16年ぶりの望遠鏡 - いつでもどこでもボーグとともに
綺麗な月が出ていた夜。
手始めに、近所の公園に行ってみた。ボーグはトートバッグにすっぽり入った。
その日は仕事が長引き、かなり遅い時間の帰宅だった。日付が変わってしまった深夜、眠い目をこすりながらベンチにボーグをセッティングして、月へレンズを向けた。
凄い。
小学生以来の望遠鏡越しの月。
目の前に鮮やかな躍動感あふれる月がいる。
幾つものクレーターが顔を見せている。月齢が大きいときなら、さらに面白そうだ。
欠け際の凸凹感も趣深い。時折雲が覆い隠すが、接眼レンズの中に見える月の上には、もやもやした影が流れてゆくだけで妨げにはならない。逆に、情緒を添える演出のように感じられる。
せっかくだからこの月を写真に収めたかった。
普段使っているデジカメを取り出した。手持ちでボーグの接眼レンズに近づけ、ファインダーの中で月を捕らえた。少しずつ手で角度を変えたりして、夢中で何度もシャッターを切った。
カメラアダプター(望遠鏡とカメラを接続する道具)がなくても、デジカメだけでここまで撮れてしまうのか。
主に日常風景を撮りためているこのデジカメに、これだけ大きくクリアな月が加わったことに思わず不思議な高揚感を覚えた。
随分長い間疎遠になっていた月との再会。
あの頃の子供心が甦り、あまりの感動に時が過ぎるのを忘れ、真夏の夜は更けていった。