● Shuttleのベアボーンの魅力
これまで何台か自作マシンを組み立ててきましたが、作業の手軽さと組みあがったときのスッキリ感はベアボーンが一番です。中でもSuttleのベアボーンは、そのデザイン性の高さと限られたサイズの中でも拡張性を確保しようという工夫がみられるところが魅力で、私が以前に愛用していたK45もまさにそんな一台でした。
今回レビューするXH110Gは、キューブ型であるK45よりもさらにコンパクトなスリム型のベアボーンでありながら、標準サイズの PCI Express x16のカードが増設できたり、オプションで無線LANキットが追加できるなど、やはり拡張性に優れています。また、チップセットにIntel H110を搭載し、第7世代や第6世代のインテル Core iシリーズといった高性能のCPUを搭載することも可能で、パワフルなマシンも目指せます。応募時には、こうした特徴を活かし、ストレスなく使えるリビングPCを作成することを宣言しましたので、早速とりかかってみたいと思います。
● 開封から組み立てまで
本体が入った外箱はとてもコンパクトで、ノートパソコンのそれと比べてもそれほど大きさは変わりません(横幅は広めですが、高さはむしろ低いくらいです。)。
内容物は以下のとおり、本体、クイックガイド、ドライバDVD、電源ケーブル、ACアダプター、 ねじセット、VESAブラケット、SSDブラケット、CPUグリスとなります。
クイックガイドは多国語対応のものが4枚入っています。最初は、日本語版が見当たらず、英語版を見て組み立てようと思っていましたが、広げてみると両面印刷となっており、日本語版は、中国語版の裏にありましたので、それを使うことにします。
本体は、背面のネジをはずと天板が外れる構造となっており、簡単に内部にアクセスできます。電気の供給は外部のACアダプターで行い、内部に電源ユニットがないため、とてもスッキリしています。
この中央下に見えるのが Shttleお得意の I.C.E.ヒートパイプ冷却 システムで、これを取り外すと、CPUソケットにアクセスできます。ちなみに I.C.E.とは Integrated Cooling Engine の頭文字をとったもので、CPUの熱をヒートパイプでケースの背面または側面にあるフィンに伝え、排気ファンによってケース内の熱とともに効率良く外部へ放出するというShuttle独自のシステムです。中には複数の機種で使えるものもありますが、この I.C.E.は、その形状からしてXH110G専用のようで、他の機種への流用はできなさそうです。
← 裏にはこのように銅製のプレートが付いています。
さて、いよいよCPUの取り付けです。今回は、物理コアは2基と少ないものの、3.8 GHz と高クロックで、Intel HD Graphics 530という比較的高性能な内部GPUを備えながら、TDP 51W と消費電力は抑え気味な 第6世代(Skylake )のCore i3-6300をチョイスしました。といっても、わざわざ購入した訳ではなく、もともとPC雑誌のプレゼントに当選して入手していたもので、今回のコンセプトにまさにぴったりということでそのまま使うことにしたものです。
手順は、一般的な自作の場合と同じで、向きに気を付けながらCPUをソケットに取り付けてから、金属板を閉じて、レバーを下ろして固定します。そして、CPUの表面にCPUグリスを塗布します。最初は、付属のグリスを使おうとしたのですが、かさかさで全く広がらないため、手持ちの銅入りシリコングリスを使いました。
その後、再び I.C.E.ヒートパイプ冷却 システムを装着しなおせば、取り付け完了です。
あとは、ストレージとメモリですが、ストレージは、以前プレミアムレビューをしたインテルのSSD540sシリーズ (480 GB、2.5 インチ SATA 6 Gb/s、16 nm、TLC )を使います。そのレビューでは、古いノートパソコンを復活させるためのドライブとして使用していましたが、その後、いずれ新たな自作機を組み立てる際の起動用ドライブとすることを見越して、DSP版のWindows7をインストールし、2016年7月まで実施されていたWindows10の無償アップグレードを適用した上で保管していたものです。
ところで、XH110Gでは、ドライブとしてM.2 (Type2280)のSSDも使うことができ、その場合は、先ほどのI.C.E.ヒートパイプ冷却 システムを取り外すことでアクセスできるマザーボード上のM.2 2280スロットに挿入しますが、今回のような普通のSSDドライブの場合は、ケース底面のHDDカバーを開けて現れるコネクタに接続します。
マザーボードの裏側に2.5"SATAケーブルコネクタとそれに接続したケーブルが出ており、そこにブラケットを装着したSSDを取り付け、マウンタにネジで固定するとすっきりと収まります。このあたりは、ノートパソコンへの装着に近いイメージです。
メモリはノートパソコン用のSO-DIMMが必要で、しかもDDR4(2133または2400)に対応したものでなければなりません。DDR3であれば手持ちのものがあったのですが、DDR4となると新たに購入しなければなりません。ところが調べてみると、最近はメモリが高騰気味のようで、標準的な容量である8GB(4GB×2)だと、安くても7500円くらいします。そこで、少しでも安くあげようとインターネットオークションを使い、送料込み4680円でゲットしたのが以下のメモリになります。
これをマザーボード上のSO-DIMMスロット(CPUソケットのすぐ横にあります)に差し込めば組み立ては終了です。一般的な自作マシンのように、マザーボード自体や各種ケーブルの取り付けの作業がないため、実に簡単です。しかも、XH110Gは内部に電源ユニットがなく、邪魔になる電源ケーブルもないため、ますます作業はスムーズに進みます。
● 起動後のセットアップ
付属のACアダプターを接続して電源スイッチを入れるとWindows10が立ち上がり、デスクトップ画面があらわれました。先に述べたとおり、SSDにOSをインストールしておいたものの、ハードの構成がかなり変わるので、下手をしたらWindows7からインストールし直さなければならないかとも思っていましたが、取り越し苦労に終わったようです。ちなみに、同梱されていた注意書きによると、XH110GではUSB接続の光学ドライブからWindows7DVDメディアでのインストールはできず、xHCIドライバの組み込まれたインストールメディアの作成が必要とのことですので、そのような面倒な作業をせずに済んだのは、ラッキーでした。
そうすると、この後、必要なのはドライバ類のインストールだけということになります。付属のドライバDVDをセットすると、次のようなセットアップ画面が現れます。
一番上の Auto Install Driver/Utilityをクリックすると、ドライバインストールの画面が現れるので、すべてにチェックを入れた上、Nextをクリックすると、インストールが始まります。
上の画像のように、VGAドライバまで行ったところで、それ以上なかなか画面が進まなくなり、心配になりました。結局、15分くらいかかってようやくインストールが終了し、画面もモニターに合わせて高解像度となりました。
CPU-Zで見ると、Core i-3 6300がしっかり認識されています。先の説明では省略しましたが、実は、組み立て後、最初に起動を試みたときは、電源は入るものの全く反応せず、BIOS画面すら出なかったので、CPUかマザーボードが壊れたかと焦りました(一時は、ZIGSOW管理人さんに連絡し、期限までにレビューは完成できないかも、と泣きを入れる事態になりました。)。しかし、CPUをもう一度取り付けなおしたら無事起動したので、こうやってレビューができている訳です。向きなどは絶対間違っておらず、レバーを下ろしてしっかり固定した点も変わらないので、未だに何が悪かったのか不明です。思い当たることといえば、シリコングリスを塗り過ぎたかなということくらいです。確かに拭き取った後に起動したのでその可能性は否定できませんが、ソケット等にはみ出るまではしていなかったので、それが原因かは分かりません。ただ、いずれにせよグリスの塗り過ぎは危険と言われているので、皆さん気を付けましょう。
また、メモリについては、上記のようにオークションで2枚組のものを入手しましたが、購入後によく見ると、メーカーは同じSamsungですが、型番が微妙に違っており(一つはM471A5143EB0、もう一つはM471A5143DB0)で、外観も同じではありませんでした。そのため、デュアルチャネルが機能するか不安でしたが、しっかりデュアルで動いています。仕様が一緒であれば、それほどシビアに同じものでなくともよいようです。
● WiFiとBluetoothの設定
リビングPCとして使うためには、どこでもネット接続できるWiFiと無線でキーボード等が使えるためのBluetoothの環境が必要です。XH110GにはそのためのオプションとしてWLN-Mが用意されていますが Shuttleのダイレクトショップで 3,680円(税込)しますし、それを使うのではレビューとしても面白くありません。
そこで、以前のレビューで用いた ASRock のZ97M-ITX/ac に付属していたものの、使っていなかったmini PCI-eのWiFi+Bluetoothのモジュール(Realtek 8821AE Wireless LAN 802.11ac PCI-E)を活用することにします。
もっとも、XH110Gにはmini PCI-e用のスロットはありませんので(上記のWLN-MもM.2-2230接続で、そのためのスロットはあります。)、mini PCI-eのカードを使うには別途アダプターが必要です。幸い、XH110GはPCI-Eカードが使えるので、今回はPURPLE 7というところが販売している mini PCI Express用モジュールカード to PCI Express変換ボードを使うことにしました。
パッケージはマニュアル類は何も入っていない不親切なものですが、どう使うかは見れば大体分かります。下のように、カバーを外した本体にモジュールを取り付け、ネジで固定し、アンテナ線を接続し、再びカバーをはめれば完成です。また、Bluetoothを使うためにはUSBで電源を供給する必要があり、そのためのケーブルも接続しておきます。
そして、これをXH110GのPCI-Eスロットに取り付けます。
ところが、ここで一つ問題があります。上記のようにBluetoothを使うためにはUSBで電源を供給する必要があるのですが、マザーボード上のUSBコネクタは全て使用済みなのです。それを外せばもちろん接続できますが、そうするとフロントにあるUSBポートの一部が使えなくなります。どうしようかと迷っていたところ、先ほどSSDを接続した本体底面に、内部接続用のUSB端子が出ているので、これを使おうと考えました。ただし、この端子の形状はType-Aなので、このままではマザーボード上のUSBコネクタ用のケーブルは接続できません。そこで、次のような変換ケーブル(サンワサプライTK-USB1)を購入し、トライしてみました。
なお、こうしたパーツはあまり高ければ試すのがためらわれますが、税・送料込みで257円とお手頃価格だったので、助かりました。しかも、今回注文したyodobashi.comのヨドバシエクストリームサービス便は無料の上、配達がとても速く、今回も翌日には届いたのは素晴らしいと思います。
さて、接続ですが、まずは裏面のType-AのUSB端子(メス)にTK-USB1のUSB端子(オス)を接続し、ケーブルをマザーボードの表側に引き出します。その上で、他方の4Pオスの端子をPCI Express変換ボードの4Pメスの端子に接続します。
これでセッティングは完了で、電源を入れてきちんと認識されているか確認してみます。まずは、WiFiですが、大丈夫のようです。
次にBluetoothですが、こちらもOKです。今回無線接続で使おうと思っているキーボード(ELECOM TK-FBP067)がしっかり認識されています。
● リビングPCとして使ってみる
セッティングが終了したので、早速、リビングに持ち込んでみます。今回モニターとして使用するのは、今年の春購入したばかりの東芝の4Kテレビ REGZA 43Z700X です。
本体がコンパクトなので、テレビボードの上に置いても違和感はありません。また、この大きさなら、レコーダーを置く内部の棚に入れることもできそうです。
キーボードはBluetoothで接続し、マウスもUSB接続のワイヤレスタイプを使えば、ダイニングテーブルに座ったままPCの操作が可能です。また、いつもテレビを見る距離なので、画面の大きさもちょうどいい加減です。
XH110GがリビングPCとしても優れているのは、コンパクトさだけでなく、その静音性にあります。くつろぎの場であるリビングでは機械的なノイズは耳障りなものですが、XH110Gは耳を近づけてようやくファンの音が聞こえるくらいで本当に静かです。 I.C.E.システムによりCPUファンがなく、ACアダプターのため電源ファンもないのが大きいと思われます。また、スティック型パソコンと違い、CPUのパワーも十分なため、画面もサクサクと動き、ストレスを感じることもありません。
実際、どんな感じでの操作になるか、動画も撮ってみましたのでご覧ください。
● 液晶一体型PCとして使ってみる
XH110GにはVESAマウントも付属しており、対応した液晶モニターがあれば一体型PCとして使うことができます。
私がメインマシンに使っているiiyamaのモニターもVESAマウント対応で、背面にネジ穴があるので、試してみることにします。
使い方は簡単で、付属のVESAマウントを液晶モニターの背面にネジで取り付け、マウントのツメにXH110Gの底面にある溝を引っかけるようにして固定するだけです。気を付けなければならいとすれば、ツメが上を向くように方向を間違えないようにするだけです。
結論ですが、確かに、パソコン回りはすっきりしますが、電源を入れたり、USB端子を使うのにいちいちモニターの裏に手を回すのは、面倒なのが正直なところです。デスクの上に余裕がない場合ともかく、もともとコンパクトなので、脇に置いて使った方が使い勝手は良いと思われます。
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