Audacityの入力サンプリング周波数を96kHz、ビット数を32bitに設定。保存形式をWAVの24bit PCMに設定して録音準備は完了。私のPCとAudacityを使用した入力環境では、24bitを選択してリッピングすると原因不明のエラーが発生してしまうので、今回は上位設定である32bitを使用した。
それでは録音を開始しよう。予めAudacityの録音ボタンをクリックしておき、続いてレコードに針を下ろす。CDをはじめとするデジタルメディアのリッピングと違い、アナログであるレコードでは再生しながらリアルタイムで録音を行わなければならない。これはもうレコードの演奏を楽しむつもりで録っていくしかない。
録音データのはじまりとおわりの無音部分をカットして、WAV形式で保存。そしてWAVからFLACへとデータを変換する。FLACへの変換には連載第二話の検証で高評価したMediaMonkeyを用いる。これでレコードをデジタルデータ化することができた。データをNASに格納し、さっそくKLIMAX DSで聴いてみる。
まずはBLUE NOTE1500番台定番カフェ・ボヘミアのJAZZ MESSENGERSを聴いてみる。これはRマークなし重量盤の完全オリジナルだ。一音目が出た瞬間から驚いた。LP12でプレイしたレコードと音の質感がほとんど変わらない。アート・ブレイキーの熱気が微かも削がれることなく再現できているのだ。
つづけて私のお気に入りの一枚である、クーベリックのPolovtsian Dancesを聴く。弦が奏でる艶、オーケストラの重厚感とそれに負けないコーラスの力強さがしっかりと表現できている…。これはもうDATやCD-Rのクオリティとは根本的にレベルが違うといえるだろう。ジャズの生録盤からは、煙草のケムリが漂ってきそうな生々しさすら感じられる。そしてクラシックの再生では、オーケストラの配置やレコード特有の空間表現がほぼ完璧に再現されている。
KLIMAX DSはレコードに詰め込まれた音楽の生命力や演奏家の情熱を十分に受け止められる能力を持っていることを証明してくれた。
デジタルオーディオには、カートリッジを交換したり、セッティングを変更して音の違いを楽しむというような二次的な要素はあまり持ち併せていない。しかし、再生の安定性やデータ管理の利便性、それに加えて高次元の音質を併せ持つKLIMAX DSは、私を「音楽そのものを愉しむ」という原点に立ち戻らせてくれた。そしてデジタルとアナログとの距離を確実に縮めてくれた。ポータブルプレイヤーがシリコンオーディオを受け入れたように、クオリティオーディオもKLIMAX DSに代表されるデジタルオーディオへシフトしていくであろう。
レコードが私にとって特別なものであることは依然として変わりない。しかし、それと同じようにアナログやデジタルという壁を乗り越え全てを受け入れてくれるKLIMAX DSも私にとって特別な存在になっていくことだろう。
次回「最高のNASを求めて」につづく