足回りのセッティングも一通り終えたところで、次は接続ケーブルの交換をしてみよう。私の経験上、音が最も変化するところは電源ケーブルの変更で、しかも音の入口により近いほど変化の度合いは大きなものとなる。KLIMAX DSはシリコンオーディオプレイヤーである。正に音の入口であり、電源ケーブルを検証する価値は充分にある。現在、市場には数多くの電源ケーブルが流通しており、大蛇のように太いものから、ノイズカットフィルターが付いたものや特殊な編組が施されたものなど、好みに合わせ様々なものが用意されている。これらの電源ケーブルの目的は大きく分けて2つあり、電気抵抗を低くすることと、電源ラインへのノイズ流入を防ぐことにある。どんな装置にもいえることだが、外来ノイズに対していかに防御しようが、接続されるケーブルからノイズが入ってきてしまっては防御のしようがない。逆にいうならば、KLIMAX DSはそこさえ押さえておけば他はまったく隙がない。だからこそ防御力が高く、高品質の電源ケーブルが必要なのだ。
それでは早速KLIMAX DSに電源ケーブルを繋いでみよう。…おや?ケーブルが挿さらない。どうやらKLIMAX DSは背面パネルの構造上、大型インレットプラグの付いた電源ケーブルが使用できないようだ。幸い私の愛用している電源ケーブルは、大型プラグにマイナーチェンジする以前のタイプなので、問題なく接続することができた。JPS「Kaptvator」は、快感といえるほど音のエッジがシャープになり、Synergistic「Designer's Reference2」は歌声に力強さが加わった。両ケーブル共に、LINN純正の電源ケーブルと比べて遥かに静寂感が増した。
ラインケーブルは電源ケーブルと同様、KLIMAX DSの接続に不可欠なケーブル。KLIMAX DSが送り出す高密度情報をいかに損失させずにアンプまで届けるかという非常に重要な役割を担っている。KLIMAX DSはピンコネクターとキャノンコネクターを余裕ある配置で装備しているため、ほとんどのラインケーブルが使用可能である。私が現在KLIMAX DSに接続しているプリアンプはピンコネクターのみのモデルなので、現在はピンケーブルを使用している。
今回、数種類のピンケーブルを使用して音を聴き比べたところ、電源ケーブルほど明確な差は出なかったものの、MIT「ORACLE V1.1」は、眼前に広大な空間を創出し、KIMBER「KS-1030」は、手を伸ばせば届きそうなほど実体感のあるボーカルを聴かせてくれた。それから、前出のケーブルたちと比べるとスケール感では劣るもののLINN「SIC」は、まるで人肌の温もりを感じさせるような非常に好ましいバランスで美音を聴かせてくれた。
今回も様々な試みに対し、クリティカルに反応を示してくれたKLIMAX DS。足回りの検証では、本機の足のみが最も自然に感じられた。電源・ラインケーブルの検証では、様々な個性を描き分けてくれた。これらを使いこなし、オーナーそれぞれが好みの音に近づけていただければ良いと思う。完成度の高い本機をよりレベルアップさせるために、機会をみてNASそのものの可能性を探ってみたいと思う。
次回「レコードを鳴らせてみる」につづく