きっかけは、週末に久しぶりに会った友人との会話だった。
居酒屋でお互いの近況を話しながらのんびりと飲んでいた。彼は最近趣味で望遠鏡を始めたらしい。いつも仕事に追われ、特にこれといった趣味を持っていなかった彼が目を輝かせながら、星空の魅力を語ってくれた。
その様子を見て、遠い昔の自分を重ねずにはいられなかった━━。
小学生の頃、理科の授業で天文分野の勉強をしていたときに宇宙に興味を抱き、勢いに任せて父親に必死にねだり、望遠鏡を買ってもらったことがある。
当初は嬉しくて嬉しくて仕方なく、頑張って組み立てて星空を見ていた。当時住んでいたところはかなりの田舎で、冬には肉眼でも天の川が見えた。それゆえ、望遠鏡で見た星空はより一層綺麗に見えて感動的だった。
しかし、何度か使った後は組み立てるのが億劫になり、次第に望遠鏡に触れることはなくなっていった。気がつけば物置に眠ったままになってしまい、それっきりになってしまった。
その望遠鏡が今どこに行ってしまったのか分からない。あれだけ夢中になっていたのに、そのうち興味がフェードアウトしていった自分を見た父親の寂しそうな表情が忘れられない。苦い思い出である。
あの頃の情熱がぶり返してきた。
「なあ、その望遠鏡を貸してくれないか?」と頼む自分がいた。
かなり粘って無理を聞いてもらい、しばらく借りられることになった。一時的とはいえ、自分のおもちゃを取られてしまい、渋い表情を見せた彼の厚意を無駄にしないように、今度会ったときに、使ってみた感想を丁寧に伝えようと誓った(そのときの飲み代を奢ったのは少し痛かったが…)。
数日後、友人から手渡されたその望遠鏡は、ボーグというものだった。
彼が望遠鏡を選ぶ際、専門店の店員さんに相談したところ、このシリーズを薦められたそうだ。高性能なのに求めやすい価格。パーツが豊富で自分の好きなように組み合わせることができる。その拡張性にも惹かれたらしい。
早速マンションに帰り、説明書を読みながら組み立ててみた。
まず驚いたのが、ばらせること。鏡筒部分が分解できるため、狭い部屋に住んでいる私でも、コンパクトに収納できそうだ。望遠鏡というと、とかく場所を取りがちなイメージがあるが、これはそんなことはなさそうである。
持ち運びが楽そうなところも注目すべき点だ。思っていたよりも意外に軽い。私は車を持っていないから、普通の望遠鏡だと持ち運びがかなり厳しい。これならば、それこそリュックにでも入れて電車で気の向くままに好きなところへ行けそうだ。
ミニボーグ60n スペック
- 口径:60mm
- 焦点距離:325mm
- F:5.4
- 1群2枚アクロマートレンズ
- フルコート
- フード付
- 対物前キャップ付
- 全 長:238~283mm
- 筒外焦点:100~145mm
- 重量:460g
- フードの先端に62mmフィルターネジ
- 対物レンズの後端はM57P0.75メスネジ
- 三脚台座付
- 合焦部:しゅう動式(45mm可動)、ストッパー付
- 接眼部は別売。用途に応じて別売のパーツを購入する必要あり。