16年ぶりの望遠鏡 - いつでもどこでもボーグとともに

ウォーターフロントにて

近所の公園でボーグを試してから約二週間。
日中は晴れていても、夜にはあいにくの天気になるような日々が続いていた。
珍しく仕事がいつもより早く終わった週初めの夜。少し雲が浮かんではいたが、月が南西の空にたたずんでいた。

手早く着替えを済ませ、出かける準備を始めた。
今回は前回に比べ、結構気合を入れた。
まずは本屋へ行った。人生二度目の天体観測入門である。あまり難解ではない、ちょうどよさそうな本を見つけ、一通り読んでみた。
機材も前回とは違う。カメラ好きの伯父から最近譲ってもらったデジタル一眼レフカメラと三脚。そして、カメラマウントホルダーとカメラマウント。
前回、デジカメを手で持って撮影をしたが、今回はボーグにカメラを固定して撮影したいと思った。ブレを抑えて、かつ、楽に撮影できるからだ。ネットで調べてみると、そのようなパーツが必要であることがわかったので、休みの日に専門店で購入したのだ。

ボーグをリュックに入れ、三脚を肩にかつぐ。MTBに乗って、マンションから数分の天王洲アイルに向かってペダルを漕ぎ出す。
ここはオフィスが集まるビジネス街とはいえ、運河と緑に囲まれて、レストランもあり、気軽にリラックスできるエリアでもある。ウォーキング、ランニング、犬の散歩、夜景を楽しむ人たちなどが、思い思いに時間を過ごしている。

ボードウォーク(運河沿いにつくられた、板張りの遊歩道)に三脚を立て、ボーグをセッティングする。鏡筒にマウントホルダー、マウント、カメラを順に取り付ける。ついこの前まで望遠鏡とは遠ざかっていた自分が、夢中になってここまで遊んでいる。自分の中に、子供の頃抱いた宇宙への夢がまだ眠っていたことを実感した。

たたずむ月にレンズを向けた。
月齢が大きいと、やはり楽しめる部分も増える。

ほぼ中央部分に大きな低地(海という)があり、入門本によるとこれは“静かの海”というもので、1969年にアポロ11号が着陸したところだそうだ。日本ではよく兎が餅つきをしているようにたとえられるが、兎の顔の部分がこの“静かの海”、耳の部分が“豊かの海”“神酒(みき)の海”、体の部分が“晴れの海”である。

中央部分から少し北西にずれたところに“コペルニクス”と呼ばれる大きなクレーターが見える。「月の帝王」という別名もあるらしい。周囲に大きなクレーターがないため、かなり目立つ存在だ。

南部には“ティコ”という月面でもかなり有名なクレーターがある。これは不思議なクレーターで、満月前後になると急に輝きだし、ここから伸びる「光条」という光のすじが月全体を覆うようだ。

また、数日後の月齢では、“虹の入り江”という、月面で最も美しいといわれる半円形の地形が見られるようだ。

改めて思う。
普段何気なく見える月も、しっかり見ようとすれば新しい発見がある。そして、ボーグは手軽にここまで迫力のある月を見せてくれた。素直に驚いている。

少し休憩した後にファインダーを覗くと、月がかなり移動していた。
三脚のハンドルを調整し、追いかける。これが小さい星だと結構苦労しそうだ。

今回の天王洲では、自分としては前回よりも中身の濃い天体観測ができたのではないかと思う。
月の出る時間と沈む時間はネット等で調べれば簡単に分かる。そうすれば、無駄なくスムーズに観測の準備ができる。天王洲アイルでは、いつ、どの方角に月が出てくるか分かっていたから簡単に撮影場所をシミュレーションすることができた。

そして、もっと月を大きく綺麗に撮りたい欲求が芽生えてきた。調べると、テレコンバーターというものがあれば大丈夫らしい。これを使えば焦点距離が長くなり、高倍率の撮影が可能とのこと。そろそろ中秋の名月(2008年は9月14日)が見られる頃だから、それまでに用意しておこうと思う。
また、今回は月だけだったが、木星や土星などの惑星も撮影してみたくなった。ボーグなら、木星の四大衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)や縞模様、土星のリングも撮ることができるようだ。次回は是非挑戦したい。
他にもボーグは天体だけではなく、野鳥の観察や撮影に使っている人も多いようだ。
近所の公園や河原に出かければ、今まで知らなかった鳥たちの横顔が見られるかもしれない。

使用機材