レビューメディア「ジグソー」

使い勝手と音質のバランスが程良く取れたハイC/P機

 

 

私は音楽好きかつオーディオ好きです。そのため、家にいるときには仕事中も含めてヘッドフォンやスピーカーで何らかの音楽を聴いていることが殆どですし、外出時も車ではカーオーディオ、電車等ではDAP+イヤフォンという組み合わせで、殆ど音楽を途切れさせることがありません。

 

ただ、単に音楽好きという訳では無くオーディオ趣味もありますので、音質にもそこそこの拘りがあります。外出時にはAstell&Kern KANNやAK70、ONKYO GRANBEAT DP-CMX1といった一定水準を満たしたDAPに、64AUDIO U4/U3、JH AUDIO Michelle、Noble Audio Servant UniversalやAcoustic Reasearch AR-E100などをリケーブルしたものを組み合わせて持ち歩いています。中でも比較的新品購入価格が手頃で、形状的に端子部の強度が高いAR-E100は街歩き用という位置付けです。ウォーキングなど体を動かす目的の時には、耐久性を重視してBOSE SoundSport IEを使うこともありますが。

 

 

しかし、音質的にケーブルは重要な要素ではありますが、歩き回るときにはケーブルが届く範囲に本体を持っていなければいけないという物理的な制約が発生します。当然動きやすさという点ではワイヤレス型が望ましいところではあるのですが、最近急速に普及しているワイヤレス型は、音質面で納得できる水準に無いものばかりです。

 

実際に前述のAR-E100にはBluetooth接続用のケーブルが添付されているのですが、そこそこの水準のケーブルを使った場合と比べると、Bluetoothケーブルでは音質的な劣化がはっきりと感じられてしまうのです。AR-E100の標準添付品である3.5mmステレオ接続アンバランス添付ケーブルは、イヤフォン自身の実力に対して少々残念な品質ではあるのですが、それでもBluetoothケーブルよりは音質的な情報量が保たれていると感じられます。

 

一方で、今回レビューさせていただくKlipsch R5 Neckbandは、敢えて有線モデルを用意せずにBluetooth接続によるワイヤレスモデルだけに絞って発売されましたが、これはKlipschの説明によると「Bluetooth接続の音質が、技術革新により有線接続に対して遜色なくなった」ことが影響しているというのです。今までBluetooth接続の音質に納得できたことが無い私からすれば「本当なのか?」という疑問がどうしても湧いてきてしまいます。

 

そこで今回、このBluetooth接続専用モデルである、Klipsch R5 Neckbandを試用する機会をいただき、主に音質面での実力を検証してみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

まずはR5 Neckbandの紹介に移る前に、Klipsch(Klipsch Audio Technologies)というメーカーについて少し触れておきましょう。

 

Klipsch Audio Technologiesは米国インディアナポリスを拠点とするスピーカー、ヘッドフォン/イヤフォンを開発・製造するメーカーで、1946年頃に物理学博士号を持つPaul W. Klipsch氏によって創業されました。彼は戦前からスピーカー関連の技術開発で活躍していたといわれています。

 

スピーカーを主要分野としていた流れから、ヘッドフォンやイヤフォンの開発にも乗り出した(ダイナミック型ドライバーは簡単に言えばスピーカーを超小型化したもので、動作原理は同じなのです)ようですが、ここでもMark Blanchard氏によって開発されたOval Ear Tipsという独自のイヤーピースを採用するなど、技術水準の高さを示すことになります。

 

そのKlipschが2007年に発表したBAドライバー搭載イヤフォン、Image X10は、これ以降のKlipsch製イヤフォンの方向性を決定づけるものとなります。Klipsch特注のSonion製BA(Balanced Armature)ドライバーを片側当たり1基のみ搭載するという、所謂シングルBAタイプのイヤフォンで、BA型のコンパクトさを活かした形状と、質感と音場表現に優れた音質でこの分野の名機と呼ばれる存在となりました。

 

 

現在、Klipsch製のイヤフォンについては、スポーツタイプ製品を別にすると

 

・Xシリーズ=BAドライバー搭載

・Rシリーズ=ダイナミックドライバー搭載

・XRシリーズ=BAとダイナミックのハイブリッド構成

 

という命名ルールとなっています。

 

即ち、今回取り上げるR5 Neckbandはダイナミックドライバー搭載型の製品であることが判ります。

 

アルファベットの後ろの数字はその製品のグレードを示しているようです。同一カテゴリー内においては数字が大きくなるほど高価な製品となります。

 

公式の製品紹介によると、上位のR6 NeckbandにはKlipsch独自の型番を与えられた(ドライバー製造元に特注仕様でオーダーしていることを表します)ダイナミックドライバーが搭載されているのですが、このR5 Neckbandはドライバーの型番が公開されていません。ただ、5.0mm径のダイナミック型ドライバー(5.0mmはダイナミック型としては小型であり、他製品では8~10mm位の口径のものが多くなっています)を搭載していて、周波数特性が10~19kHzであることが判るだけです。

 

 

 

 

 

 

それでは、そろそろ実物を確認していきましょう。まずはパッケージから。

 

 

 

 

 

 

 

パッケージはネックバンド部分をよく見せるようなデザインとなっていますね。裏面には製品の特徴が説明されています。

 

 

 

 

 

 

 

「KEEPERS OF THE SOUND」はKlipschのキャッチコピーですね。それでは中身を取り出してみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネックバンドの存在感がどうしても際立ちますが、これは本革製なんですね。通常は樹脂に塗装するだけというものや、ラバーコートを施したものが多く、本体価格の割にこの部分の質感は非常に良好です。

 

 

 

 

 

イヤフォンのハウジング形状は、ドライバー口径が大きい分やや太めではあるものの、Klipsch製のBAドライバー搭載モデルに近い、細長いというイメージを持ったものです。

 

 

 

 

 

こちらはリモコンです。中央の突起が再生/停止、+とーは曲送りとボリューム増減を兼ねたボタンとなっています。電話機のヘッドセットとして利用した場合には、通話切断等もここでコントロールします。

 

 

 

 

 

ネックバンドの反対側にもボタンがありますが、これは電源ON/OFFボタンです。恐らくこちら側は主にバッテリーを内蔵する空間として利用されているのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

主な添付品です。取扱説明書、充電用microUSBケーブル、各種イヤーピースとなります。

 

 

それではここからは、実際にR5 Neckbandに触れていくことにしましょう。

更新: 2018/09/16
デザインと外観

クラスを超える高い質感

 

 

R5 Neckbandは、その名の通りネックバンドタイプのワイヤレスイヤフォンです。最近では左右の間のケーブルすら無いフルワイヤレスイヤフォンが人気を博していますが、個人的にはフルワイヤレス型は実用度という点でまだ難があると感じています。

 

以前ショッピングセンター等でデモを行っていた、某国内大手ブランドのフルワイヤレスモデルをしばらく試用させていただいたのですが、少し体の向きを変えただけで左右のリンクが切れてしまったり、プレイヤーからの距離が少し離れるだけで直ぐに音が途切れたりと、ケーブルから解放されることによるメリットよりも、音楽を聴くイヤフォンとして使い勝手の悪さの方が目立ってしまっていたのです。

 

Bluetoothをはじめとするワイヤレス技術の進展によって、やがて解決される問題なのかも知れませんが、現状では、まだR5 Neckbandのような左右が繋がったワイヤレスイヤフォンの方が実用的であると断言してしまって良いでしょう。

 

 

 

 

 

まずは全体像です。バンドの両端にはボタンが用意されていて、これは首から掛けたときに私の体格では両方の突起部が鎖骨付近となり、直接目視は出来ないながら操作ボタンには自然に手の届く位置となっています。

 

「+」と「ー」も直接視認することは出来ないのですが、結構はっきりとした形状であるため、指で触れればどちらが「+」かは容易に判別できるようになっています。数回触れれば操作には直ぐ馴れることが出来ると思います。

 

 

 

 

 

電源ボタン側にKlipschのコーポレートロゴが印刷されています。バンドが本革製であるため、どうしても印刷できるのはここになってしまうでしょうね。

 

 

 

 

 

ハウジングの背の部分にKlipsch製品のイメージカラーともいえる銅色が配されています。名機Image X10は全体が銅色でしたね。

 

 

 

 

 

ちょっと見えにくいのですが、耳に掛けたときに下となる側に空気穴が用意されています。通常はこれが気になることはないのですが、私が外出時にテストした日はたまたま年に何度も無いほど強風が吹き荒れた日(強風の影響で飛行機や電車が大きく乱れたほど)で、風切り音が結構入り込んでしまいました。

 

 

 

 

 

Bluetooth接続が確立して音楽再生が出来ているときには、再生/停止ボタン脇にあるLEDが周期的に青く点滅します。これは他のBluetooth接続イヤフォン・ヘッドフォンも概ね同様の動きとなりますので特記する部分はありません。

 

 

 

 

 

やはりこの価格帯としては、この本革製のネックバンドの質感は素晴らしいと思います。この部分の質感はとてもシリーズ下位の、実売価格1万円台前半の製品とは思えません。今回私が使わせていただいているのはブラックモデルですが、革の色調はダークブラウンという程度で、これがシックで格好良いと思います。Klipschの銅色に近いブラウンモデルも良さそうですが…。

 

 

実は外出テストは都内での仕事の行き帰りで行ったのですが、当然仕事ですのでスーツ・ネクタイ着用です。ネックバンドのイヤフォンなどは完全に合わないように思えるのですが、R5 Neckbandの悪目立ちしない落ち着いたデザインであれば、それほどの違和感を覚えずに済みました。落ち着いたデザインのネックバンドイヤフォンというだけで貴重な存在ですが、それでいて価格が手頃という点は高く評価して良いと思います。

 

 

さて、使う前に一応初回の充電を済ませておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

この写真ではオレンジ色のように見えてしまいますが、実際には充電時はLEDが赤く点灯します。もっとも、出荷時点で概ね充電されているようで、DELL Latitude15 3570のUSB端子でも10分程度経過して確認したところ消灯していました。

 

 

 

 

 

USBの入力を確認してみると、5V 500mAとなっていますので、USB 2.0以降に対応しているUSB端子であれば、概ね同じ時間で充電できるのではないかと思います。

 

更新: 2018/09/17
仕様と特徴

aptX HDやLDAC非対応が少々残念

 

 

R5 Neckbandの主な仕様を確認してみましょう。Klipschの日本語公式サイト上に用意されているスペック表から、主な項目を抜粋してみました。

 

 

 

 

 (以上、https://www.klipsch.jp/Standard-Earphone/R5NB.html 表記のスペックより抜粋)

 

 

オーディオ的な性能については、最初の方である程度触れていますので割愛します。

 

まず、バッテリー持続時間について、表記では最大再生時間約8時間となっています。

さすがに8時間連続で使い続けることは、一般的な生活を送っている限り難しいと思いますので、使わなくなったときに電源を切っていたという但し書きは付きますが、実際にはそれ以上の時間は使えていたと思います。東京への往復と街中の移動で外出テスト時に約5時間使いましたが、その後も充電無しで計4時間以上の音質チェックの間動き続けていました。恐らく合計では9時間を少々超える程度の持続時間だったのではないでしょうか。その辺りで電源が落ちてしまいました。

 

ただ、充電時間も約1時間よりは長く、Anker製充電器である

 

 

 

 

これで充電してみた限り、電源が直ぐに落ちてしまう状態から充電を始めて、充電状態を表す赤LED点灯から、充電完了を示すLED消灯までの時間は約91分でした。つまり1.5時間程度と見ておけば間違いないようです。前述の通り入力が5V 500mAですから、急速充電器でもPCのUSB端子でも、大きな変化はないはずです。

 

 

次にBluetooth周りの仕様を確認してみましょう。まず、Bluetoothのバージョンは4.0で、最新ではないものの、近年のスマートフォンやDAPの水準に合ったものといえます。

 

対応プロファイルはMultipoint A2DP、AVRCP、Multipoint HFPとなっていますが、これはオーディオ機器としての接続、電話機用ヘッドセットとしての接続のどちらでもマルチペアリング(複数台のBluetooth機器との接続情報を保持)に対応していることを意味します。

 

実際に私がこの後R5 Neckbandと接続してテストに利用した機材は計6台(スマートフォン2台、DAP3台、フィーチャーフォン1台)ですが、特に気にすることなく次々と新しい機器と接続して、後で以前接続済みの機器に接続し直してもスムーズに再接続が出来ていました。

 

Bluetoothについては、オーディオ再生時に利用されるA2DPで対応しているコーデックを確認してみると、SBC、AAC、aptXとなっています。SBCはBluetoothでオーディオ接続する際の基本コーデックであり特に説明は不要と思います。AACは主にiOSの機器と接続する際に利用されます。

 

一般的に高音質コーデックと呼ばれるのは、この中ではaptXであり、SBCと比較して高音質かつ低遅延ではあるのですが、現在はaptX HDというより高音質伝送に対応した上位規格が用意されていますし、元々SONYオリジナルの高音質コーデック(ハイレゾ音質対応という売り文句)であり、Androidでも8.0以降で標準実装が可能となったLDACなどもありますので、音質重視モデルであればこの辺りも押さえておいて欲しかったところではあります。

 

 

 

▲Astell&Kern KANNやAK70、ONKYO DP-CMX1では、aptX接続時にこのように表示されます。

 

 

 

それでは、ここからは実際に各デバイスに接続した上で音質を確認してみましょう。

更新: 2018/09/17
音質

プレイヤー次第で大きく異なる印象

 

 

R5 NeckbandはBluetooth接続専用のイヤフォンですので、当然対応するプレイヤーもBluetooth接続対応のものに限られてしまいます。もっとも、スマートフォンではApple iPhoneやSONY Xperiaなど人気製品でも物理的な出力端子を装備していない、Bluetoothによるイヤフォン接続を前提とした製品が増えていますので、お手持ちの環境でごく普通に使えるという方の方が多いとは思いますが…。

 

今回は私が普段持ち歩くことが多いDAPやスマートフォンを中心に組み合わせて試聴してみました。ちなみにイヤーピースは、標準添付のOval Ear TipsのSサイズを装着しています。他にも細軸タイプのものを5種類ほどかき集めて試してみたのですが、Oval Ear Tips以上の相性のものはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、通話品質のチェックのみフィーチャーフォンである、NTT docomo F-07Fを利用しています。

 

 

 

 

▲テストに利用した機材
▲テストに利用した機材

 

 

 

 

試聴に利用した音源は、mp3についてはCDからのリッピング、レコードはKENWOOD KP-9010+audio-technica AT33R+Phasemation EA-200で再生した音を、MOTU 1296で24bit/88.2kHzでPCにWAV形式で取り込んだものを、それぞれ利用しています。また、FLAC音源は主にe-onkyoで24bit/96kHzのデータを購入しています。

 

 

 

・Apple iPhone 7 32GB MNCG2J/A (コーデック:AAC)

 

 

 

 

 

▲Klipsch R5 Neckbandと下部に表示されている
▲Klipsch R5 Neckbandと下部に表示されている

 

 

 

 

まずは日本で圧倒的シェアを誇るスマートフォンといえばiPhoneですので、iPhoneで使ってみることにしましょう。KlipschでもiPhone 7以降のイヤフォンジャック廃止が、Bluetooth化に大きく影響を与えたことは認めていますので…。

 

まず、 率直に言えば聴こえてきた音はいかにもBluetooth、の一言です。全体的に情報量が感じられず、声の芯や楽器の胴鳴りといった、オーディオで音楽を聴く上で大事な要素が大きく失われてしまうのです。

 

例えば「Viva La Vida / David Garrett」を聴くと、mp3ファイル(192kbps)であることを差し引いても、ヴァイオリンが固く、また響きのない貧弱な音で、一言で言えば「Bluetoothくさい音」になってしまいます。

 

 

 

 

もっとも、個人的にはこれはiPhoneのオーディオプレイヤーとしての性能が大きく影響していると思っています。一部で「iPhoneは国産のハイレゾDAPより高音質」と評している方もいらっしゃいますが、私の実体験としてそれはあり得ません。昨年のOTOTENで、高級スピーカーメーカーであるDYNAUDIOがワイヤレススピーカーのデモをiPhoneとBluetooth接続して行っていましたが、どうひいき目に見てもBluetoothくささは抜けていない音でした。20万円を大きく超えるスピーカーですらBluetoothくささを消せていないのですから、1万円台のイヤフォンにそれ以上が期待できるとも思えません。むしろそのときの経験からいえばR5 Neckbandの音はむしろ比較的良質とすら感じられました。

 

そこで、次は同じスマートフォンでも、高水準のDAPでもある、ONKYO GRANBEAT DP-CMX1を試してみましょう。

 

 

 

・ONKYO GRANBEAT DP-CMX1 (コーデック:aptX)

 

 

 

 

▲aptXで接続しているという表示
▲aptXで接続しているという表示

 

 

 

DP-CMX1は端的に言ってしまえば、ONKYO製人気高音質DAP、DP-X1Aと、ミドルクラスのSIMフリーAndroidスマートフォンを一つにまとめたような製品です。厳密にはDP-X1Aと全く同じ音というわけでもないのですが、水準としてはほぼ同等と考えて良いでしょう。 なお、DP-CMX1のAndroidバージョンは6.0であり、aptX HDは実装されているもののLDACには対応していません。

 

実はDP-CMX1はデジタル出力時の音質がかなり高水準であり、Bluetoothの音質もそれが影響しているのか、なかなか高水準です。

 

ただ、R5 Neckbandとの組み合わせでは周波数的なバランスの崩れが少々気になります。「Great Expectation / TOTO」を聴くとバスドラムやベースの割合高めの音が膨らむ傾向が見られます。膨らんだ帯域の解像度もあまりないため、他の音が低音に覆われてあまり明瞭に出てこないのです。

 

 

 

 

 

もっとも、iPhoneで感じられた「Bluetoothくささ」はここではそれほど大きくは感じられず、印象としてはケーブルであまり相性の良くないイヤフォンを接続したものに近くなっています。とはいえ、本来は緻密なはずのDP-CMX1の高域方向の表現が、かなり雑に感じられてしまうのも気になるところです。

 

DP-CMX1との組み合わせの印象をまとめると、iPhoneで聴くよりは質的に向上するものの、DAPとイヤフォンの音質的な相性に難があるとなるでしょうか。

 

 

 

・Astell&Kern AK70 (コーデック:aptX)

 

 

 

 

 

AK70はAstell&Kernの第2世代DAPのローエンドモデルとして発売されましたが、同世代の製品では最後発だったということもあり、音質的に上位のAK100IIを上回ってくるというお買い得モデルでした。

 

 

 

 

R5 Neckbandとの組み合わせでもAK70は意外なほどの健闘を見せ、これまでの2台とは比べものにならないほど良好な音質を示します。

 

「Shape Of My Heart / Sting」を聴いても、これまでとは異なり空気感がきちんと感じられますし、音場が頭の中で広がるようになります。さすがにアコースティックギターの音色はある程度作り物っぽさが感じられてしまうのですが、ある程度は胴鳴りも表現されていて、充分に曲の雰囲気を味わえる水準に達しています。

 

 

 

 

ただ、ハイハットの質感で金属っぽさが後退してしまう部分はあり、これはBluetooth(aptX)の限界なのか、R5 Neckbandの固有のキャラクターなのかは判断が難しいところです。また、録音時の音圧が極めて高い(コンプレッサーをかなりきつく使っている)J-POP系の楽曲、例えば「WATER BLUE NEW WORLD / Aqours」や「Beautiful / Superfly」ではどうしても音の分離が悪くヴォーカルが痩せるというBluetoothの悪癖が顔を覗かせる部分が出てきます。Bluetoothであるからこそ、ソースがきちんとしたバランスで録音されていることが大事になってくるのかも知れません。

 

デアゴスティーニから発売されている、リマスター重量盤LPの「The Beatles (ホワイトアルバム) / The Beatles」収録の「Blackbird」などはかなり良い雰囲気で聴けました。音数が少ないこのような曲ではBluetoothのデメリットが殆ど感じられず好印象です。

 

AK70では、先に聴いた2機種よりも大幅に良好な相性を示し、音楽が楽しめる水準の音をここでようやく聴くことが出来ました。率直に言ってiPhone 7とDP-CMX1だけで試聴していれば、R5 Neckbandの実力を見誤っていたと思います。

 

 

 

・Astell&Kern KANN (コーデック:aptX)

 

 

 

 

 

 

Astell&Kern KANNは、Astell&Kernの第3世代DAPをベースとした特殊モデルという位置付けで発売されました。プレイヤーとしてのベースは第3世代のスタンダードモデルAK300なのですが、最上位モデルAK380向けに発売された外付けアンプAK380 AMP相当の強力なアンプを内蔵し、外付けのポータブルアンプが要らない代わりに、本体の厚みなどはDAPとしては規格外と思えるものとなるなど、かなり尖った作りが話題となった製品です。

 

ピュアオーディオ機器と接続して確認した限りでは、Astell&Kernのプレイヤーとしてはなかなか珍しい、乾いた陽性のサウンドイメージを持ちます。これはデジタル出力でも同じ印象でしたので、このプレイヤーの性格でしょう。

 

 しかし、面白いことにBluetooth接続したR5 Neckbandとの組み合わせでは、「乾いた陽性のサウンド」という性格はさほど見られず、好印象だったAK70をよりグレードアップしたかのような傾向を示します。

 

「500 miles / Noon」はこの曲らしい情緒が意外なほどきちんと再現され、1万円前後のイヤフォンでこの雰囲気が出せれば十分かと思えるほどでした。勿論Bluetooth接続であることを考慮しないでです。

 

 

 

 

AK70と比べても声の力感やドラムのアタック感などが向上していて、じっくりと音質について掘り下げられるところまで来ています。

 

面白いことにiPhone 7やDP-CMX1では水準よりも狭く感じたR5 Neckbandの音場が、Klipsch製のX10などBAドライバー搭載モデルを思わせるような、ふわりとした柔らかい広がりを感じさせるようになるのです。この音であればBluetoothという事を気にすることなく聴いていられます。

 

ただ、イヤフォンとしてさほど高い製品ではありませんので、勿論限界はあります。「They Dance Alone / Sting」を聴くと、さすがに本当に低い低域は出ていませんし、高域方向の解像度は甘いことが判ります。

 

 

 

 

前述のAqoursやSuperfly等J-POPでは、これまでの他のプレイヤーよりは随分良好ではあるのですが、それでも音数が多く音圧が高すぎることの弊害があり、分解能が大幅に下がってしまいます。LDACやaptX HDであれば情報量が増える分だけいくらか改善されるとは思うのですが、aptXやSBCではこの辺りが限界かも知れません。

 

 

さて、プレイヤーとしてはAstell&Kern KANNがベストマッチだったわけですが、ここで同じプレイヤーでコーデックを変えたらどのように音が変化するかについても検証してみましょう。手持ちのプレイヤーの中では数少ない、明示的にコーデックを指定することが出来るDAPである、SONY NW-A16を使って確認してみましょう。

 

 

 

・SONY NW-A16 (コーデック:aptX/SBC)

 

 

 

▲マニュアル設定時は自分でコーデックを選択可能
▲マニュアル設定時は自分でコーデックを選択可能

 

 

 

NW-A16は前世代でのAndroid OS化に対する否定的な意見の多さから、Walkman専用OSを採用しつつ低価格化を図りながらハイレゾに全面対応した、新世代NW-A系の第1世代モデルでした。私自身、それまでのWalkmanとは一線を画す音質として当時高く評価して、店頭に出回り始めた辺りで即購入したという記憶があります。

 

さすがに遙かに高価なDP-CMX1やKANN、AK70と肩を並べるとは思いませんが、実売約2万円のDAPからこの水準のクリアな高域が出てくるだけで素直に凄いと思ったのです。Bluetooth時の音質が意外と良好で、省スペースかつ省燃費という使い勝手の良さから、今でも鞄の隅に予備プレイヤーとして入っていることが多い製品です。

 

まずは他の製品と同様にaptXで聴いてみましょう。

 

 

 

 

 

まずは「Change The World / Eric Clapton」を再生してみると、NW-A16が有線接続時とは異なり、割合分厚い音を出してくることに驚きます。低域の力感はやや乏しくバスドラムのキックがやや不明瞭ではありますが、アコースティックギターの音色は悪くはありません。音場の広さはDP-CMX1よりは広く、AK70よりは狭いというところです。J-POP系の録音である「WATER BLUE NEW WORLD / Aqours」ではDP-CMX1に近い音になってしまうのですが、粗はこちらの方が目立ちません。

 

「500 Miles / Noon」ではヴォーカルの雰囲気は意外と良好ですし、ベースの重量感も意外と出るのですが、バックのピアノやベースのタッチがやや不明瞭に感じられてしまう辺りは弱点でしょうか。歌い上げたときの声もややいがらっぽく感じられる部分があります。それでも総合的にはDP-CMX1よりもこちらの方が相性は良いと思います。

 

続いてこれをSBC(音質優先)に切り替えてみましょう。

 

 

 

 

 

まず先ほどと同じ「500 Miles / Noon」を聴いてみると、ヴォーカルの音が明らかに荒れ気味です。aptXでは歌い上げたときに声がいがらっぽく感じられると書きましたが、こちらは最初の発声の時点で既にいがらっぽく感じられてしまいます。ベースラインもより不明瞭になってしまいました。元の音質がさほど良くない「WATER BLUE NEW WORLD / Aqours」でも、数人のヴォーカルがハスキーに感じられてしまい、aptXではそこまで感じられなかった「Bluetoothくささ」を意識する音になってしまいました。「Viva La Vida / David Garrett」では、ヴァイオリンの音が本物のヴァイオリンには聞こえないというほどに劣化してしまいます。aptXではもう少しヴァイオリン本来の音色に近かったのですが。

 

当然といえば当然ですが、やはり可能な限りより上位の高音質コーデックを利用する方が有利であるということでしょう。それだけに、せめてaptX HDをサポートしていてくれればと残念に思うのです。恐らくaptX HDやLDACを使えば、全体的に不足している解像感も、ある程度は改善されるのではないかと思いますので…。

 

なお、音質評価について補足しておきますと、ここまでの記載内容は私がOval Ear TipsのSサイズできちんと装着した場合の音質に限られます。というのも、例えば同じOval Ear Tipsでも、Mサイズを装着しておくと音質は全く別物に感じられてしまうのです。

 

今回は耳の奥まで可能な限り押し込み、低音の厚みが確保された状態で向きなどを微調整し、高域が最もクリアに聞こえる場所で装着して音質評価をするという手順を徹底しましたが、これを少し雑にするだけで低域が大幅に薄くなったり、音場が一気に狭まったりしてしまうのです。

 

今更いうことでもないかも知れませんが、イヤフォンの音質評価において大事なのは「正しく装着する」ということです。

 

 

 

 

おまけ:携帯電話(フィーチャーフォン)のヘッドセットとして使う

 

 

そもそも今時フィーチャーフォンでBluetoothを使っている人がどのくらい残っているのかという疑問はありますが…。

 

実は私はスマートフォンを4台常備している身でありながら、音声通話は基本的に2台のフィーチャーフォンで行います。これらは自動車運転中に使えるよう、ハンズフリーシステムに接続して使うため、Bluetoothを装備した機種を使い続けているのです。

 

そこでフィーチャーフォンで通話機能がきちんと使えるのか検証してみました。今回接続したのはNTT docomo向けの端末、富士通F-07Fです。

 

まずはF-07FにR5 Neckbandを登録します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私のF-07Fは着モーションを利用して自作着うたを設定していますので、こうしておくことで呼び出し音として着うたを流すことができます。

 

 

 

 

 

 

F-07FはBluetooth 2.1+EDRまでの対応ですが、特に問題なくR5 Neckbandは接続可能です。接続状態で自分のiPhoneからF-07Fに向けて電話を掛けてみると、きちんとR5 Neckbandから着うたとして設定している「Feel / Chicago」が流れ、再生ボタンを押すことで受話されます。

 

自分がiPhoneに向かって言葉を発してから、1秒前後遅れてR5 Neckbandから自分の声が聞こえるという状態でしたが、無事通話は確立しました。通話音声もフィーチャーフォンの内蔵スピーカーよりは遙かにクリアに聞こえます。

 

普段は仕事で移動する際には殆ど車を使っていて、イヤフォン型のヘッドセットを使う機会はまず無いのですが、R5 Neckbandは2台のマルチポイント(同時ペアリング)にも対応していますので、DAPと携帯電話を同時に繋いでおき、音楽を聴きつつ待ち受けもするという使い方もシチュエーションによっては考えられるのではないでしょうか。

更新: 2018/09/16
総評

この価格帯では、音質・外観・機能が高次元でバランスされていてコストパフォーマンスに優れる

 

 

普段は殆ど有線接続でしかヘッドフォン・イヤフォンを使わない私にとっては、少々難しい結論となりますが、同価格帯の有線イヤフォンと比べれば残念ながら同等よりはやや落ちるという音質であると結論づけて良いでしょう。イヤフォンそのものの実力は決して低いものではなく、Astell&Kern KANNとの組み合わせのように同価格帯の有線接続イヤフォンに肉薄する音質を発揮する場面もあったのですが、総合的にはケーブルが存在することの優位を感じさせられました。

 

とはいえ、1万前後のワイヤレスイヤフォン、つまりこの製品本来のカテゴリーの中での比較であれば話は変わります。少なくとも1万円台で音質がそこそこまとまっていて、接続が安定していて、バッテリーの持続時間が長いという要素を高次元に満たした製品はなかなかありません。

 

特に接続の安定度はなかなか優秀で、DAP(DP-CMX1・AK70)を肩掛けのメッセンジャーバッグに押し込んで電車の中や街歩きで使い続けていたのですが、結構激しく走ったり、電車の乗り降り時などごくまれに音が途切れることがあった程度で、概ね安定して再生を続けることが出来ていました。少なくとも完全に切断されることはありませんでした。自宅のような木造住宅内であれば、2階にDAPを置きっ放しにしたことを忘れて1階に降りようとすると、階段を降りきる少し前で音が途切れて、DAPの置き忘れに気付く程度でした。

 

 

 

音質的に脅威となるのは、皮肉なことですが日本ではKlipsch製品と同じフロンティアファクトリーさんが代理店として扱っている、Acoustic Research AR-E100の標準添付Bluetoothケーブル利用時でしょう。Astell&Kern KANNとの組み合わせでは、R5 NeckbandもKlipschのBA搭載モデル譲りの心地良い音場感が長所となりますが、よりオーディオ的に正確な鳴り方となり、幅広いDAPとマッチするのはAR-E100でした。Acoustic Researchが行った価格改定により希望小売価格も1000円程度の差(AR-E100の方が少しだけ高い)となってしまいましたので、単純に音質だけで勝負してしまうとやや分が悪いかも知れません。接続性など使い勝手ではR5 Neckbandの方がよく練られていると思いますので、ワイヤレスイヤフォンとしての完成度は一長一短程度ではありますが。

 

 

R5 Neckbandは原則的にイヤフォンをワイヤレスで使う事を想定していて、通勤時などスーツ姿で使っていても違和感のない落ち着いた外観を求める方にマッチする製品といえます。音質も上手く実力を発揮できればこの価格帯として高水準ではあるのですが、必ずしもベストとは限りません。私が組み合わせた計5台分の例でも明らかなように、プレイヤー次第で上手く魅力を発揮できない場合が見られましたので…。

20人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • aPieceOfSomethingさん

    2018/09/17

    jive9821さん こんにちは。

    レビューお疲れさまでした。僕も先ほどレビュー公開しました。

    R5 Neckbandのレビュアーのもう一人が jive9821さんとわかった時から音質面でのレビューは逆立ちしてもかなわないなとは思っていたのですが、予想をさらに超える圧倒的なレビューで驚きました。

    ある意味清々しいまでの差を付けられたので、僕はもうカジュアル路線でいいなと悟りました。
    jive9821さんのレビューは後々のレビューの参考にさせていただきたいと思っています。
  • jive9821さん

    2018/09/17

    > aPieceOfSomething さん

    有難うございます。aPieceOfSomething さんのレビューも拝見しましたが、タッチノイズの点から分析というのは私では思いつかない方向性ですし、携帯性という観点は我ながら触れなさすぎたかと少々反省しているところです。

    音質については割合好き勝手書いている部分はあるのですが、私自身の頭の中でのイメージが文章で上手く伝わっていないところにもどかしさはありますね。こればかりは数を書いて修行する他はないかと思っています。
  • aPieceOfSomethingさん

    2018/12/28

    最優秀レビュアー受賞おめでとうございます!

    偶然ですがR5 Neckbandのレビューを一緒にすることになりとても参考になりました。

    またいつか一緒にレビューする機会があるかも知れませんが、その時はよろしくお願いします。


    来年のレビューも楽しみにしています。
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