KLIMAX DS徹底攻略 第三話

物理的セッティングの考察

それでは具体的な振動対策を始めるにあたって、まずは建物の基礎工事から…というわけにはいかないのが現実。ここは一般的な集合住宅なのだが、幸い床は比較的頑丈なほうで、ガタつきがないようにラックをセットしている。余談だが、私がKLIMAX DSを載せているラックは英国クアドラスパイアのガラス板仕様のものだ。LINNと同じ英国ブランドだけあってデザインの相性は中々のもの。今回はこのラックの上に載せたKLIMAX DSの足回りを固めていこう。さて、足回りを固めるといってもKLIMAX DSは立派な金属の脚部を持っており、精密機械加工されたボディには微塵のガタつきもなく完璧な平面性を誇っている。しかし、この完璧なところが実はクセもので、KLIMAX DSを受ける台も完璧な平面でなければ、そこにガタつきが生じてしまうわけだ。私の部屋の床は頑丈でこそあれ精度の高い平面とはいえないので、ラックの脚部の調整によって床とのガタつきを解消している。振動対策とは、「発生した振動に対する対策」と「振動を発生させないようにする対策」この2つを指すのである。それではKLIMAX DSとラックの間に様々なものを挟んで、その変化を検証してみよう。

検証に用いたインシュレーター オーディオボード

物理的セッティングの検証

音の比較には今回もノラ・ジョーンズの「come away with me」を用いた。まずは木製のインシュレーターから試してみる。少々密度が薄く感じるが、ノラの歌声が爽やかになり、響きが軽快で低域の見通しが良くなった。感覚的な表現になってしまうが、よく乾いた木をイメージさせる音になった。次はaudio-technicaの防振ゴムと真鍮をハイブリッドしたインシュレーターを敷いてみる。先程の乾いた音とは打って変わり、ぐっと声に粘りが増してグラマーな表情になった。しかし全体的にやや重苦しくも感じた。次はBDRのカーボンインシュレーターを試してみる。ノラの口元がキュっと小さくなり、各楽器の位置関係も明確に感じられるようになった。ベースラインの明瞭度が極めて高く、曖昧さはほとんど感じない。次にStillpointsのインシュレーターを敷いてみよう。これは今回聴いたなかで、最もピアノがリアルだった。口元は決して小さくないが、唇の瑞々しさがよく伝わってきた。今度は先程のBDRのインシュレーターをKLIMAX DSの底板に1組使い、その受け皿にもっと分厚いインシュレーターをもう1組敷いてみる。まるでSF映画に登場する宇宙船のような出で立ちに我ながら呆れもしたが、なんといっても音がすごい。ピンと空気が張り詰め、自分の周りにある壁の存在が消えてしまったような感覚。ノラの歌声もピアノの打鍵音もベースの唸りも、すべてが鮮烈過ぎて頭がクラクラしそうなのだが、なんとも言葉では説明し難い快感を味わえた。実はこのセッティングは以前CD12にも試したことがあるのだが、ここまでの変化は表れなかった。最後に、ラックの天板に直置きして使用するBDRのオーディオボードTHE SOURCEを試してみた。音の落ち着き具合が今までとはまるで違い、本当に地に足が着いたような感触。インシュレーターとは効果のベクトルが異なるため単純比較するわけにはいかないが、好ましい結果を得ることができたのは事実だ。

さて、一通り試し終わったので、再びなにもない状態でKLIMAX DSを聴いてみよう。…驚くべきことに至極まともな音がする。CD12のときもそうだったが、LINNのリファレンスモデルに対しては小手先の技など必要ないのかもしれない。音質のバランスの良さは文句なしにこの状態が良い。

インシュレーターをセット Stillpointsインシュレーター BDRのインシュレーター