な提案をしてくれた。

しかしそれゆえに残念に思えた点もある。改善をのぞむポイントは、細かい点となるが、
●3.5インチ変換マウンター「PHD3」の取り付け位置、もしくはベイマウントの切り欠きなどを工夫して純正の電源コネクターとの相性を良くすること。
●PCI-Expressの電源ケーブルはあとほんの少し長く、そしてPCI-Express 6(6+2)PおよびSATAの電源プラグは、取り付け位置や取り付け角度、方法を再考してコンパクトにまとまったボディによるムリがパーツにかからないようにすること。
●USB3.0ケーブルの長さの適正化、もしくはしなやかさを増すことにより、USB3.0の内部配線が脱落しないようにすること。
●フレーム後端の絞り込みを緩やかにする、ビスが通るだけのクリアランスをとるなど、ベイマウントの脱着を容易にすること。
くらいであろうか。

ただしいずれも組み込みに関する問題で、一度組んでしまえば使用時に不満が残るポイントではなかった。

今回使用する機会を得たShuttle製 キューブ型ベアボーン「SZ77R5」は暑い夏に環境に優しく、しかし快適性も犠牲にしないCOOLなベアボーンだった。ぎゅっと凝縮したプレミアムコンパクトキューブスタイルを是非経験して欲しい。

末筆とはなりましたが、今回このような機会を与えてくださった日本Shuttle株式会社様、zigsow事務局様に御礼申し上げます。またレビューアップまでの応援など常に支えとなってくれたおものだちの皆様はじめzigsowerの方々に感謝いたします。

ありがとうございました。

【製品仕様】
対応プロセッサ:Intel LGA1155 -Ivy Bridge対応-(TDP95Wまで)
チップセット:Intel Z77
メモリ:DDR3 1333/1600 MHz DIMMソケット×4 (デュアルチャンネル対応)
    最大32 GB (8GB×4)
オーディオ:Realtek ALC888S (7.1 channel High Definition Audio)
LAN: Realtek RTL 8111E (10Mbps,100Mbps,1Gbps) Wake-ON-LAN 機能対応
ストレージインターフェース: SATA 6.0Gb/s×2、SATA 3.0Gb/s×2
オンボードコネクタ:
 ・4P ファンコネクタ×2
 ・SATA 2.0×2
 ・SATA 3.0×2
 ・2×5 pin USB(2.0) ヘッダ
 ・RS232 ヘッダ
 ・Low Pin Count ヘッダ
 ・SP/DIF ヘッダ
 ・AUX-in ヘッダ
 ・ATX電源 20P(2×10)、4P(2×2)
フロントパネルインターフェース:
 ・USB 2.0ポート×1
 ・USB 2.0ファストチャージャー×1
 ・USB 3.0ポート×2
 ・マイクミニジャック×1
 ・ヘッドホンステレオミニジャック×1
 ・電源スイッチ/HDD LED/ODD LED
バックパネルインターフェース:
 ・USB 2.0ポート×4
 ・USB 3.0ポート×2
 ・eSATA ポート×1
 ・ライン入力ミニジャック×1
 ・ライン出力ミニジャック×1(フロント、サイド、センター/サブウーファー、リア)
 ・LAN
 ・DVI-I 端子
 ・HDMI 端子
拡張スロット
 ・PCI-E X16 スロット×1(PCIe3.0対応)
 ・PCI-E X4 スロット×1
 ・Mini-PCIE ソケット (ロング) mSATA対応
 ・Mini-PCIE ソケット (ショート)
電源:100 - 240V 入力対応500W 80 PLUS BRONZE 電源ユニット
外形寸法:332(L) x 216(W) x 198(H) mm
付属品:クイックガイド(日本語含む8カ国語)、SATA ケーブル2本、ドライバDVD
     グリス、電源ケーブル
SZ77R5 製品紹介ページ
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2012/08/06 リンク追加

コメント (12)

  • 下小川さん

    2012/08/03

    詳細なレビューお見事です!まさにギュっと詰め込んでますね!
    通常の光学ドライブにSSDとHDDのデュアルストレージで、更に25cm級のVGA押し込めるとは…キューブというとあまりでかいVGA入るイメージなかったんですが、すごいな。

    USB3.0の平ケーブルは私もブラケット用のを触ったことあるんですが、妙に硬くて取り回しが難しいんですよね。ブラケットの場合片側はネジ止めされるんで片方をうまいこと押し付けるようにテンションかければ固定されるんですが、両方コネクタだとちょっとしたことで外れそうで惜しいですね。

    とはいえこの容積でハイスペックマシンが組めるとは、専用設計のマザーとクーラーの成せる業でしょうか。
  • リーダーさん

    2012/08/03

    レビューお疲れ様です(^^

    かなり狭苦しい感じがしますが、その組み立てにかかる苦労に見合うだけの
    ありあまるスペックがCool!!
    ベアボーン侮ってました。すげー・・・
  • cybercatさん

    2012/08/03

    下小川さん、ありがとうございます!
    >通常の光学ドライブにSSDとHDDのデュアルストレージで、
    >更に25cm級のVGA押し込めるとは…
    ビデオカードはホント押し込んだ、って感じですが、ファンの干渉もなくきちんと動きましたね(カードのファンが五月蠅いタイプなので、ベンチ中は「そりゃもう大騒ぎさ!」状態でしたがww)。

    >USB3.0の平ケーブルは~妙に硬くて取り回しが難しいんですよね。
    なんじゃこりゃっていう感じの硬さでした。
    ベイマウントを外す度に取れてた気がする。
    ロックのない単なるピンなので...

    >専用設計のマザーとクーラーの成せる業でしょうか。
    マザーはこれだけ詰め込んである割にはCPU周りのスペースはきちんとアリ....
    でもここまでやるなら前述のUSB3.0ヘッダは90°回して欲しかった....orz
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