大正8年創業という長い歴史を持つ、靴クリームの老舗「コロンブス」。
同社の代表的な製品である靴クリームのほか、ブラシや消臭剤、インソールなど靴のケアに関する様々なアイテムを取りそろえている。
数多くラインナップされている靴クリームの中でも、ハイエンド製品としてリリースされているのが、今回レビューで使わせて頂いた「ブートブラック ハイシャイン」シリーズだ。
このブートブラックシリーズ、靴クリームだけで38色ものラインナップを取りそろえており、ひとつひとつが調合、瓶詰め、ラベル貼りまで職人の手で仕上げられている、まさにジャパンクォリティーの逸品である。
ブートブラック ハイシャインは、その名の通り光沢仕上げが特徴のクリームだ。
磨き上げると輝くような美しい光沢は「ブートブラックハイシャインベース」と「ブートブラックハイシャインコート」の2種類のクリームを使い分けることによって実現している。
ブートブラックハイシャインベースを最初に塗り込むことで皮の表面にある微細な凹凸をならし、光沢の下地を作ったあとでブートブラックハイシャインコートを塗り広げ、軽く水分を含んだ布で磨き上げることで、他のクリームとは一線を画す輝きを放つようになる。
それでは、早速使ってみよう。
ベースクリームとコートクリームの2つを使い分けることで、コントラストのある美しい光沢が生まれる
普段のレビューであれば、使用方法、ケアの仕方といったことを説明してから、最後に効果を明らかにするような構成で書いていくのだが、このブートブラックハイシャインについては、先に磨いた結果を見ていただくのが一番わかりやすい。
奥が磨く前の状態、手前がブートブラックハイシャインで磨き上げた状態。
驚くことに、ここまで差が出るのだ。
踵の部分も磨き上げてみたのだが、これだけ差が出るとどちらがブートブラックハイシャインで仕上げたのか説明不要であろう。
これだけの美しい艶が手軽に実現出来るとは、ブートブラックハイシャイン恐るべし、である。
今回用意した靴はLEGAL製のカーフを使った製品であるが、カーフのきめ細かい凹凸とブートブラックハイシャインのベースクリームの相性がとても良く、きわめてナチュラルな美しい光沢を得ることができた。
個人的に鏡面仕上げのようなハイシャインよりも、カーフのなめらかな質感とマッチする少し梨地というか半光沢くらいの仕上げが好きなのだが、ブートブラックハイシャインのこの絶妙な仕上がり具合はとても気に入っている。
ブートブラックハイシャインで仕上げる前後のクローズアップ写真を比較してみよう。
こちらは仕上げる前の状態。
皮の細かい毛穴による凹凸がはっきりと解る。
カーフ(生後6ヵ月以内の仔牛の皮)の特徴は毛穴の細かさが特徴で、牛が成長すると共に皮も固く、目が粗くなってくる。
ブートブラックハイシャインで仕上げたつま先部分。
上の写真と比べると、細かい部分がなめらかになり、艶が増しているのが解るだろうか。
鏡のような光沢仕上げにしてしまうと、せっかくのカーフが持つ皮のしっとりとした質感が失われてしまう。
ブートブラックハイシャインの凄いところは、カーフのきめの細かさを保ったまま、ちょうど良い感じの光沢感が得られるところである。
ブートブラックハイシャインを使った靴のケア方法
1,ブラッシング&汚れ落とし
他の靴クリームと同様、ブラッシングした後に、クリーナーで汚れを落とす必要がある。
本来であれば同社製のクリーナーを使うのが一番であるが、手持ちになかったのでKIWIブランドの中性クリーナーを使って汚れを落とすことにした。
まずはブラッシングして汚れを除去。
隙間や縫い目などに汚れがこびりついているので、丁寧にブラッシングして落としていこう。
ブラッシングが終わったら中性クリーナーを使って汚れを拭いていく。
今回使用したクリーナーは汚れの除去よりもどちらかというと栄養補給を兼ねた製品だったため思ったより汚れが取れていなかったので、きちんとメンテナンスを行うには、コロンブス製のクリーナーを使った方が良いと思われる。
2,ベースクリームを塗布
クリーナーを使って汚れを除去したら、ブートブラックハイシャインベースを塗り込んでいく。
今回は専用のポリッシュクロスを使うことにした。
このポリッシュクロス、人差し指と中指の2本をまっすぐ伸ばし、この2本の指に巻き付けてずれないようにして使うのだが、長さが40cmちょっともあるので巻き付けるにはちょうど良い長さで作業途中にずれることもなく使い勝手は良好である。
また、クロス生地も薄めであるため、靴クリームを付けると手の温度を吸収して良い感じになめらかになり、塗りやすさが増すのもメリットだ。
このベースクリームが皮に馴染むことで、なめらかな表面仕上げとなり、最後にハイシャインコートで磨き上げることで美しい光沢が現れる。
ベースクリームを数回に分けて塗り込むと、その分表面が平滑になるので光沢度合いが増すのだが、一気にぶ厚く塗るのは皮が呼吸をできなくなってしまい痛んでしまうためNGだ。
ベースクリームは薄く円を描くように塗り込み、磨いては再度塗るの作業を繰り返していこう。
このベースクリームをどのくらい塗り込むかによって、仕上げの光沢度合いが変わってくる。
今回はカーフの雰囲気を活かすために軽めに仕上げているが、何度も塗り込むことで、ピッカピカの鏡面仕上げにすることも可能である。
3,ハイシャインコートで仕上げる
ハイシャインベースの処理が終わったらクリームが馴染むよう、10分ほど少し靴を休ませたあと、ハイシャインコートで磨き上げていく。
ハイシャインコートはかなり柔らかいクリームなので薄くのばしていくことができるが、乾燥してくると光沢が薄くなり指先にかかる抵抗が少し増してくる。
この状態になったら、軽く湿らせた布でひたすら磨き上げると、光沢を放つようになる。
磨き上げるときに使用する専用のポリッシュウォーターもラインナップされているが、今回は息を吹きかけ、曇ったところを集中的に磨き上げた。
湿らせたウェスで磨いてもいいのだが、あまり濡らしすぎると使いづらい。
作業した感じでは、息を吹きかける程度の水分がちょうどよいと感じた。
水を使う時は、水で濡らしてしまうと水分が多すぎるので、ウェスに霧吹きを使って一吹きするくらいで良さそうだ。
塗りやすく、手軽に高級な輝きが手に入る逸品
ブートブラックシリーズのクリームは比較的柔らかめで、力を入れずにスムーズに伸ばすことができるので、塗り込むのもとても簡単だ。
しかも、さっと塗って磨くだけで美しい艶となるので、あまり時間を掛けずにメンテナンスが可能なのは、手軽で良い。
あまり時間を掛けずに、とは書いたものの、じつは磨き込むとどんどん靴が美しくよみがえるため、ついもっと磨き込んでみたくなり、気づいたら片方の靴に30分以上も費やしてしまっていた。
“オシャレの基本は足下から”とも言うように、センスが良い美しい光沢に仕上がる靴を履くと、なんとなく背筋が伸びるような気がしてくるので不思議である。
革に馴染みやすく吸収されやすく、艶も美しいブートブラックシリーズは、愛用の靴のメンテナンス用としてとても良い製品だと感じた。
同社製のクリームはすべて松戸にある工場で作られているのだが、梅雨や湿気の多い夏など日本の気候を知り尽くした職人が手作業によりに調合・製造しており、海外製品よりも安心感がある。
これからは夏も終わり涼しい秋にさしかかるので、夏の暑さと湿気、ゲリラ豪雨などで疲れた靴はきちんとメンテナンスしておきたいところだ。
このブートブラック、テレビ東京系列の和風総本家(2/26放送)でも取り上げられたのでご覧になった方もいると思う。
氷点下になっても凍らず、水分と油分が分離しない靴クリームの開発を目指し、現在ではヨーロッパをはじめ世界中で使用されていること、職人がひとつひとつの製品を手作りしていることなどが紹介されていた。
上記の写真は初めて蓋を開けた時の状態なのだが、クリームが非常に綺麗に、瓶の縁めいっぱいまで充填されているのが解るかと思う。
じつはこれ、職人が2回に分けて手作業で充填しているからこそ出来る技なのだ。
クリームは高温の柔らかい状態で瓶詰めを行うが、一気に充填してしまうと冷却時にひび割れが発生したり、揮発によって量が減ってしまう。
手間は掛かるが2回に分けて作業することで、綺麗に充填することが可能となるのだ。
さらに、このレビューの一番上でも使用した下記の写真を再度確認して貰いたいのだが、瓶の外装にも特徴があるのがお分かりだろうか。
そう、瓶の蓋とラベルの正面の位置が一致しているのである。
通常、ラベルは機械貼りされるので瓶のラベルの正面位置と蓋のラベルとは向きが一致しない場合がほとんどだ。
しかし、このブートブラックシリーズの瓶はすべて蓋がされたあと、ラベルが1枚1枚丁寧に手作業で貼られており、このため、瓶とラベルの位置がピッタリと一致するのである。
言われなければ気づかないような細かいところまで気を遣っている、さすがMade in Japanといったクリームである。
和風総本家の番組だが、オフィシャルの動画ではないので直接リンクは控えるが、Youtubeなどにもアップロードされているので、「本家 世界で見つけたMade in Japan 2月26日」などで検索して是非ご覧頂きたい。
他製品との比較
今回、手持ちの他社のクリームも使って比較を行ってみた。
といっても、用途がそれぞれ違うクリームだったりするので、光沢度合いではまったく勝負にならないのだが…
まずは、愛用しているサフィールのレノベイタークリームと、M.モゥブレィのシュークリームジャー。
どちらもメジャーなメーカーだが、個人的にはサフィールのしっとり感、艶が気に入っているので、こちらを主に使っていたりする。
奥の靴は、先端の左半分をM.モゥブレィのシュークリームジャー、右半分をサフィールのレノベイタークリームで仕上げている。
当レビューの冒頭で紹介した写真と比べると艶が蘇っているのが解るが、ブートブラックハイシャインと比べるとその美しさはかなり劣ってしまう。
もっとも、この2製品は他の革製品への栄養補給として使っているので、ブートブラックハイシャインとは用途が違うため、比べるのはちょっと酷ではある。
こちらは踵部分をKIWIのシューポリッシュとパレードグロスプレステージで磨き上げたもの。
左側の靴の、マスキングテープの上辺より上をシューポリッシュで、下をパレードグロスプレステージで仕上げている。
シューポリッシュは1回仕上げただけなのでそこまで光沢がよみがえってはいないが、落ち着いた黒を取り戻している。
個人的に買ってNGだったのが、光沢仕上げ用のパレードグロスプレステージ。
靴クリームには有機溶剤が入っているのだが、パレードグロスプレステージはかなり石油系というか、ケミカルなキツい香りがする。
臭い自体は気にならないのだが、靴に対して優しくないような気がすることもあって、買ってからあまり使っていなかったりする。
光沢度合いからすると、シューポリッシュより光沢が増しているので、数回塗り込むとかなり輝いてくるように思うが、如何せんケミカルさがあまり好みではないので、そこまでやろうと思う気力は沸いてこない。
今回使ったクリームをまとめると、以下のような感じとなった。
評価は1~5点で採点し、5が最高評価である。
ブートブラックハイシャイン:5
塗りやすさ、輝き、香り、どれをとってもブートブラックハイシャインは高いレベルでまとまっている。
革の吸収もよく、かといってあまり水っぽくない適度な粘性を持っているクリームなので作業も簡単で、さっと磨き上げるだけで美しい光沢が戻るのは流石である。
サフィール レノベイタークリーム:4
栄養補給のクリームとして気にいている一品。
塗ったときと拭き上げる際の感覚、香り、仕上がり、どれもバランス良くまとまっている。
欠点としては、50mlしか入っていない容量と、販売店の少なさか。
M.モゥブレィ シュークリームジャー:3+
こちらも有名な製品で、サフィール レノベイタークリームが無くなりそうなので買ってみた。
塗りやすく、仕上がりも悪くない製品だと思うが、個人的にはサフィールのレノベイタークリームの方が好み。
クリームのなかではかなり水分が多いような、ニベアなどのスキンケアに近い印象を受ける。
KIWI シューポリッシュ:3
入手性もよく、手軽に使える製品。
仕上がりも派手さはないものの、しっとりとした感じで良い。
ロウ主体の製品なのでしっかりと磨き上げる必要がある。
また、皮に力が掛かる、曲がるところへの浸透を考えると少し物足りない感じもあり、クリームでしっかりケアをしていく必要があるように感じる。
KIWI パレードグロスプレステージ:1
せっかく買ったのだが、積極的に使いたいとは思わない臭いと仕上がり。
試しに別の靴に2~3回磨き込んでみたところ、それなりに美しい光沢を得ることが出来たので、機能としては申し分ないとは思う。
ただし、やはりブートブラック ハイシャインの仕上がりには負けてしまうこと、ケミカルさが目立つこともあって、個人的に×とした。
鞄も磨いてみよう
仕事で使っている鞄も磨いてみた。
うむ、テカテカである。
しかし…靴だと良いのだが、鞄クラスになるとベースクリームを塗り込んで磨いて塗り込んで…とやっているうちに疲れてしまう。
鞄をハイシャイン仕様にするのはかなりの忍耐力が必要そうである。
ただ、手軽に栄養補給も出来て光沢仕上げになるのは良いところだ。
あと、ブートブラックハイシャイン、1瓶あたりの容量が多いので、こういった大物にも気軽に使えるのが良いところである。
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